バッカスの手紙
小部屋の羊皮紙を手に取り消えそうな文字を読む。
~これを読む者へ~
私は自分の名前すら覚えていない、だから記憶にある名前を書いておく、私の名はバッカス、美の女神に召喚された勇者で、能力は「記憶創造」記憶にあるものを自分の記憶を対価にして生み出す能力。
この能力のせいで様々な物を記憶させられた、伝説の武具であったり神の道具や知識であったり、神官達は私に金銀財宝を記憶させたりと、地獄のような日々だった、紆余曲折あり美の女神の元を離れて今この場所にいる。
この空間も私が記憶から創造した、作物も同じように、神の創った創造物の記憶から出来た作物だ、これらが現実にある物と違うのは魔力ある限り絶えないということだけ、このダンジョンも神の知識を記憶し私が創った特別なダンジョン。
この能力は割とふざけた能力で、アニメや漫画、雑誌やテレビで見たり読んだ記憶すら創り出せる、だがその記憶は確実に消える、ある日、創造しているうちに自分の体重が軽くなって行く事に気付いた、記憶に重さがあるとは思えないが、思い入れが深い物を創造すると体重が数百グラム単位で減っていく。
1人でこの空間に来た時、あまりの寂しさに人間を創造しようとした、でもそれは叶わなかった、便利な道具を幾つも出すロボットも創造したがそれも無理だった、不思議なのはロボットが使用する便利な道具は創り出せたのだ、これには私も胸がときめいた、しかしそういう道具は作物と違い、1回使用すると2度と使えない事がわかり慎重になった、元の世界に帰れる道具をひたすら記憶を頼りに思い出す、空間を超える物は記憶に無く、可能性があるのは1つだけ、召喚前の時間に戻る道具だけだろう。
これからそれを創造する、上手くいっても行かなくても私はこの世に居ないだろう、何故なら既に身体が空気の様に軽いのだ、少しの風にさえ抵抗が出来ないほどに、色々創造するうちに体重が減る事を忘れていた、減った体重はどれだけ食べても飲んでも元には戻らない、どうせ死ぬのなら試してから死にたい。
これを読んだ名も知らぬ君へ、机の引き出しを開けて見て欲しい、もしも普通の引き出しだったなら私は過去に戻れたのだと思ってくれ、普通の引き出しでは無かったなら上を見上げて欲しい、もし上に私の亡骸があったら怖がらずに大地に埋めてくれ、対価としてこの空間を差し上げよう、中にある機器の説明は本棚の最上段一列がそれになる、全て1度きりかも知れないがそれなりに強烈な能力があるはずだ、きっと役に立つだろう。
元いた世界に帰りたい……娘は大きくなったろうか?パパと喋れる様になっただろうか?片親と冷やかされていないだろうか?妻は私を恨んでいるだろうか?幸せにすると約束したのに……何故私だったのだろう、私以外でも良かったのでは無いか?現世での生活に嫌気がさし、自らの命を落とす者等沢山いたはずだ、何故私だったのだ?誰か教えてくれないか?私が何をした?美の女神を初めとする関わった神々よ、私はお前達を魂が塵と化しても許さない、もしも叶うなら妻と娘に一目で良いから会いたい、帰りたい……帰りたいよあの幸せな日々に。
~バッカス~
いやバッカスさんには申し訳無いですが、机も開けないでこの場を去る選択肢は無いですか?ってそれは無理よね、彼は託したんだから、先に上見ちゃうか?怖い物や苦手な事は先にって昔から私はそうだった、はぁドキドキして来た、メイちゃん呼ぼうかな、でもトラウマになったら可哀想だし、覚悟を決めるか南無三!
意を決して私は上を見る!
