悪は滅びるのです。
さて、この世界の女性が悩みを持っている事に何故か責任を感じた私は、工房内でものづくりを始めた。
「やっぱりスライム素材よね、安価で手頃、使い捨てなんだから安いに越したことはない。」
スライムを錬金釜に入れ分解、抽出、抽出した成分を乾燥させる、粉状になったスライムに水滴を垂らす。
「保水はするけどちょっと吸収力が弱いな、何か無いかな…この植物使えるか?」
神眼先生で素材を吟味していると、四つ葉のクローバーの様な植物の根っこが、乾燥地帯でも僅かな水を吸い上げる特性を持っていた、繁殖力も高くどこでも生えているらしい。
「スライムだと保水は出来ても吸収力が弱いからそれを補えれば」
スライム素材同様、分解して吸収する成分だけ抽出して乾燥、スライム素材と合わせて合成、定着、乾燥、出来上がった素材に水滴を垂らすとシュッと吸い込んだ。
「さて、次はこれの特性を生かしたままどうやってナプキンにするか、コットン使えば間違いないけど、綿花ってあんのかな、工房にはコットンあるからあるんだろうけど近くにあって手軽かって問題だよな~」
神眼先生でウロウロして何点かの素材を手にした。
結果「綿の木」と呼ばれる綿花とよく似た低木の綿毛が1番良さそうだ、収穫量も多く、これから糸や生地も作られているが耐久性に難ありで、熱に弱く布同士がくっ付いて離れなくなる、その為非常に安価で取り引きされているらしい。
布になるなら既製品の生地を加工した方が良いのかな?手にした布を力強く引っ張ると手でも裂ける弱さ、1日くらいは持ちそうだけどこれで試作してみるか。
厚め、普通、薄目で3種類作ってみた、ダメだ裏まで染みちゃう、裏側に撥水素材使わなきゃ。水弾きと言ったらルートラットの骨だ、布とルートラットの骨を錬金釜で合成すると撥水生地が出来た、雨具にも使えそうだ。
結果、接する面と撥水する面にそれぞれの布を使ったら、吸収したあともサラッとしていて前世の物と変わりないは言い過ぎだけど中々よく出来たよ。
「後はコストだよね、熱でくっ付くなら圧着とか出来そうだけど肌触りが心配、問題がなければこれで試そう。」
撥水生地の方に魔力に反応する粘着素材を塗って完成。
「うーん、性能は最低限クリアかな、吸収スラは良いけど外側はもう少し改善しないとだね」
これを誰に作らせるかが問題だ、錬金を使うから錬金術師は必ず必要、布を圧着させるのはドワーフに半自動の圧着機と裁断機を作らせて、中に吸収スラを入れる人に仕上げ、何人必要なんだ?
こりゃ錬金術師会をたよ……あれ?明日じゃね?約束の日、忘れてたぁ、どうしようかな、キャンセル出来ないし、明日も1日色々作らなきゃって思ってたのに。
「さっさと終わらせるしかないわね、訳分からん事言われたら、この際だから女性だけの錬金術師会作っちゃおうかな。」
なんか腹たって来た、どうにか奴らが失脚する手を考えよう、昂って来たぁ~うひひひひっ!
