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前世は大工女子の異世界生活  作者: 森林木林森
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みんなで歌いましょう

 カタストロフ城見学ツアーを終えた翌朝、いつもの様に冒険者組と別れ、私は教会に挨拶とお祈りをしてからティンダーの街に向かう、今日のお供はノアールだけ、チャミーは教会で2人を見守るお役目を買って出てくれた。


 昨日の夜、工房に入ってノアールの首輪を作った、動くとチリンチリンと鳴る鈴付きの首輪、勿論大きくなっても小さくなってもちぎれたり、ブカブカにならないような仕様、ジュライが付与してくれた魔法によってそれが可能になった。


 魔法陣は物に付与するのには便利だが、全ての魔法陣の知識があっても色々と制限がある、でもジュライの付与魔法にはその制限が無い、私の魔法陣よりもものづくりに関しては融通が効くので少し羨ましい。


 この世界の現代魔法は簡素化されていて単純になっている、ジュライが使うのは原初の魔法、発動には複雑な思考や膨大な魔力が必要だがその分強力で融通が効く、ジュライも今は精霊なのだが元魔王でありデミゴッド、私の把握してない魔法陣の使い方まで知っている知恵袋的な存在、ジューンはジュライと同等の魔法知識があるけど自分では使えない、水に特化してしまったので制限がかかるらしい。


「やっぱジュライが最強なのかな?でも能力だけならメイちゃんが1番ってジュライも言ってたから、最強はメイちゃんなのかな」


 何故こんな思考をしているかと言うと、今朝の会話でジュライのレベリングの話になった時、彼女がそれを必要ないとバッサリ、元々戦闘狂でも無かったらしく、今はピアノ演奏等やりたいことが見つかったからね、それに彼女は戦闘する為に生まれた訳じゃない、属性神からすると私側だろう、無理してダンジョンに入る必要も無い、彼女にはみんなのまとめ役になってもらいたいと思っている。


 色々考えているとティンダーの教会に到着、せっかくなので立ち寄りライカにお祈りをしてからマザーと雑談、最近では街の子供達も教会にいる孤児との交流が増えて良い関係になっているそうだ。


 マザーと雑談を終えて下着工房の引き渡しに向かう、現地には既にマルティさんとお針子さん達、共和国の丁寧ドワーフのガンツがいて説明を受けていた。


「遅くなりました、すみません」


「ヨーコさん、ちょうど今引き渡しが完了したとこです、それと彼からこれをヨーコさんにと」


 それは丁寧に描かれた機織り機の設計図、それを受け取りガンツにお礼をする、彼等は足踏み式ミシンを早速自分達の工房で作るため、この引き渡し後に共和国へ戻ると言っていた、気を付けて帰って欲しい。


 その後ローザの所に顔出ししたが、タイミング悪く彼女は不在だった為、簡単な進捗状況の説明を聞いて錬金術師会の建物から出た。


 アナの所にも顔出しをして、炭酸石を正式に卸す事が決定、しばらくは直接卸してその後は何処かの商会に任せようかと思っている、まぁダンゴさんの所しか知らないので彼に任せる事になりそうだ。


 一通り用事を済ませたのでクランハウスに戻ると、ネロから来客があったと報告を受けた、来たのはグランドマスターの奥様で、予定よりも早く着いたのは前にグランドマスターが言ってた様に王都の生活に嫌気がさしていたからだそう、今日私がティンダーに行ってる間に購入したクランハウスに引っ越して来たらしい。


 私はすぐに工房に入り約束していた壁時計を作る、グランドマスターの好きなウイスキーもボトルで数本用意して工房から出た。


「ネロ、グランドマスターの屋敷が何処かわかる?」


「はい、伺っておりますので、ご案内いたします」


 ネロの案内で屋敷に到着、立派な馬車が脇に停めてあった、数人の使用人の姿も見える、このクランハウスは私がデザイン設計した物件じゃないな、あの教会建築したドワーフのじゃないかな?内装を屋敷風に改築するってグランドマスター言ってたけど。


 ちょうど私達に気付いた使用人がこちらにやって来た、理由を説明して中に通してもらうと


「ようこそいらっしゃいましたね、ヨーコさんでよろしかったかしら?私はクワットローの妻でエルメスと申します、主人から色々と聞いておりますわ、どうぞ私とも仲良くしてくださいね」


 少しふっくらとした物腰の柔らかい印象のエルメスさん、私も自己紹介をして引っ越し祝いを手渡す。


「まぁ立派な壁掛け時計、デザインも素敵ねぇ、どこに掛けようかしら、やっぱり目立つ所が良いかしらね、セバス!」


 セバス?居るのセバスが!老執事と言ったらセバスチャンよね?


