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前世は大工女子の異世界生活  作者: 森林木林森
12/49

住みやすい我が家にしましょう。

「んじゃ3人は宿に戻ってくれる?マーチが戻って来たら連れて来たブラウニーと契約して工房に籠るから、明日から3日間である程度住める様に仕上げるし、マーチの体も仕上がるから、やっと全員で色々出来るね。」


 3人は明日も何かクエストをすると言っていた、帰って来たらこっちに顔出すみたいだ、それまでにやれる事やりますか。


「ネロ、今から私のスキルで別の場所に行くけど付いてくる?」


『街の外など離れすぎると私共は力が弱くなります、戦闘等にならなければお傍に控えさせていただければと。』


「一度入ってみようか、無理だったらすぐに出れば良いし。」


『はい、仰せのままに。』


 私とネロは工房に入った。


「どう?大丈夫?」


『はい、なんというか不思議な感覚です、お屋敷の様な精霊界の様な、とても落ち着きます。』


 まぁ神様が創った空間だし、ネロの感覚もあながち間違いじゃない。問題なければ次はホムンクルスの制作に入る、ネロの年齢はどれくらいにしようか、私より少し上でジューンと同じくらいかロリメイドかの2択だよね、ただネロの話しっぷりだと少し落ち着いているからジューンと同じくらいにしよう、イメージをしながら錬金釜に素材を入れ魔力を通す。


「見た目はこんな感じでどうかしら、髪の毛の色は少し落ち着いた感じにしたけど」


 ネロの髪の毛はクリーム色のミルクティー、私達の様な金髪デーハーではなく、優しく淡い色合いの髪の毛をしたメイドさんって落ち着くじゃない?


『はい、とても素敵だと、体のラインもお仕事をする上で邪魔にならないサイズが嬉しいです、身長も天井に道具が届くのは非常に有難く思います、髪の毛の色も私の属性に近い色、とても安らぎます』


 なるほど~ブラウニーの体はあくまでも仕事を中心に考えなきゃいけないのか、でも本人の感想はまぁまぁ良さそうだし問題ないかな。


「ネロ達は大気の魔力を吸収できないの?」


『はい、敷地内の魔力は吸いあげようと思えばできるのですが、存在維持の為と言うよりも建物などの手入れに使用してしまいますので、これはブラウニーの性質でございます。』


「それじゃホムンクルスに内蔵された魔石からは魔力を取れる?」


『可能でございます。』


「ネロの属性は?」


『土でございます。』


「わかった、アースドラゴンの魔石をコアにするよ、それでどれくらい活動出来そう?」


『光栄でございます、それほどの高い魔力を持った魔石ならば、かなり長期に活動出来ます、私達の行動出来る範囲は小さいのですがその分魔力消費が少ないので、この街にいる限り300年はお屋敷の手入れからお庭の手入れまで出来るかと思われます。』


 300年かぁ、でもホムンクルスの耐久年数は50年くらいなんだよなぁ、私がこの先100年生きるとしてもう一度ホムンクルスを作って、死ぬ寸前でもう一度……


「もしも私が死んだら貴女達はどうなるの?」


『お屋敷が存続する限り魔力が尽きるまでは精霊として残ります、お屋敷が消えれば私も消えますし、新しい主がお屋敷に訪れても契約を拒否されれば魔力供給が出来なくなり消滅致します。』


 なんか悲しすぎるじゃないか、建物と共に存在して、建物と共に消滅する、まるで家の付喪神だ。


『悲しい顔をなさらないでくださいませ、私達はこうやって存在できるだけでも幸運なのです、微精霊であった私達が一つの物に執着し、たまたま執着した物が形を変え別の物になり、ほかの微精霊と融合し小精霊となります、小精霊になると役割が与えられ、役割を持った小精霊が融合し中精霊となり、役割が制約に変わります、私の制約はこのお屋敷を護る事でございます、守護する物が無くなれば消えるのは摂理でございます。』