そろそろいい時間ね、外に戻らないと。
「おかえりなさいませヨーコ様、昨晩敷地内に侵入者がおりましたので、外に縛り付けておきました、如何なさいますか?」
工房を出るなりネロが少し困った顔をして、侵入者の事を教えてくれた。
「明確な悪意を感じたのと武装もしていたので、侵入した時点で眠らせました、起こして尋問いたしますか?」
「ん~知ってる人だったらショックだから、そのまま衛兵に突き出しちゃいましょ。」
顔を見て知ってる人だと同情しそうだし、武装していたなら完全な黒だし。
「では、マインとレーラに衛兵を呼んできてもらいます。」
「面倒かけるわね、よろしくね、みんなは起きてるの?」
「はい、ジューン様とメルティ様以外は朝食を済ませてリビングで寛いでらっしゃいます。」
あの2人は想定内だったから気にしない、私もリビングに向かった。
「おはようみんな、体調は平気?」
「大丈夫だよ~お姉ちゃんは平気?」
「うん、平気」
ネロが朝食を持ってきたので食べ始める、今日の朝食はコーンポタージュに焼きたてのパンとゆで卵が乗ったサラダ。
ネロの料理の腕は良い、ブラウニーは家事全般で「模倣」という特技がある、一度目にした行動は正確に真似出来るチート能力、多分前の家主に仕えていたコックの腕が良かったのだろう。
食後に酸味のあるリンゴを絞ったリンゴジュースが出た、その酸味で神経がシャキッとしたよ、朝食を終えた辺りで衛兵がやって来て挨拶をする、顔見知りの衛兵さんだったのでクッキーの差し入れをしたら喜んでくれた。
「しかし、ヨーコちゃんの家にエレメントが居るとは知らずに侵入しようとするなんてな、エレメントがいるならあの人数でも敵わないだろ。」
「え?何人居たんですか?私寝ていて気付かなかったんですが」
「12名だ、全員武装している、魔法を使ったんじゃないか?全員無傷で眠らされているから。」
「ふふっ余程寝不足だったんでしょうね、ご面倒をおかけしますがよろしくお願いします。」
12人とか明らかに殺しに来てるわね、どんなヤツなのか確かめたいけどそれは衛兵さんの役目か。
衛兵が侵入者を連れて行った後、ジューンとメルティが起きてきた、メルティはまだボーッとしていたが朝食を食べて覚醒した。
「美味しかった~特にあのスープ、ほんのり甘くて優しい味がしてパンを浸して食べたら最高!3つも食べちゃった、材料は何なの?」
「コーンと丸ねぎとミルクよ、作り方教えましょうか?」
「うん!お母さん達に作って食べさせてあげたい。」
うちには私の作ったブレンダーあるから簡単だけど、コーンを潰すのがちょっと大変かな?それ以外は簡単だし。
「お母さんには例のアレも渡してね、時間があればお母さんのサイズのも作るから、実際試す方が良いかもね」
「お母さんと私ほとんど体型一緒だから、貰った上下を1つあげるよ1つだけだけどねぇ」
ニヒッと小悪魔的笑顔を見せたメルティも、お土産片手に帰って行った。
「みんな、明日からの準備で足りないものとかある?」
「俺たちの方は無いな、ジューン達も保存食を多めに買ってきたみてぇだし。」
「なら大丈夫ね、私もリュックギリギリになるまで詰め込んだし、入らないぶんは馬車の拡張ボックスに入れるから、向こうでなるべく工房に入らないようにしないとね。」
準備は万端、後はドワーフ達に作らせているのが完成すればオッケー、まぁ数を作らせたから大変だろうけど。
後はあの錬金術師会を潰すアイテムをちょっと用意したら……。
「マーチ、またヨーコが黒いんだが気の所為か?」
「気の所為じゃないよ、なんか企んでる時のヨーコだ。」
オクトとマーチがコソコソと何か言ってるけどそこは無視して、ちょっと工房に入って来ますか。
今日は錬金術師をギャフンと言わせる為の物を作りましょう。
工房内で錬金釜と睨めっこしながら、せっせと作り粗方準備は整った。
「あとこれも何台か追加して作らなきゃ。昨日マーチから教えてもらった素材を合わせて魔力回路を繋いで~多分大丈夫、でも個別認識させるには魔力紋とかが1番良いって言ってたから、それは機能だけ付けといて裏設定にしておこう。」
説明書もよしっ!新機能も作動するし大丈夫!
