それぞれの進捗状況
更新予約の日を間違えてました。
朝ふわふわの羽毛に包まれて目覚めた私、今日もチャミーと朝チュン、うん、確かにそうなんだけど表現がイマイチ悪いな。
チャミーは私が目覚めると小さくなり、肩に乗ってくる。
「ヨーコ、教会に行ってくるなり」
「朝ごはんは?」
「後で戻って来て食べるなりよ」
まだピアノ演奏前って言うのにチャミーは教会へ行った、なんでも教会はアース様やジェネシスちゃんのお陰で神気に溢れているらしく、心地いいのだとか、マーチ達もそれは言っていた、もしかしたら頻繁にアース様達が覗きに来ているのかもしれない。
食堂に降りると、マーチ、オクト、ジューン、メイちゃん、双子の冒険者組が朝食を終え、ダンジョンに向かう準備をしていた、ジュライもそのうち冒険者登録をする予定、今後他の街に行く時に身分証代わりになるからね、んでそのジュライは既に教会に行っている、なんでも「弟子入りしたら下働きからしなくては」と自ら掃除や畑仕事を手伝いに行ったそうだ。
「私が1番遅かったのか、少したるんでるな、シャキッとせねば。」
「無理する必要は無いだろ?冒険者が朝早いのは仕事だからな、ヨーコはドンと構えてりゃ良いんだよ、やる時は人一倍仕事してんだから」
「そうだね、オクトの言う通りだよ、ヨーコはやりたい事をやれば良い、ボク達だって冒険者を楽しんでるんだ、気にする必要は無いよ」
今日は攻略組の冒険者がダンジョンに本格的に入って行く日、現在私達は65階層までのリングを持っている、マーチの話だと今いる冒険者パーティーが50階層を超えるのは、早くても1年以上の掛かると言っていた。
マーチとしてはさっさと全階層を攻略してガトー達に任せたいらしい、最下層攻略は、後進育成したいガトーに箔をつける意味もあるが、私に色んな場所を見てもらいたいから、1ヶ所のダンジョンに手こずってられないとも言っていた。
そうなったらこのクランハウスはガトー達に譲ろうかな、クランメンバーだって増えるだろうし、手狭になるのは想像がつく。
さて今日やる事をまとめなきゃ、街作りの進捗、ティンダーに戻って下着工房の視察、教会に寄って子供達に作った帽子を渡す、ローザにも時間があったら会っておきたい、肌の調子を確認したいからね、そのくらいで今日は終わっちゃうかな、ジュライのピアノも作り始めないといけないかな、それはこっちに戻って来てから工房でやるか、よしっ大体のプランは出来たからいざ出発!
「監督おはよう、これネロから差し入れよ、ブランデーたっぷりのケーキだって、監督は頭使うからって、ちょっと味見したけど美味しかったわよ」
「おっ、おいっ?ありがとうだぞ?」
照れてキョドってる、まぁネロも恋愛感情とかじゃなく、助けてもらった恩返しみたいな雰囲気だったし、監督も奥さん居るだろうから、変な心配はしなくて済みそうだ。
「トラブルは無さそうね?」
「おいっ!大丈夫だぞ、鍛治係共が今朝早く国に帰った、アレを研究するぞおいっ!」
「え?大丈夫なの?」
「おいっ!大丈夫だ、鉄骨も使う分は仕上がってる、鉄筋も余るくらいだ、問題ねぇぞおいっ!それより前に話したドワーフ国には来れそうか?おいっ?」
まぁここが完成したら私は用無しだから、私とチャミー、後はネロかジュライくらいなら一緒に行っても平気かな。
「大丈夫よ、楽しみにしてるわ、その時は街案内よろしくね?」
「おうっ!任せろだぞおいっ!」
監督ドワーフと別れて、クランハウスに戻る前に教会に寄ってみる、どうやらサライちゃんも二日酔いとかじゃ無さそうね、ミライさんが私を見つけ手を振っている。
「こんにちは、体調は平気?」
「はい、昨日いただいたお薬を飲んだので元気です、あ、そうだ一つお願いがあるんですが……」
あらぁ珍しいわね、なんでも聞くわよ?
