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前世は大工女子の異世界生活  作者: 森林木林森
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クランハウスに入居。

「さて、ジュライの体を作ろう、本人に希望が無ければ私が勝手にやるけど。」


『ふむ、ならば任せよう、他の者の身体はヨーコの案であろ?であれば問題ない。』


「よっしゃ任された!綺麗な体にしてあげる」


 ジュライのベースはジューンのと一緒だけど手足を気持ち長くしよう、お胸はワンカップ下げて、お尻も気持ち小さく、顔はジューンに似せたちょいキツめ、髪色と髪型は色々考えたけど当初の予定通りに、ジュライには流行や新しいスタイルを生み出してもらいたい、だから少し奇抜だけど上品でアーティスティックな感じに仕上げよう。


 錬金術で仕上がった体を見るジュライ、どうかな?


「どう?」


『ヨーコは人の美醜に対して造詣も深いようだ、ジューンと同じではつまらんなと思っていたが、所々似せてはいるがこちらの方が個性がある、うむ美しいぞ気に入った。』


「そう、良かったわ、この後は内臓系を仕上げるんだけど、やっぱり生殖機能は無い方がいいかな。」


『何故じゃ?あれば妾の子もヨーコの子らに仕えさせる事が出来るぞ?』


 いや、貴族じゃないんだから、そんな親子揃って仕えなくてもいいし、ホムンクルスに遺伝子があるのか分からないから出産しても、全く似てない別生物が産まれたりしたらそれこそホラーだよ。


「それは大丈夫だから気にしないで、でも行為は出来るから、みんなもそういう風に作ってるし、ただ身内ではやめてよ?動物園じゃないんだから。」


『ふむ、妾も昔は暇つぶしで人族や魔族を誘っては快楽を貪ったものだ、子が作れぬのはちと寂しいが、仕方あるまい』


 ジュライの話しっぷりだとジューン・カタストロフには子供がいたのかな、そう言えばカタストロフダンジョンはこの世界の創世時代からあるって言ってたっけ、なら世界の何処かに彼女の子孫が居るのかも、その辺も含めてこの世界の歴史とかも勉強しないといけないな。


 マーチにもいるのかな子孫、メルギル帝国が続いてるって事はマーチの血族はいるんだよね?会ってみたいな~


 培養機にジュライの体を寝かせて、次はアクア様の像を彫りますか。


 神の像と言ったらやっぱりこれだ、ユグドラシルの枝、ピアノにも大活躍だったこの素材を使って作ろう。


「アクア様、いらっしゃいませんか?」


『はーい、こちらにおりますよ、姿を見せても平気?』


「はい、大丈夫です、お願いします。」


 先日現れた時にはしっかりと見ていなかったが、女神と言う存在は総じてみんな美しいようだ、ジェネシスちゃんも幼いながら将来美人になるだろうと想像出来る美少女だったし、前世の私が幼少期に見たらハンカチを噛み切る程妬んだに違いない。


 アクア様は見た目で水の女神を想像するのは難しい普通の姿、シンプルな白いドレスに身を包み、何故か水瓶を両手に抱えている、神具と呼ばれる類いなんだろうか、神眼先生で見てもアンノウンと出る、実在する物質では無いようだ。


 神像はメジャーな神様であればあるほど創作する事はしない、見たまんまのデフォルトを彫る、アース様はその姿を見たものがほとんど居ないと言っていたから創作したけど、アクア様は国1つが信仰するメジャーな女神、言い伝えと像の姿が掛け離れていたらおかしいからさ。


 デッサンを描くように見ては彫り、見ては彫りを繰り返す、色も鮮やかなブルーの髪色、透き通るような肌の色、白のドレスと単純色だったので早く終わった。


「なんかイメージと違う、その水瓶かな、アクア様、出来上がったんですがどうでしょう、確かに見た目だけなら再現出来ましたが、なんというか……もう一体彫ってもよろしいでしょうか?」


