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前世は大工女子の異世界生活  作者: 森林木林森
13/49

真の女神様

 工房に入った私は素材を吟味する、確か巨木の素材を見た記憶があったので取りに向かった。


「やばっ!デカイな持てないだろこれ、どうしよう。」


 明らかにオーバーサイズ、縦15メートルくらい、直径3メートルくらいあるだろうか、素材の名前は「ユグドラシルの枝」枝?これが?どんな巨木なのよ!素材の説明を読む限りこの枝は聖属性で神木と呼ばれる物で、杖を作れば魔力消費が少なくなり威力があがるとか、御守りや護符にすると強力な加護が授かれるとか、まぁ凄まじい効果だ、もしこれで像を作ったらどうなるんだろ、ちょっと興味が湧いた。


「これ使いたいな、持てないかな……持てた?私めっちゃ力持ちじゃん!」


 ダメ元で端を持ち上げようとしたらそのまま持ててしまった、早速広い所へ持って行き作業を開始した。


 崩れたライカ像の大きさが3~4メートルでそこそこのサイズだったので3等分して削り始めた、デザインは実際に見たライカの姿、左手には本を持っていたのを思い出しひたすら削る、もちろんあの時見た衝撃的なボーーンキュッボーンはそのままに、微笑みを浮かべる表情、右手は祈る人に手を差し伸べているようにした。


 このユグドラシルの枝、不思議な事に年輪が無いし木目も無い、木材ではないような感じだが削れる、質感もなんというか生々しい感じがする、仕上げにヤスリをかけて腐食防止の魔法陣を付与、背中に空間を作りその中に聖属性のエンシェントドラゴンの魔石を埋め込んだ、更に疲労回復と状態異常回復の魔法陣を付与し、祈りに反応するようにしておく、僅かに回復する程度に調整してある。


「色付けるか……確かあの時」


『白の法衣です、法衣は銀の縁取りがしてあります、胸には世界樹の花の飾りが付いてます、足はサンダルです、胸を強調しすぎな気もしますぅ』


「白の法衣に銀色の縁取りか、それじゃこの塗料で、世界樹の花?どんなんだろう」


『これです。』


 目の前に3Dモデルのように立体的に浮かび上がる赤い花。


「へぇ綺麗な赤だね、一度見てみたいかも、少し細工するか、こんな感じかな、塗料はこれでいいかな、うん、大丈夫」


 よし、上手く行った、あとは首筋と顔と髪の毛だな、髪の毛は黒とブルーが合わさった様な色だったっけよし、髪の毛完了、良い色だなぁ、次にホムンクルス作る時この髪色イメージしよ。


「顔は美人さんだったなぁ、美の女神かと思ってたもん、目は深い青でブルーホールの中の色みたいだった、眉毛もシュッとしていて、本当にあれで美の女神じゃないとか嘘だよね。」


『うぅぅぅ、照れてしまいます~』


「よしっ!出来た!なかなかいいんじゃない?ボーーンキュッボーンでさ、顔は優しく微笑み、私が男ならイチコロだね!」


『もうっ!からかわないのっ!!』


 ってかさっきから誰?この声……。


「あのぉ誰か居ますか?」


『嘘でしょ?今頃気付いたの?ライカです、大事な事なのでもう一度、ラ・イ・カです!』


「まじでライカ?どうしたの、久しぶりだねぇ、声しか聞こえないけどどこにいるのさ。」


『かっる!どうしたもこうしたも、ヨーコさんが私の像を作ってくれるとマーチから聞いたので見に来ちゃった。』


「見に来ちゃったてへっ☆みたいな事言ってますけど暇なんですか?」


『ちょっと言い方!えぇ暇でしたよっ!』


「どうですかご自分の像を見て、忌憚ない意見をいただけると嬉しいんですけど。」


『お胸以外はパーフェクトです、お胸ちょっと盛りすぎでは?』


「いや、そのくらいあったもん、そこは嘘つきたくない、自分の姿見てみなよすっごいんだから、それに母性豊かなイメージがあって良いじゃん、何が不満なのさ、次の一言で世の中の貧乳を敵に回すかもよ?良く選んで発言してよ?」


『忌憚ない意見とは?私がおかしいのかしら、でも恥ずかしいですぅ、って胸の場所を変な手つきで撫でないで下さい!撫でながらそのいやらしい笑顔を私に向けるのもやめてっ!本当にもうっ!でもとても嬉しいのは本心です、ありがとうございます、それとヴィラーの像は作らないのですか?』


