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前世は大工女子の異世界生活  作者: 森林木林森
31/49

パイオニアになってください。

 ピアノが完成した後、私は工房を出てリビングに居る、現在時刻は朝の5時、ネロは既に起きていてキッチンで朝食の準備をしている。


「ヨーコ様、眠気覚ましの効果のあるハーブティーです」


「ありがとうネロ。」


 ネロの淹れてくれたハーブティーをコクリと1口、双子はタナカサン達の所に行って朝食や馬房の掃除中、この後2頭を貸馬屋に連れて行き運動をさせるのが日課だ。


 今日は下着の打ち合わせでメルティの実家に行く予定がある、下着の上から着るキャミソールなんかも作ろうかと思っていたけど、今は夢を叶えた達成感に浸りたくて作るのを止めた。


「お母さん、私やったよ、自宅の建築に次ぐ私の夢を叶えたよ、願わくばお母さんに弾いて貰いたかったけど、それは来世まで取っておくね。」


「ヨーコ様、朝食の準備が整いました、こちらで食されますか?」


「ん~ん、食堂に行くよ」


 ネロにオニオングラタンスープをリクエスト、今朝の朝食はスープにゆで卵とサラダで軽めに済ませる、スープが身体の隅々に染み渡る、久しぶりのまともな料理、人の手が入った食事はとても美味しい。


「ご馳走さまでした、とっても美味しかったわ、ありがとうネロ。」


 朝食の最後にネロが昨日市場で買って来たオレンジを出してくれた、身体が震えるくらい甘酸っぱいオレンジは私の身体に活力をくれた。


「今日のみんなの予定とか聞いてる?」


「はい、オクト様とマーチ様はダンゴサンショク商会に行き、ダンジョン探索の準備をすると仰っておりました、ジューン様とメイ様は私と市場に買い物に向かいます、マインとレーラは屋敷で庭の手入れを致します。」


 早くもダンジョン行くのかな、連れて行ってもらおうかな。


「ドワーフのお酒は何時もの所に置いておくから、空樽の分だけ渡すように2人には言っておいてね、じゃないとドワーフ達全部持って行っちゃうからさ」


「かしこまりました。」


 さて、少し早いけど子供達の様子も見たいし出ようかな。


「じゃぁ後はよろしくね、行ってきます。」


 玄関で頭を下げて見送ってくれるネロ、そんなにしなくていいのにって言ったら「我が主を見送るのは使命です」と言って頑なに拒んだからやらせてる。


 市場に行くと子供達が荷降ろしやら仕込みやらを手伝っている、その労働に金銭が発生しているのか?気になって話を聞いたら、どうやら僅かだが払っているそうだ、子供達はそれを拒否したが、大人達はそれを認めず支払っているらしい。


 子供達は労働を通して社会を学んでいる、だから急に大人びて見えたんだね、女の子達の自信に溢れたあの笑顔も、仕込みや料理を覚えて、自分たちの未来のビジョンが見えたからかも知れない。


「私の子供の頃とは大違い、まぁ住んでた世界が違ったからだけど、早く大人になりたいって気持ちが強くて、自分は大人アピールする割に、都合が悪くなると子供になるのよね、あの頃の私をこの子達には見せれないわ。」


 私が市場を抜ける頃には、子供達も着替えてスライムの仕事に向かって行った。


 現在時刻は午前8時、少し早いけどお邪魔しちゃうか。


 マルティさんの店の前には既に何人かの女性が集まっていて、笑いながら話をしていた。


 年齢層は幅広く10代の女の子から50歳くらいの女性まで、とても仲が良さそうに見える、タイミング良くマルティさんも店から出てきたので挨拶をする。


「おはようございます、マルティさん、ちょっと早かったですが来ちゃいました。」


「あら~ヨーコさんいらっしゃい、今日は頼んじゃって悪かったわね、みんな、彼女が例の発案者で開発者、今日はしっかり教わりましょうね」


  集まってくれた人数はマルティさんを含めて10人、みんな私を珍しい生き物を見るかの様な視線で見てくる。


「ヨーコさんでいいのかい?アナタもしかしたら噂の怒髪天の乙女じゃないかい?」


「わぁ!もしそうなら私たちの憧れね!子供達を食い物にしようとする輩をちぎっては投げて懲らしめる、かっこいいわぁ」


 やめてっ!その渾名何とかしてっ!


