殿下の冒険。
さて、今日は殿下を連れてダンジョンなのだが、今日も今日とて朝食作り、まぁ簡単な物なんだけど、ティンダーで手に入れた腸詰めを、ザワークラウトと一緒にパンに挟んだホットドッグ、ポテトサラダ、コーンポタージュ、それにオレンジ100パーセントのジュース。
「お姉ちゃん、お皿用意したよ、後なにお手伝いする?」
「じゃぁトマトソースをこの器に入れてくれる?」
メイちゃんだけだよ、手伝ってくれるのは、その様子を眺める殿下、なんで殿下が?と思ったけど、今日のダンジョンアタックが楽しみすぎて早起きしてしまったらしい、まぁ見ているだけだし害はないので放置。
「おはようございます、朝食ですか?何かお手伝いを」
「アリエル、おはよう、ありがとう、それじゃ殿下の分と、騎士の皆さんの分を宿の食堂に運んで欲しいの」
「わかりました、では早速」
テキパキとアリエルが動いてくれたおかげで朝食の準備が整った、齧り付くのが美味しい食べ方と説明したら、真っ先に殿下がホットドッグをガブリと、騎士の皆さんも離れた席でガブリ、殿下はトマトソースをつけて味変してガブリ、行儀は悪いけどこういうのも経験だ。
「ふうっ、もう腹に入らない、しかし料理の才能もあるのだな、特にこのスープ、甘く優しい塩加減と香り、2杯も飲んでしまった。」
「ありがとうございます、お気に召したのであれば、アリエルにレシピと作り方をお渡ししておきますね。」
殿下もコンポタを気に入ってくれたようだ、食後にお茶をしてダンジョンアタックの準備に係る。
「ガトー達はどうするの?」
「俺達は一度ティンダーに戻る、食料やらなんやら補給しておきてぇからな、あとグランドマスターからの伝言もギルドに伝えなきゃならんから、それでも今日中にはこっちに戻るつもりだ。」
ガトー達はティンダー行くのか、私も近いうち1回戻ろうかな。
「オクト、無理言ってごめんね、10階層までで良いから、お願いね。」
「ん?気にすんなよ全然平気だ、俺達はヨーコについて行くんだからよ。」
「そうですよ、ヨーコは私達に気を使いすぎですよ、もっと気を楽にしてください。」
オクトもジューンもいい子だ、ジューンはお姉ちゃんだけどね!さて殿下達は準備出来たかな?
昨日の夜急遽工房に潜ってダンジョン用に靴を作ってきた、厚布製のトレッキングブーツ、ソックスも合わせて人数分を7本づつ、酷い水虫の騎士もいたので治療用の軟膏も沢山作っておいたよ。
「歩きやすいな……」
騎士からそんな声が聞こえた、騎士達はサイドステップや剣を持って踏み込んだりと、感触を確認している、殿下も屈伸したりアキレス腱を伸ばしたりして身体を解していた。
「準備は宜しいですか?」
「うむ、大丈夫だ、よろしく頼む。」
「ほう、これは凄い、まるで地下の街の様だ、明かりもついているのだな。」
「はいこちらはダンジョン街として、飲食店や武器屋、ポーション等を取り扱う雑貨屋等を出店予定です。」
殿下は興味津々にテナントの中を覗いている、水洗トイレには特に注目していたらしく、その構造を詳しく聞いてきた。
「先日泊まった宿にもあったがあれは素晴らしい物だ、是非王都にも普及してもらいたい、その前に下水道という物を作らねばならんらしいが、非常に快適で興味深い。」
「下水道とトイレに関しては、現在ドワーフが研究しております、ティンダーをモデル地にするとラルク様も仰ってましたので、王都にもその技術は伝わると思います、もう暫くの辛抱です。」
うんうんと頷く殿下、彼の頭の中では、自分が王になった時のビジョンが出来ているのかも知れない。