「ヴィラー様のは作っても教会には置けませんよ?」


『何故ヴィラーだけ様付けなのかしっかりと話し合いしたい所ですが、ヴィラーの眷族に差し上げれば技術水準が上がりますよ彼の加護が働きますから。』


「なんと!私も欲しくなってきた、んじゃ作りますよ~いつまでもコレに構ってらんないわ、大丈夫、ヴィラー様のイメージは細かく覚えているので!」


『へぇ……コレとは?……聞き間違いかしら?無視ですか?泣きましょうか?泣くと強くなりますよ?……クスン、もう良いです、ヨーコさんに何言っても負けそうなので。』


「冗談だよ、マーチに聞いたんだ、ライカが私を心配してくれていつも見守ってくれてるって、だから今回のライカ像の制作だって後先考えずに受けたんだから、本当だったら触らぬ神に祟りなしだよっ!本当に感謝してるんだからね、ありがとうライカ。」


『もうっ、仕方ないですね、今までの発言は許しちゃいます、こちらこそありがとうヨーコ。』


 その後チョロ女神ライカはいなくなり、ヴィラーの像も仕上がった、削りカスで1000個ほど御守りを作ったよ、ライカの加護とヴィラーの加護が付くように願ってね。


「今何時だろ」


『まだ夜明け前だよ、ライカ様の像を置いてくるなら今のうちかもね』


「マーチ!ありがと、んじゃすぐ行くか!」


 屋敷を出て教会に向かう、マーチに屋敷の裏にあったリヤカーを持って行けと言われたから一応持って行った、教会に着いたのでリヤカーにヴィラーの像を乗せて外に置いてから中に入った。


「あ!台座作って無い!」


 慌てて工房に飛び込み台座を仕上げる、台座は石材で作ったそして台座にはライカの像のイメージを彫る。


『全ての人々に知識と才能を、希望ある未来へと導く女神像』


 工房から飛び出し台座ドン!ライカ像をヒョイ!っと乗せて固定化の魔法陣を作動させた、内蔵された魔石も反応して何やら薄らと光ってる、やべぇやり過ぎたかな、でもこれだけ神々しかったら有難みは増すだろ?


「よし、私も祈ってみるか」


 ライカ像に祈りを捧げるとフワッと暖かくなり、疲労感が和らいだ、あぁこの程度なら気の所為ですむでしょ。


 最後に盗難防止の魔法陣を発動させて完了、盗もうとか奪おうとかしたらビリビリ1日の罰が行くようにした。


 全てが終わった辺りで朝日が教会内に差し込んできた、ライカ像が朝日に照らされて更に神々しく見える。


 外から子供達の声がする、もしかしてこんな朝早くから来てんの?と思いチラッと見ると男の子達が市場の皆さんの荷降ろしや荷運びを手伝ってる、カイトとサブリーダー組だ、凄いな自発的にやってんだ、私の鞄をスロうとした時から考えると自分がやった事は間違って無かったと涙が出た。


 女の子達も集まってきた、女の子達は野菜を切ったり洗ったり仕込みを手伝ってるのか、ちびっ子もいるじゃん、ふふっ何していいのかわかんなくてうろちょろしてる、あっ!でもゴミ拾いしてる偉いぞ!


「あ、ヨーコさんおはようございます」


「おはよう、みんな早いね、いつもこんなに早いの?」


「うん、カイト君達は早いよ、オレは今日たまたま早く起きたから。」


「それじゃお使い頼まれてくれる?マザー呼んできて、君は職人街の男ドワーフをお願い、ヨーコが教会で呼んでるって言えばわかるから、これお駄賃ね。」


 大銅貨を1枚ずつ渡すと、わかったー!と言ってダッシュして行った。


 それから20分くらいしてマザー達がやって来た、みんな目が赤い、昨日泣いたか眠れなかったんだろうな。


「仕上がってるよ、中々良い仕上がりだから見て。」


 マザーは外にあったヴィラーの像を見て驚いていたが、中に入った瞬間歓喜の声をあげていた、そして直ぐに祈りを捧げたのだろう、今度はあまりの衝撃に泣き出した、今日の子供達の世話は無理かな?と思っていたらシャキッとして出て来て私に跪いた。