「サインくださいっ!」


 1番若い子がそんな事を言ってきたけど、サインなんて書いた事ないし、手形でもいい?って誰が相撲取りじゃいっ!


「あははっ、恥ずかしいからやめてください、今日は下着の説明に来たんですから、そういうのはまた今度、皆さんだってこの先、世の中の女性達に賞賛されると思いますよ?下着が世に広まれば皆さんはパイオニアですから。」


 パイオニアと聞いたら、わぁっと声があがった、絶対感謝されるわ、間違いなく。


「少し早いけど全員居るから始めちゃいましょうか、奥の作業場が1番広いからそこでやりましょう。」


 マルティさんの案内で奥に向かう、始めて来る友達の家って緊張するよね、なんか新鮮でドキドキする。


「それでは改めまして、私は長谷川洋子と申します、皆さんよろしくお願いします。」


 私の自己紹介の後、端から一人一人自己紹介をされた、用意して来た道具と資料、見本を各自に渡して説明会が始まった。


 ハッキリ言って凄まじい戦いだった、疑問に思った事を直ぐに質問して来る、まるで躾前のドワーフの様、説明後に質問を受けると伝えたが、オバサン連中はその場で理解しないと次に進めないと言って抵抗、仕方ないから私が妥協したよ、失敗だったけどね。


 的を得た質問から意味不明の質問まで、声が掠れるんじゃないかと思うくらい喋った、それでも理解していたのは5、6人あとの人はまだ理解出来て居ないようだ。


「こうなったら実際に見てもらいましょう、マルティさん、脱いでください。」


「ふぁっ?私が脱ぐんですか?」


「はい、この集まりの提案者ですから、体型も全然崩れていないし、私から見ても綺麗ですよマルティさんは、ですが1番理解が不足しているようなので体験した方が自分の為にもなります。」


 もうさ、私の目が血走ってたんだと思う、オバチャン達の質問に全部答えていたら、説明が3歩進んで4歩下がるんだよ、下がってっちゃうんだよわかる?だから進む為にも早く脱ぎなさい。


 渋々脱ぎ始めたマルティ、あ、ちゃんと下着つけてる、こりゃ説明しやすいや、まぁ案の定、ただ着けているだけで、私はブラの着け方をレクチャーする、寄せてあげて背中の方の肉すら使って谷間を作って、ほらみんなも興味深々、マルティさんは谷間に満足しマネキン状態本当に母娘だわ、見せながらどこを締め付け保護するのか、マルティさんに質問を挟み進めていく、その甲斐あって全員の理解が一気に進んだ。


「少し休憩にしませんか?私お菓子持って来たので、頭を使ったので甘い物でも食べて栄養補給しましょう。」


 私はネロが作ってくれたドライフルーツたっぷりのパウンドケーキと、果物のジャムを真ん中に乗せたクッキーを大量に出した。


「持ち帰り用もあるので、今ここのは全部食べちゃいましょうね!」


 オバサン連中早いわぁ、さっさと自分の皿に乗せて待機してる、でも流石ね、すぐに食べないで周りの様子見てる。


「お茶の葉もせっかくなんで上質なの用意しました、今淹れますから」


 紅茶の香りが作業場に広がる、甘い菓子の匂いと混ざりヨダレが出そうになる。


「食べましょうか、マナーとかいらないのでお好きな様に食べましょう」


 まぁ女性はいくつになっても甘い物が好きだ、もちろん私も酒の次に好き、ネロのパウンドケーキは甘さ控えめで少しブランデーが入っている、しっとり食感にドライフルーツの甘み、鼻を抜ける酒の匂い、私が大好きな味だ。


 1番若い子は目がキラッキラになりながら食べている、可愛いなぁ~でもこの子がお針子さんの中で実力が1番あるって言ってたな、その実力の一部で良いからメルティに分けてあげてくれ、せめて布が糸にならない程度に……。


 その後、ダンジョン街にいた時に作った足ふみ式のミシンを見せて実践した、みんなは驚きの声をあげ自分たちにも欲しいと言ったので、先行投資を兼ねて、仕事道具として無料で貸し出す約束をした。


「でも自宅に置いたらスペース取るわねぇ」


 そんな一言が聞こえたので提案する。


「なら下着工房でも作りますか、どっか条件の合う空き店舗でもあれば良いですけど、費用は私が出しますよ?この前ギルドの依頼でお金が入ったので、家賃もこの先一年は私が持ちます、皆さんには1つでも多く下着を作ってもらい、広めて貰いたいので、販売利益の中で分配して家賃が払えるようになるまで面倒見ます、その代わり一人でも多くの女性に下着が定着する様、頑張って貰いますけどね。」


 この提案に女性達は歓声をあげる、お針子さん達は、自宅の小さなスペースを使って仕事をしていた為、肩身が狭かったと言っていた、けど自宅で作業するメリットもあるので我慢していたんだそうだ。


「でもウチは子供が小さいからねぇ」


 それは考えていましたよ!