『ヨーコに任せます、因みにどの辺が引っかかるのかしら?私には大変良く出来ているようにしか見えないのだけれども。』


 う~ん、言葉では難しいな、だからジェスチャーでアクア様に伝えると


『こんなポーズかしら?』


「それです!でもちょっと待って下さい、今イメージがあるうちにドレスもデザインしますので!」


 私がイメージしたデザインはアース様同様のマーメイドタイプ、スリットは入れずに裾をフレアにしてボリュームを出し、見た目を魚の尾ひれの様に、上半身には少し大きい胸を綺麗に見せるためデコルテとお胸の北半球を露出させて、薄いブルーのレースで出来たストールが水の動きを演出、ライカの時からデザイン画を見せると、女神様が勝手に変身してくれるからそれを利用して新たな神の像を彫る。


「こちらにお着替え出来ますでしょうか?」


『まぁ素敵、少し待ってね……どうかしら?』


 パーフェクト!ストールが良い!まさに天女の羽衣みたいだ!


「それで先程のポーズをお願い出来ますでしょうか?」


『こうかしら?』


 そのポーズを目に焼き付け彫りまくる、これはあくまでも創作になるから時折手を加え、更に内部にギミックを作り魔法陣を組み込んだ、台座と一体型にして細工を施す、思いの外大作になってしまった。


「ふぅ、出来上がりました。」


『うふふっ、なんだか照れくさいわね、とても綺麗、まるで動き出しそうね。』


「はい、動きます、あ、本体は動かないんですが、内部に水の魔石を仕込んでありますので水瓶から水が出るようになっております、一定数の水が減ると魔石が水を生成、台座に流れた水は浄化されてから、像の内部に循環し水瓶から流れます、水瓶から出る水には僅かですが毒の回復、体力回復等の効果があるようになっております、祈りに対して反応する魔法陣なのでアクア様を信仰し祈らないとその効果は現れません」


 デフォルト姿でそれを作っても、なんか町娘が生活排水を捨ててる様にしか想像出来なくてさ~口には出せないけど。


『こっちにしましょう、水の魔石には私が力を与えて枯れる事の無いようにするわ、良いじゃないヨーコ、これはものすごく良い物よ!でもせっかく作ってもらったこちらはどうしようかしら……』


「それでしたら、アクア様のお力が及びにくい水資源の乏しい土地に神殿を作り、そこにこの像を祀りアクア様のお力が行きやすくするのはいかがでしょうか?」


『名案ね!確かにこの世界の中にはそういった土地があるわ、これだけ強い依り代があれば私の力で水が生まれる、良いじゃないの、そうしましょう!』


 アクア様像を祀って水が豊富になれば勝手に人々は信仰をする様になる、アクア様の信徒を増やす結果にもなるからね。


「では、この像はエマールから使者の方が来るまでこちらに保管しておきますね。」


『えぇ、そうしてくださ……でも早く見せたいわ~私が持って行っちゃおうかしら、でも干渉しすぎかも知れないわね……チラッ』


 何故私を見る……まさかやっぱり運べと?別に良いけど、行った先で「何だ貴様ら」とかトラブルにならない様に神託でしっかり伝えて欲しい。


「大丈夫ですよ、チャミーにお願いして一飛です、でもまだライカやジェネシスちゃんのも作るので、その後になりますかね、そうですね~早くて外の時間で2日後とかでどうでしょうか?」


『ありがとう~感謝するわ、何か困った事があったら言ってちょうだい、力になるわ!』


 アクア様は満足して消えた、んじゃ次の人どうぞ~


「ライカ~ジェネシスちゃん~どっちか居る?」


『天玉星の風騒ぐ 新たな時代に誘われて女神ライカ!カレーと登場!』


 天玉星ってなんだよ、立ち食い蕎麦のメニューか?カレーと登場って事はセットメニューって事だな、どっからそのネタ……まさか


「ねぇライカ、アンタさ私の前世の記憶覗いたりしてない?それ私の好きな美少女戦士の登場文句に似てるんだよね、なんか蕎麦屋のカレーセットが混ざってるのは意味不明だけどさ、なんなの?ちゃんと説明しないとシバくよ?」


『ヨーコの事沢山知りたくて、ちゃんとお母さんにお尻叩かれてるのとかは早送りしたよ!やっぱりそういうのは恥ずかしいもんね!』


「ほう、遺書にはなんて書く?代筆してあげるから遠慮なく言ってごらん?」


『さーせんしたっ!』


 スポーツ少年の謝罪かよっ!ちゃんと謝れや!


