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前世は大工女子の異世界生活  作者: 森林木林森
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やっぱいるよねぇ~

 宿に戻る頃には夕焼けが空を染めていた、乗って来た馬車を見送り宿の裏のスライムを観察する、朝はモヤがかかっていたが今は完全に曇った空のようになっていた、悪臭とまではいかないが若干生臭い?感じがする、宿屋の裏なのでゴミや排泄物の量が多いのかもしれないけどだいたいの有効期限はやはり2日と判断した。


「はいこれ食べて。」


 錠剤を投げ込み様子を見る、体内で気泡が出てすぐにモヤが消えていく、フルフルと体を揺らしているスライム、もしかしたらこれが喜んでいるサインなんだろうか、完全に透明になったスライムを確認して部屋に向かった。


「お!ヨーコが帰ってきたな、おかえり」

「お姉ちゃんおかえりなさい」

「ヨーコおかえり、食事はしてきたの?」


 オーク狩りに行った3人は戻って来ていた、早くない?


「みんなお疲れ様、今日はオークの集落潰しに行ったんでしょ?早くない?」


「あぁ、集落の話したらギルドの職員がフリーの冒険者を4人連れて行ってくれって頼まれて荷馬車3台のちょっとした人数になったからよ、ちゃちゃと終わらせた、それにギルドの前にいた雑用のガキも10人くらい連れて行ったから解体も早く終わって、ギルドでガキ共に飯食わせて銀貨5枚ずつ渡してやったり土産にオークのモモ肉何本か持たせてやったら喜んで帰っていったの見て帰って来たんだ。」


「オークの集落にハイオークが居て50程の集落になってましたから合同で助かりました、子供らもよく働いてくれたのでオクトが食事を奢ったのですよ。」


「私は子供達に食べれる野草とか、薬草とか教えたり、解体方法教えたりブタヤロウをブタヤロウしたりしたの。」


 ブタヤロウをブタヤロウしたってなんだ?メイちゃんの言動が理解できない、でもなんか若手か新人に指導したってことかな?


「ジューン、お金平気だった?」


「ええ、討伐報酬と素材の買取で協力してくれた冒険者と全員で分配しても1人金貨6枚にはなりましたから少し増えたくらいです」


「そう、凄いじゃない!メイちゃんも指導したのね、偉い偉い、それで明日はどうする予定?」


「近い集落潰したから後は少し遠出になるんだ、フォレストウルフとかブラックベアとかその辺の討伐依頼があれば良いが、メイの希望で明日はヨーコと一緒に街をフラつこうかと思ってる。」


 休息は大事、でも明日もあの子達の仕事見なきゃいけないし。


「明日午前中はちょい仕事があってフラつくなら午後かな~それまで3人でいる?それとも私といる?」


「お姉ちゃんと居る!お仕事手伝う~」


 それならいっか、明日は人数増えそうだし手伝ってくれるなら助かる。


「んじゃちょっと手伝ってくれる?普段着も用意しなきゃだね、ちょっと後で工房に行って準備してくるよ、その前に食事かな、みんなはギルドで食べてきたんだよね?」


「食べてないよ~子供達に食べさせたら座るとこ無くなったから帰って来たの」


 だから早かったのか。


「んじゃ食べに出ようか、近いからアナの店に行こう。」


 私達は宿を出て並びのアナの店に向かった。


「こんにちは~奥空いてますか?」

「あら、いらっしゃい、1番右が空いてるよ」


 女ドワーフが個室に案内してくれた。


 個室に行く途中で4人組みの冒険者に頭を下げられた、オクトが軽く手を挙げて応えていたから、あの人達が今日一緒に行ってくれた人なのかな?