「なら子供が居れるスペースを作りましょう、皆さんが安心してお仕事に専念出来るように、子供達の世話役を雇い入れて、皆さんがお仕事を終えたら子供を連れて自宅に帰る、勿論お金は掛かりますが、負担のないような金額を報酬から引く形にしたらどうですか?」


 託児所付きの職場は前世でもよく見かけた、作業場が子供達から見えれば安心するだろうし、そんな子供達を見れば自分にもやる気が出る、何よりその間は育児を気にせず仕事に集中出来るからね。


「それは素晴らしい提案ね、でもヨーコさんに負担が掛かるんじゃないかい?」


「あ~本当は私がやりたいんですよ?下着作りとか色々、今は冒険者活動をしてそれなりに稼げています、冒険者を引退してから事業をするのは負担になるので、今から引退後の場所として投資をしておこう、そういう下心もあるんですよ」


「そういう事かい!なるほどね、ヨーコさんは私たちに職場と仕事を与え、自分は引退後の生活基盤を作ると、ならしっかりやってあげるから先行投資の方よろしく頼むね!」


 1番年上のお針子さんが空気を読んで察してくれた、こういう所は年の功よね、その後はお針子さんの仕切り役を決め、商品販売に関しては、マルティさんが婦人会を通して広げて行く事になった、空き店舗も比較的広くて、使い勝手の良さそうな物件が同じ商店街にあるらしい、これが終わったらマルティさんが案内してくれるそうだ。


 下着関係も話が進み昼頃に解散となった、帰り際みんなにお菓子の持ち帰りを手渡し、マルティさんの案内で空き店舗を見に行く。


「ここよ、以前は錬金術師の店だったんだけど、その人が捕まっちゃってね、中は広いし外装以外は好きに弄って良いみたいだから、工房にするには持ってこいでしょ?」


 捕まった錬金術師……なんだか思い当たる節があるけど、中を弄って良いのは好都合だ、私がやっても良いけど、ドワーフにやらせた方が先々でメンテナンスなんかも任せれるし安心だ。


「中は見れますか?」


「今日中は難しいかも知れないわ、一応領主様の没収物件ですから、申請してから早くて3日かしらね。」


「あ、なら大丈夫です、ちょっと待ってくださいね」


 私はヒップバックからタブレットとイヤホンを取り出しコールする。


「エリックだ、ヨーコか、まさか帰って来るなり何か問題でも起こしたのか!」


 まだ一っ言も喋って無いのですが……。


「エリック、私を歩く厄災とか思ってない?問題なんて起こしてないわよまだ、それよりお願いがあるんだけど、今大丈夫?」


「ヨーコのお願いとは少し不安だが、それよりも今、問題は起こしてない「まだ」と言っていなかったか?」


「聞き間違いじゃない?それは置いといて、今市場近くの商店街に居るんだけど、なんか捕まった錬金術師の工房が領主扱いで中を見れないんだって、どうにかなりませんか?」


 聞き間違いだよ、何言ってんのさ。


「ヨーコ、それはお願いではなく命令ではないか?まぁヨーコには借りがあるからそのくらいどうとでもしよう、その工房が欲しいならくれてやるから好きに使え、急ぎなら爺を向かわせるが?」