「ヨーコ様、貴女はライカ様の使徒でございますね、そうでなければあの様な真の御姿を表現出来ないはずでございます、ライカ様とヨーコ様に感謝を。」


「ちょっと待って、勘違いですよ!」


「わかっております、正体を明かせないのでしょう、察しております、ドワーフ達にも制作者に関しては口を開くなと伝えますのでご安心くださいませ。」


 ダメだもう何言っても聞かねぇやこの婆さん、まぁ余計な事喋らないって言ってるからいっか。


「うおっ!ヴィラー様じゃ!おいっ!」

「おいっ!ヴィラー様じゃ!うおっ!」


 今度は後ろがうるせぇ、マザーに子供達の事をお願いしドワーフ達の所に行く。


「あなた達の安全祈願と技術向上を願って彫ったの、教会にはスペースがないから職人街に祀ってもらえると私も嬉しい。」


 男ドワーフが持ってる槌を胸に掲げ私に一礼する、他のドワーフ達も同じ動作、ドワーフの祈りとか感謝の意味なのかな?


「一先ず教会をお願いね、今度時間見て職人街にも顔出すわね。」


「おうっ!歓迎するっ!」

「歓迎するぞ!おうっ!」


 教会内で掃除をするシスターに声を掛け一度屋敷に戻った。


『おかえりなさいませ、ヨーコ様』

『『なのです!』』


「はい、ただいま、屋敷の説明はだいたい終わったの?私お風呂とキッチンを改装したいんだけど平気?」


『はい、大丈夫でございます、私達は庭の手入れをして参りますので。』


 とりあえずお風呂からかな、猫足バスタブをリュックにぶち込むとフラットな床になった、広さは江戸間で12畳程、半分を浴槽にしても十分に寛げるバスタブから作らないと行けないけど岩風呂なんて素敵よね、旅行先の旅館とかにあったりしてさ、長風呂しちゃうんだよね、でも檜風呂も捨て難い、掃除が大変だけどさ、手入れを考えるとデッキブラシゴシゴシできる岩風呂かな~


 まてよ、ジューンて水の大精霊よね、上手くすれば温泉が引けるんじゃない?かぁぁ~源泉掛け流しとか憧れるわぁお肌ちゅるちゅるのタマゴ肌、最の高ね!


 確かエリック宅の床大理石っぽかったあの石良かったわ……ウゲッ!エリックの所へ行くの忘れてたぁ!今何時?良かったまだ昼前だ、今から行けば間に合う、ちゃっちゃと着替えてからの~


「ネロ、ちょっと出てくる!夕方までには帰って来るから!行ってきますっ!」


『行ってらっしゃいませ。』


 小走りでエリック邸に向かう、途中で子供達の姿が見えた、頑張ってるねぇ帰りに教会寄って今日のスライムチェックシートもらわないと、あ、先に教会寄らないと明日の分のパンとスープ代金渡してこなきゃ、状況が変わる事もあるから1週間分くらい予備として渡しておくか、うんそうしよう。


「こんにちはシスター、マザーいらっしゃいます?」


「今は市場の方へ行かれております。」


「あちゃぁすれ違いか、そしたら子供達のパンとスープ代金、作業報酬とスライムの薬を渡してもらいたいんですが、お願いできますか?」


「はい、喜んで受けたまわります。」


 シスター達にお金を渡してライカ像の削り節で作った出汁の出そうな護符と御守りを100ずつ渡しておいた、大銀貨以上のお布施をもらったお返しに渡すやつ用に作ったと念押ししといた。


 守銭奴?当たり前だよ?だって前世と違ってちゃんとご利益あるもん、工場で大量生産してるやつじゃないもん、私の手作りなんだよ、それだけで付加価値が……すみません暴言吐きました。


 教会をあとにして、貴族街の入り口に着いた、現在時刻12時30分本当に時間ぴったり、5分前行動が癖の私は少し早歩きで目的地に向かう、門番の人が案内すると言ってきたが、場所はわかっているので平気と断った、渋々門番さんは引いたけど30分も歩きたくないでしょ?ドMなの?


 領主邸に到着したのは12時50分、よし間に合った、守衛さんに声を掛け中まで案内してもらう。


「時間通り間に合った、時間を守る人間は約束を守る、一事が万事と言うやつだよ、これで待たされたらキレちゃうんだからねっ」


「怒髪天にキレられても困るから迎えに来たが?」


 あちゃ、この人タイミング悪いわ……怒髪天って言うな!