「ヨーコさんの器用さでメトロノームとか作れませんか?」
「あのチックタックするやつ?原理が分かれば作れるわよ?中身がどうなってるのか分からないから、正確に出来るかはちょっと不安だけど」
「それなら私が大体覚えているので、図解説明する事は可能です、私、知識としてあってもそれを形に出来ないので、今日中に書いておきますので、作製をお願い出来ますか?」
中身が分かるなら多分いけるはず。
「えぇ、喜んで!」
「ありがとうございます!お代はどれくらいご用意と言うかヨーコさんにもらったお金ですが、最悪レッスンが始まってからとかでも良いですか?ちゃんと支払うなら自分達で手に入れたお金で支払いたいので」
「ん~気持ちだけで大丈夫、あ!それならウチのメイドにあのアメリカンクッキーの作り方教えて欲しいかな、あれ美味しかったから、それでチャラにしましょ!」
自分達で働いたお金で支払いたいなんて言われたら嬉しくなっちゃったよ、だからお金は取らないで、あの美味しいクッキーのレシピで良い。
「あの、それじゃヨーコさんの負担になってばかりでは?レシピは勿論メイドさんに渡しますが……」
「良いのよ、おばちゃん感心したんだから甘えときなさい、レシピの方が貴重まであるわよ、気にしないで」
その後もオタオタするミライさん、まだ学生だったんだから、気にする必要なんて無い、今のうちだけだよ甘えられるのは、私はミライさんの肩をポンと叩いてその場から去った。
「ネロ、ティンダー行くけど何か必要な物ある?」
「でしたら私も一緒に向かいます、お屋敷までご一緒してもよろしいでしょうか?」
「んじゃ一緒に行こうか、向こうでは自由に動いて構わないから、私の事も気にしなくて平気だからね」
私とネロは地下室からティンダーの屋敷に向かった。
「じゃ、またクランハウスでね」
「はい、かしこまりました」
屋敷を出た私がまず向かったのは下着工房、ついでに足ふみ式ミシンの搬入も済ませておきたい、工房ではドワーフ達が作業していた、予想よりもやはり早い、これ明日には出来上がるんじゃね?って感じだ。
「こんにちは、何か問題とかありますか?」
「これはこれはヨーコ殿、問題なんてこれっぽっちも無いですね、貴女の図面は興味深い、ついつい夢中になってしまい、作業が予定より早く終わってしまいそうで残念だ、非常に勉強になりました。」
なんか調子が狂うな、この人本当にドワーフか?って思うくらい丁寧なんだよね。
「いえいえ、作業が早く終わるのは寧ろ助かります、中を見ても?」
「どうぞどうぞ」
丁寧ドワーフから図面をもらい、細部をチェック、今は仕上げの段階だ、見た目で不備は見当たらない、このドワーフ達なら手抜きなどはしなさそうだし、ロフトで飛び跳ねてみたが大丈夫そうだ、ドワーフに空きスペースにミシンを置いて良いか確認、問題ないらしいので足ふみ式ミシンを並べた。
「ヨーコ殿、これは?」
「あぁ、見た事ないよね?足ふみ式ミシンって言って、説明するより見せた方が良いかな?」
ヒップバッグから適当な生地と糸を取り出し、パパパッと手さげ袋をこしらえてドワーフにあげた。
「こんな感じでここを踏むと針が上下して生地を縫い合わせてくれるの、手作業より早くて仕上がりも一定だから、使い方さえ理解したら誰でも裁縫が出来るようになるわ、今後はドワーフに設計図を開示する予定だから、もし興味があるなら貴方にもあげようか?」
「えぇ!是非とも!私は南にある共和国からコチラに出稼ぎに来たのですが、ご存知かも知れませんが、共和国は生地や革製品等を多く輸出しております、西側の国々には及びませんがかなりの数です、この足ふみ式ミシンがあれば作業効率はグンと上がるでしょう」
