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前世は大工女子の異世界生活  作者: 森林木林森
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野営の食事は美味しくない。

 ダンゴと焚き火を挟んでの話し合いは朝日が昇るまで尽きなかった、護衛に付いてたガトーはいつの間にか他のメンバーと入れ替わっていて、朝顔を合わせたら「まだやってたのか」と呆れられた。


 私も焚き火の煤で顔が黒くなっていそうだったので濡れタオルで顔をフキフキ、野営時のことを考えて作った浄化の魔道具で全身を綺麗にした。


「いやぁ素晴らしい、気持ちがシャキッとしますな、浄化の魔道具もダンジョン産ですか、ダンジョンとは宝の山なのですな。」


 ダンゴを始め全員に浄化の魔道具を使った、ガトーは頭全体がサラサラツヤツヤになって男前に磨きがかかってる、一番喜んでいたのはガトーのパーティーメンバーの魔女っ子メルティちゃん、この魔道具欲しさにダンジョンに潜りたいと言っていた、まぁ女の子に連日の野営はキツいよね、魔女っ子ちゃんとは中々気が合ってティンダーの街に着いて一段落したらデートの約束をした。


 この世界ではランチはないらしい、朝しっかりと食べて夕方早めに夕食をとる、酒場は深夜までやっているが聞いてる雰囲気だと居酒屋よりはバーのような感じ、ガトー達はいつもギルドの食堂で飲食をしてから帰ると言っていた、どんな食べ物があるのか今から楽しみだ。


 朝食はパンと干し肉とスープだった、出汁の概念がないのだろう味は塩っぱいだけで味気ない、多分野営だから材料がないのだろう。まさか日常的にコレじゃないよね?


 ダンゴさんの計らいで私は馬車に乗せてもらった、馬車の中でも商売の話しで盛り上がった、何しろダンゴは王国でいや、この世界で初めて腕時計を販売すりのだからそりゃ気持ちも昂るだろう。


 太陽が真上を差した辺りで休憩となった、朝食をとってから4時間ほど経っていた、休憩中は馬の手入れをする者、馬車のチェックや地図の確認など分担して行っていた、小間使いの少年からお茶が入ったと言われダンゴの元に向かう、私は軽食代わりにとクッキーを10人前くらい出して並べた。


「焼き菓子ですかな?こんな高価な物いただいてよろしいので?」


 手作りだしそんなに高価じゃないと思うんだけど、隣に居た小間使いの子はじっとクッキーを見ていた、私が何枚か手に取り自分のハンカチに包んでから彼に手渡した。


「いただけません、私などがこんな高価な物を……」


 両手をフリフリして拒否された、あぁ多分主人であるダンゴの許しが必要なのね、んじゃ。


「ダンゴさん、彼はこの先ダンゴさんのお店番や仕入れをするのでしょ?ならこういった物の味や価値を知るのも修行のうちですよね?」


「ヨーコ様の仰る通りでございます、リク有難くいただきなさい、その味を覚えていればいつか役立つかも知れない、勉強しなさい。」


 ダンゴさんに言われた後クッキーを受け取ってくれた、ハンカチは綺麗にして返しますと言われたがあげると突っぱねた。


「何から何まで申し訳ございません、あの子も良い勉強になるでしょう。」


 フワッと香る甘い匂いが周辺警備していたガトーにも届いた様で、鼻をヒクヒクさせながらこっちに来た。


「おいおいなんでぇ、すげぇ甘い香りがしたから来てみりゃ焼き菓子かよ」


「今取り分けてあげるからメンバーで食べてね」


 木の箱に30枚くらい取り分けてガトーに渡した。


「なんだかお貴族様みてぇだな、メルティが喜ぶぜ、さっきまで疲れたってブーたれてたからよ、これ食えば機嫌も直るだろ。」


 早速仲間の所へ持って行くガトー、目の前では一枚手に取りゆっくりと咀嚼するダンゴ、目をつぶって何か考えている様だ。


 リク君がお茶のお替りを注いでくれた、近寄ったスキに彼のポケットに黒糖と塩で作った飴玉を紙に包んだ物をシュッと入れたらビックリしていたけどニコッと一礼して下がって行った。


