ダンジョンアタック。
「よしっ!準備万端ねっ!馬車も1台追加したし、みんな大丈夫?」
「問題ねぇ、んじゃギルド行くか。」
「ネロ、マイン、レーラ、留守は頼んだわよ、緊急時はコールしてね。」
「かしこまりました、行ってらっしゃいませ皆様。」
「「行ってらっしゃいなのです!」」
2台の馬車に乗り込みギルドに向かう、街にはまだ子供達の姿が見えない、今頃は市場の手伝いしてるんだろうな。
「何?あの人達。」
ギルドの前には数台の馬車と見知った顔の衛兵さんがズラりと並んでいる。
「すみません、エレメントです、今日から特殊任務でギルドに寄ったのですけれど、なんの騒ぎですか?」
知り合いの衛兵さんに聞くと
「ギルドで不正があったようだ、あそこに領主様の代理様が居るから聞いてみると良い。」
衛兵に言われた方に視線を送るとガトー達と話をする青年がいた。
「ガトーおはよう、なんか凄い事になってるね、どうしたの?」
「おぉ嬢ちゃん、いやな、ギルドマスターが不正と恐喝、殺人と殺人未遂で捕まったらしい、んでこちらの子爵様が臨時で対応してくれてんだ、領主様は昨日のうちに王都に向かったからだとよ。」
ガトーと話しをしていると、子爵様がこちらに気付いて手招きする。
「君達がエレメントかね、ラルク様より伺っている、私は代官のシルバリア・ルードだ、臨時でギルドの対応をしている、君達と彼等が大切なクエストを任されているのは知っている、ギルドは新しいマスターが来るまで封鎖するが、君達はそのまま任務を遂行してくれたまえ、何か質問は?」
「ルード様、領主様からこちらをギルドに1台渡すように言われております、ご説明が必要であればいたしますが。」
昨日エリックに言われてるからな、使用説明した方が良いかな?
「うむ、ラルク様より聞いている、あまり多くの説明は不要だ、1の鐘が鳴る頃にスイッチを入れ、コールを待てと言われている、間違いないか?」
それまでに王族に説明するって事かな。
「間違いないかと、それでお願いします。」
「わかった、ではその様にしよう、手続きはこちらでやっておく、出発するといい。」
追加で地図にダンジョンの座標を記した物を渡し、ドワーフ達が頼んだ物を持って来たら届けて欲しいとお願いをした。
「それじゃガトー行こうか、移動の馬車はこれ使って、ガトー達が用意した荷馬車は要らないわ、馬はそのまま使いたいからこの馬車に移してね。」
「おっ、おう……すげえ馬車だな、御者でギルドから1人出してもらってんだ、そいつに任せて良いか?今連れて来る。」
ガトーが荷馬車の御者席にいた職員を連れて来た。
「初めましてっすかね、自分ディレイって言います、ギルド職員なんすけど、今回自分だけしか同行出来ないっすが、皆さんの邪魔にならないように頑張るのでよろしくっす。」
なんとまぁ下っ端キャラを取って付けたようなディレイ、悪い人じゃ無さそうだし大丈夫かな。
「はい、私はヨーコ、よろしくお願いしますね。」
2台の馬車にそれぞれ乗り込み出発となった。
「後ろに着いていきます、先導お願いするっす。」
マーチが手をあげて応えた、マーチの話しだと、大峡谷までこの馬車なら30分程で到着すると聞いている、通常の馬車が10キロ無いくらいの速度でノロノロ運転なのに対し、この馬車の最高時速は馬にもよるが50キロくらい出る、今は後ろも居るので30キロ程だけど、充分に速い。
「ヨーコ、この速度だと多分1時間は掛かるから1度馬を休ませたい、良いかな?」
「大丈夫よ、マーチに任せるわ。」
現在の時刻は朝の6時ちょうど、出発してから15分程過ぎた辺り、後ろの馬車には馬の疲労軽減の魔法陣が付いていない、これが終わったらガトー達に売るつもりだから過剰なスペックにはしなかった。
それから15分程過ぎた辺りで馬休憩、距離は半分を少し過ぎた辺りだ。
「ネロがみんなの分もサンドイッチ作ってくれたの忘れてた、ごめんね、食べる?」
「…………。」
あれ?ガトー達どした?