「良かった、天井に張り付いた死体はないと、んじゃ次は机の引き出しを……」
「ダメっ!お姉ちゃんそこ開けちゃダメだよ、そこからは違う匂いがする、嫌な雰囲気!帰って来れなくなるかも、絶対開けちゃダメ!」
メイちゃんが慌てて私の手を掴む、その少し強い力にびっくりしたけどメイちゃんの表情に余裕が無い。
「大丈夫よ、無理やり開けようとなんてしないから、平気。」
私を掴んでいた手の力が弱くなる、机から離れると机の周りに土壁が展開された。
「お姉ちゃんが間違って開けないように したよ、絶対壊れないようにしたから、他は大丈夫だから見ても平気だよ」
メイちゃんの許しが出たので本棚の本を開く、施設整備の説明書と言っていた1番上の列を回収、後でゆっくり読ませて貰おう、他の段にある本を見ると
「懐かしい……この時代の人だったのかな、寂しかったよね、誰も知らない場所だものね、これを読んで元の世界を懐かしんでたんだろうね。」
本の中身は現代社会で活躍する忍者少年の作品、その他も全部私が小さい頃見た作品だ。
部屋の隅には楽しかった思い出の一つ黒くて四角いブラウン管テレビ、横にはビデオデッキかな、テープもある、何が写ってるんだろ、ビデオカメラまで、8mmカメラかぁ使った事ないな、間違いなく昭和の人だ、歳上の人だったのかな。
「これは昔流行ったゲーム機ね、電源なんてあったのかしら?」
それ以外には赤ちゃんの着るお包み服やおもちゃ、そして脇にある小さな箱には結婚指輪か……それらを見たらすごく複雑な気持ちになる、創り出すと忘れてしまうのに、彼は創った、目の前にある物や道具、使い方もどんな物だったのかすら忘れてしまっていただろうに、記憶よりも繋がりのあったであろう物を選んだ、私ならどうする?何もしないって選択肢が無いなら、こっちに来てからの物しか複製しないと思う、記憶はずっと大切に保管しておくかな、でも帰れるって聞いたら?やっちゃうかも……バッカスさんも悩んだに違いない。
長居したら私もなんだかおかしくなりそうだ、美の女神以外の神にもなんだか不信感が湧き上がる、こうなる事はわかっていたのでは?それをを放置していたんじゃないか?って、願わくばそこに私が今まで出会った神々がいなかった事を祈る。
これ以上部屋のものは回収しない、なんだか私の心がザワつく、最悪このエリアを封鎖する事も考えよう。
とてもイライラする、なんでだろう、胸が焼ける、気持ちが悪い、早く戻ってみんなの顔が見たい。
メイちゃんと地上に出たら日が傾いていた、ダンジョンに3時間くらい居たみたい。
私は足早にクランハウスに向かう、今ひたすらに人恋しい、メイちゃんの手をずっと握りっぱなしだ、彼女も何か感じている様子、程よい力で握り返してきてくれてる。
クランハウスに着くとネロと双子が出迎えてくれた、私は無言で彼女達を抱き締める、同じようにマーチ、オクト、ジューンにも、彼等は何があったとかは聞いてこない、それでもまだ私の胸はザワつく、その様子を見たジュライが
『ヨーコよ、シスターに心の落ち着く曲を演奏してもらうとよい、今其方の心は冷静ではない、皆もどうじゃ?』
「それがいい、あの音は心地いいからね、ヨーコに何があったか知らないけど、一度心を安らかにするのはいい事だとボクも思う。」
みんなに誘われて大地の教会に行く、中に入るとミライさんがこちらにやって来た。
「ミライさん、大人数でごめんね」
「ヨーコさん!」
ミライさんが私にハグをして来た、なんで?って思っていたら
「凄く辛いお顔をしてますよ、大丈夫です、大丈夫ですから、安心して下さい。」
「シスターミライ、お願いがある、ヨーコに心安らぐ演奏をお願い出来ないだろうか?」
「はい、今からサライが練習をする所でしたので、お掛けになってお待ちください。」
足早に奥に向かうミライさん、彼女のハグと言葉で少し楽になった。
そして始まったピアノ演奏、聞いた事のある静かな曲、本当に綺麗な音だ、自分の心が静かになって行くのが分かる。
ジューンが演奏中にハンカチを渡してきた、あぁ私泣いてるんだ、心配掛けてごめんね、涙を拭いて少し深呼吸、花の香りが身体に入って来る、とてもいい匂い。
