第一現地人?
工房内へ戻った私達は早速ジューンとメイちゃんのホムンクルスに取り掛かった、まずジューンのイメージはスタイル抜群で包容力のある大人のお姉様、自分が姉だったので妹キャラになってみたかった、思春期の時はちょっとウザくて妹と距離を置いていた未熟者の私と違いジューンは甘やかしてくれそうだ。
錬金釜で体を作るのは変わらないが男子の二人には退室をお願いした、出来たての体は裸だしボンキュッボンでかなり官能的な体つきになっているからね、ジューン本人は見られても別に?って雰囲気だったけどさ、その様子を見たらなんか前世で有名な姉妹を思い出したよ「見られても恥ずかしくない身体ですから、自宅では裸なんです。」って話してた気がする。あの姉妹もしかしたら元は精霊だったかな?
女子二人の培養ケースは別に部屋を用意してそこに置いた、マーチとオクトにも覗いちゃダメと釘を刺す、さぁ次はメイちゃんに取り掛かる、彼女の体は私より少し身長を低くして、同じ髪色でボブ、スリムで私より全体的に色々小さくした、何を小さくって?色々だよ色々。
出来上がった体を見てはしゃぐメイちゃん「お姉ちゃんと似てるね」だってさ!いちいち可愛いよねぇ、だからちゃんとジューンが長女、私が次女、メイちゃんが末っ子って教えたよ、次女って良いね、妹にもなれるし姉にもなれる、実際の次女っ子さん達は私に分からない苦労や愚痴もありそうだけど私は平気、自ら望んだ事だからね。
ジューンとメイちゃんには工房内で約1年掛かる事を伝えた、待ちきれない様子のメイちゃんと対照的に落ち着いて頷くジューン、いい関係になれそうだ。
作業が終わりシャワーを浴びて真シルクのパジャマに着替えた、夕食の時はジューンからひたすら質問されてちょっとビックリしたがどうやらジューンもメイちゃんも食べるという行為に興味があるようだ、メイちゃんは最初に言ってたしね、ホムンクルスのエネルギーは大気中の魔力からも摂取できるが、食べ物からでも大丈夫と神眼先生には書いてあった。
この世界の食物や生物は魔力を保有している、精霊達は大気中の魔力を取り込み自身のエネルギーとして活動している、あとジューンが姿を見せた時私の周りをウロウロしていたのは、私から発せられる魔力がジューンにとって相性の良い魔力だったので心地良かったらしい。
『はいはい、ヨーコは寝なきゃダメでしょ、ちょっと油断してるとひと月くらい平気で作業しちゃうから、時間になったら起こすから早く寝なよ』
「うん、わかったよみんなおやすみ~」
確かに作業し始めると寝る間も食事も忘れて作業しちゃう悪い癖、没頭してると食事だってジャーキーとパンとチーズ、それに水飲んどきゃ平気でしょみたいな感じだし、切りさえすればサラダになるのにそれすらせずにほうれん草みたいな草をそのまま齧るとか、どこのポパイだよってレベルだ。
「みんなそれぞれ食べる事や触れる事を楽しみにしてるんだからズボラワイルドは止めなきゃだね、ジューンもメイちゃんも調理に興味あるみたいだったし、3人でキャッキャしながら料理も楽しそうね。」
そんな事を考えているうちにいつの間にか眠っていた。
『ヨーコ、時間だぜ起きてくれ。』
今日は珍しくオクトが起こしに来てくれた、どうやらマーチはこれから進む道に危険がないか調べに行ってるらしい、いつも通り顔を洗って装備品を身につけた、それから忘れちゃいけない魔物除けを付与したアクセサリーを身に着けて工房を出た。
外に出ると辺りは真っ暗で星がとても綺麗に見えた、自家製懐中電灯に照らされた所だけが見える、ちょっと孤独な感じがするけど嫌いじゃない、夜にしか見れない景色、昼とは全く違う神秘的な世界。
『お待たせ、ちょっと邪魔な魔物を弾いてた、方向を間違えないようにボクが先導するね、ちゃんとついてきて。』
マーチが帰って来た、言われた通り後に続いて歩き出す、夜の草原は自分の足音しか聞こえない、遠くの方で動物の鳴く声が聞こえるけど基本静かだ、見上げる空には満天の星、見上げていると視界の端で一筋の光、流れ星だ!