「えっ?くれんの?本当に?やったぁぁ!もう大好きエリック、ありがとう、執爺は大変だから大丈夫、貰えるならドア壊して入るから平気!」


「そんな破壊神の様なお前に好きと言われても寿命が縮まるだけだ、勘弁してくれ、ところでそこを何に使う?」


 一応エリックに内容を話して、この件に関しては了承を得た。


「くれぐれも大きな問題は起こすなよ?小さな問題であれば目は瞑れるが頼むぞ?」


「はーい分かりました、物件の譲渡書とかは後でくれるの?」


「あぁ、準備が出来次第ヨーコの屋敷に届けさせよう。」


「ありがとう、じゃあまたね~」


 エリックとの会話が終わりマルティを見ると、なんか変な顔をして心配そうに私を見ている。


「あれ?どうしま……あ!これ離れている人と話が出来る魔道具で、今話していたのは領主様です、んでこの物件、なんか流れで貰っちゃいました。」


 ポカーンとしているマルティ、とりあえず中が見たいので脇の入り口ドアをピッキング。


 中に入るとかなり広くて良さげだ、奥は居住スペースか、休憩所や託児所を作るには問題ないな、2階もあるのか、どれ、あ~2階と言うよりは屋根裏部屋か、この部屋はボツだな、とっぱらって断熱して中2階のロフトにした方が勝手が良さそうね。


 何となくイメージが出来てきたぞ、やっぱ託児所の場所はロフトにしよう、奥には素材の在庫部屋と商品の在庫部屋、休憩所兼食堂、シャワー室も作るか、室内温度も調整出来るようにして、足ふみ式ミシンはこのスペースなら40は行ける、働きたい女性は積極雇用して、技術を身につけてもらおう。


 働き方はフルタイムとパートタイムにして、基本時給に出来高かな、完全出来高制だと最初キッついもんな、最初の3ヶ月は研修にするのも有りか、人数の制限なんかも考えないといけないな。


「マルティさん、下着上下セットをどれくらいの価格で販売する予定ですか?」


「現段階のコストを考えると大銀貨1枚以上になるわね、生産数が多くなれば下げて行くけど、それでも銀貨5~6枚は欲しいわ。」


 日本円で5、6000円か、ちと商品の質に対して価格が先行し過ぎるな、私の感じだと銀貨3~4枚かな、この価格帯を目標にして既製品を生産販売、材質やデザインにこだわったオーダーメイドを割高にする、貴族には洒落た下着はステータス!みたいに浸透させれば良いかもね。


「マルティさん、生地の仕入れとかは大丈夫なんですか?」


「生地は大体が西の流通品ね、この辺りには糸を出す魔物や虫が居ないから、その時の状況で仕入れ金額が上下しちゃうの。」


 蚕みたいなんが居るのかな、工房の糸で肌触りが良いのは大体〇〇スパイダーとかだもんな、ん~この先ネックになりそうなのは仕入れの問題か……。


「ありがとうございます、とりあえず下着用の生地に関してはマルティさんにお願いしても平気ですか?」


「えぇ、平気です、ただ無駄を無くしたいので、あらかじめ仕入れの生地は限定したいのよね~不良在庫は抱えたくないし。」


 下着用だから勿論肌触りは重要、後は生地の丈夫さ、まぁそこは錬金術でも強化は出来そうだけど、私基準に考えたらダメだからその辺も考えないと。


「ここに金貨30枚あります、ここが稼働するまでしばらく掛かりますので、マルティさんには肌触りの良い生地集めをお願いします、お針子さん達とも話して、どの生地が下着に適しているか判断して欲しいんです、メインの生地は最低6種類は欲しいですね、貴族向けの高級モデルとか作るなら更に10種類は欲しいです、可能ですか?」


「えぇ、種類を揃えるのは可能ね、王都にも生地を扱う店はあるので、ただ量を揃えるのは状況次第になるから、何か考えないと不味いでしょうね。」


 ダンジョン街の木材と同じか、でも今はどんな生地があるのか知るのが先だ、そこでこの先の事業目標や方向性が決まるのだから。


「加工が可能ならなんでも構いません、魔物の革でもなんでも、割高でも種類を揃えるのが先決です。」


「わかったわ!頑張ってみる!」


「はいっ!頑張ってください!」


 とりあえず工房を急ピッチで完成させないと、今2時か……屋敷に戻って図面描いてドワーフに渡して教会に行くか。


「やる事が出来ました、生地集めの方お願いします!」


 マルティに生地を頼んで足早に店舗を出て、真っ先に屋敷に向かう、双子が出迎えてくれたので、何となく2人をハグする、なんだか2人とも照れて可愛かった、ちょっとした癒しを貰った私は工房に飛び込んだ。


「さっきのイメージが1番良いと思う、同じ視界に子供が見えたら本人以外も集中出来ないかも、ロフトに託児所を作ってガラスで外の母親が見えるように、ロフトにはミニキッチンや洗い場、トイレも必要ね、洋式にアタッチメントつけて小さな子供でも座れる様にして、それも無理な小さな子供はオマルを作ろう」


 地上からロフトの高さは2メートル50あれば平気かな、ロフトへは階段を作ってと、奥の休憩所、食堂、後は在庫室を広めに2部屋作って、シャワー室はマストね、汚れた身体や手で下着は作って欲しくないし、トイレも個室を4つくらいで足りるかな、動線はフラットにして、こんなもんかな、ちょっと狭いかな?いや、大丈夫でしょ!