最後の曲が終わる頃には私の感情も和らいでいた、ミライさんとサライちゃんにお礼をして教会を出た。
『どうじゃ落ち着いたじゃろ?』
「うん、ありがとうジュライ、でもよくわかったね」
『妾にも同じ様な事は何度もあったからのう、一目でわかったぞ?妾の時にもこの演奏があれば良かったのじゃが、無いもの強請りじゃな、ヨーコよ、妾達は何時でもお主の味方じゃ、1人で悩む必要なんぞ無い』
「うん」
その日はジュライの提案でお姫様プレイだった、みんなに世話をやかれ、食事もシャトーブリアンのステーキをオクトとマーチが食べさせてくれたり、お風呂ではメイちゃんとマイン、レーラが身体を隅々まで洗ってくれた、着替えだってネロがパパパッとやってくれて、寝酒にジューンのオリジナルカクテルとみんなの優しさを堪能したら、ベッドにはチャミーが程よい抱き枕サイズになっていて、私は吸い寄せられるように抱き着き眠りについた。
「長谷川洋子、完全復活っ!」
身体が軽い!気持ちが前向き!食堂に降りてみんなに復活アピール、朝食をガッツリ食べて、大地の教会へ昨日のお礼にお肉をお裾分けして、クランハウスに戻りジュライの体チェック、ついでに少し早いけどデビュタントのドレスのデザイン画の作成、夕方にはジュライの体も仕上がりそうだから予定を変更して受肉してもらおう、今日はジュライの歓迎会とネロに伝えてシャトーブリアンを出す、みんなにチヤホヤされて気分が乗ってるのがわかる、ついでにアレことコークスの試作品を作り始めた。
石炭を1000~1200度の高温で蒸し焼きするのをテレビで見た、木材を蒸し焼きにする木炭と同じ様な作り方のはず、当てずっぽうだけど、問題は蒸し焼きにする温度が足りるかなんだよね、出来るか分からないけどそれらしい物が出来ないとドワーフ達にも教えれないからな~
燃焼時間も12時間から3時間おきに24時間までやってみる、温度を上げる工夫もしなきゃ、でも燃焼させるならブロアーとかで空気送らないといけないだろうし、無酸素蒸し焼きにはならないよね?どうやってんだ?
料理の蒸し焼きは周りを草や塩で固めて、周りの温度を上げて中を蒸し焼きにするんだから、同じように……ん~粘土じゃ割れそうだし、あ!レンガは?レンガなら行けんじゃない?
その後も試行錯誤するが思っていたような物は出来ない、逆にドワーフに聞いた方がいいかもまである、火の使い方なんかには長けてるはずだし。
よしっ!偉そうな事言ったの謝って知恵を貰おう、頭下げて済まなきゃ酒でもなんでも出してやる!
と言うことでやって来ましたドワーフキャンプ、まだ仕事中だから食事係のドワーフしか居ない、でもこのドワーフ達も凄いよな、毎朝毎晩300人くらいの食事を作るんだから、基本肉を焼くか煮るかなんだけど、あと彼等じゃが芋をよく食べるのよね、パンより芋みたいな感じで、だから教会からじゃが芋をもらった時は喜んでたって言ってたし、そこら辺から教会とドワーフ達が交流し始めたとも言ってたわね。
ヴィラー神殿脇の酒も残りわずかだったので補充して、ドワーフ達のキャンプを見て回る、綺麗に整頓されたキャンプ内、意外と綺麗好きなドワーフ達、酒臭くて不潔なイメージだが、キャンプ内を見る限り全くそう見えない。
キャンプ内を抜けて錬金術師達の作業場に向かう、そこで閃いた、そうだよ錬金術で石炭を高純度炭素にすればいんじゃね?副産物を取り除いてさ別に保管して、でも蒸し焼きにする意味があるんだろうな、それ考えたら錬金術でダイヤモンドだって作れそうだけど、詳しくわかんないからやらない。
前世でもアクセサリーや宝石関係には興味が無かった、一応ピアスは空けてたけど、ピアスして飲み会行ったら職人仲間に出荷タグ?って言われてブタじゃねーよ!と笑いをとってから一切アクセサリーは着けてない、興味が無いから知識が無い、でも人の着けてるアクセサリーはちょいちょい見ていたよ?綺麗だなとか洒落てんなとかね。