「アンタのはとりあえず最後ね、ドレスは約束だから作るよ、恥ずかしいくらいスッケスケで布足りねぇやつ、身体目当ての男神が寄って来るようなクッソエロいやつにしてあげるから絶っ対に着ていけよ?良かったね、これで乙女が卒業出来るわよ。」


『ひぃぃぃ!違うのヨーコのマブダチとして全て知っておきたくて、あとヨーコ振った男にはちょっと天罰をあげといたわ!ニヒッ』


「バカ、私は納得して男と別れてんだ、何余計な事まで……はぁ、価値観が違うから仕方ないか、悪気はないんでしょ?」


『うん、神に誓って一切無いよ!』


 いやお前が神だろ、自分に誓うんか?まぁ良いやジェネシスちゃんを先にやって癒されよう。


「ジェネシスちゃんは?」


『今お勉強中よ、ヨーコの記憶を見てる、教材がないから仕方ないよね?』


「仕方なくねぇだろ!悪影響盛りだくさんだよっ!あの子に大人の階段登って見た景色に嫌気が差して折り返させたいのか!?」


『ヨーコの言ってる意味が難しくてわかんないよ?』


 こいつ本当に分かってないな、はぁ~知らないよ?どうなっても……。


 ライカのドレスはさっきの発言とは裏腹にとてもスマートな仕上がりにした、スリムラインにレースで首から胸元を装飾、ムカつく巨乳をアピールしすぎないように露出を控えめにした、その代わり背中は腰の少し上までVの字に切り込みをいれパックリと、前を控えめにした分、背中でセクシーアピール、女神だからムダ毛処理とかは不要だろうけど、色はワインレッドで情熱的なイメージを演出した、アクセサリーはパールのネックレスとプラチナチェーンのアンクレット、アンクレットには、処女のイメージの百合の花をぶら下げる。


「どう?着替えてみて?」


『うわっ!初めての色、燃えるような赤ね、でも背中がちょっと……出し過ぎな』


「何言ってんの、凄くセクシーよ?私が男なら抱いてるわ!」


『そう?そうね、胸はレースで透けて見せるのも良いわ、丸見えだとみんな真っ先に見てくるからちょっと恥ずかしくて。』


 姿見の前でクルクル回って自分の姿を確認している、こうやってると女神と言うよりは普通の女の子よね。


 ライカが自分チェックしてる間にジェネシスちゃんのデザイン画を描こう、フリッフリにしちゃうか、でも音楽と芸術だから音符とかをアクセサリーにしてベレー帽とかに付けようかな、ドレスは可愛らしくチュニックワンピとかにして、チュニックとベレー帽が中々合うわね、正統派なドレスも無きゃアレかな、小さいからAラインとかをベースにして、シンプルな白いドレス、スカートの裾と肩周りにフリル入れて幼さを入れとこう。


「ライカ~ジェネシスちゃん呼んできてよ、私アクア様にお使い頼まれてるからあんまり時間無いんだ~」


『わかった、ちょっと待ってて。』


 しばらく待つ間に食事でもしとくか、食事は簡単にパンにチーズとハムを挟んだサンドイッチ、サラダを添えて出来上がり。


 明日からリトルティンダーを拠点にして活動。明後日にはチャミーと一緒にエマールへアクア様像を配達、下着工房の視察に、闘技場の進捗、その後ジュライの体が出来上がるから合流、ミライさんとサライちゃん達に紹介、ジュライの城もじっくり見たいわ、パッと見しか出来なかったもん。


 食事をしながら妄想にふけっていると


『お待たせ~』

『左手が疼いてしまって遅くなりました。』


「待って、ちょっと待って、なんで疼いてるのかしら?」


『ママがやってました、「フッ今宵も我の左手が」って壁に向かって』


 きぃやぁぁぁぁ!止めて!私は工房の床をゴロゴロとのたうち回った。


『あと、「私の魔眼が!」って目を抑えて痛がってました、魔眼って痛いんですか。』


 今が1番痛ぇっす、物理より痛いっす!