工房から出ると、タナカサンとヨシダクンが見えた、流石マーチ達!気が利くね、あ~馬房も建てなきゃだな、ドワーフに図面渡して頼んじゃおうかな~
「ヨーコ、馬車用意しといたぜ、俺とジューンは所用で行けねぇけど、マーチとメイが付くから大丈夫だよな?昨日の今日だから1人行動は避けてくれ。」
あぁ、侵入者の事ね、確かに1人で居るよりは安心だ。
「ありがとう、2人も気を付けて、ネロ達は大丈夫なの?」
「ヨーコ、ここだけの話、この屋敷の敷地内だとネロが1番強えぇ、大精霊並の強さだからな、膨大な魔力と身体を持ったネロをこの敷地で倒せるのはそう居ねぇよ。」
ネロの方を見ると、謙遜したような照れ笑い、でもそれなら安心したよ。
私達はエリック邸に向かった、途中子供達が馬車から覗く私に気付いて手を振ってきた、カイトもこちらに頭を下げて作業に戻り、ちびっこも両手をフリフリ、少し肉付きが良くなった気がする、良かった、みんな元気そうだ。
教会の前は今日も行列、エリックの用事が終わったら顔出そう。
「少し早いからドワーフの職人街に寄って行きましょう、頼んだのが出来てるか確認する為にね。」
職人街に入るとドワーフ達から揉みくちゃにされた、その上いつの間にか建っていた教会の様な建物、中には祭壇しかない質素な造り、入るなり「素材頼みで技術不足、学びが足りない、ヴィラー様が可哀想。」と言ったらまぁムキになって絡んで来たから返り討ちにしたよね。
「今度ちゃんと教えてあげるから、それより昨日頼んだのはどの辺まで出来たの?」
「おいっ完成してるぞ!舐めるな!」
「舐めるな!してるぞ完成おいっ!」
まぁ完成してんだろうけども。
「んじゃ組み上げてみて?」
「「組み上げる?」」
図面見て作ってたらわかりそうなもんだけど、コイツら作ることに満足して用途を理解しないアホだった。
「これを持ち上げて、寝かせた柱を立てて、これを壁にして3ヵ所ロックする、んで最後にこれもロックしたら完成。」
「「小屋が一瞬で出来た!」」
「仮設小屋ね、コレは災害が起きた時や、工事現場の事務所なんかに使えるの、耐久性はあまりないし断熱なんかもないけど素早く建てれる、2,3人寝るだけなら充分でしょ?」
これから必ず必要になる、スラムの取り壊しやダンジョンの周辺施設が完成するまで役立つはず。
「作らせた意味は後でわかるから、10日で30戸作って欲しいの、1つに付き金貨5枚くらいで頼める?」
材料費だけなら金貨2枚に満たないし、ドワーフの作業費としては高額な方、中身の無いプレハブだもん簡単に作れるはずだ。
「おいっ!わかったぞ作るぞ!」
「作るぞ!わかったぞおいっ!」
先に金貨150枚を支払い、更にドワーフ錬金術師にも図面と使用方法を書いた羊皮紙を渡した。
「これはスポット証明って言うの、光源が錬金術師じゃなきゃ作れないから、それ以外の部分は手の空いた鍛冶師にやらせて、魔石はこっちで用意するからとりあえず300個お願いね。1つに付き銀貨3枚出すわ、これが代金ね。」
「「任せてちょーよ!」」
ドワーフ錬金術師独特の返事をして早速作業に取り掛かった。
「両方とも仕上がったら冒険者ギルドに届けて欲しいの、配達料があるなら別に支払うから言ってね。」
ドワーフ達はみんな手を軽くあげて了承してくれた。
職人街を抜けてエリック邸に向かう、思ってたより時間が押したので、昼食は工房でサクッと作ったサンドイッチ、御者席のマーチにも渡してメイちゃんと2人でモグモグ。
食べ終わって一息ついたら貴族街の門に到着、2回来てるからほぼ顔パスでエリック邸に到着、執爺が笑顔で迎えてくれ、エリックの執務室に案内された。
「こんにちは、エリック。」
「あぁ、早かったな、それと今日錬金術師会の連中は来ないぞ、理由はわかっていると思うが。」