「あぁ~なんか甘い物食ったら疲れが少し取れた気がするな、コレもヨーコ嬢ちゃんが作ったのか?砂糖なんて高級品だろ、良いのかみんなに配って、まぁさっきまでブーたれてたメルティの機嫌が一発で直ったからありがてぇが」


 ガトーの後ろからメルティが駆け足でやってきた。


「ヨーコォめちゃくちゃ美味しかったよぉ、私さ焼き菓子食べたのもう何年ぶりか忘れちゃった、なんか身体が喜ぶ?みたいな感じで頭の回転も早くなりそう、ありがとうヨーコご馳走様。」


 疲れた時の甘いものは疲労感を和らげる、プラス隠し味で少しだけ塩を入れてあるので塩分も補給して体が楽になったのだろう、砂糖が高級品なら代用になるもの探さないとな、工房にあれば存在はするんだろうし、手っ取り早いのは蜂蜜かな。


「ねぇメルティ王国で甘い物ってどんなのがあるの?」


「そうねぇ、もちろんお金を出せば砂糖を使った物も買えるけど高いのよ、小さなお菓子でも安い宿代くらいはするの、だから基本は果物とかかなぁ、後は蜜蟻を食べたり、でも子供が蜜蟻を食べ過ぎるとお腹に卵が残っちゃうから今ではあまり食べないわね、昔はそんな事故も結構あったし、だからと言って蜜蟻の蜜は体から取り出すと苦くなるし、甘い物は高価で貴重なの。」


「蜂蜜はないの?」


「キラービーの巣蜜か?止めとけあんな危ねぇもん、たまに命知らずがとって来るが一度キラービーに刺されたら全身が麻痺してポーションも効かねぇ、挙句にゃ体に卵産み付けられて、幼虫の餌になるのが関の山だ。」


 私達の会話にガトーが入ってきた、それなら人に無害な殺虫剤を作れば良いのに、私なら作れるはずだけど蜂蜜のために殺すのは可哀想かな、いや体に卵産み付けるような危険な害虫だからやはり死すべきなのか。


「その話しっぷりだとあの国にはあったの?」


 メルティが体を乗り出して聞いてきた、ヤバいやぶ蛇だ、なんて答えよう。


『グレイシアって大きな花があるんだけど、その花の根っこを煮詰めると砂糖っぽいのができるよ、ヨーコの腕くらいの根っこだから沢山とれるはず、腕のサイズで砂糖がヨーコの拳くらいとれるはず、今度メイにお願いしてみたら?』


 お助けマーチモンからの助言をいただきました。


「グレイシアの花ってわかる?もしこの辺にも生えてるなら教えて。」


 メルティに聞いたが首を傾げてクエスチョンマークみたいだ、メルティの代わりにガトーが応えてくれた。


「グレイシア?あぁ巨白花か、この道順だと確か……でもあれ毒花だぞ、デカくて綺麗だけどな、この先に群生地があったはずだぜ」


 グレイシアの花弁がネズミの駆除剤等に使われる為、常にギルドでは依頼がある、新人冒険者のお手軽クエストで最初のうちはそればかりやりお金を稼いで装備を揃えたら卒業らしい。


「ふーん、そうなのね」


 ちょっと含んだ返事をしたらメルティがまた身を乗り出した。


「何かあるのねあの花に!私はヨーコに全面的に協力するわ!」


「うっうん、その時はお願いね。」


 興奮するメルティを落ち着かせて少し考える、どっかのタイミングで工房籠りたい。


 ガトーのパーティーは3人でメルティと僧侶のドムって男性、ドムは昨日の顔合わせの時から少し距離が遠い気がするけどなんか見えてんのかな、まぁ直接言って来ないから気の所為だと思いたい。


 クッキーで小腹も満たされたので出発となった、商隊は全部で4人いてダンゴ、リク君、それから馬番のハナンと御者のヨリン。


 ハナンは元冒険者で、戦闘も出来るっぽい、腰には帯剣していて少しイカついが、クッキーを食べている時は目を細めて優しい顔をしていた。


 ヨリンは初老の男性で見た目はセバスチャンな感じ、どんな感じって?セバスチャンだよ、初老執事的な感じだよ。


 リク君は移動中ヨリンの隣りに座って大人しくしている、どうやら妹もダンゴの商会にいるみたいで、二人で丁稚奉公しているそうだ、妹にクッキーを分けてあげたいのか全部食べずに懐に入れているのを私は知っているぞ!だから街に着いたら妹の分をあげる約束をした。