「はい、奥様……かしこまりました、お預かりいたします」


 そこに沢山の会話は無くとも、主の行動1つで理解し最善を尽くす執事が居た。


 その後奥に通されてエルメスとお茶をして雑談、その会話の中でティンダーの化粧水の話が出たので洗顔料と化粧水、乳液を取り出し、使い方と注意事項を記した羊皮紙を添えてプレゼントした、王都にパイプのあるご婦人だ、良い宣伝になるからね。


 ホクホク顔のエルメスはお礼にリストをくれた、なんのリストかと言うと王都の貴族のリストで年齢や派閥、趣味趣向まで記された極秘リストだ。


「主人からヨーコさんは様々な物を作り出していると聞きました、そのリストを上手く利用すれば必ず貴女のお役に立つでしょう」


「よろしいのですか?こんな重要な物をいただいても」


「えぇ、この街に来た私には必要の無いものですから」


 貴族社会を生きていくには必要な物だったんだろうね、こういう情報は強力な武器になるから有難くちょうだいします。


 グランドマスター邸を出た私達はクランハウスに戻る、久しぶりにネロと夕食の準備をしながらみんなの帰りを待っていた。


 しばらくしてみんなが帰って来た、今日も全員無事に戻って来て一安心、階層が深くなるに連れて魔物も強くなる、彼等も100階層まで行ったら一度休憩をすると言ってたので、そのタイミングでミルザの街にでも行ってみよう。


 夕食も終わり各自の自由時間となった、私は中断していたピアノ作りの為工房に入る、今日で部品関係を作り終えておきたい、クランハウスに置くピアノは教会にあるピアノよりもふた周り程小さいサロンサイズ、音は教会の物よりも落ちるが練習に影響は無い、アップライトピアノの構造もミライさんからある程度聞いていたので時間をかければ作れなくもないが、最初はちゃんとした物で練習して欲しいからね。


 今日の私は気分が乗っているのか、作業が捗る、数日前とは雲泥の差だ、ゾーンに入る程では無いが集中して作業が出来た、一通りの部品やガワも作り終え、後は組み立てと調律だけ、ミライさんはジュライに調律の勉強も教えている、あまり身動きの取れない自分に代わりジュライに色々託す様だ、ジュライもその意志を感じ取っているのか熱心に勉強している。


 結局その日のうちに組み立てまでやってしまった、一度完成品を作っていたので組み立てスピードは段違い、あっという間に出来上がったジュライのピアノ、出来上がると早く見せたいのが私の性分、クランハウスの会議室奥に設置して布製のカバーを被せておく。


「明日の朝驚くジュライを見てみたいな、喜んでくれるかなぁ」


 しかしジュライの朝は早い、早朝に起きて教会に行き、掃除や畑仕事をする、今ではネロより早く起きて出掛けてしまう為、朝食はネロが夜のうちに作りキッチンに用意しているほど。


「寝たら起きれないからこのまま起きていようかな、けど工房なら5~6時間休めるか、向こうで休んだ方が良さそうね」


 この身体になり睡眠時間はあまり取らなくても平気になっている、しかし徹夜をすると明らかにパフォーマンスが悪いのは感じ、2~3時間でも眠った方が段違いで動きは良くなる。


 工房で仮眠を取り外に出ると、ちょうどジュライが起きて来た、私はジュライを会議室に連れて行きピアノを見せた。


「おぉ!これが妾のピアノか!感謝するぞヨーコ、これで更に練習が出来る」


 パァーっと明るい表情を見せたジュライ、ルンルン気分で朝食を取り教会へ向かって行った。


 その後少ししてジュライが私を呼びに来た、どうやら教会でミライさん達が呼んでいるそうだ、朝食を済ませてから教会に行くと


『ミライ、サライ、貴女達に神託を授けます、3日後の6の鐘が鳴る頃に演奏をしなさい、10程の曲を希望します』


「と、今朝神託を受けました、一応ヨーコさんにも報告と思いまして」


 10曲も?お披露目にしちゃぁちょっと、リサイタルのラインまである、ソロリサイタルなら15~20曲がよくある平均、その半分程度ならサライちゃん1人でも平気かな?


