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前世は大工女子の異世界生活  作者: 森林木林森
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で、あなた方はどなた?

 父さん、母さん私は今異世界で元気にしております。空を見上げてもしかしたら伝わるのではないかと自分の現状を両親に念じてみた。


 さて、気を取り直して。


「ねぇマーチ、どっちの方向に行けば良いかなぁ」


『一番近いのは東に行くと小さな村があるよ、大きな街に行くなら南かな、北は魔王達が居る魔王領、西は大森林って呼ばれる広大な森が広がってるよ』


 なるほど、本来なら小さな村から行って旅支度をするんだろうけどフフン、私には工房があるからある程度時間がかかっても街に行くのが正解でしょ、大は小を兼ねるって言うしね。


「南に向かおう!マーチ南ってどっち」


 マーチの指示通りに進み始めたが


「どれくらい歩けば街に着くの?」


『そうだね、今のペースなら大体10日くらいかな、日が暮れたら工房でひと月過ごして出れば朝日が見えるんじゃないかな?』


 これは参った、便利機能の大誤算、10日で着く予定の街に工房機能を使うと体感で約1年掛かるの?でも夜はしっかり眠りたいし夜の移動は魔物の出現など危険がある。


 散々悩んだ挙げ句、魔物を除ける魔法陣を付与した何か道具を作って夜通し向かう事にした、我ながら脳筋プレーだと思うけど眠くなったら工房へ飛び込めば良いし、お腹が空いても工房あるし、ただ野営の為に用意したテントなんかは無駄になってしまった、どっかで売れるなら売りたい。


 あと、歩いていて気付いたけど靴のソールに使ったスライム素材、クッション性も良くて柔らかいけど消耗が激しい、これは少し改良しないとダメだ、夜通し動くなら明かりも確保したいし、マーチに聞いたら私の身体のベースになっているエルフは人里に降りて来るのが稀だと聞いた、そんな存在が人で溢れる街に行ったら目立ってしまう、認識を阻害する魔法陣もあるのでアクセサリーか何かに付与した方が良さそうね。


 実際外に出てみないと分からない事がたくさんあった、私の身を守る為試行錯誤しなきゃだね、あとガンガン希少な鉱物を使って武器防具を作ったのもマーチ的にはあまりよろしくないみたいだった、オリハルコン?って鉱物が一番硬くて丈夫って書いていたからそれを使ったんだけど全てオリハルコンの武器は国宝級の更に上の価値らしい、普通は豆粒くらいのオリハルコンとミスリルを混ぜた合金を使うみたいだけどミスリルも希少価値が高いのであまり意味が無いって言われた。


「路銀が無いからそれを作るにしても、普通の鉄素材でナイフとかを作って売るとかの方が良いんだね?それ考えたらこの服とかバレたらヤバいよね」


 今私が着ている服には真シルクの他に糸状にしたミスリルが練り込まれており便利な魔法陣がいくつも仕込まれている、オリハルコンと違いミスリルは柔らかいので糸状に加工が出来るけど、魔力を通すとガチガチに硬くなるので魔法剣の素材としてミスリルはよく使われているらしい、ミスリルの剣も高価で純ミスリルの剣ならば貴族の屋敷が3つは買えるとマーチに呆れられた。


 今着けているヒップバッグも空間拡張の魔法陣を組み込んでいてテントやコンロ等野営道具が入っている、今どきヒップバッグ?ダサいと思うかもだけど、大工の腰袋みたいで私は気に入っている、それにここ異世界だしファッションの流行などある訳ない。


 マーチに軽装過ぎるのも怪しいと言われたので大きなリュックサックも作った、もちろん空間拡張の魔法陣付き、街に近づいたら背負うつもり、空間拡張すると中身の質量が無くなるのでガワの重さでしかない、中身を出す時も頭に思い描くと取り出せる便利機能。


 こうなると魔法なくても平気だね!って思ったけど魔法陣自体がロストテクノロジーで付与された品物はかなりかなり希少、ダンジョンによっては魔物やモンスターを倒すとドロップするみたいだけど数は少ない、現地人もっと頑張ってよ、作れたら便利だよ。