 そんな摂理捻じ曲げてやりたいわ、色んな物が組み合わさって物になる建物と集まって一つの者になる精霊、似てると言えば似てるのかな。


『ヨーコ~連れて来たよ、連れて来たブラウニーは訳ありで早く契約しないと消えちゃうから早く来てね。』


「ネロ、すぐ外に出よう。」


『はい、かしこまりました。』


 マーチの言葉を聞いてすぐに外に出た私は目の前の消え掛かる光に問いかけた。


「私の名前はヨーコ、貴女達を呼んだのは私で目的はこの家で彼女と働いてもらいたいから、もしも協力してくれるなら名前を教えてくれないかしら?」


『『私達に名前は無いなのです』』


「じゃあ、貴女がマインで、彼女がレーラでどう?私が昔読んだ物語の双子の名前なんだけど。」


『マインなのです!』

『レーラなのです!』


 なのです?いや今そこに食いつくな、消えちゃうから早くしないと。


「マイン、レーラ私はヨーコ、よろしくね。」


 すぅっと体から魔力の抜ける感覚、あれ?ネロの時より少ない気がする。


『色々探したんだけど彼女たちまだそれほど力が強くないんだ、ブラウニーになりたてで住み着いた建物が倒壊寸前でさ、護る力が足りなくてね急いで引っ張ってきたんだ、でも珍しい双子のブラウニーだよ、ヨーコなら可愛らしい体が作れるでしょ?』


 双子ちゃん、もうそこで可愛いわ~マーチわかってるじゃないか、さすマーだわ。


「間に合って良かった、マイン、レーラ、ネロに色々教えてもらうのよ?」


『『わかりましたなのです。』』


『あらまぁ、賑やかになりそうで私も嬉しく思います、私はネロ、このお屋敷のブラウニーです、これからよろしくお願いしますね』


『『なのです!!』』


『彼女たちは属性の関係で自由度が高いんだ、街の中ならある程度活発に動けるけど、ネロに比べたら力は数段落ちる、体を持てばお使いや街中で簡単なヨーコの手伝いも出来るからね、そう言った意味でも忙しいヨーコにはピッタリじゃないかな?』


「ちなみに2人の属性は?」


『『風なのです!!』』


「風の届く範囲なら動けるの?」


『正確に言えは街の風だね、外の風はまた別、執着したのが風通しの良い建物だったから、風通しの良いと崩れてるの違いがわからなかったみたいでね、いつ崩れ落ちるかわからない建物を2人で必死に守ってたって事』


 おドジね、生まれたてって言ってたからそういうミスもあるの……ブラウニーにとって致命的じゃん、危なかったなぁ。


「ふふっ、今のマーチの言葉で2人のイメージが出来たわ、マーチこの子達連れて工房行くけど一緒にくるでしょ?」


『うん、でも朝にはスラムの子供達の所に行くんでしょ?そこまで時間が無い事は覚えておいてね。』


 わかってるし、でもそうだな、ちょっと手が足りなくなってきたかも、嬉しくて色々やり過ぎたかな。


「了解、イザとなったら徹夜するわ!今は彼女たちの体を作るのが最優先よ!」


 ブラウニー達を連れて工房に入る、早速ふよふよと興味深く動き回るマインとレーラ、動き回る2人にネロが近付き私の所へ連れて来た。


「じゃぁ2人の事をよく聞かせてね、可愛い体を作ってあげるから。」


 ホムンクルスの素材を集めながら2人の話しを聞く、大体の情報が集まったので制作に取り掛かる。


 2人の身長は140センチ、成人女性としては低いがなくもない、でもその言動から幼さの残るようにしたいので顔は童顔、髪型はショートボブ、カチューシャとかでオシャレさせたいけど子供らしい活発なイメージも欲しいから、髪色はネロよりも少し明るいクリーム色、光の加減で金髪や銀髪に見える不思議な色にして、目の色はエメラルドグリーンにした、お胸は12、3歳くらいをイメージして少し膨らんでいるくらい、ロリ巨乳なんて概念は私には存在しないし、滅べば良いとすら思ってる。