「多分ジェネシスちゃんの誕生を祝うんじゃない?前にそんな事言ってたから」


「神様の誕生のお祝い!それは責任重大ですね!どうしましょうヨーコさん」


 う~ん、神様(ジェネシスちゃん)の誕生日会みたいなもんだと思うけど、お祝いや讃える気持ちを込めれば良いんじゃないかな。


「固く考えないで良いと思うよ、私は基本無宗教だったからよく分からないけど、教会だし賛美歌とかあれば雰囲気が出るんじゃないかな?」


「なるほど……でも私だけの独唱になるので知っている曲数が2、3曲しかありません、ゴスペルとかの方が好きで、そうだ!ヨーコさんもご一緒にどうですか?」


 私!待って、気持ちは嬉しいけどかなり音痴なのよ……


「ごめん、私音痴なの……」


「ゴスペルはノリです!元気よく多少音がズレても手拍子と足踏みで乗り切れます、それにヨーコさんの声は伸びのある声ですから、きっと大丈夫です!」


 確かに前世の身体では音痴だったけど、この身体なら行けるのかな?ちょっとアニソンを歌ってみるか。


「あはっ!知ってます!その曲アニソンですね、上手に歌えてますよ?全然音痴じゃないです!」


「そ、そう?そうかな?」


 歌う事は嫌いじゃない、声を大にしてソウルをシャウトするのは気持ちいいからね!上手く乗せられた感はあるけど、そんなの関係ねぇ!


「練習しませんか?絶対楽しいですよ?なんならお仲間さんも一緒に!男性がいればパートを分けて賛美歌とかも良いですね!」


 そうだよ!精霊達には模倣スキル持ちがいるんだから歌を模倣させれば良いんじゃないかしら?


「ゴスペルは直訳だと意味合いが変わる曲もあるので、私がアレンジして誕生に相応しい歌詞で歌います!」


「アレンジとかして平気?」


「ゴスペルは感謝の気持ちや讃える気持ちを声に出した歌です、それにここ異世界ですからね」


 Oh...逞しくなったねミライさん、でも3日しか無いのに平気かな?


 私もみんなに話を通さないきゃと考えていたら


「話は聞かせてもらったぞ?面白そうではないか、連中の説得は妾に任せるが良いぞ?」


 ジュライがワクワクした表情をして会話に入ってきた。


「姉師匠!素晴らしい考えじゃ!是非ともやろうではないか!」


「ジュライ姉師匠って?ってかちょっと言葉遣いが戻ってるよ?」


「うふふ、大丈夫ですよ、たまにレッスン中にも素が出て口調が変わる時があるので、もう慣れましたし」


 私の指摘にミライさんの擁護を受けたジュライ、ちょっと苦笑いしながらみんなに話をしに向かう。


 すぐにゾロゾロと全員が集まって来たので、教会で詳しく打ち合わせする事になった。


「では私が何曲か歌います、サライよろしくね」


「ゴスペルだとあの映画の曲?賛美歌は学校で習った曲で良い?誕生日会の歌だと……お姉ちゃん知ってる?この曲」


 サライちゃんが1曲ずつ弾き始めると、ミライさんが合わせて歌い始めた、めっちゃ上手い!カラオケならこの人の後に歌いたくないってなる人だ!どっから声出てんの?普段の声と段違いじゃん!


「ふむ、なるほど、じゃが今のは姉師匠のパートじゃろう?妾達の歌うパートも教えてくれぬか?」


「もちろんです、では私に続いて真似してください」


 あぁ~これ映画で見たやつだ!オーハッピー……映画のワンシーンの様に自然と手拍子が出る、身体を左右に揺らして、なんだか楽しくなってきた!