 出来上がった図面を確認、ドワーフ達なら足りない所は補ってくれるはず、すぐに工房を出て、双子に職人街に行く事を伝えて屋敷を出る。


 今2時40分、ドワーフにさっさと図面を渡し、工事の場所を説明し特急案件と言って、ラガーと火酒を10樽ずつ出し渡すと、数人のドワーフにもっとくれとせがまれたので、いつも通り暴力で黙らせる、早く工事が終わったら火酒をまた出すと約束して職人街を出て来た。


「教会に今から行って迷惑じゃないかな~3時半か、そろそろ夕食とか準備を始める時間よね?とりあえず覗いて見て判断するか。」


 そう思いながら教会を覗き込むと、ちびっ子に見つかった、その後ろにいたシスターにも見つかり、マザーが小走りでやって来た、転ぶなよ~


「マザーごめんなさい、ちょっと遅かったかしら、夕食の準備とかあるだろうから、もし都合が悪いならまた来るよ?」


「大丈夫ですヨーコ様、私は料理するなと言われてますから、それよりもお話ししたい事が沢山ございます、どうぞこちらへ。」


 マザーに案内されて宿舎の1階に通された、マザーに料理するなと言うことは、もしかしてメシマズ女子か?


「早速ですが、実は教会の噂を聞いて、王都から大神官様が来られる話がございました、領主様の機転によって王様より教会本部に圧力が掛かり、その話は無くなりました。」


「良かったわね、面倒でしょ?この行列とか見たらマザーに代表を代わって?とか言って来そうじゃない?私はマザーが居るからあのライカ像を彫って任せたんだから、下手したらライカ様の怒りが炸裂しそうね」


 ライカ分かってんだろうな?聞こえてんなら対処しろよ?


「それは頼もしい限りですね、しかもその大神官様は他国の方でして、ライカ様の像を自分の国に持ち帰るとまで言っていたのです。」


「そんな馬鹿な話通るわけないじゃない、だから王様が教会に圧力を掛けたんでしょ?一体どこの国のボンクラなの?」


「聖皇国でございます、あの国は信仰の始まりは美の女神様からと言って、他の女神さまの信仰を認めておりません、全く理解が出来なくて困っておりました。」


 本っ当にろくでなしの国だな、まぁろくでもない女神を祀り信仰してんだから似た者同士が集まるよね、この教会にも大地の教会みたいに結界張ろうかな。


「明日からは領主様の命令で、街の衛兵様が来てくださいますので、ただあの国の教会がその気になれば強行手段も有り得ますので……。」


「よしっ!わかったよ、教会の敷地に入れないように結界を張っちゃおう、子供達にも外に出る時には必ず制服を着るように徹底させて、必ずね!」


 私はマザーを連れて聖結界の魔法陣を組む、敷地が広いのでその数10、これで害意や悪意のある人間は立ち入れないはず。


「やはりヨーコ様はライカ様の使徒なのですね、このような大掛かりな術式初めて拝見致しました。」


「使徒じゃないよ、マブダチだよ?ふふふっ」


 マザーがポカーンとしているが、何となくマザーの後ろで、ライカが親指立ててサムズアップしてる姿が見えた。


「平気だから安心してちょうだい、大丈夫、みんなは()()()が護ってくれるから。」


 女神を呼び捨てにした私を驚いた表情で見るマザー、私は教会内に入ってライカに祈りを捧げた。


『任せてマブダチッ!』


 喋んな馬鹿ライカ、その声はマザーにまで聞こえたようで、腰を抜かして倒れてしまった。


「マザー、大丈夫みたいね、聞こえたでしょ?」


「はっ、はいいいっ!ライカ様の明るくハツラツとしたお声が!ありがたき幸せ、この身はライカ様と共に……。」


 マザーが祈りを捧げて居るよ、全く聖皇国にも一度行ってみようかな、その歪んだ価値観をぶち壊してやりたいわ!