錬金術師の作業場を覗くと目を背けたくなるくらい衰弱したドワーフ達が居た、なんかブツブツ独り言を言いながら錬金釜をグールグル、だからウイスキーを1人2本ずつ差し入れしたよ、明らかにオーバーワークだからね、ドワーフ錬金術師はその場で1口クイッと煽り、一発で目に活力が漲った、なんか目がキマってんだよねヤバいわ。
とりあえず職人連中が戻るまで時間があるので一旦クランハウスに戻り、さっき閃いた錬金術での擬似コークス作りをやってみる、チート錬金術で出来上がった物は3種類、炭素以外の含有物を全て取り除いて固めた物、90パーセントと80パーセントの物、それぞれ取り出した物を容器に入れて、擬似コークスをドワーフに渡してみるか。
時間が余ったので足ふみ式ミシンを数台量産、これで当初予定していた人数分プラス5台のノルマは完了、あとは工房の仕上がりを待つだけだ。
まだあと1時間はドワーフ達が帰って来ないな、ん~あ!帽子!子供達の帽子を作ってないや、せっかくワッペン作ってもらったんだから、作らないとね、せっかくだし足ふみ式ミシンを試しますか。
その後男子用、女子用の帽子が出来た、元の生地は通気性の良い物を選んだが、男子用の後頭部はメッシュ仕上げのキャップ、女子用は短い鍔の麦わら帽子風、幼稚園児が被るような物だけど、直射日光から頭を守ってくれるし、目立つから街の人の目にも付く、防犯にも一役買ってくれるだろう。
この男子用のキャップが後に成人男性の間で流行り帽子ブームが来る、きっかけは街の子供達なのだが、これは流行ると真っ先に感知した商売人が自腹を切って大量に生産し、それをとある商会に流した、キャップの名前は量産した母娘の名を取りティキャップと呼ばれ、王国中に広がったのは少し先の話。
帽子を作り終わるとちょうどいい時間になった、クランハウスに出てジュライを工房に呼ぶ、ジュライの体を培養機から出して濡れた体を拭き洋服を着せて受肉させた、シュッとジュライの身体が消えて、私も直ぐに外に出る。
「どう?身体の動きに異常はない?」
「良い感じじゃ、慣らしがてら散歩にでも行ってこよう、ジューン付き合ってもらえるか?」
「えぇ、勿論付き合うわ」
ジュライ達が散歩に行ったのでパーティーは1時間後に開始とした、ネロにドワーフの所に行くと伝えて私も出掛ける。
「監督お疲れ様、今日も問題なし?」
「おいっ!大丈夫だぞ、どうした今日は久しぶりに儂たちと飲みたくなったか?おいっ!」
「それは凄く素敵なお誘いだけど、今日は遠慮するわ、それで来た理由なんだけど、こういうの知ってる?」
私が擬似コークスを幾つか取り出し監督に見せる。
「燃える石だ……な?おいっ?ちと違うな、おいっ!鍛治係ちょっと来てくれだぞおいっ!」
鍛治係と呼ばれたドワーフが数人集まって来た、そして監督から擬似コークスを手渡された。
「燃える石じゃねーぞおい!こりゃなんだ?」
「形、匂いは燃える石だなおい! 」
「おい!燃える石より硬そうじゃ!」
ドワーフ達の観察が始まった、私は監督にネタバレしておく、そしてこれがドワーフで作れないか聞いてみる。
「おいっ!儂は鍛治があまり上手くねぇ、じゃがコイツらは根っからの鍛治屋じゃ、酒女神様が言ってる事が本当なら儂らの鍛治に変化が起きるぞおいっ!」
「私が知ってる方法は石炭、貴方達で言うと燃える石を高温で蒸し焼きにして、中にある物を分離、要するに燃える石を濃くするの、分離した物は有害な物もあるから気を付けて欲しいけど、それが出来たら従来の燃える石より高火力が見込めるわ、今回は蒸し焼きのやり方と温度が私では見極めが付かなかったから、サンプル用に錬金術で強制的に作ってみたの」
監督は錬金術師達も呼んでくれた。
「一応取り出した物質はこれ、分解して余計な物を弾いて固定させたのがあれよ、だいたいこのサイズの石から……今は不純物と呼ぶわね、不純物の量がこれくらい、多分ガスなんかも出てるから術を使う時は注意が必要よ、私としては錬金術よりもさっきの蒸し焼きする方法の方がおすすめね、施設を作ってしまえば後世に引き継げると思うし」
「おいっ!サンプルはまだあるのか?あるなら検証するから欲しいぞおいっ!」