 同じ顔が2人並ぶと見分けがつかないのでオプションで涙ボクロを、マインは右にレーラは左に入れる、物理法則に逆らうアホ毛の向きで見極めも考えたけど、風が吹いたら分からなくなりそうだったから却下、見た目は綺麗、笑うと可愛い、そんな曖昧さを出したかったからえくぼもつけたよ、えくぼ可愛いよねぇ~笑った顔が眩しい美少女ってイメージで完成。


『私達の体なのです。』

『同じで可愛いのです。』


「まだまだ完成まで時間がかかるけどネロに色々屋敷の事を教わっている間に出来上がるからさ、もうちょっと待っててね」


「マーチ休む時間ありそう?」


『工房なら後5時間は休めるよ』


「じゃぁやる事やったし少し仮眠するね、ネロ達は屋敷に戻っていいわよ、まだ色々あるでしょうから」


『かしこまりました、そのようにさせていただきます。』


 翌朝マーチに起こされた私はいつもとは逆の方向から市場に向かう、市場でパンを抱えおばちゃんのスープをリヤカーで広場まで運ぶ。


「ヨーコさん、おはようございます」


「カイトおはよう、今日も早いね、朝ごはんの準備手伝ってくれる?」


 子供達の朝ごはんを用意しているとゾロゾロと子供達が広場に集合してきた、来た順にパンとスープを手渡し広場に座って食べ始める。


「今日は33人が参加します、多分これが最大人数になると思います、後は大きい兄ちゃん達なので」


 33人が最大人数って事はパンは100で足りるか、朝食で1個、持ち帰りで2個、余ったパンは希望者が順番で持ち帰る、スープも35人分と言いながら数人がおかわりしても大丈夫な程ある、おばちゃんがいっぱい食べれる様に気を使ってくれたのだろう。


「食べながら聞いてね、今日は初日にやった所を回るんだけどスライムの様子をちゃんとみて欲しいの、お薬をあげるとスライムは透明になるけど、あの子達が仕事をすると少し濁って来るのよ。」


 子供達がコクコク頷いている。


「みんなに見てもらいたいのは、どこのスライムが濁っているか教えて欲しいのよ、例えば冒険者ギルドの前とか、赤いお家の前とかできるだけわかりやすく教えてくれるかな、あとスライム達が透明でもお薬はあげる事」


 スライムに個体差があるのか、ゴミの量や排泄物の量が原因と仮説を立てているけどそれが果たして正解なのか、私の中ではスライムの濁りや匂いは人間で言う食べ過ぎによる消化不良って考えている、多分少量であれば自己修復機能があるのでは無いか?とも考えている、子供達がスライムが喜ぶと言うのはあながち間違ってないのでは?と、検証してみないとわからないけれど、それが正解なら対策方法がかなり絞られるからね。


「読み書きできる人ってこの中にいる?」


「女の子はだいたいできます、マザーが教えてくれるから、男は出来ません、マザーの所に入れないから」


「マザー?」


「はい、元々はあそこの教会のシスターで前の領主様と喧嘩して教会の人達が追い出されたんです、それから男の人は立ち入り禁止になって、唯一長老だけが出入りできます。」


 男性恐怖症にでもなったか?前の領主と喧嘩したの?ちょっと興味はあるかな、あそこの教会封鎖されてんだね、結構しっかりした建物だし敷地も広そう、エリックに頼んで売って貰おうかな。


「ねぇ、今度そのマザーに会いに行っても良いかしら、聞いといてくれない?」


「マザーなら昨日も見に来てましたし、今日もあそこに」


 カイトが指差す方向を見ると、前世のドラマで見た好奇心旺盛な家政婦さんの様に体半分出てるのに隠れている風を装ったおばちゃんがいた。呼んだら逃げそうだけど近寄ってみるか。


 読み書き出来る女の子に羊皮紙とバインダー風の下敷き、書き込み用の手作り鉛筆を予備含め5本渡して出発の合図を送る。


「それじゃカイト、今日も頼むね、みんな気をつけて行ってらっしゃい。」


 スープの器と寸胴に浄化してスープ屋のおばちゃんの元に行く。


「おばちゃん、あそこの教会って誰かの持ちもの?」

「あぁ、あの教会は先々代の領主様が建てた物さ、封鎖されてるけど領主様の持ち物件になるんじゃないかい?」


 よし、それなら買える!