『それと「闇の福音書」って物を沢山書いてました、せっかく書いたのに地面に埋めてました。』


 今は私が埋まりたいです、穴があったら入りたいです!


「はぁはぁ、危なかった、意識を失うところだったわ、ジェネシスちゃん、それは私が病にかかった時の記憶ね、その記憶は早く消した方がいいわ、じゃないと貴女までかかる可能性があるから、良い?ママの言う事守ってね。」


『はいっ!分かりました、その時に聞いたアニソン?とかも忘れないとダメですか?』


「それは別に良いよ、中々ポップな歌あったもんね、うん平気よ」


 アニソンの中でも色々聞いていたのは中高生時代だから、そこまで変な曲は無かったはず。


『ママの歌も大丈夫ですか?』

「忘れなさい、あれは歌じゃないの呪文よ、だから忘れた方が良い。」


 多分カラオケの事だろう、中学生くらいの時って、みんなでカラオケ行くのが安くて長い時間遊べて良かった、歌うのは嫌いじゃないけどオンチだったんだよ私。


「とりあえずあまり参考にしない方が良いわ、それよりも、ドレスと普段使いの2種類考えたんだけど、着替えてみない?」


『はーい!どっちにしようかなぁ~』


 危なかった、HPがゴリゴリ削られて行くってこの事なのね。


「両方可愛かったわね、もし嫌じゃなかったら普段はその帽子の服を着て、パーティーにお出かけする時はこっちを着ると良いと思うわ。」


『はいっ!そうします、ありがとうママ~』


 ライカ達が消えて私は工房から出た。


『随分とかかったのだな、様子を見に行こうかと思ったぞ』


「ジュライ、待ってたの?なんかあった?」


『何も無いが?ただ待っていただけだ、なんというか、人を待つと言うのは久しぶりだったからな、何をして良いのか分からなかったのだ、休むのであろう、妾はこの街を散策してみるとしよう。』


 ジュライ心配してくれたのかな、確かに結構な時間ぶっ通しだったから、そう考えたら眠くなってきた。


 深夜誰かが部屋に入って来た、メイちゃんかな?と思って目を開けるとジューンだった。


「ごめんなさい、起こしちゃったかしら?」


「大丈夫よ、どうしたの?」


「一緒に寝ましょ」


「あ?えっ?ジューンが?うん、別に良いよ、どうぞ」


 ジューンが一緒に寝ようと言ってきたからベッドに誘った。


「ヨーコ、ありがとう、ちゃんとお礼が言えて無かったから、ごめんなさいね、疲れてるところ」


「いーよ、私もジューンがあのまま居なくなったら、悲しくてずっと泣いてたと思うし、今はとても安心してる。」


 実際誰か1人でも居なくなったら大号泣すると思う、しかも今回は何も言わないで居なくなったから尚更ね。


「ふふ、なんだか人を愛おしいと思うなんて思わなかった、まだ私がジュライと一緒の時の彼女は、自分の部屋に人を呼んでは愛していて、男も女も関係なく、私にはそれが理解出来なくてね、すぐに自分の前から消えてしまう人間に、どうしてそれほど愛情を注げるのか、でもヨーコと一緒に色々しているうちに段々分かってきたの、忘れたくないから、忘れて欲しくないからって、短いと感じてるのは私達だけで、人族にしたらとても大切な日々だって、そう感じたら想いが止まらなくなってね、でも私にはジュライが居る、いつ目覚めるか分からない彼女に怯えていたの、だからマーチ達とヨーコの絆が深くなったのを感じた時嫉妬してしまったわ、そしてジュライが目覚めた時、私はもうヨーコとは居れないって、でもヨーコはそれを許してくれなかった、更にはジュライにまで配慮してくれて、あの時どれほど嬉しかったか、全てを受け入れてもらえたって感じたか。」


「ジューンは私のお姉ちゃんだからね、ジュライだってそう、私の中じゃお姉ちゃんがもう1人増えたって感じ、私には隠さないでいい、思った事を話せばいい、賛成するか反対するかはその時によるけど、大半は賛成なんだから、私はみんなを否定しない、この世界全てが敵になっても私はみんなを信じてる、ジューンが気にするほどヤワじゃないよ私は。」