流れている間に願い事3回言えば叶うってロマンチックな迷信もあったなぁ、子供の頃は一生懸命探してさ、流れ星だと思ったら飛行機で「妹が出来ますように」って3回お願い言えたって父さんに自慢したら1年くらい過ぎて綺星が生まれたんだ、子供の頃は妹の名前と自分の名前を交換してって大泣きして両親を困らせたっけ、懐かしくて恥ずかしい思い出、今では自分の名前の方が好き。
『止まって!何か来る、多分人族だ、ヨーコその光を消して、最悪その場しのぎかもしれないけど工房に入り込んでくれる?危険と判断したらボクらが何とかするから。』
「マーチ?何をそんなに慌ててるの?人なら問題ないでしょ、魔物でも私それなりに鍛えてるし大丈夫よ、それより人なら待ちに待った第一現地人だし。」
精霊達は会話も出来るから寂しく無かったけど、精霊と人との価値観の違いから会話が噛み合わない事もある、因みに精霊の姿は余程相性が良くなければ人の目には見えないらしい。
『わかった、ボクらはヨーコに従う、でも命が無くなるような危ない事はしないように約束だよ、それとリュックは背負っていた方がいい、今の見た目軽装過ぎるからね。』
マーチの言葉に頷きリュックを工房から取りだし背負う、そして懐中電灯を再度点灯させた。
『来るよ。』
短い言葉、マーチの緊張感が伝わってきた。
「んん?人だぞ!夜に辺鄙な所を歩いてんな、女か?なぁ嬢ちゃん1人か?どうした、仲間とはぐれたか?」
懐中電灯の光を声のする方に向けると馬から降りた人間?がいた、顔が犬で二足歩行、馬の手綱を引きこちらに近づいてきた。
「あぁ、悪ぃ怪しいもんじゃねぇ、俺はガトー、ティンダーの街で冒険者をやってる、今は商隊の護衛任務中でな野営場所からこっちの方で眩しい光が見えたもんだから様子を見に来たんだ、もしも嬢ちゃんが仲間とはぐれたってんなら一緒にティンダーまで行くかい、商人には話つけてやるぜ?」
「私はヨーコ、仲間とはぐれた訳ではないの、南の街まで向かってる途中で昼寝をしたら眠れなくなっちゃって、少しでも距離を稼ぎたくて歩いていただけ、もし一緒に連れて行ってくれるならありがたいわ」
全てマーチのシナリオだ、耳元でこしょこしょ話すからちょっとくすぐったかったけど私の話を聞いたガトーは顎に手を当ててちょっと考えてから
「よしわかった、まぁ勝手にスキルで「鑑定」したが悪く思わないでくれ、冒険者なら常識だろ?完全な青だったから危険なヤツじゃなさそうだ、装備品もしっかりしてるようだし、ソロで夜出歩くなら腕もあんだろ、待ってる連中に紹介してやるからついてきな!」
完全な青ってなんぞ?鑑定?ってかスキルで勝手に私を見たの?この犬顔エッチね。でも善悪が鑑定できるなら警察とかいらないよね、種族とか見た目とか隠蔽してるんだけどバレてないみたいだし私の神眼よりは性能が低いのかな。
「なぁヨーコ嬢ちゃん、あんた訳ありか?いや、変な意味で取らねぇで欲しいんだがなんつーか綺麗な見た目だからよ、よく見たら着てるもんもしっかりしてるし、どっかの貴族の令嬢の家出だったりとか、変な男に攫われて逃げてきたとか、もし訳ありなら教えといてくれ、これでもティンダーの街では顔が広いからよ、なんかの縁だ助けてやれる事もあるかも知れねぇ。」
「ふふっ心配してくれてるの?ありがとう、でも全部ハズレ、私の国に国営のダンジョンがあってそこで転移罠を踏んじゃったみたいなの、気づいたらこの近くに飛ばされててね、昨日ガトーとは違う冒険者さんから南に大きな街があるって聞いたの、情報を集めるなら大きな街の方が良いでしょ?」
マーチ劇場、ダンジョンって迷路の事だよね、罠踏んで飛ばされたってどんだけ私ドジっ子なのよ。