「あははっ!めっちゃ楽しいね、久しぶりに声を大にして歌ったよ、みんなも上手に歌えてるし」


「良かった、次は賛美歌の各コーラスパートを歌ってみます」


 ミライさんって声の幅が広いのね~全て上手に歌いきるんだから凄いなぁ。


 その後各コーラスパートに分けての練習、途中喉に良いハーブを使ったお茶をネロに淹れてもらって休憩を挟む。


 サライちゃんは曲選びをして、12曲ピアノ演奏の選曲をした。


「これくらいで今日は解散にしますか、明日も同じ様に練習して、明後日本番前にリハしてって流れです、ちょっと大変ですけど頑張りましょう」


「楽しいから頑張れるよ!ねっジューン」


「そうねぇ、こうやって音に合わせて声を出すのは初めてだけどスッキリするわね」


 ジューンとジュライの声も綺麗なんだよなぁ、メイちゃんはまだ可愛さ残るって感じで高音域担当、マーチとオクトも凛々しくて力強い声でちょっとびっくりした。


 今は模倣スキルでミライさんの真似をしているけど、そのうちオリジナルになって来て自分のカラーが出てくるのかな?それもまた面白そう。


 翌日も教会に集まり練習をして、いよいよ本番の日を迎えた。


「本番前のリハーサルなんですが、その前に一言、思いっきり歌いましょう、例え失敗しても責める人なんて居ません、気持ちを表現する事に失敗なんてないんですから、たった数日でしたが皆さんの想いは一つ、新しい神様の誕生をお祝いしたい、それだけです、その気持ちを込めればきっと伝わるはずですから、皆さん今日は楽しんでお祝いしましょう」


「流石姉師匠じゃ!妾達も楽しむことにしよう」


 この日の為に揃いの衣装まで揃えた、と言っても女性は修道服、男性はカソック、それぞれの属性神のシンボルを首から下げ、私もライカに「貴女のシンボルってどんなん?」と聞いてから作った、だって知らなかったんだもん、ちなみにヴィラー様は照れくさいとの事で辞退した、ジュライはジェネシスちゃんのベレー帽と同じ音符と筆をクロスさせた仮シンボル、それをペンダントにした物を着けている。


 スケジュールとして、まず最初に賛美歌を歌い祝福、サライちゃんのピアノリサイタル、ミライさんの独唱の後、ゴスペル調のバースデーソングで終わる予定。


 教会の外には様子を見に来たのかドワーフ数名と見た事のない冒険者数名、ミライさんがは理由を言って教会の中に全員通した、ギャラリーというプレッシャーが私を襲ってくる、ひぃぃ!


「ギャラリーがいた方が楽しいですからねっ!恥ずかしい事じゃないんです!皆さん私を見ろっ!って気持ちで行きましょう!」


 私は見ないで!って言いたいけど、ミライさんの言葉には説得力があって、私もその気になって来た。


 まずは全員が小さなジェネシスちゃんの像に祈りと祝福を願う、この像も急遽彫って作ったんだ、1メートルくらいの大きさだけどアース様が教会に並べて良いって言うからさ、もしこの文化が広がったらちゃんとした像を作って祀るって話までした、その時のジェネシスちゃんの喜びようったら可愛くて可愛くて、触れたら間違いなく頬擦りしてたよ。


 ギャラリーの皆さんもジェネシスちゃんに祈りを捧げてくれた、ちゃんと想いが伝わったら良いな。


 すると不思議な感覚が私達に降ってきた、喜び?感謝?そんな感覚、ギャラリーの皆さんにもそれは感じられた様で、みんな笑顔でジェネシスちゃんの像を見ている。


 6の鐘が鳴り、いよいよジェネシスちゃん誕生日会のスタート、全員が各パートに並び賛美歌の合唱が始まる、ギャラリーの皆さんも真剣に耳を傾けている、英語で歌ってるんだけどちゃんと現地語で聞こえてんのかな?


 賛美歌が終わると自然に湧く拍手、ちょっと気持ちいい、そしてここからはサライちゃんのソロリサイタル、私達は奥でしばらく待機だ。


「素晴らしい!皆さん最高でした!ちょっと私感動しましたよ」


「姉師匠にそこまで言ってもらえたら嬉しいかぎりじゃ!」


 全くその通り、突然のギャラリーと言うイレギュラーがあったけど、それがまた良い感じに私達を鼓舞させた。


 サライちゃんの演奏が良く聞こえる、今演奏してるのは私も聞いた事のある有名なアニソン?え?アニソン大丈夫?まぁポップなリズムで歩き出したくなるような曲、自然と身体を動かしたくなる。


 曲が終わり、サライちゃんが20分くらい休憩に入る、その時間を使ってジュライが2曲演奏するらしい。


「大丈夫かな、ジュライ」


「一応模倣していたので平気でしょう、彼女はやる時はやりますから」


 ジューンはそう言いつつも落ち着かない様子、まぁそれは仕方ないか、子供の初めての発表会にいる親の心境よね。


「ミライさん、ジュライはどう?上手くやれてる?」


「模倣って本当に凄いですね、ほとんどサライと同じです、若干緊張はしてるみたいですけどね」


 2曲の演奏を終えてジュライがサライちゃんと入れ替わる、休憩中の間を繋いだ演奏だったがジュライは


「ゾクゾクが止まらない、もっとあの場所で弾いていたいと思えた、観客の視線が気になったのは最初だけじゃ、後は楽しくて仕方なかったぞ、男を抱くよりも興奮したわい、カカカッ!」


 比較をソレにすんな、全く見てみなよそんな事言われたらミライさんも……あれ?