「日が暮れてきたのかな?ちょっと薄暗くなってきた、考え事しながらだと時間が早いんだよね、マーチそろそろ工房に行こうよ」


 さぁこれから修正しなきゃ、まずはナイフからかな、20本くらいあれば良いかな、日本刀みたいに槌でトントン打ち付けないで型にはめて研ぐだけの簡単仕様。


 なるべく錆びない様にルートラットと呼ばれる魔物の骨を合わせた合金?にした、どういう原理かわからないけど魔物素材には不思議がたくさんある、ルートラットの骨もその一つで水分を弾く性能が付いた、これは錬金の知識なんだけどね。結局様々なサイズのナイフを作ったら60本も出来上がった、まぁ売れば良いだろうし。


 次に取り掛かったのは靴でソールのクッション材は基本スライムなんだけど、そこにタヤの木の樹脂を混ぜるとスライムが硬くなり現世の靴のソールに近づいたので試作品を10足程作成。


 夜道の明かりはハナコガネと言う発光する虫とヒカリゴケを錬金で合わせて発光体は完成、現世の懐中電灯のように発光体の周りに反射する金属を末広がりに加工しガラスをはめて出来上がり、小さなクズ魔石を持ち手にはめ込みスイッチのオンオフを付けた、少し黄色っぽい光だけど十分満足の出来あがり。


「楽しいなぁ、自分で道具を作るって、でも正直頭に思い描くと手が勝手に動くのはやっぱり反則だよね、なんて言うのかな作りがいが無い?ってか自分で作った気がしない、まぁないものねだりなのかもしれないね。」


 ブツブツ言いながら作業を進める私、大工時代も図面を見ながらブツブツ唱えてたっけ、親方に「うるっせぇな、黙って頭に入れれねーのかこの馬鹿!」って言われてたなぁ。


 そんな過去を思い出してはニヤニヤとしている、傍から見れば変な女と思われちゃうだろうな、まぁ思われても別に気にしないけどね。


 その後はヒップバッグのベルトの改良をしたり、保存食用の缶詰を作ったりなんだかんだで時間は過ぎていった。


「ねぇマーチ、この世界の食事ってどんな感じ?お米とかあるのかしら、工房の食堂にはあったからこの世界にも存在はするのよね?でも味噌や醤油は無かったし、マヨネーズもケチャップもソースも無いのはまだ作られてないからなの?」


『そのけちゃっぷとかその他の物は知らないね、工房にあるのはあくまでもこの世界に存在するものだけだから、新たに創り出せば食糧として現れるはずだよ、まぁボクは食べ物の味すら分からないけど興味が無いから』


 食べ物に興味が無いとかなんか寂しいな、マーチ自体それを必要としてないからかもだけど、私は料理を作るのだって好きなんだよ?いつかマーチに食べさせたいけどなんか方法があるのかな?


「ねぇマーチが食べ物を食べる為に何か方法ってないの?ずっと私一人で食べてるけどさ、誰かが居ると美味しさも倍増するのよ。」


 こんな私でも彼氏が居た時は食事が楽しかった、現場から帰ってきてシャワーでスッキリしてからキッチンに二人並んで立つ、ビール片手に現場の愚痴を言い合ってツマミが出来上がる頃にはほろ酔いで、出来たツマミを食べながらテレビを見る、そんなありふれた時間が今はとても恋しい。


『ウーン、多分ボクの入れ物があれば可能かな、ゴーレムとかホムンクルスとか?試した事は無いけど、昔火の精霊がイタズラで空っぽのホムンクルスに入った事があって、その時は食事を摂ることが可能だったって聞いてる、でもねホムンクルスに入っちゃったら感覚もガラッと変わるし一度入ったら体が壊れるまで出れないんだよ、それはちょっと怖いかな、よく分からないけど僕らには寿命が無いからね。』


 やった事が無いから怖いって意味かな、それは確かにわかる。


「そっか、でももし興味があったら教えてね、イケメンのホムンクルスとか創っちゃうから!」


 どうせ一緒にいるならイケメンが良いでしょ、でもマーチの話し方だと少し幼い感じがするからショタっぽくなりそう、グフフッそれもまたなんとも言えないなぁ。


『なんかニヤニヤしてて怖いよ、でも火の精霊はまたどこかに空っぽのホムンクルスがあったら入りたいって言ってたよ、おさけ?って飲み物がホワホワして気持ちいいんだって、ヨーコが気になるなら火の精霊連れてこようか?』