「国営のダンジョンって事はメルギル帝国からかよっ!ここの真裏じゃねーか、ずいぶん飛ばされたな、国営ダンジョン入れるってこたぁ実力者だな、いや待てよ、それじゃ冒険者カードはダンジョン受け付けに預けっぱなしか?確か帝国の決まりだったよな、帝国のカードはギルドでも再発行出来なかったはずだ、あそこは閉鎖的でギルドに情報が一切出ねぇからな身分証なしじゃ困るだろうよ、ヨーコが抵抗なきゃ王国のギルドに登録した方がいい、帝国領に入るまで時間もかかるしカードがなきゃ行く先々でめんどくせぇからよ。」
ふむふむ、冒険者カードが身分証になるんだねそれは作らなきゃだ。
「そうね、また最初からやり直しね、私帝国から出た事がないからこの国の常識に疎いかも知れない、ガトーを頼るかもしれないけど少しの間面倒見てくれる?稼げるようになったら恩返しするわ。」
「おうっ!任せとけ、でもあれだな帝国出身は黙ってた方がいいかもな、根掘り葉掘り質問責めも嫌だろ?どっかの田舎から出てきた事にするか、そうだなぁ俺の知り合いの友人の親戚の隣の家の人の友人みたいにしときゃ大丈夫だろ。」
「それを赤の他人って言うんじゃない?ふふっガトーって面白いのね、でもそうね色々聞かれるのはあまり好ましくないかも、ガトーの案を受け入れるわ。」
ガトーとそんな会話をしていると先の方にオレンジの光、多分あそこが野営地なんだろう、ガトーが仲間に説明してくると言って馬に乗って走って行った。
『上手く行きそうだね、どうだったボクのストーリー』
「私に世間知らずのドジっ子属性が付きましたけど良かったと思うわ、ガトーも悪い人じゃないし、後で時間が出来たら帝国の事色々教えてね」
『うん、わかった。ボク達は少し離れた所にいた方がいい?』
「ダメ、側にいて。マーチ劇場がないと少し不安だから、ついポロッと変な事言いそうだし」
『ヨーコは嘘が下手そうだものね、秩序の精霊としては好ましいのだけれど、人族同士のやり取りには危なっかしいかも知れないわ、マーチのやり方に抵抗はあるけど反対はしない。』
「ありがと、ジューンも頼りにしてるよ主に私の姉役としてね、もちろんオクトとメイちゃんにも頼らせてもらうわよ、私弱々だもん。」
『ヨーコが弱々だと?ゴリッゴリじゃんよ、うひひっ』
「よし、今の言葉忘れんなよオクト、体が出来たら覚えとけ!物理でわからせてやる。」
『お姉ちゃん、その時は手伝うよメイもオクトをゴツンする。』
「あらァ~ありがとメイちゃん、一緒にゴツンしようねぇ」
『二人がやべぇよ、冗談だろ?体に入ったら痛みも感じるんだから勘弁してくれぇ』
精霊達と会話しているとガトーが戻ってきた、どうやら受け入れてくれるらしい。
「皆さん初めまして私は長谷川洋子と申します、この度困っていた所をガトーさんに声を掛けていただき、こちらの商隊とティンダーの街まで同行させていただく事になりました、私の事は気軽に洋子と呼んでください、よろしくお願いします。」
自己紹介をするとふっくらとしたお腹を揺らして中年男性が前に出た。
「この商隊の長でダンゴと申します、困っている時はお互い様ですのであまり畏まらずに気楽に行きましょう、ティンダーの街には私の店もございます、何かご入用の時は気軽にお越しください。」
ダンゴさん、見た目通りの名前だった、ダンゴさんの後に続いて商隊の皆さんやガトーのお仲間と顔を合わせた。
「自己紹介も済んだ所ですし、ヨーコさんの休む場所を、野営道具などありませんでしょ?」
「一応ダンジョン内で休めるようにテント等は持ち歩いてましたので大丈夫ですよ、一つだけご相談するとしたら王国の金銭が無いのでこちらの品々をダンゴさんに買い取って貰えないかと…」
マーチ劇場に従いリュックからナイフや各種ポーションを取り出してダンゴの前に出す。
「ほう…」
ゆるい感じのダンゴだがナイフとポーションを見た瞬間目つきが変わった。