 その後もジューンと話しをしていた、ジュライも戻って来て合流、2人の昔話を聞いてあーだこーだとガールズトーク、そのうちジュライの、いやジューン・カタストロフの子孫の話になった、ジューンは生涯で50人程の子供を産んだらしく、人との間には15人の子供がいた、その時代は魔族に対しての偏見や差別が少なく、成長した子供達は世界各地に別れた、魔族との子供は北の大地に居を構え静かに暮らしていたそうだ、子供達とは使い魔を通して頻繁に会話しており、寂しさは感じなかったとも言っていた。


「じゃぁ今も何処かにジューン・カタストロフの血脈が残ってる可能性があるんだ、いつか会ってみたいね」


『そうじゃな、妾の、妾達の子供らが幸せである事を願いたい。』


「あら、ヨーコは眠っちゃったみたいね、本当に不思議な子、遂には神の母になるんだから、本人にその意識は全然無いみたいだけど。」


 いつの間にか眠ってしまった私、目覚めたら目の前にメロンがごろんと横たわって、違うジューンの胸だった、柔らかそうなその場所に飛び込みたいのをグッと我慢して起き上がる。


 ジューンはそのまま寝かせておいてリビングに降りる、オクトとマーチが朝からリバーシをしていた、ジュライも興味深くその戦いを見守る。


『オクトよ、そこは悪手じゃぞ?』


「うっ!」


「ジュライの言う通り、はい角頂き、これで形勢逆転だね、前半は良く出来てたのに、まだまだだね。」


 キッチンにはメイちゃんが居てネロと朝食を食べていた、ネロが慌てて食事を用意しようとしたので、気にしなくて良いと言って自分でお茶を淹れた。


 お茶を飲みながら外を見ると双子と一緒に新しくペットになったチャミーが庭にいる、植木の世話と馬の世話は双子の仕事、邪魔しちゃダメだよ?


 ペットと言えば、私自身モフモフは苦手、毛は抜けるしたまに臭いし、糞尿はお構い無しだし、私達より大分早く死ぬ、友人が飼っていた犬が死んじゃった時は私も一緒に泣いた、その時の……あぁ、そうか、ジューンが言ってたのはこの事か、あの時の喪失感は今でも記憶に残っている、友人の家に遊びに行くと必ずタタタタッと私の足元に来ては匂いを嗅いで自分の定位置に座る、その行為が無くなっただけで寂しくなった、彼女達からしたら私も一緒だね、でもちゃんと記憶にはあるし多分ずっと忘れない。


 確かイブって名前のシーズーだったな、歩き方が気取ってて、他人に抱っこされんのを嫌がって、可愛くない犬だった、でも飼い主を信頼しきってるあの瞳、真っ直ぐでキラキラしていたっけ。


 その点チャミーは可愛い、素直だし臭くないし羽根はフワフワだし、何より長生き、私より先に居なくならない、私はあの喪失感を味わいたくない、わがままだけど死ぬ時も1人は嫌、最期までみんなに見守ってもらいたい、残された人の気持ち?そういう経験はなくないけど、そのくらいのわがままは許して欲しい、そんなわがまま言えるのはみんなにだけなんだから。


 さてみんなはリトルティンダーに向かう準備を始めた、今日はクランハウスの家具の設置と、到着した冒険者パーティーとの顔合わせ、私は後から転移陣で現地に向かう。


「ネロ達は私と一緒に行きましょう、私は下着工房の様子を見てから行くから、ネロ達は市場で食材を購入してくれる?」


「はい、かしこまりました。」


「チャミーはどうする?先に行く?」


「先に行くなり、あの教会で音を聞いてるなりよ~」


 チャミーも1度演奏を聞いて気に入った様子。


「気をつけてね」


「おう、じゃ出発!」


 オクト達を見送り私は予定していた下着工房の下見に向かう、工房が仕上がったら足踏み式ミシンを一先ず人数分プラス5台入れて反応を見たい。


 工房に到着するとドワーフ達が5人で作業をしていた、今回のリフォームに掛かる費用は金貨17枚程度、安くないか心配したがリフォーム内容から見ての判断らしい、ガラス等の高価な素材を私が提供したのも大きい。