「オホホホホ、私キレたなんかないですわよ。」


「ウホホホホとは、ベアゴリラの真似かな?」


「よしっわかった、その喧嘩買った!ここじゃアレだ表出ようか。」


「今青空の真下なのだが街の外に出ろと言う事か、ふむ、素直に2人っきりになりたいと申せば……わかった、その拳をおろせ冗談だ。」


「なるほど上段が良いのね?48の必殺技の1つ回し蹴りをお見舞いするわっ!」


 使用人がアワアワし始めたのでじゃれ合いコントの様なやり取りを終わらせ執務室に向かう。


「さて、今日呼んだのは他でもない、あの子供らに配らせているスライムの薬の件だ。」


「そうじゃないかと思ってレシピ書いてきましたよ、なんなら目の前で作りますし。」


「ふむ、まぁそれは錬金術師が来たら後ほど頼む、何故あれを作ろうと思った?」


 そんなの臭いからに決まってんでしょ。


「それはダンゴさんとこの街に入った時に違和感を感じたからです、これから砂糖を取り引きして街に今まで以上の人間が出入りします、好印象を植え付けるだけではなく、こういった薬も作れるのだぞと他の街に牽制する意味もありました、更に技術的な部分や文化的な部分を向上させる意味もありました、お世話になる街に貢献してさらなる発展を……。」


「で、本音は?」


「臭くて我慢出来なかった。」


 エリック性格悪いわよ、色々喋らせてから本音は?ってズルくない?


「なるほど、某国ではどうやっていた?」


 私は以前書いた下水道の草案と簡単な図面を出した。


「ほう、これは興味深い、確かに理にかなっている、ふむふむ、ダストスライムは使用するがこの下水処理施設に集めるのだな、この街の規模だとどれくらいで全て終わると考える?」


 前世だとかなり昔から下水道の考えはあって古くは奈良時代とかその辺だったはず、昭和でやっと形になったと学んだ記憶がある、第二次世界大戦の後かな本格的に海外の技術や文化が入って来て高度成長期に一気に拡散した。


「現在の技術レベルで人の手作業なら早くて50年、私は魔法が使えないので魔法をインフラに使用した時の効果レベルがわかりません、ですが人一人で地中深く穴が掘れたり、掘った穴が崩れないようにできるのならばその限りではございません。」


「ふむ、ヨーコの魔法陣では出来ぬのか?」


「私が居なくなった後どうするのですか?ただ崩壊を待つだけでは?」


 一瞬エリックの言葉にイラッとしたけど、一旦飲み込んだ、実際私に出来る事はきっかけにしか過ぎない、あとは好奇心と向上心と知識だ。


「その通りだ、少し意地悪が過ぎたな、だが火種は貰うぞ?」


 きっかけって事か?


「えぇ、その辺は自分でもするつもりだったから。」


「ふむ、技術や知識に関して秘匿するつもりはないと?」


「私の知っている事ならば隠す必要は無いわ。」


「わかった、感謝する。」


 しばらくエリックは何かを考えて黙り込んだ、少し沈黙の間が続いた後ドアがノックされた。


「旦那様、錬金術師会の方々が到着致しました。」


「遅かったな、通せ。」


 執事っぽい爺さん略して執爺の後に4人の中年男性が入って来た。


「ヨーコ、此奴らが街の錬金術師のまとめ役だ」


「初めまして長谷川洋子です、錬金術師をしております、どうぞよろしくお願いします。」


 私の自己紹介の後向こうも名乗って来たが明らかに舐めた態度、完全に女だからと馬鹿にされてる感じがした、多分エリックも感じたのだろう、私がキレる前に咳払いをして牽制した。


「さて、お主らも気付いていると思うが街の一部だがダストスライムの悪臭が消えたのは知っているな?」


「はい、エリック様、スラムの子供らが何かわからぬ薬をスライムに与えていると伺っております。」


「ふむ、ならば話が早いな、その薬を開発したのが彼女だ、私は早急にこの件に関しては結果が欲しい、街全体のダストスライムの浄化が最終目的だ、其方らは彼女から教えを乞いて薬を作ってもらいたい。」