「わかったわ、はいコレ、まだドワーフ達には渡してないから、貴方がやる気があるなら共和国にもこの足ふみ式ミシンを普及させて、そうだ生地って言ってたわね、交換条件じゃないけど共和国の機織り機の仕組みとか教えて欲しいな、私の知ってる知識と別物なら勉強になるし」
「機織り機ですか?お任せください、こちらの引渡し時に私の知る機織り機の図面をお渡し致します、建築の出稼ぎでしたがヨーコ殿に出会えた幸運をヴィラー様に感謝しなくては、予定では明日の昼過ぎには作業が終わり、最終チェックをして明後日の午前中には引渡し出来るかと、機織り機の図面はその時でも?」
明後日か、ちょっと予定を確認しないとだな、最悪マルティさんに渡してもらうか、ネロを使いに出すか、ちょっと考えよう。
「明後日の午前中ね、もし私が来れない場合は使いの者か、ここの責任者に渡して貰えるかしら?秘匿するような図面だったら諦めるしか無いけど」
「秘匿なんて!共和国で普通に使われている機織り機の図面です、分かりました、ヨーコ殿がいらっしゃらない場合は代理の方にお渡しします、ヨーコ殿感謝致します」
傍から見たら知識を軽く渡し過ぎだと思われるかも知れないけど、私の使命って訳じゃ無いけど、物を通して発展するきっかけになれば良いと思ってるし、そこに金銭が発生しようがしまいが関係ない、布製品や革製品が多く流通すれば高価だった品物の価格が落ち着き、人の手に渡りやすくなる、そうしたら更に便利な高性能、高機能の商品が生まれるきっかけになるから、私がするのは発展へのきっかけ作り、お金はある人からふんだくれば良い。
「ヨーコ殿、今更ですが私はガンツと申します、共和国で大きくは無いですが工房を営んでおります、もし共和国に来られる事がありましたら、是非とも立ち寄って下さい、大したおもてなしも出来ないかも知れませんが、誠心誠意おもてなしさせていただきます」
「ガンツさんね、覚えたわ!共和国にも必ず行くから、おもてなしなんて気にしないで、一緒に遊んでくれたら良いわ、遊びも色々あるけど新しい物を作るって遊びをしたいわね、共和国に行ってこんなのあったら便利だな?ってそんな物、どう?一緒に遊んでくれるかしら?」
ガンツは腰の槌を胸に、ドワーフ最上位の敬意を表す作法で一礼する。
「必ず遊びましょう……」
周りのドワーフ達にも聞こえていたのか一同礼みたいになってる、私は照れ臭いから頭をあげるようお願いして下着工房を出た。
時刻は昼前、マルティさんの所にも顔出しとくかな~
「こんにちは~マルティさんいらっしゃいますか?」
「は~い、あらぁヨーコさんいらっしゃい、生地大分集まったわよ、言われた通りお針子さん達と下着に使う生地を選別しているわ、今日は工房の下見かしら?」
「そうですね、どうやら引渡しは明後日の午前中らしいので、一応マルティさんの所に顔出しとこうと思って」
マルティさんたまに抜けてるからって言いそうになったのをグッと飲み込んで。
「え?えぇ!?そんなに早く仕上がるなんて!」
ほらね……。
「引渡し立ち会いお願いしても平気ですか?一応足ふみ式ミシンは搬入も終わってますので、明後日以降は稼働に向けて動けると思いますよ?」
「ヤダわ!みんなに言っておかなくちゃ!あぁ引渡しは大丈夫よ、ごめんなさいヨーコさん、私みんなに言って来なきゃいけないから、今日は失礼するわね!」
いや、失礼するのは私だから、ここあんたんちだろ、本っ当メルティがそのまま大人になった様な人だなぁ。