「本当にその通りですよ!演奏中の快感はアレに勝ります!私も弾きたくなってきましたよ~」


 はい…理解しました、ミライさんも男性経験ありって事ね、まぁ美人だし不思議はないけど、異世界で変な男に抱かれないでよ?しっかりしてそうに見えて意外と……ギャップか?これがギャップなんだな!私にない武器だ、ミライさん恐るべし!


 そんな下衆な妄想を捗らせているとサライちゃんの演奏が始まった、そこからの演奏はクラッシックの名曲のオンパレード、目を瞑って聞いていると音楽に合った景色が浮かんでくる、見た事もない景色なのに頭の中にはそれが浮かぶ、とても不思議な感覚だ。


「次の曲が終わると私の出番です、それが終わったら皆さんの出番なので準備をお願いします」


「了解!」


 ミライさんの独唱、観客の様子を見る感じだと、歌っている言語は分からないながらも目を閉じ聞き入っている様子、意味は分からなくても美しい歌声に魅了されている。


「そろそろ終わるわね、準備できた?」


「大丈夫だ!」

「いけるよ~」

「行きましょう」


 ミライさんの独唱が終わり、私達が手拍子をしながら入って行く、ミライさんがサライちゃんを見て頷くと手拍子に合わせて伴奏が始まる。



 ああ、なんて最高の日だろう

 ああ、なんて最高の日だろう


 女神の誕生を心から祝おう


 ああ、なんて最高の日だろう

 ああ、なんて最高の日だろう


 女神の誕生を皆で祝おう


 ああ、なんて最高の日だろう

 ああ、なんて最高の日だろう


 女神は私達を見ている

 女神は私達を愛している

 女神は全てを許してくれる

 女神に私達の喜びを伝えよう


 ああ、なんて最高の日だろう

 ああ、なんて最高の日だろう


 女神の誕生を心から祝おう

 私達は女神の子供

 女神に感謝し今日を生きよう

 この喜びを声にして皆で歌おう


 ああ、なんて最高の日だろう

 ああ、なんて最高の日だろう


 女神の誕生を心から祝おう……


 観客席も私達と同じ様に手拍子をして身体を揺らしている、リハーサルも何もしていないが、自然とリズムに乗って発生した拍手、ギャラリーの中には繰り返す歌詞を声に出し一緒に歌う者もいる、その輪はどんどん広がりギャラリーを含めた大合唱、ジェネシスちゃんに届いてるかな?


「ハァハァ、皆さんありがとうごさいました、今日は新しい女神様の誕生を祝う会でした、新しい女神様の名はジェネシス様、音楽と芸術を司る女神様です、きっと皆さんの歌声は届いたはず、皆さんにも女神様の祝福がありますように心からお祈りいたします」


 ミライさんが感謝の言葉を教会内に居る全員に伝える、一体感のあった合唱の余韻を楽しむギャラリー、私達は身体が熱く気持ちが昂っているのが分かる、大成功だったんじゃないだろうか?ギャラリーの顔も満足気に見える。


「じゃぁこの後は打ち上げね!」


 私達は大満足でクランハウスに向かった。


 この大合唱に使われた英語が後に神語として人々に広まり、大地の教会では英語を学ぶ人も出てくる、これがきっかけとなり後の大発見に繋がるのだが、今それを知る人はいない。




 その頃神界では


『ライカお姉ちゃん聞きましたか~凄いですね、ママ達が私だけじゃなくて皆さんを讃える歌を歌ってましたね!』


『そうねぇ、なんだかグッと心を掴まれた気がしたわね』


 チュニックワンピースにベレー帽姿のジェネシスが、隣に居たライカに身体全体で喜びを表現して話しかけいる。


 ここは神界、沢山の神々がジェネシスの誕生を祝いに来ていた、アースやアクアもジェネシスの近くに来てお祝いの言葉をかける。


『ジェネシス、おめでとう、さっきの演奏は素晴らしかったわね~』


『本当にね、あの音色は濁った水でさえ綺麗にする力があったわ、まるでジェネシスの純粋さを表現する様な、そんな綺麗な音色だったわね』


『アクア様、アース様、ありがとうございます!ママ達の歌もストレートに想いが伝わってきました、とても幸せです』


 その後も次々と神達が祝いの言葉と演奏の感想を伝えて来た、中でも熱く語っていたのは火の神と風の神の2柱「我の子供が上手い」「私の子の方が美しい声」と張り合っていた。