「かなり良い品ですね、防錆の付いたナイフにキュアポーション、ライフポーション、これは珍しいロックポーションですか?石化解除の、なるほどなるほど、ガトーから色々聞いておりますので私から色々聞く事はございませんが、某国の技術は素晴らしいのですね、コチラで以上になりますか?まだあるようでしたらお出しください、全て喜んで買い取りましょう。」
ダンゴさんからそう言われたので路銀用に作ったナイフや靴、テント、懐中電灯を取り出して並べた。
「ふふふふふっふふっうぇっふふっ」
ダンゴさんから変な声が聞こえる、どうしたおっちゃん。
「今回の仕入れ遠征では不発でしたが、コレは素晴らしい!ガトーにはボーナス出さなければ、ヨーコ様どんな物でもどれだけでも結構でございます、全て買い取らせていただきます、まだございますのでしょう?」
ニヤニヤとダンゴが商人らしくいやらしい笑顔を向けてきた、若干気持ち悪いし、いつの間にかヨーコ様呼びになってるし、マーチはイケイケどんどんと言ってるし、まぁマーチがGOサイン出すなら出すけどさぁ。
「後は女性用の洋服とか下着や肌着と貴金属アクセサリーですかね、あとコレがペアで10セットほどあります。」
そう言って取り出したのがクズ魔石で動く腕時計、マーチからこの世界も1日が24時間と聞いたので試行錯誤しながら作ってみた品、使った金属もこだわりの防錆合金仕様で文字盤の12時15時18時21時の部分に小さい宝石を嵌め込み、ガラスはダイヤのような硬質鉱石を錬金で合わせた強化ガラス、ハンマーで叩きつけても割れない丈夫な物を使った。
「はわわわわっ」
ダンゴさんが腕時計を見た瞬間情けない声と共に腰砕けになった。
「だ、大丈夫ですか?」
「もっ申し訳ございません、この凄まじい品を見て気を失いかけました、某国の技術はここまで精巧な物が作れるのですか?かの国が閉鎖的な意味がわかります、この技術力があるのなら他国との関係等なくてもよろしいのでしょうな、はぁぁ」
まぁちょっと高級仕様に作ってみたけどそこまでかなぁ、そんな疑問を抱きながらダンゴさんの様子を見るがまだ生まれたての小鹿のようにフルフルしている。
「ワタクシ、先程からわかっていたのですが聞くのが怖かったのです、もう開き直りましょう。あの、ヨーコ様の鞄もしや空間拡張が付与されておりませんか?テントを出してもらった時もそうですし、この大振りなマチェットナイフもそうです、寸法が鞄の大きさを超えているので、否定しても無駄でございます、このダンゴ目ざとさだけは王国一と自負しております。」
やっべ、魔法陣付与の鞄はめったに無いってマーチが言ってたっけ、どうしようマーチ!
『ダンジョンで偶然手に入れたって言えば大丈夫だよ、実際ダンジョンにはあるからね、時計はほら作る時に書いた設計図を見せてあげなよ、えっとそうだな~師事していた先生から遺品として譲り受けたって言っときなよ、今ある時計は師匠のアトリエにあった部品を組み立てただけだってね、あと自分は錬金術師だと付け加えてね。』
私はその通りダンゴに伝えた。
「なるほど、それではヨーコ様はその亡くなった師匠から錬金術を学んでいたと、なら何故ダンジョンに……いや、確かに錬金術師が様々な物を作ると言うのは聞いておりました、王国ではほぼ全員がポーションしか作りませんので盲点でしたな、因みにヨーコ様はどの程度錬金術が使えるのでしょうか」
返答に困る、マーチモン助けてぇ
『免許皆伝で大丈夫、ダンジョンには素材集めに行ってたって言えば良いよ。』
はい、そのまま伝えます。
「おぉぉぉっ!ヨーコ様はその偉大なる知識と技術を引き継いでいらっしゃると、素晴らしい出会い、女神ライカ様に感謝を」
ダンゴは両手を天にあげ両膝を地についてライカに感謝を伝えていた。あれがこの世界の祈りの形なのかな?