 席に着いてエールやツマミを注文し乾杯をした、途中で女将が顔を出して来て蒸留器の途中経過を教えてくれたり、合同で参加した冒険者達が来てジューンの無双ぶりを興奮しながら話したり、帰り際にはワイン1本ご馳走してくれたりとなかなか楽しい時間を過ごした。


「んじゃちょっと工房に行ってくるよ、みんなは休んでて」


 私は3人の普段着とちびっ子用の制服を作りに工房に飛び込んだ。


『ただいまぁ~』


「あれ?マーチどこ行ってたの?」


『うん、ちょっとライカ様に報告して来たのさ、ボクがヨーコに付くように指示を出したのはライカ様だからね、一応報告の義務があるんだよ、でも今後はボク達に任せてくれるみたいだから、やっとボクも……』


「よし、ホムンクルス作るか!」


『うん!!』


 どうやらマーチには神様からの指示があったようだ、てっきり私を助けるために……結果一緒か、本当は早く受肉したかったけど我慢してたんだね、返事が弾んでたもん。


 ホムンクルスは時間がかかるから先にやっちゃおう、マーチのイメージはちょっと生意気な歳下男の子、髪は銀髪にしよう、サラサラ銀髪の生意気男子とか萌える、やばいやばいヨダレが、でも大人として見られたいからオクトより少し身長を低くして、目の色はスカイブルー、体型は細マチョにしておこう、武器はなんでも良いって言ってたからブロードソードとかが良いかも、日本刀も捨て難い、斬撃飛ばす二刀流とかも、いや、槍にしよう、それも十字槍!幸村!って感じに想像しただけではぁはぁして来たわ!


 マーチのガワも仕上がり培養機に体を寝かせた。


「どう?」


『人族の美醜は良くわからないけど美しいと思うよ、気に入った。』


 私はマーチの言葉を聞いて安心したよ、ふよふよと自分の体を眺めるマーチを見てから私は3人の普段着作りに取り掛かった。


「ふぅ、出来た、あとアレもこの勢いで作っておこう」


 ミスリルを板状にして魔法陣を仕込む、仕込んだ魔法陣は3つ、位置情報、鑑定、遠話、そうですなんちゃってスマホ、ミスリル板の間に動力源の魔石を挟み込む、画面になる部分にはファントムって呼ばれる魔物の魔石を加工した、ファントムは幻を見せて人を惑わせる魔物で幻を見せる部分を錬金術で取り除き映し出すに変換した、そこに鑑定の結果が反映されるように魔力回路を繋ぎ合わせて完了。


 ん~スマホっていうよりタブレットのサイズになっちゃった、遠話の魔法陣が細すぎてこれ以上小さく出来ないや、魔法陣の文字がくっついたら作動しないし、仕方ないか~ワイヤレスイヤホンみたいなのを別で作る?私よく無くすんだよなぁイヤホン、いつの間にかなくなってるんだよ、位置情報の魔法陣組み込めるかな。


 結果としてワイヤレスには出来なかった、遠話の魔法陣の入力部分にイヤホンジャックを作り差し込むとコードを経由してイヤホンから音が出るようにはなった、遠話の距離がどれくらいまで対応出来るか要検証だね。


 想像していた物が作れなくてちょっと悔しいけどないよりはマシ、だって昔の携帯って鞄みたいな大きさに受話器が付いてたんだよ?今からは想像出来ないよね、でもこれで通話しないポケベル程度ならすぐに出来ると思った、ネックは通信よりも送受信した音を出す方なんだから、文字だけならどうとでもなる。


「でも普段着の方は満足の行く出来だ、ジューンとメイちゃんと私はお揃い、オクトはワイルドでシンプルに」


 街の人の普段着を見ると中々個性的、多分古着を重ね着してるから統一感がない、色も様々な色があってカラフルだけど上下のコーディネートはバラバラ、ファッションどうこうより機能性や防寒等に重視をおいてる、服屋の娘メルティは単一色のワンピースを着ていた。


 私たち女性陣はドイツのディアンドル風衣装、スカートは長く足首が見える程度で靴はローファーにした、メイちゃんは赤、ジューンは濃紺、私は緑、それぞれの色のベスト風ボディスに黒いスカート、ボディスの下は白のフリル付きブラウス、ビールジョッキが似合いそうな衣装だ。


 ボディスがデコルテや胸元を強調する衣装だけど私とメイちゃんは控え目だからあんまり気にならない、もちろん下着は着けてるから透けたりもしない、でもジューンは……多分いや、間違いなく男の視線を集めるだろう、ジューンには悪いけど前世の私では絶対に着れなかった衣装だからチャレンジしてみたぜっ!