 なんだかんだダンゴと話している間に外が薄暗くなって来た、この先にある岩場の脇で野営をするみたい、ガトーの話だと明日の昼にはグレイシアの群生地近くを通るみたいなので立ち寄ってもらうようにお願いをした。


 今日の夕食もパンと干し肉、塩っ辛いスープだった、もしかしてずっとこれなのかな、そう思ったら若干寒気がしてきた、明日もこれだったら明後日から私が作りたい、キャンプと言ったらカレーでしょ、工房には様々な香辛料があったから完全再現は無理でも似たような物は作れるはずだ。


 昨日の徹夜が効いたのかダンゴは夕食後すぐにテントに潜り込んだ、私も少し眠いし精霊達と今後の方針を決めたい、自分のテントに入ったら工房へ行こう。


『ヨーコ工房に行くの?』


「うん、そのつもり。」


『それなら1人テントに見張りをつけとくね、オクト見張ってて、誰か近づいて来たら教えてくれるかな』


『おう、任しとけ。』


「見張りなんていらないんじゃない?」


『あ~詳しい話は工房でするよ。』


 ~~~~~~~~


「ふぅやっぱり我が家って感じね、それでなんで見張り付けたの」


『多分なんだけど1人ボクらの事見えてる人が居るんだ、あののっぽの人名前は忘れちゃったけど多分見えてる感じ、試しにイタズラっぽく近寄ったら顔色変えて避けてたからね。』


『あれは見えるまでいってないわね、感じる程度よ、大丈夫私達は邪悪なものじゃないのは向こうも感じてるはず、だから声を上げないし見て見ないフリをしているのよ。』


 マーチの意見にジューンが補足してくれた、だからかドムさんと距離を感じたのは、納得した。


「でもなんで避けられてるの?」


『本来精霊付きは人族にとって神様の使徒として大切にされるんだ、彼は神様に仕える職で神様に対して絶対の信仰があるから感じられるんだろうね、もし彼がそんな風な事を話してきたら内緒だよってヨーコから伝えてあげて、彼らからしたら精霊付きの発言は神様の発言と思われるからね、素直に従ってくれるはずだよ。』


「なるほどね、話は以上?ちょっと作りたい物が何個かあるんだけど始めて良い?」


『うん、良いよ外の時間で1時間だけね、それ以上は様子見ながらにしよう。』


 まぁガトーの時計も浄化の魔道具も一度作っているからすぐ出来るし、後はもう少し軽食代わりになる物と、パンの生地とか作っておこう、野菜類もそのままは無理だけどカットすれば外に出せるし、あ~その短時間じゃカレー粉まではは無理かな、ハムとかも切ってあと培養機にも魔力通さなきゃ、次どれくらいで戻れるかわからないからなぁ、とにかく出来るものからやろう。


 作業を始めてからしばらく経って目標にしていた種類は作れている、前に仕込んだワインも良い感じで仕上がっていたのでガラス瓶に何本か移してコルクを差し込んだ。


『ヨーコ、そろそろ仮眠してくれない?顔が凄いことになってるよ?』


 マーチが心配して来てくれた、確かに少し眠い、多分ライカが用意してくれたこの体は眠気に対する耐性が強いのかもしれない、工房内なら余裕で三徹出来るし体調も悪くならない、まぁ作業に熱中したい時は眠気なんて邪魔でしかないから良いんだけど、とりあえず作りたい物は粗方出来たからシャワーを浴びて仮眠しよう。


『ヨーコお姉ちゃんそろそろ起きて~』


「今日もメイちゃんが起こしてくれたのね、ありがとうメイちゃんに起こされるとスッキリ起きれるんだよ」


『えへへ、んじゃこの中では毎回メイが起こしに来るね』


 さぁ天使に起こしてもらって眠気スッキリ、軽くストレッチしてテントに転移っと。


「あれ?明るくない?」


『今日は何事も無さそうだったからギリギリまで寝てもらったんだよ、丸一日寝てたよ。』


「本当に?そんなに疲れてたのか~ちょっと気持ちと誤差があるから修正しないとだね。」