「あの、すいません、この馬車なんなんすか?」
「え?馬車です……けど?」
「いや、嬢ちゃん、これ確かに馬車だけどよ、揺れがあんまりねぇんだ、僅かに揺れはするが、普通あの速さで馬車が走ったら今頃車輪の1つ2つ飛んでってもおかしくねぇ、それに中のシートがあったけぇし、倒れるし、俺たち何に乗ってんのかわかんなくなっちまったぞ。」
そりゃ「住める馬車」を目指して作ったからね、居住空間に関しては自信があるよ。
「今職人街のドワーフ達が同じ様なの作ってるよ、これは試作品第2号をかっぱらって来ただけ、そんなに違うかな……」
「「違う!!」」
「でも快適でしょ?あんまり速度出すと馬が潰れちゃうけど、今ジューンに馬を回復してもらってるから、今のペースで行くつもりだよ。」
違う違うそうじゃ、そうじゃないって歌の歌詞みたいな独り言をボソッとディレイが呟いた。
「えっとっすね……多分今までの常識がひっくり返ったんすよ、そうっすよね?自分も御者やって初めて「怖い」って思ったっすもん、風切音とかやべぇっすよ?」
まぁ最初はね、でも最近じゃエリックの御者さんにめっちゃ熱烈に感謝されたよ?何度もありがとうって。それよりも。
「ところでメルティとドムさんは?」
「ドムはなんか知らねぇけど現実逃避して神様に祈ってるぞ、メルティなんか俺が驚いてたら「ヨーコだから」ってドヤ顔してからシート倒して寝た。」
なんだそれ、私だからとは?
「そろそろ出発しようか、ヨーコ大丈夫そうかな、そっちの馬車。」
「ディレイさん、大丈夫そう?」
「まだイマイチ速度に慣れないっすけど行けるっすよ。」
ガトーはまだなんか言いたそうな雰囲気だったけど、無視して出発!
休憩後20分程で現地到着、現在6時50分、マーチに入り口の場所を確認してメイちゃんと図面を見る。
大体の見当がついたので次は崖からの測量、簡易的だが間違って崖をぶち抜いたりしない様にする為の予防策だ。
「ガトー、オクト達と一緒に周辺の警戒お願いね、この線からこっちは危ないから来ないでね、それじゃメイちゃんやっちゃおうか。」
メイちゃんにポイントを指示、初めて見るメイちゃんの土魔法、同じ事を人間でも出来ると聞いているから、今後の下水道工事の参考にしたい。
メイちゃんに指示したのは幅10メートル、高さ4メートル、長さ100メートルで勾配は15パーセント、階段にはしない、100メートル先で横に抜け、フロアを作る、縦100メートル、横60メートル、高さ4メートルの空間、同じ工程を2回繰り返して地下3フロアで最終フロアの奥に幅5メートル、高さ4メートルの下り階段を作り、ダンジョンの入り口と同じ高さになったらフラットな通路にして調整。
各通路とフロアに硬化の魔法陣と固定の魔法陣、どちらか1つでも良かったけど保険のために2つ合わせた。
メイちゃんには空気穴を崖に向かって10メートル毎開けてもらい、今後は吸排気ダクトにする予定。
ここまでするのに1時間掛からなかった、マジでメイちゃんが凄い、土魔法じゃなくてメイちゃんが凄い、大事な事だから2回言いました。
周辺に誰も居ない事を確認して各フロアの角に4ヶ所に、リュックから工房で作っておいた煉瓦製の泉を取り出し設置、メイちゃんに排水溝を作ってもらい、下水管に排水する様にした。
ジューンの協力で地下水脈から直接吸い上げる事が可能だったので、吸い上げには魔法陣を使用、下水管も通しフロアには穴がポコポコ空いている、その穴から排水や排泄物が浄化槽へ集まる、下水管内で詰まらないように、浄化槽内で処理された水が巡回する様にし、更に最終浄化槽で浄化の魔法陣を経由した処理水が川に排水される。