私はヒップバッグから錬金術で作った約30キロの麻袋に入った擬似コークスを2袋出した。
「今あるのはこれだけよ、火持ちも良いはずだから足りると思うわ、まぁ足りなかったらまた言ってくれたら作るから」
鍛治係のドワーフは一切話を聞いてない、こうなると私は用済みだ、帰ってジュライの歓迎会に参加出来そうだ。
「じゃ、監督また明日ね」
「おいっ!悪かったなおいっ!」
私が帰る頃、ちょうど2人と合流出来た、ジュライのスタイルはパンツスタイルで、ちょっと綺麗寄りのかっこいいスタイル、まだ肌寒いのでタートルネックにジャケット、所謂男装だ、自分で言うのもなんだけどかっこいいと思う。
「ジュライ動いた感じはどう?」
「うむ、前にジューンの身体に入っておるからのぅ、大体理解しておる、問題ないぞ、これで妾もピアノを弾けるのだな?」
1日2日で弾けるもんじゃないぞピアノは、それこそ年単位で練習しないと指が動かないはず、まぁその辺も考慮して気持ち指はみんなより長いけどね。
「ピアノはちゃんとレッスン受けた方がいいわよ、クランハウスでも練習出来るように会議室にピアノ置いちゃおっか?」
「それは良いな!ジューンよ妾が覚えたら其方にも教えてやろう、良い学びになるぞ?レッスンか、暫くは模倣スキルで感覚を覚えようと思っていたが、確かに基本を知らぬ者にあの高みは望めぬだろう、わかったぞ、明日にでも弟子入りしてこようではないか。」
弟子入りって、まぁその尊大な喋り方から気をつけないとね、学ぶ側なんだから。
「わかったわ、明日一緒に行って頼んであげる、ピアノも1週間くらいで作ってあげるから、その前に会議室に防音の魔法陣仕込まないとね、夜中弾いていても気にならないようにしなきゃ。」
ジュライのこの熱量だと夜中まで絶対弾く、間違いないし本人もそれを悪いと思わなそうだし。
クランハウスに着くと隣からメルティが飛び出して来た。
「ヨーコ~お腹空いた~」
「貴女いつもどうしてたの?」
「パンとハムとチーズとコンソメスープの繰り返し~メイドさんが来るまで辛抱しようと思ったけどムリ~」
メルティの事だから毎日食事に来るかと思ってたけど、彼女なりに遠慮して我慢していたのね。
「ガトー達は?どうしてるの?」
「ガトーっちもドムっちも自分で作れるから~最初の取り決めでメイドさん来るまでは自分の食事は自分でって……」
「わかったわ、ガトー達も食事まだならウチに来なさいよ、今日は新しい仲間の歓迎会だから、彼女はジュライ、ジューンの」
「姉よ、よろしくねメルティちゃん。」
即答でジューンが姉と言い放つ、妹じゃないのか!確かに本体はジュライだったっぽいもんな。
「うわぁまた美人さんだ、しかも髪の毛がおっしゃれ~あ!私メルティです!よろしくですジュライさん」
「うむ、ジュライじゃ、ヨーコとジューンの友人ならば妾とも友人じゃ、気兼ねなく接してくれるか?」
「は、はいっ!」
だから喋り方~でもメルティも気にして無さそうだからいっか。
メルティはガトー達を呼びにクランハウスに向かって走って行った。
「ついでだし明日と言わずに今日弟子入り出来るように教会の2人も呼びましょうか!」
「うむ、それでは妾達が呼んでこよう、ジューン行くぞ」
「ジュライ、弟子入りするのならば言葉遣いを選ばないと、相手に失礼になりますよ?」
気になってた事ジューンが言ってくれたよ、流石だね。
「大丈夫じゃろ、あの娘達はそんな狭量では無いわ、まぁ弟子入り出来たら考えようではないか」
「んもう、いつも貴女はそう言って~嫌われても知らないですよ?」
仲良いなぁ、まぁずっと一緒だったから当然か、いつもはしっかり者のジューンがなんか可愛らしいぞ?新しい発見だ。
「嬢ちゃん!すまねぇメルティが無理言っちまって、俺たちまで良いのか?」
「何言ってんのよ、良いに決まってるでしょ?遠慮しないで入って、ネロ~お料理追加ね~私も手伝うから~」
私達の出迎えの為中で様子を見ていたネロに声を掛けると、一礼してキッチンに向かって行った、メルティとドムさんも来たから中に案内をして、後を追うようにミライさんとサライちゃんもやって来た、さぁ!宴の開始よ!