「どう?順調?」


 ドワーフの1人に声を掛けて進捗を聞く。


「おう、順調だ、貴女が噂のヨーコか?ちょっと質問がある」


 ドワーフ独特の喋り口調じゃないから私はびっくりしたが、興味本位で聞くと彼はヴィラー様像の騒ぎの時に他から来たドワーフだった。


「この曲がりの部分なんだがこの加工で良いのか?」


「大丈夫、上に子供達が待機するスペースを作る予定だから過剰に強度をあげただけ、それをするとこっちと渡りが出来るから力が分散するのよ。」


「なるほど、それじゃこの垂木は?」


 と、こんな感じで説明を繰り返す、本人も納得してくれたのか何度も頷いて腕を組んでいた、予定では完成は10日後、やはり木材が足りないらしい。


 さて目的は果たしたから屋敷に帰ってリトルティンダーに転移するか。


 屋敷にはネロ達も戻っていて、準備万端だったのですぐに転移した。


 転移陣には行き先の転移陣の番号を書き込む場所があり、そこに番号を書き込む、転移完了すると番号が消える仕様。


 転移したのはクランハウスの地下室、ワインの樽を置けるように棚も設置住み、1階に出ると吹き抜けの玄関フロア、右手には2階へ上がる階段があり、その下を抜けるとお風呂とトイレ、左手はキッチンに食堂、正面奥には会議室と応接室、会議室を広めに取っているので応接室は若干狭い。


 2階へ上がると10帖の部屋が8、他のクランハウスは6帖の12部屋、ウチはそこまで大人数にはならないと想定しての数、通路の端にはトイレを2個室、他の建物よりもトイレが少ないのは、私達の排泄回数が少ないから、その分部屋を少し広く出来た。


 3階はバストイレ、ミニキッチン付きの6部屋、既に部屋割りは決まっていて、私、ジューン、ジュライ、マーチ、オクト、メイちゃんだ、ネロ達は2階の部屋で十分だと言われたのでこの配置、双子は今まで2人部屋だったがこちらでは個室になった。


 部屋の家具やベッドの搬入は既に終わっていて、全部屋統一、後は個人で弄ってくれるだろう、私は教会側の部屋にした、反対側にはジュライ、隣にはメイちゃん、反対側がジューンとなっている、部屋の広さは10帖だがバストイレ、ミニキッチンがあるので仕方ない、多分トイレとミニキッチンは殆ど使わないだろう。


 クランハウスの庭にはタナカサン達の馬房も作った、ここと隣は他よりもスペースを広くとったのでオマケ程度のオプションだ。


 裏庭にウッドデッキがありキッチンと食堂から出入りが可能、パーティーなんかはここでやれば大人数でも平気、表側にはキッチン直通のテラスがあり、天気の良い日にはお茶くらい出来るし、教会からのピアノ演奏も聞こえるだろう。


 ここは仕切りが垣根にしてあるが、他はコンクリートで仕切っている、他と違ってセキュリティが心配だけど、そこは私の魔法陣があるので害意のある侵入者はビリビリして終わりだ。


 教会とガトーの所に引っ越しのご挨拶、教会にはバッカスシリーズの果実の盛り合わせに、それを使ったネロ特製のフルーツタルト、ティンダーで購入したお茶の葉を持って行く。


「こんにちは~引っ越しの挨拶に来ましたよ~」


「ヨーコさん、いらっしゃいませ~」


 ミライさんの声が大分明るくなった、顔つきも少し丸くなり健康的な感じ、サライちゃんも奥から出てきて挨拶をする。


「これ、美味しいから食べて、ウチのメイドさんの自信作、あとフルーツ盛り合わせと紅茶の茶葉、隣だから何時でも遊びに来てね!」


「はい、ありがとうございます、それと昨日の夜、アース様からお言葉をいただきました、音楽と芸術の女神様がこちらを護って下さるようです、私達にも加護を授けて下さるとか、ありがたいことです、加護をいただいたおかげか、今朝の演奏はいつも以上に素晴らしいものでした、サライも新しい作曲に意欲を燃やしております。」