最後にダンジョン入り口付近に魔物除けの魔法陣を展開、保険にフロアからの通路口にも同じく展開しておく、照明以外は全て完了、時間を見ると8時40分、重機を軽く超えたスピードだった。
うわ、眩しい、頭に付けていたライトを外して背伸びをした。
「…………。」
オクトとマーチ以外の全員がこちらを見ている、仲間にしてほしそうだ……じゃなくて、なんとも言えない顔をして、ディレイとドムは真っ青に、ガトーは諦めの表情、メルティだけ笑顔だった。
「もしかして終わったんすか?」
「後は照明と中身ね。」
「中身ってなんすか?」
「ちょっとお茶休憩したら説明するわね。」
自分達の馬車に行き、馬車の後部ハッチを開けた、中から魔石コンロと折り畳みのテーブルやベンチを取り出し設置、お茶の準備を始めると
「後ろ開くんだ!かっちょいいね!私達が乗って来たのも開くの?どうやるか教えて!」
メルティが私の腕をギュッと抱き締めてはしゃぐから教えたら
「やばいじゃんこれ、誰もこんな事思いつかないよ!今日1番驚いた、それに下が収納になってるんだね?凄いじゃん!」
今日イチがそこかよって思ったけど、初めて見たら驚くわな、確かに。
「気に入ったなら交渉して安く譲ってもらう?多分そのくらい稼いでるでしょ?」
金貨20枚くらいならあの連中にゴリ押しして来るけど。
「どっどれくらいだ?」
「ん~友達価格で金貨20枚くらいかな、試作品だからさ、それに何年かしたらもっと高性能のやつ出るかもよ?」
「買う、今すぐ買う、なんなら個人所有で買いたいくらいだ。」
ガトーが身を乗り出して目をギラギラさせている。
「ダメー、個人所有はダメだよガトーっち、みんなで買ってみんなで使おうよ!私金貨8枚迄なら出すよ!」
「悪ぃなちょっと興奮した、今後はティンダーからダンジョンの行き来が多くなるだろうから、馬車は考えてたんだ、よしっ!パーティー資金から出そう、ドムもそれで良いな?」
「もう前の馬車には戻れない身体にされたので、反対なんてしませんよ、寧ろ買ってくれとおねだりしようかと思ったくらいです。」
いやぁキッついだろ、ドムのおねだりとか、でもまぁモニターにはちょうどいいかな。
「了解、交渉するね、大事に使ってあげてね。」
ガトー達は3人でハイタッチ、その後は馬車の装置の使用説明とタイヤの交換時期などを説明して終わり。
「さて、次は私達のメイちゃんの力作を見て貰おうかしら、みんな頭にこれ着けて、ここ押すと光るから、中はまだ暗いから足元に気をつけてね。」
いざ!私達の力作地下街へ!
「なんだか凄いっすね、大地に喰われる感がやばいっす。」
「ここで驚いてたら後半持たないわよ?」
更に地下道を進む。
「階段じゃねぇんだな、なんでだ?面倒くさかったか?」
「違うわよ、その答えはもう少しで見えてくるわ。」
降り切った先にはガラんとした空間、これが3フロアある。
「ここは?」
「第1フロア、ここは飲食店や酒場を作る予定なの、これと同じのが地下に2フロアあって、第2フロアは武器屋とかアイテム、保存食なんかを扱うフロアにして、最下層はティンダーの冒険者ギルド出張所にする計画よ。」
みんなが想像出来るように説明したつもり、それぞれがここにどんな店が欲しいとか話し始めた。
「ここまで説明したら何となくわかるんじゃない?なぜ通路が階段じゃないかって。」
「荷車で物資の運搬が出来るからか!だからあんなに広いんだな、馬鹿な俺でもわかったぜ!なるほどな、確かに大量のダンジョン産の素材を運ぶのは、荷車が絶対必要だ階段でちまちま運んでらんねぇよ。」
「角にあるのは水場っすか?」