 オクトはカーキのカーゴパンツに、白のTシャツ、シャツの胸元まで切れ込みを入れてあり、ボタンを閉めて暑さを調整出来るようにした、暑がりだからねオクト、靴は厚手ながら通気性の良い布を使ったトレッキングブーツ、カーゴパンツをブーツインしパイロットのオフの様なスタイルにした。


 女性陣にはそれぞれの色を縁取った黒いポシェットをお揃いで作った、ハンカチや櫛が入るような大きさで空間拡張はしていない、お金も各ポシェットに大銀貨3枚と銀貨5枚入れた袋が入ってる、スリ対策のビリビリは付けといたけど、基本はオクトに荷物持ちしてもらう予定、金貨数枚入ったお財布や子供達の報酬もオクトに管理してもらう。


「今何時くらいだろ、こっちで寝てった方がいいかな、マーチごめんだけど朝日が昇りそうなタイミングで起こして~」


『わかったよ、充分時間はあるからゆっくり休んでよ。』


 今日はシャワーやめとこ、浄化の魔道具で手抜きしよ、おやすみなさい。


 ~~~~~~~


『ヨーコ~朝だよ~みんな起きて待ってるよ。』


「ふぁぁぃ、ん~今日も楽しんで行きますか~」


 眠気覚ましに顔を洗って、普段着という名のコスチュームを手にして工房を出た。


「みんな早いねおはよう。」


「「「おはよう」」」


 さぁ、着替えて朝食にしましょ。


 私たちは自信作の衣装に着替えて宿の食堂スペースに向かった、この宿の朝食は野営の時とはやはり違って具だくさんのスープとパンに何かしらの一品が付く、今日は茹でた腸詰めが出た。そこそこの宿代を取るので味は美味しい部類、量もしっかりあるので満足度も高い、朝食を終えて外に出ようとしたらフロントに私宛ての手紙が届いていたようだ、中を確認するとダンゴさんに例の邸宅の鍵を預けたとエリックからの手紙だった、ポシェットに手紙をしまったら「可愛らしいお召し物ですね」ってフロントの女性から言われた、テンションが一気に上がったので市場に向かった。


「オクトこの奥にあるパン屋さんに私の使いで来たって言えばパンが貰えるから貰って来て、ついでに明日の分も頼んで来てよ、代金は大銀貨1枚渡してね。」


 オクトに使いっ走りを頼んで昨日のおばちゃんの屋台に向かうと小さなリヤカーに鍋が乗せてあり湯気が出ていた。


「すみませ~んヨーコです」


「はいよ、あらまぁ今日はまた可愛らしい格好で、似合ってるよ、スープ持ってっとくれ」


 約束通り大銅貨3枚と銅貨を5枚渡してリヤカーを押して広場に向かった。


「カイトおはよう、今日は何人くらい来る?」


「あ……はい、えっと……」


「ん?どうした?あれ?ちびっ子靴は?」


 カイトの影から顔を覗かせたちびっ子の足には昨日履いて喜んでいた靴がなくなっていた、ちびっ子が私とは別の方向を向く、私もつられてそっちを見ると、ちびっ子の靴らしいものをブラブラと振り回してこちらを見る小汚い男が4人、一目でわかったコイツら悪いやつだ。


「ねぇ、おじさん、その靴あの子のだから返してくんない?」


「はっ!そんな証拠どこにあんだ?」


「証拠?証言じゃダメかしら?」


 その言葉のあとすぐに1歩踏み出し顔面目掛けてナックルを飛ばす。


「ガハッ!何しやグフッ、てめギャフ!」


「おいっ、グフッガハッとか聞いてねんだよ、あの子の靴だよな、喋れよ」


「あのガハッ!あの子どバハッ!やめデベェッ!ゆるジボッホ!」


「あの子のだよな?聞いてんだろが!答えろジボッホって誰だよっ!ちっ!クソが、のびてんじゃねぇか」


 視界の脇でコソッと動く影


「そこのテメェら動くな逃げんなよ?わかってんだろう?誰が面倒見てる子供に手を出したか、わかんねぇならコイツと一緒で教えてやるよ。」


 ぐったりと倒れた男の顔面を蹴り上げ髪の毛を持って引きずりながらポカンとしている3人に向かう。


「てめぇら、このクソ野郎の仲間だよな、次は誰とかめんどくせぇからまとめて来い、たかが女にビビってんじゃねーよ!」