「話が逸れましたが、こちらの品々全て買い取らせていただきます、ただ腕時計に関しましては高額な為街に戻ってからのお支払いで大丈夫でしょうか?もし不安でしたら一度お返し致しますが」
「平気です、そのままお持ちください、それと道中お金を持っていても邪魔になるのでダンゴさんのお店に着いてから全て支払いでお願い出来ますか?」
腕時計は木のケースに入ってるから重ねても平気、それにここはダンゴを信用してるよと意思表示しといた方が後々良さそうだ、あと試しに作った宝石なしの腕時計をダンゴにプレゼントしよう、街に着くまで世話になるのだから感謝の印としてね。
「ダンゴさんも着けてみたいでしょ?腕時計、使ってみないと商品の便利さがわからないと思うからコチラを街までの路銀代わりに受け取ってください。」
取り出した試作品、使っている素材も作りもほぼ一緒、高級仕様は銀色に輝いているけど試作品は黒っぽいシックな見た目にしていた、着け方を説明し金属ベルトの調整をして装着、日焼けした浅黒い肌にピッタリでありながらその存在感を主張する、なかなか似合ってるじゃないの。
「お似合いです、私はこの技術に関して秘匿するつもりはございません、ダンゴさんが設計図を買い取るのならば腕時計を専売できるでしょう。」
着けた腕時計をじっと眺め溜息をつくダンゴ、先程まで血の気が引いていた顔に血色が戻って更に赤くなった。
「ダンゴの旦那、似合ってますぜ、なをんつーか仕事の出来る商人って感じがするぜ、時間がすぐにわかるのは俺たち冒険者にもメリットがある、手が届く範囲の値段なら間違いなく買うな。」
ダンゴの腕時計を見ながらガトーが自分も買う宣言したから後でこっそり作ってプレゼントしてあげよう、最初に見つけてくれたのはガトーだからね、んじゃガトーに先にあげろよって?物事には順番があるしガトーにも立場があるし、くぅぅぅっ工房に籠りたい。
「ヨーコ様、このダンゴ、貴女様の商品を王国に広めて行きましょう、まずは領主様にこちらの腕時計を貴族様専用とし販売窓口になっていただきます、ワタクシは技術者を集め腕時計専門のアトリエを作る事をお約束致します。ヨーコ様には少しの間だけでも結構でございますのでティンダーの街に滞在していただければと……もちろん宿泊その他の費用に関しては全てダンゴサンショク商会が負担いたします。」
商会の名前三色団子かよっ!吹き出しそうになったわ!
「あはは、そこまでしなくても大丈夫ですよ、急いで戻る事もないしちゃんとダンゴさんのお抱え職人が作れるようになるまで街に居ますよ。」
ダンゴは私の言葉を受けて胸に手をやり深々と頭を下げてきた、私は慌てて頭を上げてとお願いし、これからの事を話し合った。
腕時計に関しては1人の職人が1個仕上げるのではなく、各部品を分担して作る事を進めた、簡単な構造にしたこの時計ですら100以上の細かい部品が必要で、その一つ一つが手作業になる、部品を作る職人と組み上げる職人を分けて時短しないと生産量があがらないからね。
ダンゴは私の話を聞きながら頷き、たまに羊皮紙にメモしている。
その他ティンダーの街の事も色々聞いておいた、王国内では王都に続いて3番目に大きな街で様々な種族が集まっている、ダンゴ達の商人街、ドワーフ達の住む職人街、冒険者や市民が住む市民街とあり街の中心には領主や連なる貴族が住む貴族街があり、現領主は侯爵位なのだそう、前領主が圧政をしていたため税金を払えない者が増え、そういった者達は家を追われ、街外れにスラム街を作ってしまった、治安が悪いので近寄らない方が良いと注意された。