ギルドの地下出張所にはグランドマスターとギルド職員達がいた、細かな打ち合わせや手直し部分を数人のドワーフと話していた。
「ホーク様、これからダンジョンですか、どうぞお気を付けて、エレメント、殿下を頼むぞ。」
グランドマスターの言葉に礼をしてダンジョンの入り口に向かう。
「それではこれからダンジョンに入ります、配置は朝食の時にお話ししたように、前衛と後衛をエレメントで受け持ちます、騎士様達は殿下を中心に中衛をお願いします。」
ダンジョンに入ると殿下は壁を調べたり、床を削ったりと、研究者の様に目に付くものに興味を持っていた、騎士達も少しの間私達と入れ替わり、エンカウントした魔物と戦っていた。
「ダンジョンの魔石は質が良い、透明度が高く大きい、まるで宝石の様だ、これは予想だが、ダンジョン内の魔物の食性等もあるのでは無いかと、外にいる同じ魔物と比べると段違いだ。」
「殿下、それは正しい見解かと、ダンジョン内の魔物はこの豊富な魔力によって産み出されます、外の魔物と違い交配して子を産むのでは無く、純粋な魔力によって誕生する、ダンジョンの不思議の一つです。」
マーチが殿下の予想に対して肯定する意見を述べた。
「人も魔力を糧にしております、先日口にした肉もダンジョン内の魔力を豊富に含んでいる為、上質な旨味を出すのです。」
「やはりか!昨日の肉は私が食べた中でもトップクラスに上質と感じた、あの時の開放感がそうさせていると思っていたが、それだけでは無いと言うのだな?」
「はい、その通りでございます。」
マーチと殿下は意気投合してダンジョンの事を話している、2人共夢中になって、でもマーチって本当に物知りだなぁ。
「殿下、5階層のゲートキーパーです、ゲートキーパーは毎回違う魔物が出現します、今回はハイオークですね、群れたら厄介な魔物ですが今回は単体です、騎士の皆様殺ってみますか?」
「我が近衛の騎士達よ、提案されたがどうかな?可能ならば日頃鍛えし武を私に示して欲しい。」
「お任せあれ、ではエレメントの皆様、殿下をお願い致します。」
「いや、私も参加するぞ、とは言え後方からの魔法攻撃しか出来ぬが」
ハイオークは魔法耐性が低く魔法使いがいれば戦いやすくなるだろう、急遽殿下がゲートキーパー戦に参加する事になったので騎士達にも緊張が見える。
「では殿下が初手で魔法を放ち、騎士様達が仕留める、それでいかがでしょうか?」
騎士が殿下を護衛しながら戦うのは不利なので、初手で魔法を放ったら離脱、その後騎士達がハイオークを仕留める作戦を提案したら受理された。
殿下が詠唱を始める、詠唱が終わるまでは騎士がハイオークを牽制してヘイトを集めていた。
「騎士達よ離れろ!ウインドエッジ!!」
殿下から無数の風の刃が放たれた、一つ一つの威力はさほどないが、確実にハイオークに傷を負わせている、魔法攻撃を受けたハイオークが叫び声を上げ、殿下に向かって走り出した。
しかし騎士が盾を構えてハイオークの突進を受け止める、その間にアリエルがハイオークのアキレス腱辺りを切り付けた、そのおかげで突進の力が弱くなったのか、受け止めていた騎士が盾でハイオークを弾き飛ばす、足に力の入らないハイオークは仰向けに倒れた、そこにアリエル達の剣が突き刺さり、ハイオークは粒子になって消えた。
「お見事です皆様、完勝でしたね。」
「うむ、確かに見せてもらった、どうたヨーコ、我が近衛騎士も中々やるであろう?」
「はい、素晴らしい連携でしたね、特にハイオークの突進を1人で受け止める辺りは流石だと、機を見た攻撃も的確で感心致しました。」
いやぁ接待ゴルフを思い出したよ、でもハイオークは2メートル越えの巨体、1人で受け止めるとは思わなかったのは本音だ。