 真ん中の男に引きずって来た男の髪の毛握って投げつけた、ブチブチっと髪の毛が切れる音がして真ん中の男にぶつかり、それを見た左側にいた男が前を見た瞬間見えたのは拳「あぎゃぁっ!」変な声をあげて倒れ込んだ男に視線を送る右側の男の鳩尾に蹴りを入れる。


「なんだよお前座ってねぇで立て、誰が座って良いって言った、こっち見んな気持ち悪ぃな立ちゃぁいいんだよ男だろ?立つのは得意だろが!ジロジロ見てねぇで立てよ、用事があったんだろ?私に、ほら立って言ってみろ、ほらっ!!!」


 殺気を込めて言い放つと男の股間からジワ~っと滲み出る液体。


「おい、てめぇらに指示出してんの誰だ?なんか言えよ、喋りたくなるようにしてやろうか?え?コラ喋れよ、おいっそっちのてめぇは喋れんだよな?」


「うわ、ヨーコどうした?ジューン何があった?」

「わからないけど、とりあえず私たちは子供達を集めておくように言われてたから、ヨーコなら大丈夫だと思ってちゃんと見てないわ」


「ちびっ子ちゃんの靴、それ履いて今日も頑張ってねっ!メイ応援してるからね~」

「いや、お前ら通常運転過ぎねぇ?まぁいいや、ほらパン持ってきたぞ、パン配ってスープも出すんだよな?メイはスープ配ってやってくれ、ジューンはパンを、俺はヨーコんとこ行ってくる。」


 オクトがやれやれと私の方に来た、殴られて鼻を押さえる男の首根っこを持ち引きずり、鳩尾に一撃貰った男も引きずってきた。


「ヨーコ、変わろうか?」

「大丈夫、他に仲間いないか探して、見つけたら殺さない程度に殺して。」


「難しい注文だ、わかった周りを調べるわ。」


 オクトが屋台の裏から建物脇の小路まで歩いてチェックをしている。


「さて、喋れねぇ奴に用はないから消えてもらうか、この世から」

「しゃっ喋ります!」


 小便男が口を開く


「俺たちはスラムに住んでる、昨日ガキ共の服が新しくなったのをコイツが見つけてひっぺがそうとしたら痺れて弾かれて、そこの奴があの1番小せぇガキを追いかけたら靴が脱げて居なくなった。」


「んで、靴を届けに来ましたって訳じゃねんだろ?目的はなんだ?」

「コイツが痺れた慰謝料だの、金持ちの道楽だろうから強請ったら金が貰えるだの言って乗せられて……。」


 鳩尾を蹴られて息の詰まっていた男が逃げようとしたので、足をすくって転ばせてから鳩尾を踏み付けた。


「黒幕に誰かいんの?」

「居ない、コイツと俺たちの独断だ」


 こういう奴は出てくると思ってたけど2日目だぞまだ、はぁ、どうしよっかな~


「ヨーコ、この爺さんが話しがあるってよ、コイツらの住んでる所の代表らしいぜ」


 オクトが1人の老人を連れて来た、話を聞くと綺麗な服を着た子供達の後をコイツらが後をつけて行ったのを見て追いかけて来たそうだ、だが着いた時には1人がボコボコにされており、残りの3人もあっという間にのされたので出るに出れなかったそうだ。


「アンタらの話は子供達から聞いとります、せっかく子供らが救いの手を差し伸べてもらったのに、本当に申し訳ない、ワシらがちゃんと馬鹿どもを押さえておけば……都合が良いかも知れませんが、どうか子供たちには罪は無いので穏便にお願いしたい、今後はこんな事の無いように馬鹿どもを締めるので、お願い致します。」


「爺さん、当たり前の事言わないでよ、子供達が何したのさ、自分達がスラムって環境から少しでも抜け出そうとしてるだけでしょ?それをアンタやコイツらみたいな大人が邪魔してどうすんの?爺さん、止めれなかったアンタも同罪よ、わかってるよね?」


 そう言って立ち上がった私に後ろから誰かが抱きついて来た。


「ヨーコさん、長老は悪くないんです、俺たちの事喜んでくれて、昨日は大きい兄ちゃん達もオーク肉食わしてくれたり、スラムのみんなが悪い訳じゃないんです、だから長老を殴ったりしないでください」


 カイトの後ろにはいつの間にか子供達が集まっていた、別に殴ろうとした訳じゃなくて足が痺れたから立っただけなのに、誤解されてない?私


「凄いねヨーコちゃん」

「あ、おばちゃん、何そのフライパン」