 酒好きの精霊か、火って言うのが私にとってはあまり良いイメージがない、現場でも職人達のタバコの不始末とかめちゃくちゃ怒った記憶がある。


「火かぁ、あんまり好きじゃないかな、どうしても破壊とか暴力的なイメージがあってね、まぁ私の偏見でしかないんだろうけどさ、マーチみたいにほんわかしてて庇護欲が刺激される子なら良いんだけどね。」


『ボクの事子供扱いしないでよね、こう見えてもヨーコよりずっとずっと昔から存在してるんだからねっ!でも火の精霊はボクより強いし便利だよ?』


「強い弱いじゃないのよ、別に争いたい訳じゃないし一緒に居たいだけなんだもの、現地の人はまだよく分からないし秘密にしなきゃいけないことも沢山あるし、それなら私の秘密を知ってる存在が一番好都合でしょ?」


 別に戦争する訳じゃないんだから強さなんていらない、ただ一緒に食べ歩きしたり飲んだくれたり、素敵な景色を見たりして共有できる存在が欲しい。


『なら火の精霊にちゃんとそれを伝えて守らせればいいだけだよ、ボクら精霊は約束を絶対に守るから、守らなきゃ存在が消えてしまうからね。』


 精霊って約束を破っただけで存在が消えるの?それはちょっと...現代人に当てはめたらすぐに滅んでしまいそう。


「んー、火の精霊かぁ、ちょっと抵抗はあるけど会ってみたい気もする、お試しで連れて来てもらうことって出来るの?」


『大丈夫だよ、ボクも火の精霊の様子を見てたら羨ましいって思うかもしれないし、そしたらボクにも入れ物を作ってもらいたいって頼むかもよ?』


 私としてはマーチが一番安心するんだけど、まぁわがままだよね。


「わかった!んじゃ火の精霊を近いうちに連れて来て、もし体を作るにしてもどんな感じか聞きたいし、マーチが羨ましくなるようにしたいし。」


『わかったよ、いつでも呼べるからヨーコのタイミングでボクに教えて』


 あ、すぐに呼べるんだ?なら


「んじゃ今すぐお願いします。」


『ふふっ、ヨーコならそう言うと思ったよ、少し待ってて』


 そう言ってマーチはフッと消えた。


 マーチが消えてからホムンクルスの素材を神眼で工房内から集める、なんだか神眼って検索先生みたい、本当に便利でヴィラーには感謝しかない。


 それから数日工房であれこれ作って過ごしていると


『お待たせヨーコ、火の精霊を連れて来たよ』


『ようっ!ヨーコってあんたか?オレは火の精霊オクト、入れ物を作ってくれるかもってマーチから聞いてきたんだがマジか?またあの美味い酒が飲めるなんて楽しみで仕方ないぜ!』


 あ~やっぱりオラオラしてる、まぁ輩タイプには職人相手に慣れてるから問題ないけどさ。


「そうよ洋子は私の名前、よろしくねオクト。早速なんだけどホムンクルスを作るのは間違いなく出来ると思うわ、でもねアナタの事をまだよく知らないの、だから色々お話をしましょう、その上で私がアナタにピッタリの体をあげる。」


『そっか、そうだよなっ、確かにあんたの言う通りだ』


「あんたじゃない洋子よ、次にあんたって言ったら体を作ってあげないからねっ」


『ごっごめん、悪かったよ、ちょっと嬉しくてあんたなんて失礼な事言っちまった、ヨーコ許してくれください。』


 ちゃんと謝れるのは良い事ね、謝ってくれたから水に流しましょう。


 それからしばらくマーチ、オクト、私で色んな事を話した、どんな酒が好きとか食べ物が好きとか、好きな色や音楽まで色々とね、前回イタズラで入った体はこの世界での平均的な成人男性の見た目だったと教えてくれた。


 驚いた事にその時に初めてお金の存在を知ったみたいで、お金を稼ぐために冒険者登録をして活動までしていたって言うんだから好奇心が旺盛で活発な性格が読み取れた、体が出来たらまた冒険者になりたいと希望をもらったのでしっかりと筋力のある体を創ってあげたい。