 そして


『あら、貴女が新しい女神?』


『はい!ジェネシスです!よろしくお願いします……えっと』


 ジェネシスは初めて見る女神の姿に困惑していた。


『私を知らないの?』


『はい、すみません……』


 知らないのは事実、謝罪をすると


『いいわ、今日のあのうるさい音や耳障りな声、貴女の仕業なの?』


『えと、うるさい音とはなんの事でしょうか?耳障りな声と言うのも』


 本当に分からなかったから確認の為に聞くと


『さっきのガヤガヤしてるだけのアレよ、自覚が無いのかしら?』


 さっきのアレとは……ピアノや自分の誕生日を祝う歌の事だろうか?いや、そんなはずはない、ピアノ綺麗な音色だったし歌も感情がダイレクトに伝わって来るものだった、もしそれを否定するなら信じてくれる彼女達の為に私は戦う。


『取り消して下さい、女神様』


『何を取り消すのかしら?』


『今の発言です』


 毅然とした態度で、その女神の言葉を否定する。


『この子は何を言ってるの?私が自分の発言を否定するとでも?ある訳ないでしょ?失敗作かしら』


『……あの素晴らしさを理解出来ない貴女の方が失敗作なんじゃないですか!人々の想いが伝わって来たのがわからないなんて不感症なんですか?女神様としては欠陥品ですね』


 目に涙を溜めて暴言女神を睨み付け言い返すジェネシス。


『子供だと思って舐めてるんですね、私を小馬鹿にするなら我慢する、なんの女神様かわからないけど私のママ達を馬鹿にするなら許さない』


『ママですって?あはっ神の親は創造神様でしょうが、貴女やっぱり失敗作ね、あの音と一緒でギャーギャーの吠えるだけ、そんな下級神なんて堕ちれば良いのに、だっさい格好をしてるし下界がお似合いよ』


 明らかな上から目線での物言い、力も相手の方が明らかに上回る、ジェネシスはグッ歯を食いしばり、泣きそうになるのを我慢する。


『おいっ!いい加減にしろっ!』


『何よ火の神、お呼びじゃないのよ引っ込んでなさい』


 ジェネシスへ暴言を投げつける女神に対して、苦言を呈したのは火の神、その後ろにはライカ、アース、アクア、の3女神が居た。


『ジェネちゃん、大丈夫?ちょっと目を離している隙にビッチがちょっかい出してきたみたいね、ごめんなさいねこの女神馬鹿なのよ、気にする事無いわ』


『今日の主役はジェネシスなのだから、呼ばれてもないくせに出しゃばるアバズレ女神なんて放置しなさい、相手にしたらジェネシスまで馬鹿になるわよ?』


 ライカとアクアの辛辣な物言いに、プルプルと震え出した女神。


『男を知らない処女と、水しか出せない単細胞に何を言われてもなんとも思わないわ』


『貴女ね神度が低過ぎるよ、今貴女の周りに誰がいる?今回の件で擁護する神が居るなら出てきなさい、大地母神の私が相手になるわ』


 アースが前に出て指を鳴らしている。


『アース……チッ!貴女達、私に啖呵切ったことを後悔させてやるわ』


『何時でもかかって来なさいよ、美の女神ディーテ、私達も最近は力が戻りつつあるの、貴女がばら蒔いた悪い噂も効力が弱くなってきたみたいね、後悔するのが貴女じゃないことを祈るわ』


 アースの言葉に顔を顰めるディーテ、ジェネシスを一睨みしてからその場を去る。


『美の女神様だったんですね、美しい方でしたけど、美しくなかったです』


『そうね、彼女は嫉妬の女神でもあるから、その部分が出ちゃったんでしょ』


 ディーテの消えた方向を見ていたジェネシスにライカが教えていた。


 ジェネシスは自動的に反逆同盟入りが決まり、このジェネシス加入によって反逆同盟が神界で女神達の一大勢力となったのは、ずっと先の話。

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