 自分ではそんなに寝ていないと思っていたけど丸一日寝てたとか洒落にならない、更にメイちゃんに起こしてもらってそれだから起こされなかったらどうなってたんだろ、ゾッとする。


「あ、おはようございます」


 テントから出たらドムが最終夜番だったらしく一番最初に出会ってしまった。


「お、おはようございますです、お身体に異常はございません?何かございましたらすぐにお申し付け下さいませ。」


 あ~ドムの様子が異常なんだが、昨日の打ち合わせ通り今言っておくか。


「ドムさん、私はお忍びで出て来ておりますのでくれぐれも……お願いしますね。」


 そう言ってドムの手に一枚の紙を手渡した、マーチの話しだと精霊付きには信頼の証しとして護衛や近しい人に精霊語の護符を渡すらしい、今では忘れられた古い習わしのようだ、もしこれをドムが知っていて護符を額にあてる仕草をしたら敬虔な信徒の証明になり精霊の加護が付与される。


「はっこれは……ありがたき幸せ、私の信仰は貴女様と共に。」


 額にあてる仕草をして感謝した瞬間ジューンがフワッとドムの周りを一周した。


「おぉぉぉ、なんと清々しく神々しいオーラ、水の女神様に感謝を。」


 ドムは一瞬震えてから天に両手を突き出して感謝の祈りを捧げていた。


『私のお母様の信徒でしたからね、彼には生涯ずっと微精霊が付き添い助けるでしょう、でも良く知っていたわねとてもとても古い習わしだったのに、真面目な子なのね。』


 ジューンがすれ違い様に教えてくれた、ふーん今度その辺の信仰とか神様の話を教えてもらおう。


「ヨーコ様、私は今日と言う日を忘れません、子々孫々まで伝えきかせます、ヨーコ様感謝を。」


 まぁ宗教的な考えはよく分からないけど、私も事務所には神棚飾って一日の安全祈願していたもんな。


 深々と頭を下げるドムの肩に手を置いて感謝を受け取ったと意思表示をする、これが精霊付きの人の作法らしい。


 それがあってからドムが私を避けるような事はなくなった、避けてるんじゃなくて恐れ多いって事だったのかもしれない。


 朝食は相変わらずパンと干し肉とスープ、それと今日はキャベツみたいな野菜の酢漬け、ザワークラウトみたいな感じかな酸味が弱く塩っ辛い、これはアレだ発酵が失敗したやつだな、塩分補給の為なのか毎食塩っ辛い、歩いていれば汗もかくので塩分補給は重要だけど私ずっと馬車に乗ってるから。


 馬車と言えばめちゃくちゃおしりが痛い、地面のギャップがそのまま直にダメージを与えてくる、バネサスいや板サスでもいいからショックを緩衝させてくれる物を開発して欲しい、もし自分で馬車なんか持つ事があったら絶対魔改造しちゃう、現状では移動方法が地上しかないのでちょっと作りたい。


 次に作るものを色々考えながら外の景色を眺めていると視界にガトーが入ってきた。


「この先の別れ道を左に行くとグレイシアの群生地だ、ティンダーとは逆になるがちょっとした寄り道なら誤差だろ、別れ道で休憩をとるからメルティと行ってきたらどうだ?この辺は魔物もめったに出ねぇし出てもゴブリンだからメルティ1人で何とかなる、道順は教えといたからよっ」


 寄り道の許可をダンゴに取ると快諾してくれた、ダンゴ本人も興味があるんだろう、作業員としてリク君も同行する事になった、程なく休憩ポイントの別れ道に到着、ドムがついて行くと言って来たが却下、貴方はダンゴの護衛でしょ?メルティもそうなんだけど理由があって、休憩場所はちょっとした林だから火魔法を使う彼女が本気で戦ったら大惨事になるかららしい。


 この辺りまで来ると若い冒険者や商人なんかとすれ違う事が多くなった、他の商人達の装備や馬車を見比べるとダンゴは裕福な部類なんだと感じた、大体が屋根のない荷馬車で前世で例えるなら箱トラックと平ボディみたいな感じ、馬車も一頭引きがメインでダンゴの様に二頭引きはまだ見ていない、最初に出会えたのがダンゴ達で良かったんだと思う。