「大丈夫です、私が失礼しますから、また明後日顔出し出来たら来ますので、その時ゆっくりと今後のお話をしましょう」
聞いてねぇな、ダメだこりゃ次行ってみよう。
マルティさんの店を出て市場をぬけて教会へ向かう、マルティさんの所で時間が掛からなかったからスケジュール的には余裕がある。
教会に着くと早速一人のシスターに見つかった、教会の門の脇には衛兵さん用の臨時の詰所まであった。
「あぁ~ヨーコ様~お待ちしておりました、どうぞ中へお入りくださいませ」
マザーが駆け寄って来た、毎回転ばないかと心配になる速度、足腰強いな。
「マザー、これを子供達に、これから暑くなるし日差しも強くなるでしょ?頭を保護する帽子です、男女別れてますので、余った分は予備として保管しておいてください」
「まぁ可愛らしい、帽子を被るなんてティンダーでは初めてかも知れませんね」
帽子がティンダー初?マザー言い過ぎでしょ
「その後変わりは無いですか?」
「その事なんですが……」
「なんかあったの?」
マザーはゆっくりと語り始める。
「最近、毎日お祈りに来ていた方のうち、何人かが教会に入れなくなりました、信仰心の厚い方々と思っておりましたが、衛兵様が諭して理由を聞いた所、どうやら買収されていたようでして、その内の一人がヨーコ様の事をお話ししてしまい……」
「あぁ、ウチに空き巣に来たのってその関係か、でもメイドが処理したから大丈夫よ?」
「え?そうなんでございますか?」
ネロは優秀なのよ、サクサクッとね。
「サクッと片付けたわ、だから気にしないで」
その後どうなったかは知らないけどね、まぁろくでもない事にはなってると思うけどさ。
マザーと別れローザの元に向かう、時間にも余裕があるのでゆっくり話せそうだ。
錬金術師会の建物に到着、受付の子の肌がツルツルだ、これは効果があったのかな?
「ヨーコさん!ようこそ、ふふっ見てください、このお肌、赤ちゃんみたいにツルツルスベスベです、言われた通りにやってみたところこの通りです」
「見違えたよ、大成功だね、それで皮膚に異常の出た人はいた?」
「今のところ一人だけですが、それも配合を変えて敏感肌用というのも作ってみました、そちらは問題なく使えました、効能は少し落ちますが、何もしないよりは雲泥の差でした。」
そりゃそうだ、今まで手入れなんてしてないだろうから、砂漠にオアシスだよ。
「今後の展開としては、まず富裕層に広げていき、広がった辺りで成分を変えてアップダウンを作ります、同じ効果の物でも香りを変えてヨーコさんの仰ってた「自分オリジナル」を楽しめるようにするつもりです」
「乳液も同じようにするの?」
「はい、乳液は後発にして、同時に使うと効果が更に分かるように販売する予定です。」
なるほど、販売時期をずらすのは良い考えね。
「洗顔料は?」
「洗顔料は当初、中々固形にならずに困りました、ですがとあるハーブエキスを入れる事により固形化に成功しました、今では手軽に使える洗顔料として比較的安価で流通しております、販路に関しては、大商会のダンゴサンショク商会が一手に引き受けてくださいました、素材の仕入れ等も対応してくれるので助かっております、来月には王都の見本市に出品予定です」
見本市なんてあるんだ!行ってみたいかも、来月って事は2週間後か、予定組めそうだな、よしっ行こう。
「見本市には洗顔料、化粧水、乳液だけ持って行くの?」