「そうなんだ、おばちゃんありがとう、これ明日の分ね。」


「はいよ、毎度あり。」


 おばちゃんとやり取りをして先程の家政婦マザーの方へ向かう。


「こんにちは私はヨーコって言います。」


「あっあぁこんにちは、私はマーサ、あの子達にはマザーって呼ばれてるさね、ヨーコさん、アンタ昨日見てたよ、凄いねぇ、私もスッキリしたよ!」


 最初は面食らった様な表情をしていたが、話してみたら気さくなおばちゃんだった。


「ねぇマザー、2日連続で来てるって事は子供達の事気になるのよね?」


「そりゃそうさね、悪い男に騙されてんじゃないかとか心配だからね、見にも来るさ。」


「それならマザー、手を貸してくれないかしら、今は市場の皆さんのおかげで広場を使わせてもらっているのだけれど、いずれはちゃんとした拠点を作って子供達が安心出来るところにしたい、でも私1人では手が足りないの、助けてくれない?」


 マザーは少し悩む、口を開いて何か言おうとしたがやめて、また悩む。


「あのねヨーコさん、私ゃ男が怖くてね、前まではなんて事は無かったんだけど前の領主とトラブルになって酷い目にあってね、子供の男の子にさえ嫌悪感を感じてしまうのさ、笑っちまうだろ?」


「笑わないよ?男は怖いもん、力は強いし体も大きいし私だって昨日怖かったんだよ?でもさ、頑張ってるあの子達の邪魔されるくらいならって、ちょっとやり過ぎたって仲間に言われたけどさ、マザーの怖さは当たり前の事だよ。」


 マザーは私の言葉に反応して何故か抱きしめてくれた、久しぶりに抱きしめられたからちょっとドキドキしたけどなんだろ、安心感かな、心が安らぐ気がした。


 それからはマザーとの会話が弾んだ、体力で勝る男に女が勝つには知識だって言って女の子達に読み書きを教えたとか、今の領主は仕事が出来るがまだ若いとか、スラムに逃げ込んだのは行く所を失ったからとか、色々話してくれた。


「あの教会貰っちゃわない?私領主様に貸しがあるのよ、ついでだから援助もしてもらったりさ、その辺は……マザーどうしたの?」


「貸しがなんだって?」


 会話の途中でマザーが固まったので気にすると、後ろから聞いた事のある男の声。


「あ、エリック……様?」

「敬称は要らん、慣れないことをするな、それに間が空いていたぞ?ヨーコと私は友人ではないか、それでそちらのご婦人に話していた私への貸しがどうとか聞こえたのだが?」


 エリックが居るなら話が早い、あの教会をくれ、そして援助してくれと軽い感じで言ってみた、ダメなら私が買い取れば良いし。


「わかった、そちらのご婦人は教会関係者かな?それなら好都合なのだが、それとヨーコ、今子供らを使ってやっている事、ちゃんと説明してもらうからな、今日ここに来たのも「怒髪天の乙女」と呼ばれた女性が子供らを使って街を綺麗にしていると報告があったので見に来たのだ、まさかとは思っていたが……。」


「何です?そのドキュン可愛い乙女って、照れるじゃないですか、それ言った人すぐにお話ししたいので連れて来てくださいくれ!」


 怒髪天とか失礼だろ!そりゃ昨日は怒ったけどさ。


「乙女しか合ってないではないか、乙女すら少し怪……いや、確かに可憐な乙女だな、見た目だけは……うん。」


「ちょっと!!エリック!?」


「まぁそれはさておき、教会に関しては以前の関係者を探していたのだ、再開する予定は既にたっていたのだが、シスターがどこにも居なくてな、王都から呼ぶにしても手続き上時間が掛かるからな。」


 おぉ棚ぼただ!