「え?わかんないけど?」
エリックが軽く「はぁ~」と溜息をついてから
「昨晩ヨーコの屋敷に賊が入ったと聞いたが、その賊は奴らだ、主導したのはあの4人で、スラムの荒くれと冒険者を雇ったようだ。」
「あぁ~うちのネロに殺られた賊ってあの人達だったのね、んじゃ今日来なくても良かったじゃない?」
「代わりの者が来ている、是非話しをしたいからとな。」
うへぇ~またあんなのが来たら嫌なんだけど。エリックが執爺に合図すると退室して行く。
「ヨーコと同じ女性錬金術師だ、今まで奴らの所為で発言を許されなかったそうだ、実力は他の者から聞いてもティンダー1だぞ。」
「まぁあの人達ってプライドだけは高そうだったもんね、捕まった人達はどうなるの?」
「辺境の開発村送りだ、犯罪奴隷としてな、あれほど武装していたのだ、明確な殺意があると判断された、30年間は辺境周りだ、この街には戻れないだろう。」
どれほど武装していたのかわからないけど、魔が差したとはいえ重い罪だね。
「失礼致します、旦那様、錬金術師をお連れ致しました。」
執爺の後ろから現れたのは30代前半くらいの女性。
「初めまして、私はローザと申します、錬金術師をしております、どうぞお見知り置きを。」
「初めまして、ローザさん、私は長谷川洋子です、錬金術師の師匠の元で修行をしておりました、よろしくお願いします。」
互いの挨拶も終わり話し合いへ、スライム薬はドワーフが専売する事になり、それ以外でのレシピを公開した、やはり女性だからか月イチに使用するアレには凄く食い付き是非ともやりたいと、その上素材に関しても適した物があり、安価で誰もが使いやすい仕上げにすると言っていた。
同じスライム素材を使うならと、靴のソール素材も教えておいた、本人も盲点だったらしく、木の靴は最初痛いし、革製品は高いしとソール素材を使った布製の靴に興味を持ってくれた、その他にも薬分野で解熱剤、胃腸薬、化膿止め等、現存していても効果の違う薬のレシピを渡しておいた。
「ものすごく充実した時間でした、早速錬金術師達を集め、それぞれの分野に分けたいと思います、ヨーコさん、またお話しが出来たら嬉しいのですが…」
「喜んで!是非ともお願いします。」
ローザとの話し合いも終わり退室して行く、今度はエリックとサシの話し合いだ。
「エリック、便利な物作って来たよ。」
「な…なんだ便利な物とは……」
あ~警戒してる、まぁそうなるわな。
「これ。」
「……黒い板のついた鉄板にしか見えぬが?」
色んな角度から覗いたりしてるエリック、弄っているうちに脇のポッチを触った、同時にスイッチが入り画面に「ウェルカム」と表示された。
「なんだコレは、まどろっこしいから答えを言ってくれ。」
「遠話タブレット、離れた人と会話が出来て、新機能で片方の撮った映像を見ながら会話出来るの、凄くない?」
エリックは椅子から崩れ落ちてしまい、執爺が慌てて駆け寄る。
「大丈夫だ、すまないあまりにも予想外だったのでな。」
なんとか立ち直ったエリックは私の顔をじっくりと見る。
「何よっ!」
「いや、ヨーコの顔を見れば何を考えてコレを作ったのかわかると思ったが、全くわからなかった。」
思わず反射的に「こっち見んな」って言いそうになったけど我慢した私グッジョブだ。
「実際どうやって会話するのだ?」
私はもう1台取り出しスイッチを入れる、画面下部にあるトークをタッチするとエリックのタブレットに呼び出し音が鳴る、同じ様にタブレットのトーク部分をタッチ。
「あ~あ~聞こえますか?」
私の声がエリックのタブレットから聞こえてきた。
「なんか喋って下さい、こっちにも聞こえるかどうか確認する為に。」
「エッエリックだ、ヨーコ聞こえるか?」
「聞こえますよ~。」