「それでホムンクルス自体の耐久年数なんだけど、調べたら50年くらいが限界なの、それでも良い?オクト達からしたらあっという間の時間でしかないかもしれないけど大丈夫?」


『全然大丈夫だぜ、寧ろ50年ももつなら色々やりたい事が出来るってもんさ、前のは10年で動かなくなったしな、確かに俺たちからしたら50年はあっという間だ、でも人族には長い時間なんだろ?ヨーコの時間を無駄にはしたくねぇ、だから俺は50年間ヨーコの為に生きるよ、色々楽しく過ごそうぜ。』


 くっ、私の為に生きる?前世でも言われた事がないよそんなセリフ、多分オクト本人に恋心や下心なんて無いのだろうけど素直すぎる言葉が私の荒んだ心にグサッと突き刺さる。


「そう、ありがとう。それじゃオクトの体のイメージなんだけど筋肉質でガッチリした体型で良いよね、それならイメージしやすいわ。」


 オクトに言われた言葉に「そんなの言われ慣れてるわ」的な態度で(内心ドッキドキ)クールに対応してみた。


 気持ちを切り替えてオクトの体を考えた、散々ガテン系の職人を見てきた私からしたら容易いイメージだ、現場の足場屋さんの兄さん風にワイルドマッチョで、短髪が似合うイケメンにしよう、けどドワーフ姐さんってあだ名つけたのもアイツらなのよね、なんか思い出したらムカついてきた。


『あ、俺なんか怒らせるようなこと言っちまったか、ごめんもうちょっと勉強して気をつけるよ。』


 私のムカつきが態度に出てしまったのかオクトがしゅんとしたトーンでそんな事を言っている、オクトは何も悪くないのに落ち込ませてしまった。


「あ、違うよっオクトは何も悪くない、悪い事なんて言ってないししてないから気にしないで、ちょっと私が昔の事思い出しただけだから、こちらこそごめんなさい。」


『そっか、なら良かった、俺色々知らない事が多いからヨーコを怒らせちまう時があるかもしれない、でもその時に教えてくれたらちゃんと直すから教えて欲しい、手間かも知れんけど頼む。』


 あ~罪悪感が押し寄せる、オクトのちょっと荒いけど素直な言葉に一瞬で私の母性が刺激された、オクトって第一印象と違って素直な子供みたい、そんなお願いされたらしっかり育ててあげなきゃって思っちゃう。


「うん、任せて、オクトを立派な大人に育ててあげるから安心ししてね。」


『なんかヨーコってチョロすぎない?』


 おいコラッ!マーチ聞こえてるぞ、舐めたこと言ってっと私の48の必殺技出すぞ?


「んじゃホムンクルスの作製にとりかかるわね」


 錬金釜にホムンクルスの素材を入れてから体のイメージを頭に描いて魔力を通す、ガワが出来たら培養液の中に入れて内臓をイメージ、培養機にも錬金釜と同じ機能が付いていて内臓をイメージすると錬金術が作り出す。


 内外が馴染むまでしばらく時間が掛かるけどそれは仕方ない、未成熟だと耐久年数が減ってしまうし体の機能も低くなるからね、オクトにも時間の事は伝えてあるから大丈夫、マーチも興味深いらしく培養液内のホムンクルスの前でフワフワして離れないでいた。


「多分工房内の時間で約一年、出来上がったらまたマーチに呼んでもらうからオクトは好きな所に行ってきて良いよ」


『ん?ヨーコ達と一緒に居たらダメか?』


「全然ダメじゃないよ、結構時間が掛かるから退屈じゃないかって思っただけだから、一緒に居てくれるなら私も楽しいし大歓迎だよ。」


『ヨーコ、工房であと半日過ごしたら陽が昇るよ?寝なくて大丈夫?』


 夢中になり過ぎて日数がかなり経過していた事に驚いた私はシャワーを浴びてベットにイン、あっという間に爆睡モード突入した。


 半日後、工房内の仮眠室から出た私は眠気を覚ましで顔を洗って、朝食を多めにしっかり食べて準備万端で工房から飛び出した。


「うわっ眩しい、今日も良い天気ね朝日が昇るのを見るなんて久しぶり、なんか体が元気になる、今日も歩くよぉ」


 この身体のポテンシャルなのか足取りが軽い、前世とは違い過ぎる歩幅でスイスイ歩ける。


 工房を出る前に少し気になる点があったんだけど、私が工房を離れている時って内部の時間は経過するのかマーチに聞いたら「さっきホムンクルスが出来るまで1年くらいって自分で言ってたから理解してるのかと思った」と呆れた感じで言われた、結論工房内は私に関わらず時間経過するようだ。