「そう、地下水脈がこの下を通っていたから、水は比較的豊富ね、地下水脈迄穴を開けて吸い上げてるの、排水や排泄物はその穴の中を巡回してから、浄化されて川に流すの。」
みんな周りをキョロキョロしながら最下層まで降りてきた。
「ここが1番下のフロアね、ここにギルドカウンターを設置して、買取カウンターは向こうね、奥に小部屋を幾つか作ったから素材ごとの分別が可能よ、更に奥には各部屋に繋がる通路にしたから移動も楽に出来ると思う。」
「ティンダーの支部よりしっかりしていて、使い易そうな感じっすね、なるほど確かに動き易いっす、しかしこれをあの短時間で……やべぇっすね。」
妄想を膨らませながら、いよいよダンジョンの入り口へ。
「これが……松明とか灯りは必須だね、ヨーコ、この頭のやつも売って?」
「あげるわよ、でもクズ魔石は予備を持ってた方が良いよ、灯りを点けっぱなして5日くらいしか持たないからね、注意しないとダンジョンで真っ暗なんて事もあるから。このくらいの欠片でも半日は光るから。」
ダンジョンアタックはもう少し後からなので、1度地上に戻る。
「少し早いけど昼食にしましょうか、食べ終わる頃には連絡が来るでしょうし。」
馬車からネロの作ってくれた弁当を出し、魔石コンロでコンソメスープの素を溶かす、別で炒めた丸ネギをスープに入れてオニオンスープの出来上がり。
「一応これ野営っすよね?もう驚かないっす、メシが美味いのは大歓迎っすから。」
食事をしながらタブレットの電源を入れた、その瞬間コールが鳴る。
「はい、ヨーコです。」
「エリックだ、繋がらんから焦ったぞ、ダンジョンアタックは予定通り出来そうか?」
「今電源入れたので、ご心配おかけしました、はい、ダンジョンアタックは問題無しです、ギルドにいた代官様にもタブレット渡してあります、1の鐘の頃にスイッチ入ると思いますが。」
「予定通り進めてくれ、イーグル王と公爵様達には説明済だ、皆様楽しみにしてらっしゃる、言葉遣いも酷い暴言では無い限りは不問としてくれるそうだが気を付けてくれ。」
無理難題じゃない限りは対応するさ。
「エリック、ガトーが聞きたい事があるって言ってるけど大丈夫?」
「あぁ、構わない。」
「領主様、灰色の剣のガトーでございます、ギルドマスターがあんな事になりましたが、次のマスターはもうお決まりなのですか?冒険者が皆不安がっておりましたので。」
ガトーも気を使っていつもの喋り方じゃないな、エリックなら大丈夫そうなのに。
「うむ、それはもっともだ、今回は我が国初のダンジョンという事もあり、グランドマスターが代行してくれる、王都ギルド本部にもイーグル王にも許可はいただいた、安心するといい、早ければ本日中にもティンダーに着くだろう。」
「ありがとうございます。」
グランドマスターって言うくらいだから偉い人?なんだろうな。
「ヨーコ、後ほどあちらのタブレットのスイッチも入れておけ、イーグル王のあの表情だと待ちきれない様子だった、少し早くなるかもしれんからな。」
「わかりました、撮影はディレイさんにお願いしても平気ですか?」
「なんだヨーコが撮らないのか?」
「いや、私も戦闘するし」
「ふははっ!足手まといにならんようにな!予定では明日ティンダーに戻る、戻ったらまた連絡する。」
「別に連絡しなくていいし、切りますよ~」
こっちは昼食中だっちゅーの、帰ったら電話するって私の彼氏かよ、まったく。
「嬢ちゃん、不敬罪って知ってっか?」
「うん、知ってる、あ、でもエリックは
友達だから大丈夫、いつもあんな感じだから。」
「ヨーコさんってヤバいっすね、ある意味尊敬するっすよ。」
だからエリックは大丈夫なの!