「それは良かったわね!2人ともこれから良い方向に進めそうね、それが1番だわ」


 その後、演奏の練習は20時までにするとか言っていたけど、私達に気を使わないでって言っておいた。


 教会からガトーの所へご挨拶に向かうとメルティが出迎えてくれた。


「ヨーコいらっしゃい!クランハウスって良いね!なんだが楽しくなって来ちゃったよ、家具も今から来るし、頑張ってダンジョン攻略しなきゃって思う。」


「メルティ張り切ってるわね、はいコレ引っ越しのご挨拶、ネロ特製のフルーツタルトに赤と白ワインのボトル、みんなで飲んでね。」


 メルティ達も住み込みのメイドさんを2人雇った、5日後には到着する予定らしい、クランハウスを空にするのはセキュリティ上良くないからね、それとディレイさんの加入が確定したそうだ、今の仕事があと10日程で終わるのでそのタイミングで加入する予定、それでも50階層以降の攻略は厳しいので新加入を募集するようだ、ポジションは前衛2人、ランクはC以上で男女問わないがメルティからしたら女性が欲しいと本音を漏らしていた。


 今回のクエスト完了でガトー達灰色の剣はBランクにアップした、今までCランクではあったが実力はAランクに届かないくらい、Bランクでも上位とグランドマスターも太鼓判を押していた、人数が増えて機能し始めたらすぐにAランクも夢じゃないらしい。


 Aランクの冒険者は王国は勿論、この世界でも10人居るかくらいで、ガトーは単独ならAランカーと聞いている、本人にその気が無いのでランクアップ試験を受けていなかったが、ダンジョンが発見されて、攻略パーティーとして名前が上がったので、次回のランクアップ試験を受けると言っているそうだ。


 そんな話しをしていたらガトー達が戻って来た、私の知らない冒険者達も一緒だ、私は人見知り?なので、ガトーに後でまた顔を出すと言って自分のクランハウスに戻って来た。


「ヨーコおかえり、ガトー達んとこ行ってたのか?」


「うん、オクト達も顔合わせ終わったんでしょ?」


「おぉ、ガトーが気ぃ使ってくれて新しい冒険者達の案内役を買ってくれた、第一印象としては実力はそこそこあるんじゃねーかな?一癖も二癖もありそうな連中だったぜ、悪さするタイプじゃ無さそうだがあえて近寄る必要もねぇかな?って感じだ。」


 まぁ冒険者ってそんな感じだろうさ、自分がナンバーワンなんだから、ウチにちょっかい出さない限りは当たり障りの無い対応が1番だろうね。


 この後は闘技場の視察とガトーにエマール行きの報告かな、闘技場の視察は明後日にしよう、今うろちょろしたら知らない冒険者に色々聞かれそうだし。


 チャミーにはアクア様の像をエマールまで運ぶ事は伝えてある、神の願いと言う事もあり即了承。


「ガトー、終わった?」


「おぉ嬢ちゃん、なんか貰っちまったみてぇだな、あんがとよ!んでどうした?」


「あ、そうそう、ちょっと用事で明日エマールに行く事になってね、一応ガトーの故郷って聞いてたからさ、教えとこうかと思ってね。」


 ガトーがびっくりしていたので訳を聞いてみると、ティンダーからエマールまで馬車で2ヶ月くらい掛かるそうだ、途中山越えがあるので馬車も麓までしか使えないと言っていた。


「大丈夫、空を飛んで行くから平気」


「なんだ?ワイバーン便でも手配したのか?」


 ワイバーン便とは卵から孵したワイバーンを、調教して移動手段として使うらしい。


 ワイバーンとは似ても似つかぬチャミーで行くと言ったら今度は固まった、獣人にとってガルーダは信仰対象の一つの様で恐れ多いんだと。


 ガトーも最近は慣れた様で、それ以上は何も聞いてこなかった、冒険者の目もあるので明け方出発すると伝えておいた、ガトーもその方がいいと賛成してくれた。


 ガトーからエマールでの注意点を聞いてからクランハウスに戻ると、何故かみんながトランプで真剣勝負していた、訳を聞くと明日の同行者を巡っての争いだったようだ、結果マーチとジューンに決まる、全員で行こうと誘ったけど、ギルドの依頼で、ダンジョンに新しく来た冒険者達を案内するよう頼まれたから無理だと言われたよ。







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