「マザー!これは話が早いよ、マザーの他のシスターも今いる所に一緒にいるの?」


「えぇ、みんなであの時は逃げたからね、でも領主様よろしいので?一度逃げた者を使うなど、貴方様の評判に傷が付くのでは?」


「かまわん、その程度で傷が付く様な評判などいらぬしな、ご婦人どうかな、もう一度このティンダーの街に神の教えを広めてくれぬか?」


「これもライカ様の思し召し、お許しがいただけるのでしたら、この身の全てを捧げるつもりでございます。」


「うむ、それでは早急に教会の修繕を依頼しておこう、マザーとシスター達は今日にでも教会に入って欲しいのだが、取り急ぎ必要な物はこれで揃えると良い、金貨30入っている、毎月の運営費用などは教会の修繕が終わってからになるだろうが、私が出向く故マザー達は職務に専念してくれ。」


 マザーに金貨の入った袋を渡したエリック、マザーは感謝の祈りを捧げ教会の方へ向かった。


「さて、ヨーコ、じっくりと話をしたいところではあったが今日はこれから商人ギルドで例の件の契約について話し合いがある、一度視察も兼ねて出向いて来たのだが、私は運が良い、教会の再開は嘆願されていたからな、ついでと言ってはなんだが、ヨーコ明日の午後私の所へ来れるか?」


「はい、それでは1の鐘がなる辺りに伺います、出来れば二度手間を省きたいのでお抱えの錬金術師などが居ればありがたいです。」


 エリックはわかったと言って馬車に乗り込んだ。


 教会の方からマザーが駆け寄ってきた。


「ヨーコさん、ありがとう、まだ中は見ていないけど建物自体は手を加えれば問題なさそうだよ、どんなに感謝しても足りないくらいさね、今から他のシスター達を呼びに行くよ、あの子らも喜ぶだろうね、今度時間があったら顔出しとくれ、歓迎するよ。」


 マーサは早足でスラムの方へ駆けて行った。明日にでも顔出すよ、街を綺麗にしましょう作戦を引き継ぐつもりだからね、いずれは市場の皆さんやエリック、最初にアプローチしてきた人に頼むはずだったから、私にとっても教会の再開は好都合だったのさ。


 あ、マザーが帰ってきた、1、2……4人のシスターを連れて教会の方へ向かっていく姿が見える、みんな表情が明るい、良かったねぇ。


 マザー達を見送ると子供達が戻ってきた、みんな今日も良い笑顔、ちびっ子もちゃんとカイトの後ろにくっ付いている、まるで実の兄妹みたいだ。


「ヨーコさん、今日もトラブルなく終わりました、これが各班でまとめたスライムの羊皮紙です、明日は衛兵通りで同じ事をすればいいですか?」


「えぇ、それでお願い、明日の分の羊皮紙は今渡すから、あとそのバインダーと鉛筆は持ち帰って良いからね。」


 羊皮紙に軽く目を通して子供達に報酬を渡した、昨日は浄化してないから今日は浄化してあげたよ。


 改めてスライム報告書に目を通す、やっぱりある程度利用する人間が多い所は濁っていたようだ、ガトーが言っていたけど、ダストスライムが真っ黒になったら死ぬらしく、その時の匂いはかなり強烈だと教えてくれた。


「前世みたいにゴミの日を決めても量は一緒だし、排泄物に関しては毎日の事だからな、やっぱり下水道工事が必要だろうなぁ。」


 一応頭の中では下水道工事の草案は出来ている、ただこの世界の技術が発達していない、既存の住宅を交えた下水道工事となるとかなり難しい、前世の様に塩ビ管がある訳でもないし鉄を加工する事だって微妙かも知れない、建物を建てる前に下水管を仕込む事も難しいだろう、重機の力は偉大だからね手作業でやったら何年かかるのか気が遠くなる。


 教会にちっこいおっさん達が入って行くのが見えた、あれが男ドワーフか、腕が私の足より太そう、あれ?なんか様子が……ちょっと覗くか。


「あぁぁなんて事を……ライカ様お許しくださいませ、あぁぁぁ」


 マザーが膝から崩れ落ちライカに謝っている、どうした?