その後は私のタブレットから映像を送り込み、エリックのタブレットに映るか確認、はいオッケー。
「震えが止まらんのだが、コレの有効距離はどれくらいだ?」
「魔力を媒体にしているので、魔力のある所ならどこでもです。」
エリックの顔が青ざめた。
「でもまだ試作品なので個別の通話が出来ません、トークをタッチすると、スイッチが入っているタブレット全部に呼び出し音が鳴ってしまいます。」
「全く慰めにもならないが、これは至急王都に持って行かねばならぬ案件だ。」
「そうだと思って、王様、王太子様、四公爵様の分もあります、ガトーから王国には大きな街が8ヶ所あると聞いたのでその分も、これでリモート会議出来ますね。」
エリックは盛大に溜息をついた。
「用意が良い事は認めよう、してヨーコはこの使い道をどう考える。」
「今は平和な時代です、互いの情報交換であったり、それこそ、さっき話した王様からの司令や会議などにも使えるかと、近々で使うならダンジョンのリアルタイムを王様とかに見てもらうのも良いかも知れませんね。」
一瞬エリックの顔が嬉色に輝いた、そして何か考えている、前にもあったなこんな事。
「ふむ、良くやった!まだコレは試作品なのだな?」
「えぇ、個別通話が出来るようになって初めて完成するかと、ナイショ話出来ないとね~みんなに聞かれたら恥ずかしい話もあるでしょうし。」
複雑な表情でこっちを見るエリック、だから出したよ裏設定を仕込んだタブレット。
「これは?」
「個別認識可能なタブレットです」
「私の考えが纏まりかけていたのを全てぶち壊すような物を……何故今出した?」
「なんとなく?でもコレ4台しか無いので屋敷と私と仲間とエリックの分しか……作るのが大変で。」
エリックはもう1台を手に取った。
「これがあればヨーコ直通になるのだな?ヨーコと話しが出来るのだな?」
「なによエリック、口説いても無駄よ?」
「馬鹿者!誰が口説くか!緊急時お互いが連絡取れれば楽だろうがっ!次からこう言った物を作る時には必ず知らせろ!庇いきれんぞ、ヨーコが王都に呼ばれたくないと言ったから私は必死に策を練るのだ、理解してくれ。」
そうだった、王都なんか行って拘束されても厄介だし、イキナリ不敬罪とかで捕まって逃げるのも嫌だし。
「ごめんなさい、でも個別認識するには魔力をタブレットに記憶させなきゃだからね、個別通話したい人のタブレットに触れて、お互いの魔力を通さないといけないからコレでも未完成なの。」
最終的には番号登録なんだけどそこまで私の頭がついて行かない。
「魔力紋の事だな、確かにあれは人それぞれ違うから着眼点は悪くない、何をそんなに落ち込むのだ、互いが会った時に魔力を通せば良いのだろう?問題ないでは無いか。」
「不便じゃない?私の最終的な完成図は番号認識して、衛兵の詰所はこの番号、火事が起きたらこの番号とか決まった番号を持たせたりして、お互い会った事がなくても番号を入れたらその人と会話が出来るって言うのが最終的な目標なの。」
「ヨーコはどれくらいでそれが可能だと?」
「いつになるかは不明だけど、絶対に言えるのは私1人じゃ一生出来ないと思う、様々な考え方や見方が無いと新しい物って出来ないし、失敗しないとわからない事だってあるから、私がこれを作ったのはきっかけでしかないから。」
深く頷くエリック、そして結論を出した。
「ヨーコの考えは良く理解した、答えを早く求めようとした私が愚かだった、これは後の世が更に便利になるようにと考え作った物なのだな、すまなかった、因みにここまでのレシピは公開してもらえるのか?」
「勿論よ、持って来たし渡すし。」
「そうか、わかった、爺っ!王都に向かうぞ準備を頼む。」
執爺は爺って呼ばれてたのか!新たな新事実!