「よしそれじゃ、一刻半休憩にするか、グレイシアの群生地まではすぐだから用事を済ませても余るくらいだろ、気を付けてな」


 ガトー達に見送られ私達3人は歩き出す、馬車が見えなくなるくらいで私は昨日作ったオヤツを取り出した。


「はいこれ、ナッツ類を飴でコーティングしてクッキーの生地に乗せたお菓子、手で持ちやすいようにバー状にしたから歩きながらでも食べれるよ、確か名前があった気がするけど忘れちゃった」


「わぁ、まためっちゃ美味しそうなやつ、良いの?私遠慮しないよ?いただきまぁす。」


 リク君もメルティの様子を見てから一つ手にとってくれた。


「大丈夫、街に着いたら妹ちゃんの分もあげるから全部食べちゃいなさい。」


 お菓子を見て悩むリク君に声をかけてから私も一口、しっとりめのクッキーに飴でコーティングされたナッツの歯ごたえ、我ながら中々の傑作だ、一つ欠点があるとするなら喉が渇く、同じく昨日作った木製の水筒を取り出し二人に渡す。


「上の部分を回すと蓋が外れるから、蓋はカップ代わりに使ってね、閉める時は逆に回せば蓋が閉まるから」


 二人の前で実際にやってみる、保温効果はないから紅茶自体は冷めてるけど、少し常温くらいがグイッと飲めてちょうどいい。


「よく考えられてるわねぇ、コレなら中身が零れにくいのね、あぁお茶美味しい……美味しすぎない?これ、アードグリン産の茶葉みたい、香りがフワッと味わいはスッキリと……はぁぁ幸せ。」


「とても美味しいです、アードグリン産の茶葉なら匙一杯で銀貨一枚はします、あの茶葉はぬる目が一番美味しいと旦那様から聞いた事があります、ヨーコ様貴重な経験をありがとうございます。」


 アードグリン産?まぁ確かにそんな風に書かれてたけど、私的にはアールグレイに近いから気に入ってるだけで、結構高級品なんだねぇ、まぁ通貨価値がわかんないから銀貨一枚がどれ程が謎だけどね。


「ねぇ、アードグリン産の茶葉やこのお菓子を普通に食べてるヨーコってあの国の貴族のお嬢様なの?」


 普通の庶民の子供でしたが?


「メルティ様、ヨーコ様の事は詮索しないと旦那様が仰っておりました、お控えください。」


 おぉぉぉリク君が守ってくれてる!でもしっかりしてるなぁ、私がこのくらいの時は何してたかな、少なくともこんな受け答えは出来なかったはず。


「う~ケチ、リクは子供っぽくない、可愛くないっ!」


「メルティ様は子供っぽいですね。」


「へぇ言うじゃない、子供っぽいから可愛いって事ね?私を口説いてるのかしらん?うふふ」


 リク君がメルティにおちょくられて顔を赤くしてそっぽ向いた、リク君頑張れ!


「そろそろ着きそうだよ、新人冒険者がちょいちょい居るからあの丘の先かな。」


 私達は小高い丘に向かって歩き出す、新人冒険者が花弁の持ち方がどうとかこうとか話し合っていた、ってか花弁めっちゃデカい、座布団くらいありそうな大きさで真っ白な花弁、根元は少し赤みがかかっていて綺麗だ。


「うわぁ絶景ね、ガトーから群生地と聞いていたけどこれは凄いわ、白い絨毯だわ。」


 目の前に広がるのは一面真っ白な世界、遠くにちらほら冒険者が見える。


「それでこの花の花弁を集めるの?」


「ううん違う、欲しいのは地面の下だよ、根っこを使いたいの、全部は取らないで途中で必ず折って欲しい、根が残っていれば7日くらいで再生するから。」


 事前にメイちゃんから教わった根っこの取り方、こうしないと絶滅しちゃうからね。


「大体私の腕くらいの長さで3本もあれば良いから、はいこれスコップ」


 リュックからスコップを取り出し二人に手渡してから私も花弁が採取されたグレイシアの根元を掘り始めた。


「結構重労働ね、でもこの先に未知の甘味があると思えば頑張れるわ!」