ハイオークは魔石とドロップ品の他に宝箱を落として行った、ドロップ品はハイオークの肉で宝箱の中身はパワーリングが5個、文字通り装着者のパワーを上げる、上昇率は2割程度だが大分体感は変わるだろう。
「今回は私達は何もしていないので、殿下と近衛の皆様がもらって下さい。」
その後6、7階層を順調に進み、8階層ではメルティがフレイムロッドをゲットした宝箱を見つけた、罠は無いのでアリエルが開けた。
中身は「隠者の書」という本で、ダンジョン50階層までに出現する魔物の詳細が書かれた本だ、実は私達も持っている。
「これはエレメントが持っていた方が良いのではないか?」
「それは殿下がお持ち下さい、今日ダンジョンを冒険した証として、所謂戦利品です!先程チラッと拝見しましたが中々面白そうでしたよ?」
殿下は中をパラパラと捲り、魔物の生態等を読んで「興味深いな」と言って、以前ドロップ品として献上したポーチにしまい込んだ。
「確かに魔物の事を学ぶにあたり貴重な資料になるだろう、今は春季の休暇中だが、明けて学園に戻ったらじっくりと読んでみよう。」
学園なんてのがあるんだ?まぁ私は成人だから関わる機会は無いだろうけどね。
その後も順調に攻略は進み、10階層のゲートキーパー戦となった、相手はオークソルジャー2体にオークジェネラル、流石に近衛騎士だけではキツいと判断したので、私達も戦いに参加、ソルジャー2体を私達が担当し、ジェネラルを近衛騎士と殿下が担当する、私達はソルジャーをサクッと倒し、殿下達にバトンタッチ。
殿下が腕時計に魔力を込めた、王家の紋章が上空に浮かび上がり、士気向上のバフがかかった。
殿下は先程よりも強力な風魔法「ウインドストーム」を放った、小さな風の刃の竜巻に包まれたジェネラルが咆哮を上げる、ジェネラルは大剣を横薙ぎに振って全体攻撃を仕掛けた、しかしパワーリングが効いたのか近衛騎士1人でそれを受け止める、アリエルがジェネラルの顔を狙って剣を振るう、ジェネラルの両目を斬りつけたアリエル、視界を失ったジェネラルは大剣を振り回す、その後は蹂躙祭でジェネラルは粒子になった。
私は接待ゴルフトークで、殿下と近衛騎士達をヨイショし、魔石とまた出た宝箱をチェックする。
中身は「博識のメガネ」という名前のメガネだった、これはあらゆる植物の成分、効能、用途等を見せてくれるアイテムで、薬師は喉から手が出る程の1品、植物性の薬であれば何をどれくらい使用して、どういった効果があるかまで見える物だ、唯一難点は植物限定って所だが、研究が好きそうな殿下にはピッタリの品だろう。
「これもまた凄い物が出たな、研究次第では偽薬の摘発や、新しい薬の開発にも役立つだろう、同期に薬学に詳しい者が居る、彼女に預ければ新薬も夢では無いな。」
「そういった事でしたら、是非お役に立てて下さい。」
約束の10階層を攻略後、私達は転移陣を使用して地上に戻った。
「エレメントよ、今日は非常に貴重な経験が出来た、これは私にとって生涯忘れられない思い出となるだろう、そんな思い出を私にくれた其方等に礼をせねばと考えていた、エレメントにこれを渡そう。」
殿下が懐から出したのは王家の紋章が入った短剣、後ろにいた近衛騎士のざわめきを見るとヤバい物なのだろう。
「その短剣は信頼のおける友に贈る物だ、エレメントよ、何かの権力が必要な時にそれを相手に見せるが良い、王家が其方らの後ろ盾となった証明だ。」
殿下は私に短剣を握らせてから
「ダンジョンが落ち着いたら、今度は王都にも遊びに来てくれ、来る時には先触れをくれれば助かる、仰々しいのは苦手だろうから、アリエルに王都を案内をさせよう。」