 わざと変な言い回ししやがって、焚き付ける気か?本当にエリック性格悪い。


「教えを乞うとは?我々が彼女にですか?」


「私の言葉が理解出来ぬか?」


「私供なりに理解した返答でしたが?」


 強気だなオッサンズ4、あっ!1人ビリビリしてる、まさかとは思うけど……エリック時計してるじゃん、あ、執事と警備兵に連れてかれたよ、今から尋問タイムだね、何をそこまで強気にさせるんだろう。


「今何かされたのですか?」


「いや、何も?勝手に倒れたのではないか?それよりも話の続きだ、彼女から学びそれを広めるのだ」


 オッサンズ4改めオッサンズトリオは顔を見合わせてから1人が口を開く。


「あの薬が人体に安全とは言いきれないからスラムの孤児を使ってるのではないのですかな?」


 カチンッ!頭に来た、ちょっと言い返そう。


「はぁ、そんな愚かな考えしか浮かばぬから其方等は成長せぬのだ、ならば人体に害があるか私が実験しようではないか、ヨーコ、薬を。」


 魔馬の革鞄から薬を出した、人が飲むと肝機能が向上する程度の効果しかないが悪影響は一切ない。


 手渡された薬を疑いをせずに飲み込むエリック、そして何食わぬ顔で


「何も起きぬがどうだ?これでもまだ人体に悪影響とかほざくのか?」


「しかしっ!遅効性の可能性も!」


「もう良い、それよりも尋ねたい、其方等にこれに変わる薬は作れるか?」


「ざっ材料さえわかれば!」


 材料さえってほぼ答えじゃん、さぁエリックどうすんの?


「ヨーコは材料を誰かに聞いたのか?」


「いえ、様々な素材を試しました、素材自体は旅の道中に採取したりして常に持ち歩いていたので、結果身近にある素材で出来上がりました。」


 まぁ全部が嘘でもない。


「と申しているが?材料を聞くかね?」


「だっ大丈夫でございます。」


 ホントかよ、顔色が大丈夫じゃないが?


「ふむ、ヨーコこの薬を作るのにかかった日数を教えてくれぬか?」


「2日ほどです、この街に来て2日目くらいには調合を始めましたので、子供達に撒いてもらい始めたのが3日前です、疑うならダンゴさんにこの街に入った日にちを聞いてもらえれば確実かと、もしくは今手元にギルドカードがあります、登録日が記載されているのでご確認下さい、私はその前日の午後にティンダーに初めて入りましたので。」


 冒険者カードにはいつ街に入ったか記されていた、門番の所でダンゴさんが入場料を払ってくれたとき御者のハナンが搭乗者の欄に名前を書いてくれていたからだ。


「それでは5日ほど間を開けた後錬金術師会の面々は薬を持って来るように、では下がって良いぞ。」


 オッサンズトリオに続いて執務室を出ようとしたら肩を掴まれた、前世だったらキャー痴漢案件だ、痴漢にあった事ないけどうっせーわ!ブスと言う自動防衛システムが働いたんだ……ちくしょう泣くぞ?


「えっ?なんすか?」


「いやなんすかってなんすか、誰がヨーコも下がって良いと言った、話しは終わってないぞ」


 早く帰ってお風呂作りたいの!ジューンに温泉引けるか確認したいの!


「アイツら少し調子に乗っているのでな、悪いが火種に使わせてもらった、ポーションしか作れぬ馬鹿どもが流行病で調子に乗りおって。」


 詳しく話を聞くと辺境の街で腹下しの流行病が流行したらしく、その時毒消しのポーションがズバリ当たり錬金術師が寝る間を惜しんでポーションを作ったんだって、それが去年の事で今では税金を安くしろとか、その時の後遺症で夜しか眠れないとか駄々を捏ねていると、しかしその時のポーション代は割増しで払っているし、冒険者ギルドで採取した素材は無料で錬金術師に配っていたんだと、その分辺境の街からは代金を徴収したから街は損失が無かったが領主としては面白く無かったようだ。


「欲をかくとろくな事ないのに、子供達の方が素直で可愛い。」


「全くその通りだ、それで薬は今どれくらいある?」


 あれから毎日3000錠くらい作ってるから


「10000はあります、でも今の地域の分です、他の地域の分はその地域の錬金術師に作ってもらうつもりでしたから。」


 まぁその目論見はさっきのオッサンズ4の反応を見て無いなと思ったけど。


「レシピ渡しときますね、普通の錬金術師なら作れますよ、ただこれは試薬です、今後は更なる良薬が出来ると思います、さっき仰った火種ですね。」


 薬の事だからかなり細かく書いてある、抽出して固めるだけだから薬とも呼べないかも、あくまで思い付きでやった結果出来ただけで、スライムの事とか考えないでやるならもっと強力な物も作れるだろうし。