「はい、まだ他のファンデーション等はテストでかぶれる者が多く、現在研究中です、近々で間に合いそうなのは、ヨーコさんから教えてもらった、ドワーフの燃える水から取れるワセリンの精製が上手く行ったので、十分なテストを終えたらリップクリーム、グロスが作れそうです、合わせて口紅も研究していますが蜜蝋が高価な為後回しにしております、後は美容関係では無いのですが歯磨き粉が仕上がり間近です、今錬金術師は男性も女性も毎日生き生きしています、ヨーコさんのレシピやヒントのおかげです」
シアバターとか無いかな、自然派ショップにシアバター使った口紅とかあった気がしたけど、工房行ってそれっぽい種子全部調べてみようか、あれば結構使える、ハンド、ボディクリーム関係やそれこそ口紅まで多種多様に、石油仕入れてワセリンをわざわざ作る必要も無いし。
「みんなの研究のおかげでしょ、その内男性用の何かも考えなきゃね、私の知識って女に偏り過ぎてるから」
「リップクリームなんかは男性にも需要はありそうですけどね、たまにカサカサの唇した男性を見ますし」
「そうね、でも男性はリップクリームをつける仕草が嫌なんじゃない?」
元彼の言ってた言葉をパクリました。
「なるほど、でもカサカサ唇にキスはしたくないですよね、男性にはそういう意識は無いんでしょうか」
「男性はキスの先がしたいんでしょう、女性にとってキスは結構重要なのにね~」
「「「ですよね~」」」
激しく同意された、でもこのままだと話が逸れそうだ、修正しよう。
「ちょっと私の方でも色々な素材を試してみるわね、錬金術で抽出が出来て自然にある物で、安価なら尚更良しみたいな素材を探してみるわ、じゃぁそろそろお暇するね」
「私達も探します、ピックアップして報告しますのでまたお越しください!」
錬金術師会を出てホッと一息、あのままいたら朝まで話し込んでしまいそうだったからね。
やっぱり錬金術師会で話をするのは楽しい、女性が多いのもあるけど目的が一緒で、彼女達も営利よりか流通を目的にしているからかもしれないな。
商売としてはどうかと思うけど、あの人達って義理堅いから契約魔法まで使ってんのよね、レシピを安易に口外出来ないような縛りで、そこまでしなくていいって言ったのにさ。
ティンダーでの用事も終わり屋敷に戻った、ネロの姿が無いので先にクランハウスに戻ったのだろう。
クランハウスに戻ると、まだ冒険者チームは帰っていなかった、ネロは先に帰って来て夕食の準備をしている、ジュライとチャミーも戻っていて、食堂でピアノの話をしていた。
「お疲れ様、どうだった?レッスン初日は」
「うむ、難しいのぅ、だがやり甲斐がある、あれほど繊細とは思わなかった、鍵盤を叩く力加減で音の表情が全く違う」
やり甲斐があるなら良かった、難しくてつまらん!って言われるかと少し思ってたよ。
「続けれそう?まだまだ大変だと思うけど」
「途中で投げ出したりなどせぬぞ?妾がこれ程心惹かれたのは初めての事じゃ、妾の演奏を聴いた者が同じ気持ちになり、自分も弾いてみたいと思わせてやりたい、こんな目標じゃが続けて良いか?」
「もっちのろんよ!素敵な目標じゃないの、応援するよっ!」
なんかジュライに親近感が湧いた、私もそうだったもん、更地に家が建つ様子を見て、最初は凄いなぁって思ってたけど、段々と自分も建ててみたい作ってみたいって、そう思ったから大工になろうと決心した、母さんは猛反対したけど、父さんは「やってみなさい」って背中を押してくれて、結局あれが最後になってしまったけど、実家を建てた事で両親に結果を残せたと思ってる。
「ただいま~」
冒険者チームが帰って来たみたいだ。
「おかえり~みんな怪我してない?」
「余裕だぜ!」
「オクトが1番危なかったけどね、ポーンて飛ばされて壁にゴンしてた。」
オクトを吹っ飛ばす強敵がいたのか!