ダンジョンで疲れただろうからと殿下達にもう1泊していくように勧めたが、流石に無断外泊が続くと捜索隊が出るから帰ると言われたので、私は手土産にバッカスのワインと果実酒とウイスキーを樽で持たせた。
殿下達を見送った後、私はドワーフ達の元へ、宿は全て完成していて、ホテルの現場に向かった。
「はやっ!もう鉄骨組んでる、重機も無いのに凄いよな本当に。」
ドワーフ達には新しくボルトナットを教えておいた、鉄骨を組む際に必要になるからだ。
「鉄筋も指示通りだし、本当に喋らなきゃ優秀なんだよな~」
ホテルの現場をあとにして、クランハウスの方に向かう、コンクリをホテル優先にしてるからまだ更地だけど、数人が測量している、墨出しなんかも教えたら、すぐ理解して様々な所で活用している、しかし今までどうやってたんだろ、勘だよりとかなら恐ろしいな。
仮設の錬金工房内を覗くと、大量の素材に囲まれて、死んだ目をしたドワーフ達がいた、まぁ資材生産はかなり急がせてるからそうなるよね、錬金工房には火酒を特別に差し入れしたら目の色変えて頑張り始めた。
「ホテル次第と言うかコンクリ次第だけど、予定よりかなり早くなりそうだ。」
みんなの所に戻る前にヴィラー様の神殿にご挨拶、火酒とウイスキーをお供えして戻った。
「ホテルにしたってメイちゃんの魔法と、私の魔法陣があれば簡単に出来るけど、それしたら私が死んだ後に発展が止まってしまうからなぁ。」
後先考えずに作るのは本当に簡単、前世の記憶を頼りに作れば良いんだから、でも作る人が居なくなった途端にこの世界では「幻」とか「アーティファクト」とか言って考えるのを放棄する。
「こうやってドワーフ達の頑張りを見るとさ、教えたくなるじゃん知ってる事なら、流石に化学とか私の苦手分野は無理だけど、化学の知識があれば飛躍的に発展するだろうに。」
異世界に本当に必要な知識は化学です、これはマジで工房に居る時思った事、アルミを作ろうとしてどうやっても出来なかった、原料も勃起齋藤って覚えてたけど正式名を忘れたし、ビールの炭酸ガスにしてもそうだ、こういう時に化学の授業ちゃんと受けてたらって本当に思う、元素記号とか血液型の親戚?程度の知識じゃ何の役にも立たない、興味のある事しか覚えない癖を何とかしなきゃだな。
「クランハウス全部建ってもこんなにスペースが余るんだ、どうしよっかな~」
冒険者、ダンジョン、必要な物……何がある?必要なものは大体揃えたはず。
「病院?治癒魔法やポーションで対応出来るし、飲み屋?ん~もっとこう……。」
「どうしたっすか?難しい顔して」
「あ~ディレイさん、いやね、このスペースで冒険者に必要な物って何かな?って。」
しばらく考えるディレイ、何か思い付いたのか、手をポンと叩き
「娼館っすね!足りないのはそういう息抜きの場所っすよ」
「却下って言いたいけど、それは私も考えた、でもさ、女の子の冒険者は?」
「あ~男娼とかは……いらないっすよね、すみませんっす。」
キッ!と睨んだ私を見て苦笑い、娼館は実際考えたんだけど、キチッとした避妊具も無いし、衛生的にも問題あるし、明らかに女性が受け身すぎる。
「まぁ、設備を整えれば無しではないか、そうなると、1階部分は飲食スペース、2階部分に浴場、3階に娼館か。」
風呂入らねぇ奴には抱かせねぇよ?的な?後は避妊具だよな~避妊魔法とかないのかな?あとは女性が内服する薬かゴムか、はぁ~やっぱ娼館は無しの方向で、なんで男の性欲に必要なのを私が作らなきゃ行けないんだ、バカバカしい、付き合ってられっか!!