「マザー?どうしました?」


 私の呼び掛けにガバッと顔を上げたマザー、号泣してんじゃん、どした!


「あぁぁぁヨーコさん、貴女にも許してもらわなければ」


 私の足元で縋るようにしているマザー、私はしゃがんで訳を聞く。


「ライカ様の像が前の領主様に壊されていて……神に祈りを捧げる教会に神のお姿の像がないなどあってはならない事、かくなる上はライカ様にこの身を持って謝罪しなければ。」


 マザーがどこからかナイフを持ち出し自分の喉元に突き付けようとしていた、咄嗟にナイフを叩き落とした私はマザーに中を見せてくれるよう頼んだ。


 中は明るく、効率よく陽光が入るように設計されていた、天井には多分ライカなのだろう、人間に向かって何かを説く姿が描かれていた、そして問題の祭壇の先には、台座から崩れ落ちたライカ像がある、所々割れたり崩れたりしている、石像だったのだろう、中の石が露出していた。


「これは酷い……マザー大丈夫よ、私が何とかしてあげるから、ただ石像は私には無理だけど木像なら彫れるから、時間があれば石像も可能だけれど今は時間が無いからね、任せてもらえないかしら。」


「ヨーコさん、貴女芸術家か何かなの?以前の像は王都の芸術家が作ったと聞いていたけど。」


「まぁ似たような感じね、女神像は何度か掘っているし問題ないわ、それでも少しだけ時間が欲しいの、今夜から教会には誰も近寄らせないで、集中が切れたら完成も出来も違うから。」


 崩れたライカの像を見て、少し悲しくなった、彼女がくれたこの素敵な人生、飛びっきり美しい像を作って恩返ししなきゃ。


「おいっ!ちょっとアンタヨーコっつったか?もしかしてアナスタシアに神の酒を教えたっつぅ人か?」


 男ドワーフが話に入って来た。


「アナさんにお酒の事は教えたけど今はそれどころじゃないの、悪いんだけどこれが終わったら聞いてあげるから後にして。」


「あぁそういう意味じゃねーんだ、信じるに値する人だとシスターに言いたかっただけだ、悪かったおいっ!」


 おいっおいっうるせぇドワーフ、でもマザーが信じられるように援護射撃しようとしてくれたのか、ごめんなさい。


「じゃぁ俺たちが作業すっとうるせぇだろうから一旦戻る、終わったら教えてくれ。」


 男ドワーフ達が去っていった。


「マザー、それじゃ悪いんだけど、今夜は1人にしてもらえる?素材は自宅にあるから安心して。」


「ヨーコさん申し訳ないね、私は無力だ、今は貴女を頼るしかないようだね、助けてくれるかい?」


「もちろん、あ、でも子供達の世話をお願いしたいわ、市場のパン屋さんとスープ屋さんには代金支払ってあるから明日の朝取りに行って欲しいの、頼めるかしら。」


「えぇ、恥ずかしいけど貴女の事は2日間見ていたからやる事はわかってる、そのくらい大丈夫さね。」


 マザー達も教会を出て行った、今いきなり素材を出したらおかしく思われるし、まだ日が高いから木材取って来るようにマーチに頼んでオクトに持って来てもらうか…最善はどれだ?


 結局屋敷で作業する事にした、出来上がった像を朝搬入して設置する、多分それがベストだろう。


 崩れたライカ像と台座をリュックにしまい込み屋敷に向かった。


『『おかえりなさいませなのです。』』


 マインとレーラが出迎えてくれた、ネロは先に庭に居たので挨拶は済んでる。


「マーチ、ごめん3人に急用できたからそのまま宿に戻ってって言ってくれる?」


『わかったよ、全部見てたから説明もしとくね。』


「よろしく!」


 そして私は工房に飛び込んだ。

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