 マザー達と別れ、中々にヘビーな一日が終わった、屋敷に戻ると全員集合していて、夕食となった。


「明日ダンジョン街行くけどヨーコも行くか?」


「うん、行く!」


「んじゃ、屋敷空になっから敷地に結界張っとく、中に入れないようにしとっから」


 へぇーオクトそんな事出来るんだ。


「な~に自分がやるみたいな雰囲気で言ってるの?私かマーチしか出来ないんだから」


「それでしたらジューン様、私がやりますのでご安心ください。」


 ネロがシャキンとしながらジューンに言ってアピールしている


「そうね、確かにネロなら私達の結界より強力ね、出しゃばってごめんなさいね。」


 ジューンにポンと背中を叩かれたネロ、拳を握ってやる気満々だ。


「ってか馬車改造しないとね、今御者席に乗ってもマックスで8人ギリギリでしょ?」


「あ~それは大丈夫だ、オレとジューンとネロは馬借りて来たから、明日俺達は馬でいく、馬車はマーチが御者すっから大丈夫だろ?」


 それならピッタリか、私が行く事前提で準備してくれたんだね、ありがたい。


「あ!でも私ダンジョン入らないよ?」


「大丈夫ですよ、明日はネロ達のレベリングが目的ですから、3人の武器防具も準備して来ましたから、ちなみにネロには私がタンクを仕込みます、メイがマインとレーラを教えると張り切ってますから、オクトとマーチは補佐です。」


 ちょっと男性陣の扱いが可哀想だけど、元からこんな感じなのよねうちの面々、武器買ったのかな、私が用意したのに。


「武器とか私用意してあげたのに、大丈夫なの?」


「最初っからこんな武器使ったら感覚が麻痺すっからだ、どんな魔物でもサクサク切れて、ベコベコ凹ませる武器使ったら戦い方覚えねぇだろ?」


 あぁなるほど、確かにそれもそうか。


「んじゃ必要なレベルに行ったら私に作らせてね、貴女達の身を守る物なんだから、えっぐいの作ってあげる!」


 マーチが呆れ顔してる、でも当たり前でしょ?仲間の身体を守るんだから、頑丈にするのは当たり前!


「それから肉屋さんもお願いね!在庫が少なくなって来たから。」


 自分で行っても良いけど行ってくれんならありがたい。


「お姉ちゃん!メイはジューンと先にお風呂入って来る~、お姉ちゃんはネロ達と今日は入るんだよ~」


「うん、急にどうした?メイちゃん」


「メイお姉ちゃんだから、ネロのお姉ちゃんだから、マインとレーラはネロの妹だから、ネロのお姉ちゃんである、メイの妹だから、可愛い妹のために大好きなお姉ちゃんを今日だけ貸してあげるの!」


 おっおん……要するに先輩後輩みたいなかんじか?メイちゃんがネロのお姉ちゃん?ん~まぁそういうお年頃なのかな?まぁ誰と入っても一緒だから良いけどさ、それなら……


「お姉ちゃん特権発動します!みんなで入ろう!みんなで髪の毛洗ったり背中流したり、楽しいよ~」


 メイちゃんがピクッって動いた、ちょっと興味があるようだ、もう一押しか


「みんなでお風呂入れるの楽しみだったのになぁ~メイちゃんは入ってくれないのか~ざんねんだなぁ~」


 メイちゃんがワナワナしながらジューンを見上げる、仕掛け人はジューンか?


「ジューン、お姉ちゃんが一緒に入りたいって、楽しみだったんだって、メイはネロのお姉ちゃんだから、我慢しなきゃダメ?」


 ダメ?の所で首をコテッと倒してジューンを見上げる、ジューンもやられた~って顔してメイちゃんからの視線を外す。


「わかったわ、みんなで一緒に入りましょう、ヨーコにやられたわ。」


 その後みんなでキャッキャウフフしたよ、ジューンは双子の髪の毛洗ったり、2人に洗ってもらったり、意外と楽しんでた、多分ジューンはゆっくり入りたかったんだろう、双子がジューンにベッタリだ、ネロも私の髪の毛洗ってくれたり、メイちゃんの背中を流したり、我が家の裸の付き合いは、ごちゃごちゃしながらも楽しい時間だった。


 明日はダンジョン街リトルティンダー、ネロ達がダンジョンで怪我しない事を祈るよ。



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