「私も手を貸そうかと思ったらあっという間にさ、ちょっと強すぎない?あたしゃビックリしたよ、それとそこにいる長老はいつも子供らのために市場で雑用なんかを買って出てくれる人なんだ、子供達の言ってる事に間違いないから勘弁してあげて欲しい。」


「ちょっと誤解ですよ!爺さんをどうとかしませんよ!死んじゃうじゃないですか、ただいつかこういう輩が来るだろうなって思ってたら思いの外早くて、テンプレ通りの悪人面がいたからついっ……てへペロ☆」


 なんでみんな苦笑い、オクトに関しては吹き出してるし、ちくしょうみんなして!


「ジューン、悪いけどコイツらの治療頼める?動ける程度で良いから、痛みは残しておきたいし、喋ったこいつはちゃんと回復してあげて。」


 ジューンが回復魔法をかける、最初に因縁つけて来たヤツの意識が戻って私を見た瞬間意識を失った、失礼な野郎の頬を強めにバチンッ!再度意識を取り戻した輩は亀のようにうずくまった。


「あれ、アンタそんな頭だった?」

「ヨーコがやったんじゃねーかよ、髪の毛掴んで投げるとかベアゴリラの亜種なんじゃねーの?」


 オクトの言葉に子供達や屋台のお客、屋台の店主に至るまで全員が吹き出した、ベアゴリラがどんな魔物か知らないけど何となく予想が出来たので。


「へぇ、よく言ったオクト、今の言葉忘れないでよ?私しつこいんだから、っててめぇは笑ってんじゃねーよ残った毛を全部毟るぞコラ!」


 最後には4人と長老が謝罪をしてその場を納めた。


「ほら、出発が遅くなったから今日は頑張んないと日が暮れちゃうよ!今日もみんな張り切って街を綺麗にするのよ!カイト頼んだわよ!」


 みんなが小走りで衛兵通りへ向かっで行った。


「お姉ちゃん、お疲れ様~メイもゴツンしたかった~」

「後でオクトを一緒にゴツンしようね~」

「待て待て、ちょっと話しをしよう」

「なら私も参加しようかしら」

「いや、ジューンは洒落になんねぇから止めて、悪かったから勘弁してくれぇ~」


 屋台のおばちゃんに空のスープ鍋を返しに行く途中、屋台のあちこちから賞賛と食べ物が集まってしまった、この前メルティと飲んだテーブルにそれらを並べて軽食タイム、子供達の事はマーチに監視してもらっているので何かあればすぐに声が掛かる。


「オクト、さっきはありがとね、場の空気が一気に変わったよ」


「ん?あぁ、でもああいうのは俺たちが何とかするからよ、ヨーコには似合わねぇっつーか、今回は仕方なかったけど、あんまりな無理はして欲しくねぇ」


 あぁ心配してくれてんのか、優しいのね、確かにガラじゃ無かったかな、久しぶりに切れたけど、何年振りかなブチ切れたの、職人時代以来だな。


「わかったよ、無理しないで相談する、ごめんね。」


「あぁ、謝んなくていい」

「オクトがデレた~」

「デレてねぇ!黙れメイ!」

「デレてたわよ?」

「はい、すみませんデレました!」


 オクトってジューンに頭上がらないのかしら、力関係が何となくわかってきた、面白い。


 その後はしばらく雑談したり、気になるものを買って食べたり、売れてない屋台のおっちゃんに相談されたからフライドポテトの作り方教えたりと子供達が終わるまで時間を潰した。


『ヨーコ、そろそろ子供達終わるみたいだよ~』


「わかった、んじゃ集合場所に行こうか。」


 私達は朝の広場に向かった。


「オクトさん、ちわっす!」


 カイトよりちょっと大きな子供が数人オクトに挨拶してる。


「ジューンさんとメイさんもこんちわっす、昨日はご馳走様でした、オーク肉、母ちゃん喜んでました、また機会があったら連れて行ってください!」


 あ~昨日面倒見た子供達か、礼儀正しいじゃん。


「あと、姉さん、カイト達の仕事ありがとうございます、アイツらめちゃくちゃ喜んでました!」


「私?あ、うん、ありがとう、みんなが頑張ってくれるからね、あなた達も頑張ってね。」


「「「はいっ!」」」