「おぉ~思っていたより中はシンプルなんだね、ウチはガトーっちがクランシンボルなんてデザインしたからそれを旗にしてここに付ける予定だよ」
「クランシンボルかぁ、良いじゃないかっこいいわ!ウチも作ろっかシンボル。」
「ならば妾がデザインしてやろう、昔は軍旗等も妾がデザインしたのじゃ、任せるが良い。」
ジュライがテーブルの先でそんな事を言ったから
「軍属だったんか!ジューンの姉さんは、エリートだな!」
「ジュライ、今は平和なんですからそんな昔の話しをしたらダメですよ、皆さんが驚くでしょ」
ジュライの暴走を止めれるのはジューンだけだよ
「ふふっ、そうだね、大分古い話だね、確かにジュライの軍旗を見たらみんな震え上がったからね」
「マーチ、お主らも掲げておったでは無いか」
ん~多分ガトー達なら気にしなくて大丈夫、すぐにジューンがジュライの近くに行ったし。
「ヨーコさんお招きありがとうございます」
「ミライさん、そんな丁寧にしなくて平気よ、気楽にね、私昨日本当に助かったんだから、今日はね、私達の新しい仲間が合流してね、そのお祝いなのよ、沢山食べて飲ん……お酒大丈夫?」
「大丈夫ですよヨーコお姉さん、こっちに来て覚えましたので、適量なら私達も問題無いです。」
こっちの世界の成人って13だもんね、周りが飲んでりゃ必然的に飲むようになるよね。
「じゃぁ果実酒にしようか、苺、メロン、杏、桃、ライチってあるけど、私のおすすめはライチかな、香りが良いのよ、少し甘いし飲みやすいよ?ソーダ割りならジュース感覚だから、飲み過ぎは注意だけどね」
「じゃぁそれをお願いします、お姉ちゃんは?」
「じゃぁ私はメロンを、先日頂いたメロンとても甘くて美味しかったんです、2人で感動してました」
メロンソーダみたいだな、アイスクリーム乗せてあげたいけどアイス食っちゃったし、ネロが作ってたら別だけど。
2人にお酒を薄めて出してあげた、2人共1口飲んで好印象だったっぽい、メルティも今は果実酒に行ってる、杏サワーか私もやろうかなそれ。
今はガトー達を引き離したから大丈夫だけど、ジュライの発言が怖いわ、さっきチラッと「この時代の酒は美味い」とか言ってジューンに叱られてたし、ちょっとその辺も気をつけないと、でも楽しそうにしてくれてるからいっか、なんか言われたら酔ったからで通そう。
「ねぇねぇ、ジュライの髪の色って前にやってくれたお化粧みたいなやつ?」
「お化粧では無いけど、色を入れてるのよ、でも長い髪の毛だとすぐにダメージが入るからああやって短くしてるのよ」
デマかせです、正直髪色の染料は作れそうなんだけど、色を定着させるにはまだまだ時間は掛かりそう、髪の毛のダメージもそうだし、仕上げるには錬金術になるのかな~
「そうなんだ~なんかオシャレよね~外側は落ち着いた色なのに、ふとした時に見える内側の色が明るくてハッとしちゃう、ヨーコが開発出来たら私にもして欲しいかも」
「その時は実験台になってもらうわ、因みに何色にしたいの?」
「赤!ほら私って火魔法の使い手でしょ?赤髪にしたらピッタリじゃない?」
安直すぎんじゃね?火魔法使いが赤髪ってアニメじゃんよ。
「ん~じゃなんか赤い花とかで探してみるよ」
「なんか反応がイマイチだから、ジュライさんみたいに内側だけで良いや」
いやレベル上がったから、ジュライは設定でそう出来たけどさ。
「却下で、部分カラーとか難しいんだから、それなら全体にしてよ」
ブーブー言うメルティを放置して、ジュライの弟子入りを聞いてみよう。
「ねぇミライさん、ウチの仲間にピアノ教えて欲しいんだけど、勿論レッスン料は支払うよ?」
「えぇ構いませんよ、サライも1人で弾くよりは良いと思いますし、ねぇサライ」
「ふぁい!おれぇしゃんりまはへる」
ベロンベロンじゃねーか!サライちゃん大丈夫かよ!