「ってか、光が一つ増えてない?緑がマーチで赤がオクト、んでその後ろの黄色?いや、金色?の光…アナタは誰?」


 明らかにずっといましたが何か?みたいな雰囲気で佇んでいる謎の光、いや、そんな雰囲気出したって私も馬鹿だけど馬鹿じゃないんだからね!


『ボクは絶対バレるからやめなよって言ったんだよ、でもオクトがさ…』


 オクト何したのよ、私はオクトの方に目線を送る。


『ヨーコごめん、俺体が出来るって嬉しくなって他の連中に自慢してたんだ、そしたらコイツらが自分達も欲しいってきかなくて、だからヨーコに気づかれるまで隠れてついてこいって。』


「あははっ、なんで隠れさせるのよ、普通に来れば良かったじゃない、ん?ちょっと待って?さっきオクトは「コイツら」って言ってたけど1人しかいないじゃないのよ、もう1人はどこにいるの?」


『ヨーコの後ろ。』


 それを聞いて私はバッと後ろを見た、そこには空の色と同化したような水色の光があり、光のクセにビクッとしたそぶりをしていた。


『ワッ、ワタシは土と豊穣の精霊でしゅっ!あっ!』


 金色の光が喋ったが噛んだね、うん、思いっきり噛んだね、なんとなく女の子みたいな雰囲気が伝わってきた土の精霊、可愛らしいね。


『ふふっ、見つかっちゃったわね、私は水と秩序の精霊、黙って着いてきてごめんなさい。』


 土の精霊よりは落ち着いた雰囲気の水の精霊、なんだろ、まだよく分からないのに色々負けてる気がするのは気の所為なのだろうか、なんというか色気ムンムンな雰囲気がする。


「えっと二人ともオクトが自慢したから会いに来てくれたの?ようこそいらっしゃいませ、私は長谷川洋子よ、まぁ色々あってこの世界に来たのだけどよろしくね。」


 軽めの挨拶をして、二人の様子を見る、土の精霊はオクトの後ろからちょっとはみ出してこっちを覗いてる感じ、水の精霊は私の周りをクルクルと観察している様子。


『あのね、ワタシも体が欲しいの、オクトが前に話してくれたお話が楽しそうだったし、ワタシの加護で大地から出てきた果物とか食べてみたいの、ワタシは触れる事も出来ないから色々な物に触れてみたいの、ヨーコお姉ちゃんを守る事だってできりゅよ!あっぁぁまたやっちゃった、オクト~たしゅけて~』


 土の精霊が一生懸命なのはめちゃくちゃ伝わったし、めちゃくちゃ可愛いらしいのも伝わった、めちゃくちゃ噛んでたからね、それにヨーコお姉ちゃんか…妹の小さい頃を思い出しちゃったよ、しかも守ってくれるのかぁ、健気だなぁ抱きしめたいわ~。


『はい教えてくれてありがとうね、大丈夫よあなたにもちゃんと可愛らしい体作ってあげるから、女の子のモデルで良いのかしら?』


 精霊の性別があるのかわからん。


『ボクとオクトはそれぞれの属性男神様の系統から生まれたから人族で言うなら男で、土の精霊は大地母神様の系統で水の精霊は水の女神様の系統だから女で間違いないよ。』


 なるほど、生み出した神様によって男女別れるのね、ふむふむ。


「それじゃ改めて二人の名前を教えてちょうだい、土の精霊とか水の精霊とか呼びづらいからね」


『ボクとオクト、水の精霊は名前があるけど土の精霊は一番若いから名前がまだ無いんだ、もし良かったらヨーコが名前を考えてよ。』


 オッフゥゥ、名付けとか責任重大じゃない?大丈夫かなぁ


「ウーン、因みに水の精霊さんのお名前は?」


 私の周りをウロウロしていた水の精霊に聞かないと万が一名前が被ったら悪いしね。


『あら、そう言えば名乗って無かったわね、ワタシの名前はジューン、よろしくねヨーコ。』


「えぇジューンこちらこそよろしくね。」


 マーチ、オクト、ジューン……どっかで聞いたなぁ…あっ!