 ぎこちない手つきで土を掘り返すメルティに比べ、私の動きを真似して足でスコップの先を踏み付け掘り進めるリク君、人の作業を見て学ぶ、職人っぽくて好感度が上がった。


「このくらいの長さでよろしいでしょうか?」


 リク君が一番最初に掘り終えて私に確認してきた


「うん、上出来。今ナイフで花の部分を切り落とすからちょっと待ってね」


 花弁が付いていた部分をカットして穴の中もカットした、太くて立派な根っこだ、見た感じ前世の長芋みたいな見た目だ。


「えっリクもう掘り終わったの?ちょっとこっち手伝いなさいよ!」


「手伝うならヨーコ様の方を手伝います、メルティ様頑張って下さい。」


「ふふっ私は大丈夫よメルティを助けてあげて。」


 まったくもうっといった表情でメルティの手伝いをするリク君、男の子だねぇ。


「ふう、お疲れ様、今浄化するから待ってね、はいタオル、これで汗を拭いてね。」


 真っ白いタオルを受け取った二人が固まった、埒が明かないのでまずはメルティの顔をちょんちょんとタオルで撫でる、額の汗も拭き取り浄化の魔道具を使用、はい可愛らしい魔女っ子メルティの出来上がり。


 リク君は使用済のタオルで良いと言っていたけどそれはダメ、乙女の汗が染み付いたタオルを使うのはメンズとしてNG、何を言っているのかわからない感じだったけどリク君の顔もタオルでゴシゴシ、すかさず浄化してイケショタの出来上がり。


「ヨーコその布何?凄くない?柔らかくて汗をシュッて吸い込むの、全然ゴワゴワガビガビしてなくて優しい肌触り、ダンジョンにはタオルって素材があるのね、それなら納得、ヨシッいつかあの国のダンジョンに潜ってやるわ」


 メルティが何か決意していた、まぁ素材の名前が「ダンジョンスパイダーの糸」だからダンジョンにいるのだろうけど、色んな糸でタオル作ったけどこれが一番柔らかくて吸収力が高かったんだよ。


「じゃ、一息ついたら戻りましょうか、帰りにもオヤツ出すよ、労働の対価としてね。」


 帰りに出すのはソフトクッキー生地ににドライフルーツをまぜて焼いたもの、サクッと甘さ控えめだけど色んなドライフルーツの味がして楽しいお菓子、水筒は二人にそのままあげた、手入れ方法も教えたから今後も使ってもらえるだろう。


 収穫物を手に休憩場所に戻った私達、リク君はすぐにダンゴの元へ向かい報告、その後自分の職務に戻って行った、働き者だなぁ~、対してメルティはずっと私の側を離れない、まだ何か出るのでは?と期待の眼差しを送って来るがそこはあえて無視しておいた。


「へぇこりゃ根っこだな、まぁ焼きゃぁ食えねぇ事ぁねえが美味くねぇぞ、俺が餓鬼の頃に大凶作ってのがあってよ、その時に食ってたな、今じゃ二度と口にしたくねぇけどよ」


 ガトーが嫌な思い出を口にして苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


「これが化けるのよ、今夜にでもやってみるわね」


 ガトーの顔付きは変わらないけどメルティは興味津々、そのメルティの肩から下げてる水筒にドムが興味を示し開けたり閉めたり繰り返していた。


 合流もしたので出発、予定だと明後日にはティンダーの街に到着するらしい、馬車の速度はそんなに早く感じないけど徒歩と比べたら倍以上早い、やっぱり移動用に一台必要だ。


 馬車の構造を見て改善点や学ぶべき所を頭の中で整理、羊皮紙に書き込む、揺れがあるので設計図までは作れないけど脳内では着々と作られている、あぁ工房にいたら一気に仕上げていたんだろうけど流石にアレは表に出せない、たまにチラチラとダンゴが覗き込んで来たが当たり障りのない程度にあしらった。


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