「あらあら、飲みやすかったから飲み過ぎちゃったみたいね、もうお酒はやめなさい、ヨーコさんすみません。」
「ふふ、大丈夫よ、ちゃんと帰りは送ってあげるから心配しないで」
この様子だと明日からは無理かなぁ
「レッスンは明日からでよろしかったですか?」
「えっ?大丈夫?サライちゃんこんな感じだよ?」
「基本で良ければ私も教えれますから、気にしなくても平気ですよ」
私はジュライを呼んで2人に自分からも頼むように伝える。
「ミライさん、サライさん、いつも演奏を楽しく聞いていた、貴女達のレッスンを真剣にやっていたら、私もいつかサライ嬢の様になれるだろうか?」
ちょっと、いつもと話し方が違うじゃないの!あ?良いのか!
「はい、勿論です、まだまだ私達も未熟ですが一緒に成長出来たらと思います、どうぞよろしくお願いします。」
ジュライもやれば出来るじゃない!
「ヨーコよ、妾もやれば出来るのだぞ?見直したかぇ?」
「そうね、2人にはさっきの方が好印象よ、明日から頑張ってね。」
ミライさんとの話し合いで、レッスンの時間は10時~12時までの2時間と決まった、レッスン料は1時間銀貨4枚に設定、これをベースにしておけばレッスン料だけでも生活出来るようになるだろう。
そう言えばチャミーどこ行った?
私がキョロキョロしているとネロの肩に止まっているのが見えた、なるほど、ネロに食べ物取り分けてもらってたのか、偉いよ、ちゃんと気を使ってくれてる、流石神鳥だね。
楽しかった宴会もそろそろお開きかな、ドムさんはいつの間にかダウンしてるし、メルティもへべれけだ、まぁガトーがしっかりしてるから平気だろうけど、ウチもオクト以外はみんな酔ってる、珍しいなオクトが潰れてないなんて、あれ?ドムさん潰れたんじゃなくてリバーシやってたのか!オクトと、さっきのは負けて悔しがってたんだね!ドムさんが最弱か~頭良さげなのに、考えすぎかもね、オクトは感覚で指すタイプだから惑わされちゃうんだろうね。
教会の2人を私とジュライが送り、戸締りチェックをしておいた、今は冒険者も結構入って来てるからね、聖域でも油断大敵だからさ、勿論2人に何かあれば何時でも行ける状態にはなってるけどね、メルティもガトーがおんぶして連れて帰って行った、傍から見たらガトーがパパだよ本当に、そしてドムさんは泣きの1回をしていた、今の戦況はややドムさん有利かな、マインとレーラはずっと世話役していたから、後でお小遣いでもあげよう、好きな物買うと良い。
昨日からチャミーが私の寝室で寝るようになった、私のベットの半分くらいの大きさになってくれて、その柔らかい身体を触らせてくれる、ふわふわの羽根に顔を埋めて、幸せな気分で私は眠りについた。