「いやあれはジューンが……」
「あのままだったら直撃だったでしょう?感謝して良いわよ?」
「よく言うぜ全く、笑いながらシールドバッシュされて感謝出来るかっ!まだ直撃の方がダメージ少なかっただろっ!」
なんでも良いけど怪我しないでよね?
「今日はどこまで行けたの?」
「75階層まで行ってきたよ、マップがあるから大分スピードアップ出来たよ」
マーチの話だと80階層以降はフィールドフロアが続く様で、90階層以降は通路が狭くなると言っていた、狭くなるならオクトの大剣じゃ戦い辛そうね、後でなんか作るか。
「そろそろカタストロフダンジョンのドロップ品も確認しないとね、あとマインとレーラが量産した宝箱の中身もね、みんな揃ってるし夕食後にやらない?」
「「「「異議なーし」」」」
夕食まではまだ少し掛かりそうだから先にお風呂、マーチとオクトは自室でシャワーを済ませると、女性陣は冒険者組を先に入れさせて、私とジュライは後回しにした。
風呂までの時間を使ってオクトの装備でも作ってみるか、両手剣でガトーと同じ様な感じにして、マーチも幸村だけだと狭い通路じゃ戦いにくいかも、オクトよりも器用だからグルカナイフの二刀流とか浪漫よね?よし、作っちゃおう。
ジュライに工房に行くと伝えて飛び込んだ。
オクトの武器にはちょっと興味のある金属を使ってみようと思う、ヒヒイロカネって言う金属で、属性の魔力に馴染みやすい性質がある、硬度はそれほど高くないけど、魔剣と呼ばれる類の剣によく使われている、神眼先生に教えてもらった内容だとミスリルとの相性が良く、合金にするのならオリハルコンよりもミスリルと書いていた。
ヒヒイロカネ7にミスリル3の合金が1番硬く使いやすい、所謂黄金比と言うやつだ。
赤茶けたヒヒイロカネの色にミスリルが混ざり光沢が生まれた、それを剣に加工する、叩くとキーンと高めの音がする、長さは120ガトーと同じ長さにしてある、オクトなら問題なく扱えるはず、大剣が180だから間合いの違いを修正してもらわないとね。
次にマーチのグルカナイフ、ブーメランの様な形状は投擲武器としても使えるようにらしい、材質はオクトの両手剣と一緒で魔剣に育つ様にした、どう成長するかは使用者の魔力と使い方で変わるようだ、特徴あるユニーク武器とか素敵仕様でしかない。
ついでのついでにメイちゃんの短剣も作ってみた、特殊効果で少しでも傷がはいると麻痺になる仕様、こっちはオリハルコンとミスリルの贅沢合金、ナイフだからある程度硬さがあった方が良い。
みんなの武器が新しくなったのにジューンだけそのままは可哀想なので、魔力を込めて打撃すると爆裂の魔法陣が反応するメイスを作る、使用者が爆裂に巻き込まれないように魔法陣に方向性を持たせた、どんな状態で殴っても自分の方向に衝撃が行かないように幾重にも魔法陣を組む、正直このメイスが1番凶悪な武器だと思う。
一通りの武器を作り終えたので外に出ると、ちょうどジューン達がお風呂から出てきたところだった。
入れ替わりでジュライと一緒にお風呂に向かう、ジュライの身体はバランスがよく中々美しい、ショートヘアなのも高得点だ。
「なんじゃ?触りたいのか?」
「うん」
素直に答えた私、ジューンの吸い込まれるような質感と違い、反抗期の子供みたいに弾かれる、張りがすんばらしい!どうだ?羨ましいだろ、私の特権なのだ!!