「精霊の名前ってなんか法則とかあるの?例えば何月生まれとか、てかこの世界に何月のとか暦的な仕切りみたいなのあるの?」


『ライカ様に聞いた話だと時間も暦も同じ世界から来るってヨーコの事聞いてるよ、それで例えると多分土の精霊は五の月に生まれた。』


 五月か確か「メイ」だったかな、英語の成績悪かったからなぁ私、でも「メイちゃん」って可愛いくない?女の子っぽいし、よしっ。


「それじゃ土の精霊ちゃんの名前は「メイ」で、気に入ってくれたら嬉しいけど気に入らなかったら言ってね、考え直すから。」


『はいっ、ワタシはメイでしゅっ、すっごく嬉しい、ありがとうヨーコお姉ちゃん、マーチ、オクト、ジューン、メイみんなと同じに名前が出来たよ、嬉しい嬉しいよぉ』


 かぁぁっ、クッソ可愛ええ、子供産んでないけど乳が出そうになった。


『良かったわねぇメイ、呼びやすいし可愛らしい名前を付けてもらえて、ちゃんと大地のお母様にお伝えするのよ、ヨーコ素敵な名前をありがとう。』


 ジューンが優しいトーンで私にお礼を言ってきた、まぁ気に入ってもらえたなら嬉しいけど、なんか照れる。


「なんか賑やかになって来たね、正直この世界に来た時は不安しか無かったけど、こうやってお話しが出来るみんなが居てくれて本当に助かるよ、ありがとうみんな。」


『そんな気にすることないぜ、俺たちがヨーコに最初に真名を名乗った時点で契約精霊になったんだからよ、ヨーコは俺たちの主様みたいなもんだ。』


 何それ聞いてないよ、バッとマーチの方を見るとシュッとマーチが逃げた、真名って何さ、もしかして今呼んでる名前がそうなの?


『精霊の真名はね、信頼した者にしか伝えちゃいけないのよ、真名を教えた段階でワタシ達は全てをさらけ出したと同様なの、それを伝えた者が真名を呼び返したら契約が成立、その者が消えて無くなるまでワタシ達は共に生きる定めなの、だから末永くよろしくねヨーコ。』


「えぇー私で良いの?大丈夫かなぁ」


『『『ヨーコが良いの!』』』


 全員の声が揃った。まぁ私は大歓迎だけどさ。


『マーチ捕まえてきたぜ、どうするヨーコ』


 オクトの光がマーチを引きづってきた。


「なんで教えてくれなかったのかなぁ、そんな重要なこと、マーチ言い訳を聞いてあげるから話してごらん?」


『言い訳なんてないよ、ボクも契約者が出来たってみんなに自慢してたから、それに数が増えても一番最初に契約したのはボクなんだからね、その辺の序列はもう決まってるんだ、ボクがヨーコの一番なんだからねっ、今更契約解除なんて出来ないんだからねっ!』


 あらまぁ、マーチにも子供っぽい所があるのねぇ、よーし洋子様が頭を撫でてあげよう、ムツゴロウばりにヨシヨシしてあげよう、でもね大切な事はちゃんと言うように躾ないとだめね。


「マーチの気持ちはわかったよ、でもねそう言う事はちゃんと先に教えてね、今後長く一緒にいる仲間なんだし大切な事だから。」


『わかったよ、ごめんなさい。』


 マーチの謝罪の後はひたすら街を目指して南に歩いた、その間もジューンとメイの好みを聞いたり使ってみたい武器や着てみたい洋服など、おしゃべりしながら歩き続けた。


『そろそろ工房に入ろうか、今日の昼はあまり距離が稼げなかったけど、工房で休んで夜も動くんだよね』


「うん、じゃぁそうしよう」


 私と四つの光は工房へ入った。



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