「ヨーコよ、明日からダンジョンの偵察と言っていたな、ダンジョンの映像が欲しい、私がコールするのを待ってからアタックしてくれ、頼めるか?」
「わかりました、明日の午後には待機しておくわ。」
「頼むぞ。」
その後、ギルドにも渡して欲しいと頼まれた、ギルドマスターがムカつくとか、エリックが居ない時の態度があからさまとか愚痴を零して、更にイタズラした事も暴露したら不敵な笑みを浮かべていたよ、使い方を教えて話し合いは終了待たせている2人の元に向かった。
「お待たせ2人共暇だったでしょ」
「大丈夫だよ、メイと明日の打ち合わせしていたから、終わったのかな?」
「うん、万事抜かりなく終わったよ。」
「じゃぁ帰ろうか。」
帰り道で教会に寄りマザーと今後の話し合いをした、長老も居たのでスラムの現状を聞くと、領主命令で立ち退きをする事になったらしく、代わりに新しい住居と仕事を手配してくれるそうだ、これには長老も感謝していて毎日ライカ像に祈りに来ているんだとか。
子供達も親が居ない子だけの住居が教会敷地内に作られるらしい、社宅として朝食と夕食が支給され、12歳以下は4人部屋、12歳以上になると2人部屋になり16歳で退去させられる、家賃として月に銀貨3枚取られるが全員一致でそこに住む事が決まった。
「少しづつ良くなって行くね、良かった。」
今後は砂糖の収益から出た税金で、学校や病院なんかが出来ていくだろう、雇用もどんどん増えるだろうし、エリックが言った事を信じてる、今いる子供達が親になった時にはきっと今よりもいい街になっているだろう。
馬車を教会に置き、私達は市場へ、最近ちゃんと挨拶してなかったパン屋とスープ屋のおばちゃんに挨拶に行って来た、教会という子供達が安心して集まれる拠点が出来た事に喜んでいて、お客の中には子供達を怪訝な目で見る人がまだ少なくないらしく、そういう人に因縁や嫌がらせを受けないか毎日不安だったそうだ。
「あの教会で保護されてると知ったら、そんな事されないよ、なんたって奇跡のライカ様像がある教会だ、前の領主の失脚もライカ様の天罰だって言われているよ、そんな教会の子供達にちょっかい出したら天罰が下るって、もっぱらの噂さ。」
良いように解釈されていて助かるわ、最近では地域毎にスライム薬支給がされ、薬の散布を領主から命令されているそうだ、そっちは地域の自治体が薬を撒いているらしい。
「そう言われてみれば最近匂わないね、良い事だ。」
「感謝してるよヨーコちゃん。また顔出しとくれよ!」
スープ屋のおばちゃんと別れて教会に戻ると……メルティが居た。
「やっぱりヨーコの馬車だったんだね、あ!そうそう、お母さんにアレ渡したらすっごく気に入って、お針子さん達と商店婦人会で集まるみたい、あとローザって錬金術師からも婦人会に問い合わせがあったみたいで結構大事になりそうよ?」
「大丈夫よ、今まで無かった物が出来て共有するって事だと思うから、ってか婦人会なんてあったんだね、また変化あったらうちに来て教えて?うちで美味しいの作ってもてなすからさ。」
「うん!必ず行く、ヨーコ明日からよろしくね~」
さて、あとやり残している事ってなんかあったっけ……馬房だ、タナカサン達の部屋作らなきゃ、材木屋さんまだ空いてるかな、いや、専門家に頼んだ方が良い、貸馬屋にタナカサン達を預ける時に聞いてみよう。
早速貸馬屋に到着、馬房の話をすると二つ返事で了承、しかも妻が世話になったとか訳の分からない事を言うから聞いてみると、ローザの旦那だった、更に3週間に1度蹄鉄の掃除や交換をしてくれるVIP待遇、いや、1度見せてくれたらネロがなんとかするから平気と言って1度だけ頼んだ。
「明日はダンジョンか、楽しみだなぁ~」
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「お呼びですかギルドマスター。」