昼食も終わる頃、ティンダーの方角から馬車が来た、あれ?ドワーフ達じゃん。
「え?アンタらが来てくれたの?」
「おいっ!半分持って来たぞ!」
「来たぞ!持って半分おいっ!」
「早いじゃん!流石ドワーフだね、降ろすの手伝おうか?オクト~仮設小屋降ろすの手伝って~」
「おいっ!大丈夫だ!俺達の仕事!」
「俺達の仕事!大丈夫だ!おいっ!」
ドワーフ達が荷台から仮設小屋を2人で降ろし始めた、流石パワーがある、なんか変な掛け声がクセになりそう、あ?照明もあんじゃん、ラッキー!
「助かるよ、これお礼ね、隠れて飲みなよ?1人1本ね。」
「うおっ!神酒じゃ!うひょー!」
「うひょー!神酒じゃ!うおっ!」
ウイスキーのボトルを大事そうに抱えて飛び跳ねるドワーフ、本当に単純、だけど憎めないなぁ~こっちが何してるとか一切聞かずに、荷降ろしを終えてすぐに荷馬車で帰って行った。
「ドワーフって気難しいって有名なんすけどね、まるで子供っすね。」
ディレイが半笑いでドワーフを見送っていた。
「あ、でもまいったな、荷物の見張り頼めば良かったかも、馬車は地下に入れたら大丈夫だけど…」
「それなら自分が見てるっすよ、タブレットの使い方もまだよくわかってないっすから」
「良いの?それなら仮設小屋1戸建てるから、それ使ってください、テーブルとベンチも搬入しますね!」
マーチに手を借りてあっという間に仮設小屋を建てた。
「これもまた凄まじいっすね、助かるっすよ、テント面倒くさかったんで。」
魔石コンロとお茶のセットにクッキーもサービスしたよ、ぼっちは寂しいでしょ?
「それじゃそろそろ地下に行きましょうか、ディレイさん行ってきますね。」
地下に進む私達、マーチに言われて作った便利な魔道具も数々あるし、何か突っ込まれたらダンジョン産で躱す、帝国出身がバレたらダンジョンの事は話せるが、帝国内部の事は秘匿魔法で縛られていると話せ、これはエリックの案、あんまり嘘は重ねたくないけどこればっかりはね……。
最下層に到着するとメルティが
「ヨーコ、どうしよう、オシッコしたい。」
それは一大事だ!男性陣にはダンジョンの入り口まで行ってもらい、野営用の仮設トイレテントを穴の上に作った、メルティはサッと中に入って用を足す、工房で作った柔らかい紙も持たせたので大丈夫だろう。
「ヨーコ、この紙で拭いていいの?」
「それ用の紙だもの、大丈夫よ使って。」
水場で手を洗って男性陣に合流した。
「待機中に配置決めといたぜ、前衛を俺とジューン、中衛をドム、メルティ、ヨーコ、メイ、後衛をガトーとマーチだ、ダンジョンはバックアタックもあるからよ、どっちから来ても前衛張れるようにな。」
「流石オクト、頼りになるわ、でも私は撮影班だから約立たずだけど、ガッツリ照明背負っとくね。」
私はリュックに連結するライトを8個付けた、かなり明るい、距離よりも広範囲に重点を置いたライト、戦闘時は邪魔にならないようにしなきゃ。
「ヨーコ、あれ使ったら?」
「ん?アレってマッピー君の事?」
「うん、今放しておけば勝手に先行してくれるから、1階層周り切る頃には5階層くらいまで終わってると思うよ。」
私はリュックからバインダーに鉛筆が2本付いた物を出し、続けて2匹のネズミの形をした金属を出した、これは「サーチ」の魔法陣を組み込んだ魔道具で、左右の壁を2匹が壁伝いに走り回り、その情報をバインダーに送る、それを羊皮紙に自動でマッピングする、帝国では当たり前のダンジョンアイテムだとマーチが言っていた。
マーチは色々知っている、特に帝国のダンジョンの事、なぜかは知らないが、その事については聞かないようにしている、彼が話したがらないからだ。
マッピー君を放すと物凄いスピードで走ってった、少し遅れて羊皮紙にスラスラとマッピングされて行く。
「わはははっ!そりゃぁ便利だ、このバツや黒丸、星印はなんだ?」