 子供は素直で礼儀正しいが1番、オクトは子供達に「今日何やった?」とか聞いてる、メイちゃんは……?シャドーを教えてる?いや、あれ朝のチンピラボコった話してる!止めてぇ、子供達もほらキラキラした目で見ないでよ!


「ヨーコさん、今日も無事終わりました。」


「はい、お疲れ様、大変だった?」


「今日はみんな張り切ってて、昨日ほど大変じゃなかったです、マメっ子も今日は最後まで歩いて頑張ってました。」


 マメっ子?あぁちびっ子の渾名か、確かにちんまいもんな、そっか最後まで歩けたか、良かった良かった。


「それは良かった、今日の朝スープが出たでしょ?あれ市場の皆さんからだからちゃんとお礼するのよ?」


「はい!」

「美味しかった~」

「たくさん具が入ってたね~」


 おばちゃん無理しないでよ?具沢山とかやり過ぎるとクセになるから、でも余り物って言ってたから大丈夫かな?


「そう、良かったわね、みんな明日は昨日やった所だけど出来る?」


「大丈夫~」

「出来るよ!」

「頑張る~」


「はい、わかりました、それじゃ明日もお願いね、お待ちかねの報酬を渡します、ちゃんと並んでね。」


 昨日同様報酬をもらう子供達、みんな顔が明るい、朝の件はもう忘れたのかな、ならいいけどね。


「おっ!ちびっ子お疲れ様、今日は最後まで歩けたって?頑張ったねぇ」


「靴がピッタリで歩きやすかったの、朝スープもらって元気出たの!」


「そうかそうか、はいこれ落とさないでちゃんとしまってね。」


 今日はしっかりと報酬を握りしめたちびっ子、心なしか足取りが軽い。


「カイトお疲れ様、あれ?後ろの3人は?」


「30人超えたのでサブリーダーになってもらった3人です、カッツ、レッツ、キカです。」


 どっかで聞いた事があるようなないような……。


「サブリーダーの役割はリーダーを助けるのもあるけど、自分達のグループの子供達の面倒を見るのが最優先、それは出来る?」


「「「はいっ!」」」


「そう、じゃぁよろしくね、サブリーダー手当てつけてあります、明日からもよろしくね。カイトも頼んだわよ。」


 カイト含めサブリーダーの3人に報酬を渡して本日は終了、ちょうど3時の鐘がなった。


「みんなどうする?私今からダンゴさんの所行って新しい家を見に行くけど来る?」


「えぇ、楽しみね行きましょう。」


 ジューンが代表して返事をくれたのでダンゴの店に向かった。


「こんにちは~ダンゴさんいらっしゃいますか?」


「あぁお待ちしておりました皆様、領主様からのお手紙届きましたでしょうか、鍵はこちらにございます、こちらに受け取りのサインを、今ヨリンに馬車で案内をさせますので、それで大変申し訳ないのですが、ワタクシは商人ギルドで例の件の会合がございまして御一緒出来ませんが、ご了承ください。」


 店の前に馬車が到着した、私達は馬車に乗り元貴族の別邸に向かった。


 場所は貴族街の外れで貴族街の中ではなく市場からそう遠くない平民街にある、大きな屋敷が多い場所の様だが平民の中で富裕層が住む場所らしい、元持ち主の貴族がその家を建てた理由は、当時囲っていた平民の妾が住むように建てたようだ、敷地は鉄の門扉ではなく敷地内に小さな小川が流れていてそれを境に植木の垣根で仕切っている、ガーデニングが趣味の妾だったらしく、庭には様々な花が咲くとダンゴが言っていた。


 普通に売れそうだけどな、そんな屋敷なら。


 そんな事を考えながら馬車に揺られていると到着した。


「あれ?イギリス積みじゃん。」


 第一声、私は口に出た、イギリス積みとは煉瓦造りの比較的スタンダードな積み方で長手と小口の煉瓦を交互に積み上げる方法だ、荷重に強く丈夫なのが特徴で中世ヨーロッパ時代からの伝統建築法だ。


 まぁ外装の手入れはしやすそうかな、崩れそうな所はモルタル補強とかするか、近くで見てないから何とも言えないけど。


「ヨリンさん、ありがとうございます、こちらで結構です、今日はまだ宿に泊まりますので道順を覚える為に歩いて帰ります。」


 ヨリンと別れ敷地に入る。


「居るな」