「来たか、遅かったな。」
「色々あるんっすよ。」
「例の連中見たな。」
「例のってエレメントの事っすね、凄いっすね勢いがあって」
「あの中にいたヨーコって女はわかるか?」
「あ~居ましたね、ギルドではあんまり見ないっすけど」
「殺れるか?」
「あ~無理っすね、殺されますね。」
「なんだと?お前がか?」
「はい、間違いなく、元々俺対人戦は弱いっすよ、人も殺した事無いし、あと多分全員実力隠してますよ?」
「そんな馬鹿な事あるか、ワシの予想じゃヨーコってのは非戦闘員のサポーターだと思うが?」
「あ~マスターには見えないんすね、あの人が1番魔力高いっすよ、みんな桁違いに魔力高いっすけど、別格っすね。」
「いや、魔力はあっても近付けば殺れるだろうが」
「無理っすね、まず近づけないっすもん、しかしなんでまたあの人達を?別に悪い連中じゃないでしょ?」
「錬金術師会を知ってるか?」
「あ~今朝捕まって領主命令で犯罪奴隷になった連中っすよね。」
「私の弟がいた。」
「それはお気の毒に、まぁ自業自得でしょ」
「口の利き方に気を付けろ。」
「へいへいすいませんね、んでその逆恨みっすか?」
「チッ!いい加減にしろ、死にたいか?」
「怖いっすね~とりあえずあの連中絡みなら俺はパスっす。」
「約立たずが!消えろ!」
「あ~でも消えるのはギルドマスターかもしれないっすよ?」
「何を馬鹿な事、ワシはティンダーのギルドマスターだ、ワシが黒と言えば白でも黒になる。」
「まぁそうやって前のギルマスも殺したんすよね、前領主と手を組んで。」
「前の領主は金さえ渡せば何をしようが揉み消せたからな、前のギルドマスターも昔から目障りだった、お前も舐めた口の利いてると同じ目にあうぞ?」
「だそうですがどうします?」
「何を訳のわからん事をもういい、行け。」
「とにかく俺はノータッチですからね、言われた通りにしましたぜ、領主様。」
その後ドアが蹴破られ衛兵がバーコードを取り押さえる、激しく抵抗するバーコードだが、衛兵の後ろから領主エリックが入って来た。
「全て聞かせて貰ったが、申し開きはあるか?」
「ハメやがったな!貴様もグルか!」
「グルって、俺は元々領主様から依頼を受けた内偵っすよ、アンタが勝手に勘違いしただけっす、ダミーの情報に踊らされたんすよ。」
「バーコードよ、お前が錬金術師会と繋がっていたのは知っていた、今朝ヨーコの屋敷に入った賊の1人が全て吐いた、失敗してもお前が握り潰すともな、ダンジョンが見つかりこれからと言う時に、犯罪者を身内に置いて置くのは危険だからな。」
「何を証拠に、聞き間違いだろ、そんな事は一切言ってない!いい加減離せっ!」
「まだ言うか、証拠があれば良いのだな?」
「無いくせに職権乱用だ、若造が舐めるなよ。」
エリックはゴソゴソとソファーの下を手で探る、そして取り出したのが
「これなんだかわかるか?」
「穴だらけの金属だろ、それがなんだって?」
エリックは真ん中にある窪みを押さえると、そこからバーコードと内偵の先程の会話が聞こえる。
「なっ!!そんな!馬鹿なぁぁ!」
「お前と弟の顔が似ていたんだとさ、それと視線に悪意を感じたとも言っていた、本人は悪意を向けられる意味がわからなくて考えたらしい、だがやはり分からなくて愚痴を漏らしていたぞ。」
その後ギルドの内偵が調べた情報を元に、バーコードの机の後ろから隠し扉などを発見、調査した所次から次へと出てくる不正の数々、裏金や賄賂の帳簿など全て没収となった。
エリックはその足で王都に向かい、夜のうちにグランドマスターのいるギルド本部に行き、新しいギルドマスターが決まるまでの代役を頼み、翌朝に王城へ向かう事を王の秘書官に伝え別宅に入った。