ストレス発散…やっぱギャンブルだろ!競馬場にはちょっとスペースがギリギリかな、カジノならもっと省スペースで、いや待て、ただでさえ民度が低いこの世界、依存性者祭りになるのが目に見える、破産者続出でダンジョンどころじゃ無くなる、ギャンブルも却下。
あと考えられるのは健康ランド?まぁ水は水脈直だから豊富だけど、宿にシャワーが有るし、ホテルには大浴場も有るし部屋にはバストイレついてるし、いらないな、ん~なんか無いかな。
「闘技場なんてどうっすか?」
「闘技場?何かを闘わせるの?」
「王都では年に1度闘技大会があるっすよ、冒険者や騎士団、貴族の用心棒なんかが集まって大規模な大会があるっす、それをダンジョン街リトルティンダーでもやれたら凄いっすよ、大会も冒険者限定にしたら良い宣伝になるっす。」
闘技場かぁ、前世では経験が無いけど、総合格闘技の試合とかボクシング感覚なのかな?
「それって何人くらいの規模なの?」
「参加費は無料で、100人の参加者を集うっす、それから予選をして、16人まで絞ったら決勝トーナメント、優勝者には名誉爵位と賞金、商品の他に王都に屋敷が与えられるっす。」
「う~ん、多分ここでやっても、そこまでの商品は出せないわよ?」
「何言ってんすか、前に宝箱からドロップしたフレイムロッドや拡張付きのポーチなんかは、売れば余裕で白金貨1000枚以上の価値っすよ、王都の大会でも優勝賞金は白金貨500枚っす、名誉爵位を除いたら、ほとんど変わらねっすよ。」
うわぁ、フレイムロッドってそんなに価値があるのか、メルティ狙われない?両方持ってるよあの子。
「でも、魔道具の提供者が居ないとそれも無理じゃない?」
「そこは王国とギルドに一枚噛ませるっすよ、ギルドの最優先の目的は魔石っす、ダンジョンが見つかる前は他国から魔石を買っていたんすよ、その額王国白金貨で年間100万枚以上と言われてるっす、それに比べたら微々たる金額っすよ。」
なるほど、王国とギルドにスポンサーになってもらって、冒険者をこの街に集め、ダンジョンの旨味を知った冒険者は、ティンダーやリトルティンダーを拠点に活動する、国やギルドは他国に払ってた金額が自国で回るから、税金やギルド手数料で回収が可能って事か。
「候補として検討するわ、まぁ闘技場以外にも使用用途はあるだろうし、他に良案がある訳でも無いし、でも宿やホテルが足りないかもしれないわね。」
現在リトルティンダーで対応出来る宿泊者は、ホテルのワンフロアにツインルームを30部屋の5フロア、最上階のスイート4部屋、7階のジュニアスイート6部屋はどちらも最大10名で使用可、ホテルで250名、宿屋が8部屋で20あるから160名、クランハウスも詰め込んで1棟につき、20~25名が限界だろう。
「7階のジュニアスイートを4~6名用のファミリールームに切り替え、12部屋くらいにしても然程変わりが無いけど、バリエーションとしては有りかな、内装はまだだから図面を書き直して~」
クランハウスを満タンにしても700名未満か、ホテルやギルドの職員宿舎も建てること考えると…。
「いや、ダメだ、当初エリックは冒険者500名想定だったから、年1行事の為にプラン変更は工期の圧迫になるしデメリットしかない、ティンダーにもお金の流れを作らなきゃダメだから、このままにして空き地の用途を別に考えなきゃ。」
しかしなぁ~代案が思いつかない、空き地にしておくのも勿体ないし、逆に空き地のまま宿に泊まれない人用のキャンプ場とか?商店街とか?ダメだ商店街じゃ人手が必要になるから、思い出せ、前世には何があった?