「えぇ確かに居ますねかなり弱ってますが」


「え?なんかいるの?お化け?」


 怪奇現象とか信じない私ではあるけど、精霊の2人が意味深にそんな事を言うとドキドキする訳で~


「大丈夫だ、悪いヤツじゃねぇよ、どちらかと言ったら家を守る存在だ。」


 座敷わらし的なスピリチュアルな何か?


「ただ、しばらく人が住んでなかったので力がだいぶ弱くなっていますね、助けてあげればこの家に住む上で非常に心強い存在になるでしょう。」


 ジューンはちょっと悲しそうな表情を浮かべていた。


「んと、どうすれば良いの?」

「相手に新しいこの家の主だと言って前の家主との契約を上書きすればいいだけだ、向こうも俺たちの存在には敷地に入った時点で気付いているから中に入ったら出迎えてくれるはずだ。」


 ほぇ~異世界って不思議だなぁ。


「んじゃ鍵開けるよ」


 大きなドアを開けるとポウと淡い光が目の前に現れた。


『あなたは新しいこの家の主ですか?』


「えぇそうよ、あなたは?」


『私はブラウニーのネロ、新しいご主人様のお名前は』


「ヨーコよ、よろしくネロ。」


 あ?やべぇ今の会話で契約したかも、魔力が抜ける感覚がした。


『新しいご主人様ヨーコ様、私を救っていただき感謝申し上げます、それと後ろの大精霊の皆様、新参者ではございますがヨーコ様の契約精霊として末席に置いて頂けると幸いです。』


「ヨーコ、ホムンクルス頼めるか?ブラウニーってのは体があると働きが倍以上になるんだ、昔は体を持ったブラウニーがたくさんいたけど錬金術の衰退で作れるやつが少なくなったからな、炊事、掃除、家の手入れとなんでも出来るからヨーコの助けになるはずだ。」


 へぇ、そんな某タヌキ型ロボットみたいな便利機能が付いた精霊がいるんだ、全然作るよ?


「わかったわ、ネロ、あなたは体が欲しい?」


『私の力を十二分に発揮するなら体が必要でございますが、ヨーコ様のご負担にならないでしょうか?』


「負担になんでならないわ、それじゃあなたのこと色々聞かせて。」


 それからネロと色々な話をした、庭の花や暖炉の煙突の詰まりとかお風呂の給水の不具合があるとか、お風呂あるんだ~元々風呂は数人で入れるように大きいのを作ろうとしていたからラッキーかも、大体の体のイメージは出来た、これはもうメイドさん一択でしょスタイルも少しだけ私達よりもふっくらしたイメージで、物腰も柔らかく全てを柔軟に対応する様な感じにしよう。


「ところでブラウニーって他にも居るの?1人じゃ大変じゃない?」


『以前はこのお屋敷をもう1人のブラウニーと共同で維持しておりましたが、名も無き若いブラウニーだった為、主が居なくなり魔力が尽きてしまい消滅致しました、探せばこの街の空き家にまだ主人を求める者がいるかもしれませんが』


「マーチ、あと2人くらい連れて来れない?」


『うん、探して来るよ、ブラウニーはその特性上全部女の子だけど大丈夫?』


「大歓迎よ、ネロをサポートする様な子が良いわ、この子ずっと1人だったのだもの仲間がいた方が良いわよね?」


『ヨーコ様心中察していただき重ねて感謝申し上げます。』


 屋敷を全部は見ていないけど部屋数も多そうだしメイドにするにも役割分担できる方が良いだろうし。


「それじゃネロ、マーチが帰ってくるまで屋敷を案内してくれる?」


『かしこまりました。』


 それからネロの案内で各部屋を回った、主人が居なくなっても最低限の手入れはしていたようでチリやホコリはほとんど無かった、少ない魔力で頑張ったんだね、涙が出るよ。


 お風呂は残念猫足バスタブだったから大浴場に改装決定、キッチンも竈とかだったので改装、トイレもあまり使わないけど水洗にしよう、バクテリアとか使えば排泄物を分解は出来そうだけど、せっかくダストスライムなんて言うファンタジー便利生き物がいるんだから使わない手はない。


 楽しくなってきたぁ~!



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