ジュライの身体チェックという理由をつけて堪能した私は、大満足でお風呂からあがった。
ジュライの髪を乾かし髪をすく。サラサラと指を抜ける髪の質感、私は凄く好きだ。
「妾もやってやろう」
ジュライが私の髪を乾かして髪をすいてくれた、トリートメントの効果もあるけど潤いしなやかな私の髪の毛、こればっかりはライカに感謝だ。
今日の夕食はダンジョン魚のムニエルにトマトとハーブのソースがけ、肉食メンバーのためにホワイトピッギーのピカタにマスタードソースを添えた物、じゃがいものソテーチーズがけ、大豆とひき肉の煮物、野菜サラダと根菜のスープ、エマールのピタパンをアレンジしたパン、中々贅沢な食卓だ、ネロの話だと市場に野菜類が大量に出回っていたので、質の良い物を見つけて買ってきたらしい。
「お母様の加護が大地に伝わったんだよ、あの教会のおかげ、でもまだ途中まで、お山の向こうまでは行ってない、もっとお母様の神殿が建てば良いのに……」
「山の向こうってエマールの事かな?」
「多分そうね、アース様のお力が弱く感じたもの、ドワーフの中にはアース様を信仰する者も居るから、ドワーフ国の辺りでアース様を祀る神殿が出来ればその力は行き渡るわね。」
監督の話じゃ農業をするドワーフも居るって言ってたし、ドワーフ国に行ったらその辺も地元民に相談してみるか。
「大丈夫よメイ、アース様はアクア様ともヴィラー様とも仲良しですから、ご一緒しても喧嘩なんてしないわよ、安心なさい。」
「神様同士で喧嘩なんてするの?」
「えぇ、大分昔の話だけど火の神様とアース様が喧嘩した事があってね、大地を火の海にしようとした火の神様の力を押さえつけたのがアース様、その時にあの大地震が起きたの、実際は火の神様の暴走をアース様が止めた結果だったのだけれど、その時仲裁に入ったのがアクア様、荒ぶる火の神様を水浸しにして落ち着かせたのよ、因みに今は火の神様はアクア様の旦那様ね」
ほぇ~なんか面白そうだけど、あ!だからアクア様の下にいるジューンの加護に秩序って付くのか、神話とかすっごい興味が湧くわ。
「でもアース様も可哀想ね、とんだとばっちりじゃないの、アース様は大地に住む人や生き物を守ったのに」
「ありもしない横槍を入れた神様が居たのよ、そのせいでアース様は大分お力を弱くされたわ」
「横槍入れた神様当てちゃうよ?美の女神でしょ!」
そういう事するのはアイツしかいないだろ!
「遠からず当たりかのう、正確には美の女神に唆された風の神じゃな、風の噂は広がるのが早いからのう」
キッ!っとマーチを睨む私とメイちゃん。
「えっと、ボクを睨まれても……そもそもの原因は火の神様だし、風の神様も今は唆されたって反省してるし、出来ればその熱い視線をオクトに向けて欲しいんだけど……」
「なーんで俺に振るかなぁ、まぁ全面的にあの争いは火の神様に非がある、火だけに、なんつって……」
全員の冷ややかな視線がオクトを突き刺し、紙切れの様に撃ち抜いていく。
「まぁ子は親を選べないから、オクト達がどうこうって言っても仕方ないよ、だから私達は仲良くしましょう、ってか男って本当にどうしようもないわね、神様レベルでそれなんだから、世の中のろくでもない男が増えるのも納得だわ」
それぞれの神様の話を本にしたら人気が出そうね、私自身が読みたいもん。
「そういう本とか無いの?読んでみたいな」
「ダメだよ、全部人間によって都合よく着色されて、笑っちゃうよ、真実なんてほとんど書かれてないんだから。」
まぁそうだろうね、誰もが自分の信じる神様を正当化したいもの、それは仕方ないのかな、そういうのも含めて読んでおきたいな。
夕食も終わり、私達はネロ達の食事が終わるのを会議室で待ち、楽しいお宝鑑定に入る。