「うむ、助かる、してこの代金はどれくらい用意すれば良い?」


「いらないです、教会に手厚く援助してくれるならそれでチャラです。」


 それが結果住み良い街に繋がるし、子供達のためにもなる。


「子供らにはいくら払っている。」


「朝食と持ち帰りのパンと別に1人銀貨1枚です、現在33人の子供が参加してくれてます、ランニングコストで毎日パン100個の大銀貨1枚、スープ35人前で銅貨35枚を市場のお店に支払っています。」


 ザックリと計算すると1日に大銀貨5枚のコストだ。


「ふむ、今後の予算案に組み込もう、実際あの薬にかかる費用は素材代金だけなのだな?ギルドの定期的なクエストとして出すべきだな」


 エリックは机の引き出しから金貨の入った袋を出して。


「予算案を通すまでそれを足しにしてくれ、金貨50ある、ポケットマネーだ、税金では無いから安心しろ。」


 いや、アンタの給料税金だろがい!


「わかりました、有難く使わせて貰いますね。」


 その後も男ドワーフに蒸留器を作らせている事、アナに新しい酒を教えた事、市場の売れない屋台に油で揚げる調理法を教えて芋をカットして揚げるだけのフライドポテトを教えたと行動のある程度を説明した。


「明日から2日間かけて王都に行ってくる、留守中は代官がいる、何かあったらその者に伝えると良い。」


「何も無いのが1番だけどね」


 エリックの所から馬車で教会まで送ってもらった、マザーにエリックから貰ったお金を更に追加で渡すためだ、マザーには今後他の案件で動かなければならないので、しばらく子供達の事をお願いした、市場にも顔を出しパン屋とスープ屋台のおばちゃんによろしく頼むとお願いしてきた。


「マーチ、みんなはどうしてる?」


『今隣り街と繋がってる街道に出たワイバーン退治に行ってる、現在絶賛戦闘中、まぁ楽勝だけど2つの世帯5匹相手にしてるよ、スラムの子供達も何人か連れて行ったみたいだね、解体要員としてかな?戦闘ではメイが大活躍中だよ、何もトラブルなきゃ今日中には帰って来るんじゃない?荷馬車3台で行ってるし、最悪明日の朝かな。』


 3人には野営用の装備も渡してるし多分大丈夫でしょう、隣の街かちょっと興味はあるけどこっちが落ち着いてからだな。


『戦闘終わったみたいだね、ヨーコの用意してくれた「吸血石」使ってるよ、5匹居るから魔石化するんじゃないかな、この世界初の人工魔石凄い発明だよ。』


 吸血石はオクト達がオークの集落を潰した時に、オークの血抜きに時間がかかったと聞いたから作ってみた物だ、魔物を運ぶ時血液の重さは侮れない、かと言って血抜きをすればその匂いでまた魔物が集まってしまう、食肉目的の魔物の場合血抜きしないと生臭くなってしまうので評価価値が下がるから血抜きは避けて通れない、水や水分を操るジューンならその辺は対応出来るけど特殊な魔法になるのでパーティー以外の人が居る時はやらないと言っていた。


 素材は山ビルのでっかいバージョンみたいな魔物ブラッドイーターと火山灰と麦や芋に栄養を吸われた土、これらをブラッドイーター1に対して火山灰7、土を3の割合で合成、ドロっとした合成物を圧縮して固めたら出来上がり、吸血すると若干重みが変わるが元の重さの倍くらいにかならない、魔石になる兆候は試作品を試している時で、吸血した石が放つ雰囲気が魔石に近いとマーチが言ったのがきっかけだった。


『魔石化したみたいだね、これはこの世界の常識をひっくり返すよ、今まで不明だった魔物の謎に迫るものだよ』


 マーチが何やら興奮してるけど、私は便利になればそれでいいからそこまでの事は考えてない、私の範囲外で研究してくれ。


「マーチも体が出来上がるの楽しみだね、その謎を解明しちゃおうよ。」


 マーチの光が激しく揺れる、まるで野外フェスの観客達のヘドバンのように見えて吹き出しそうになった。




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