「あぁ、そのバツは魔物、黒丸はトラップ、星印は宝箱だったかな、今回出る宝箱は灰色の剣に全部差し上げるよ、初回特典があるからそこそこ良いのが出るはずさ。」
「マーチ様太っ腹、好きになっちゃう、もう好きだけど~」
多分だが、マーチはダンジョン覗きに行った時に、ある程度把握してるんでは無いかと考える、宝箱の中身も把握していそうだ。
ピリピリピリピリ~ピリピリピリピリ~
ダンジョン内に着信音が響く。
「はい、エレメントのヨーコです。」
「あ~あ~聞こえるか、こちらエリックだ、これより王国初のダンジョンアタックを開始したいと思う、準備は良いかね?」
「はい、いつでもどうぞ!」
「どうぞイーグル王も激励の一言を。」
「エレメントの諸君、灰色の剣の諸君、余はイーグル王国、初代王イーグルだ、諸君らは王国初のダンジョンの初めての探索者である、健闘を期待している。」
「はいっ!ありがたき幸せ、光栄に存じます、それでは行ってまいります。」
マッピー君が1階層のマッピングを終えた、羊皮紙を取り替え次の階に進むマッピー君、凡そ15分くらいでフロアを回ったんだな、ちょっと注意しておかなきゃ。
「メイちゃん、マップの読み上げオクトにしてあげて。」
「うん、わかったよお姉ちゃん。」
メイちゃんがオクトとジューンの間に行きマップを読み上げる、私は画像の飛び具合を確認する。
「陛下、画像は届いておりますでしょうか?」
「うむ、見えておる、ダンジョンとは不思議じゃのう、まるで人工物の様な見た目じゃな、余は洞窟の様な物を想像しておった。」
確かにその通りだ、だから私は神が創りし遊技場の話をすると、王様達は声をあげて驚いていた。
「ヨーコエンカウントする、注意してくれ、来るぞ。」
「ただいま魔物とエンカウントしました、魔物はブラックウルフ2頭、ウルフ型の魔物の中では下位に位置する魔物です、噛まれると毒を受けることもあります。」
タブレットの向こうでは「うおっ!」と声が出た、私はジューンが撲殺する所をしっかりと収め、ジューンとだけは絶対喧嘩しないどこって思ったよ。
「ダンジョンの魔物は倒しても死体が残りません、魔石とたまに系統の素材を落とします、今回は魔石のみでした。」
魔石を手に取りモニターに写す。
「中々の大きさではないか、これが浅い階層で出るなら期待が持てるな。」
「そうですな、聖皇国や帝国に負けない資源となるでしょう。」
その後も数回のエンカウントをしたが問題なく倒した、そして
「陛下、ご覧下さい、宝箱がございます、シーフが罠を確認しております、罠は無いようです、中身を確認いたします。」
宝箱を開けるとベルトに着けるようなポーチが複数個出てきた。
「シーフが鑑定したところ空間拡張の付与されたポーチです、これ1つで荷馬車3台分の収納が可能です、こちらはどうされますか?」
「鑑定持ちのシーフか、ダンジョンにはなくてはならない存在だな。」
「随分と無造作に宝箱が置かれているな、神の遊技場か…神からしたら宝箱なんぞ、些細な物なのかもしれぬな。」
「素晴らしいアイテムが出るのだなぁ、あれは彼等の物なのだろう?羨ましい……。」
「エリックだ、王太子殿下がとても興味を示している、君達にはすまないが、そのポーチを譲って貰えないだろうか」
私はメルティの手に落書きをした「あと3個入ってる」と、メルティは投げキッスをして来た、エリックの言葉に落ち込んでいたのに一気に機嫌が良くなった。
「はい、王太子殿下のお役に立てるのならこのポーチも本望でしょう、大切に保管しておきます。」
マッピー君が3階層のマッピングを終わらせた、私達も1階層を抜け2階層に突入した。
「陛下、本日はゲートキーパーがいる5階層まで向かいます、お付き合いいただけますでしょうか?」
「ハッハッハ、気遣いに感謝だが余もワクワクしているのだ、王子も釘付けになっておる、こちらは気にせず向かうが良い。」