「みんなにも聞いてみるかな、ディレイさん、ありがとうございました、ちょっとみんなにも聞いてみます。」
「っす、あんまり役に立たなかったっすけど、またなんか思いついたら言うっすよ。」
ディレイと別れ仲間達の元へ向かうと、フル装備で、何故か魔物と戦っていた。
「どうしたの!ダンジョンから溢れてきた?魔物避けの魔法陣じゃダメだったか」
私もGUNを取り出し構えると
「違うよ、昨日手に入れたアイテムのチェック、終わったら説明するから、待ってて、おーいヨーコが来たらから終わらそうか。」
オクトが目の前のオーガを真っ二つにして魔石になった。
「どういうこと?アイテムって?」
「あぁ、これだ。」
オクトが私に辞典くらいの分厚い本を手渡してきた、神眼先生出番です。
【魔物大全1~50階層】
ダンジョン上層部に出現する魔物を召喚出来る、召喚に必要な物は対象魔物の魔石、召喚者の任意で魔石に戻す事も可能、魔物の強さも調整可能。
「召喚士用のアイテムだね、今は召喚士って減ったけど、別に召喚士じゃなくても使えるみたいだし、大全に載っていて魔石を持つ魔物ならなんでも出せるみたいだ、昨日30階層のゲートキーパー倒したらドロップした。」
「へぇ~凄いわね、デメリットは無いの?」
「召喚士以外が魔物を召喚すると少し時間が掛かるから、実戦で使う場合は前もって召喚しなきゃ使えないって事かな。」
「実戦で使えな……これだっ!使えるよっ!」
閃いた!一気に思考が加速する。
「オクト、これ使いたいの!ちょうだい!」
「おっおう、構わないけど。」
実戦で使えないなら実戦じゃない所で使えばいいんだよ、そうなるとやっぱり闘技場は必要ね。
近くにいたドワーフ代表と一緒にグランドマスターの所へ向かった。
「グランドマスター、この空き地に闘技場を作っても良い?」
「闘技場?なんでまたそんなもん」
【魔物大全1~50階層】をグランドマスターに見せて説明をする。
「大層なアイテムってのは理解した、それで召喚した魔物を闘技場で戦わせるのか?」
「少し違うんだけど、魔物と戦うのは冒険者よ。」
「冒険者が?なんの……ん、待てよ?そうか!そういう事か、要するに魔物に対して事前に情報を得る為だな!」
そう、ダンジョン内の魔物は種類も数も多く、その全ての特徴や弱点、注意点を知るのは難しい、でもこれを使えばそれを知る事が出来る、実際に体験する事も。
「これにより、安全にダンジョン攻略が出来るって訳だな、必要な物は対象の魔石と魔力だけか、こいつは凄ェ!」
「これをギルドで管理し、闘技場でシミュレーションする、魔物の知識は戦いを有利にするから、ダンジョン攻略をする冒険者にしたらリスク軽減になるでしょ?」
その後、ドワーフ達と一緒に闘技場の図面をひき、グランドマスターの意見も取り入れて様々なオプションを付けた。
「やり過ぎかなぁ、ドワーフ達に任せて平気?」
「おいっ!任せろ大丈夫だ、骨鉄入りコンコルドでバッチリだぞおいっ!」
名前から違うじゃねーか、骨鉄入りコンコルドってなんだよ、とりあえずSRCっぽい事言ってるから強度は大丈夫かな、予算が通るかな、そこが心配だよ、エリックだけじゃなくてティンダーに影響出なきゃ良いけど、税率アップとか街の人に負担が行くなら、砂糖みたいにスポンサー契約とかする方が良いはず。
「予算がなぁ…。」
「ギルドが全額出す!ダンジョン街を作る為にギルドが用意した予算が手付かずだ!ヨーコ達のおかげでなワハハハハッ!これで肩身の狭い思いはしなくて済む、一石二鳥だ!」
どうやらギルドでもダンジョン街を作る予算を組んでいたようだ、私とメイちゃんで魔法無双したから使い道に困っていたらしい、最悪ティンダーに利用料金を永続的に支払い、ダンジョン街を使わせて貰うつもりだったようだ。
「ギルドも出資によって闘技場の利益が懐に入って来る、ティンダーに支払う金額をペイ出来りゃ上出来だ。」