その後は宝箱を4つ、そのうちの1つが大当たりで、とても大きな美しい魔石、これが出た時はどよめきが起きた、こちらも王様に献上の約束をして、いよいよゲートキーパーとの対決だ。
「陛下、これからゲートキーパーとの戦いになります、ゲートキーパーとはこの先に進むための階段を護る魔物で比較的強い魔物がおります、ダンジョンのゲートキーパーは5層毎に存在します、倒すと転移陣と人数分の攻略リングが出ます。」
「ふむ、やはり詳しいな、ラルクからは聞いている、帝国の冒険者だったのだろう?何やら秘匿魔法によって制限されているとも聞いてもいる故、詳しくは聞かぬが其方らの目から見てこのダンジョンはどうじゃ?」
「極上物かと、漁り尽くされた帝国のダンジョンよりも魔石の質も良く、王国に更なる繁栄をもたらすかと、ただ1つ懸念点があるなら帝国ダンジョンに比べ魔物の質が高い、即ち強いので半端な冒険者はすぐに養分になるでしょう。」
「喜ばしくもあるが、それなりの覚悟も必要という事か、わかったゲートキーパーを倒すところを余に見せるがよい。」
「はいっ!」
そしてドアを開けると、出てきた魔物はトカゲ型の魔物、神眼先生の解説とマーチから聞いていた事前情報を元にアナウンスする。
「5階層のゲートキーパーはレッサードラゴンです、ドラゴンと名は付いていますが本物とはかけ離れており、帝国ダンジョンでは15階層まで出現しない魔物です、物理攻撃には硬い鱗で耐えますが、火属性の魔法に弱く、今回は2人火属性を使える者が居るので楽に倒せるでしょう。」
私のアナウンスの後に動きを牽制していたジューンが離れ、詠唱を終えたメルティとオクトが複数のファイヤーアローを放ち、串刺しになって消え去った。
「ゲートキーパー撃破です、宝箱とドロップ品はレッサードラゴンの革、鞄や財布等に加工しやすく人気です、魔石はやはり質が良い物が出ました、シーフが確認後宝箱を開けたいと思います。」
中から出て来たのは火属性の手袋、火魔法の効果を上げる魔道具だった。
「今下層への階段の脇に転移陣が出てきました、これを使うと入り口まで戻れます、そしてこのリングは5階層を突破した者が次回ダンジョンに入った際、ここからリスタート出来るというものです、他者には使用不可ですのでギルドの冒険者ランクの目安として使われております。」
そして私達は魔法陣に入った。
「こちらが入り口です、ちゃんと戻って来れました、今後我々は先遣隊として地下50階層を一区切りに向かいたいと思っております、これはあくまでも予想ですが、このダンジョンは100階層を超える大型ダンジョンと思われます。」
「うむ、御苦労であった、ラルクには此度の礼を持たせる、受け取るがよい、有意義な時間であった、久しぶりに心が踊った、たまにで良いからゲートキーパー戦をする前にコールしてくれぬか?」
「はいっ!かしこまりました!」
「うむ、ラルクよ後は頼むぞ。」
「はっ!それではエレメント、灰色の剣共に御苦労だったな、明日以降も調査であろう?今日はゆっくり休んでくれ。」
そこで通信が終わった、いやぁ疲れたよガチで面倒くさかったよ、でもエリック喜んでたし、まぁ成功かな。
地上に戻るとすっかり日が落ちて薄暗い、仮設小屋の前で焚き火をしていたディレイが手を振っている。
「お疲れ様っす、どうでした?ダンジョン。」
ディレイに戦利品を見せ、王太子殿下と王様に献上する物を預けた。
その後仮設小屋を幾つか建てた、ちょっとした集落規模に見える、ディレイが待機中に、こちらに派遣して欲しい人材のリストを作っていたようで、不足が無いかチェックしてくれと頼まれ、ドワーフを数人リストに入れた。
野営中でも美味いものは食べたい、だから色々用意してきたさ、途中オーク肉がドロップした時から、今夜はポークソテーって頭から離れなかったので、塩コショウでシンプルなポークソテーとパンと野菜のスープをたっぷり食べ、反省会だ。