闘技場で定期的なシュミレーションを行い、安全にダンジョン攻略が出来ると分かれば冒険者が必然的に増えて来る、そうなれば手数料で利益を出していたギルドにも旨味が出るから、ダンジョン街に出資して一枚噛んでおくのはマイナスにはならないのだ。
「何とか面目がたった、助かったぜ、ヨーコ達にはこの魔物大全の使用料を払えば良いか?どれくらい支払えば良い?」
「グランドマスターに全てお任せしますよ、寧ろお金じゃなくて、ギルド食堂での食事券とかでも私は喜ぶから!毎食メニュー考えるの大変なんだよ、だからお金じゃなくても良いですよ。」
私にとってはお金よりもタダ飯の方がありがたい、料理は好きだけど毎日毎食は勘弁なのです。
「わかった、エレメントに損の無いように検討する、因みに今日の夕食はなんだ?」
「むっ!なんか嫌な聞かれ方だけど、今日はダンジョンで手に入れた魚を使うつもり」
「魚か!好物だ、期待してる!」
くっそぉ~なんかムカつくけど、最初に誘ったのは私だから仕方ない。今夜は魚のフライタルタルソース付きと、ルーム貝と魚にタップリ野菜のアクアパッツァとパン、肉食メンバーの為にコカトリス南蛮も作ったよ。
夕食の時間には、ティンダーに戻っていたガトー達も帰って来たので、全員揃って夕食となった。
「ヨーコ、見て見て!お母さん達が作ったやつ預かって来た、チェックして欲しいって~」
メルティが持ってきたのは下着、お母さん達頑張ったみたいね、それを手に取り確認すると、デザイン自体はなんの面白味の無いものだけど、胸を支える部分にはワイヤーも入っていて、ホックもちゃんと出来ている、素材も伸縮性のある柔らかい素材を使っていて、着け心地も悪くなさそうだし及第点だと思う。
「マルティさん達凄いね、手縫いの技術も凄いけど、ちゃんと形になっててビックリした、後はどれくらいの原価で作れるかだね、生産量が少ないと価格が高くなっちゃうし、庶民でも手が出る金額にはしたいよね」
「そうだよね、お母さんの話だとこれ作るのに2日かかったって言ってた、何回も手直ししたから時間がかかったけど、慣れたらもっと早くなるって言ってたよ」
スピードアップの為に足踏み式のミシンでも作るか、構造は何となく理解しているから、工房に1年くらい籠って研究したらデモ機くらいは作れるかな、後は部品毎にドワーフ達に作らせて拡散して行けば勝手に派生して行くはず。
モーターを作れたら一気に時代が変わるんだろうけど、永久磁石とか必要なんだよね、あと何だっけフラミンゴ左手の法則?なんか手で形作るやつ、ほら厨二病の人がよく顔隠すようにやるポーズみたいなの、あぁ~化学に詳しい人どっかに落ちてないかなぁ、まぁそんな都合良く行かないよね。
夕食が終わったら、男達はミニバーのあるゲーム部屋へ、女性陣はお風呂に交代で入る、風呂上がりの行動は様々で、ジューンは風呂上がりにミニバーに酒を飲みに行くのが日課、最近はトランプにも参加しているらしく、お気に入りはブラックジャックで、結構稼いでいるようだ。
メイちゃんはリバーシで無双、最近じゃオクトとグランドマスターは勝負すらしてもらえない程の実力で、マーチでも負けるらしい。
メルティは私特製のパックをしたり、覚えたてのネイルアートしたり意外と女の子している、ネイルに関しては上達も早く、練習は私の爪で、本番は自分の爪にと、相変わらずのメルティ節、でも最近私のする錬金術にも興味を持ち始めたので、小さな錬金釜をプレゼントした、どうやらネイルに使える物や、美容に使える物を自分で作りたいらしい。
私はみんなの様子を酒片手に見て飲むのが最近の楽しみ、放置気味のネロとも連絡を取り、屋敷の様子や双子の様子を聞いたりしている、ネロ達にも来て欲しいけど屋敷を離れる事が出来ないのが悩ましい。
何時までもこんな平和な時間が続きますように、願い事を頭に浮かべながら、子供の頃みたいに空を見上げて流れ星を探した。




