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前世は大工女子の異世界生活  作者: 森林木林森
10/49

街を綺麗にいたしましょう。

「まだ3人は帰ってないのね、大丈夫かしら。」


『3人はギルドで飲んでるよ、オーク討伐に行ったみたい、オーク数匹相手だからすぐ終わったみたいでヨーコより大分早く戻ったよ』


「そっか、ならいいや、ギルドで食べてるなら夕飯大丈夫かな?私は工房で食べるけど」


『そう伝えとくね、それならギルドで夕飯も食べて来るでしょ』


「ありがとうマーチ、よろしくね。」


 お礼を言って工房に飛び込んだ。


 さて、制服作らなきゃ、簡単なのはポンチョみたいにして手の出し入れが出来るのだよね、でも暑いかな動き回るし無難にジャケットとパンツ、ジャケットとスカートにするか、ポンチョは寒くなったら上からかぶる感じにしよう、幸い通気性が良さそうな生地だし暑かったらジャケット着ないでTシャツかポロシャツの夏服を作ればいっか。


 小さい子も来る事考えたら100~120のサイズも作んなきゃ、カイトが150くらいだったからそれを中心に、女の子は妹ちゃんベースに130~140で作っておこう、ウェストは多分ちゃんと食べれてないから細いはず、ジャージみたいに紐を通して締めれる様にしておくか。


 黙々と制服を作っていて思い出した、カイト裸足だった勿論妹ちゃんも、靴も追加かぁ、生地が足りないな、歩く仕事だから足元は重要、仕方ない工房内の素材を使うか…ありふれた素材にしなきゃ、ソールはスライム使っておこう、あと消臭剤入れる鞄が必要か、確か麻があったからそれで作るか。


 さらに黙々と作業を続けた、なんでこんな苦労を……でも明日ある子供にチャンスを与えるのは大人の役目、頑張れ私!


『みんな戻って来たよ、ヨーコは今忙しいから工房から朝まで出てこないって言っといたから』


「マーチ流石!気が利くねぇ、んじゃ心置きなく頑張っちゃう。」


 最後に生地が少し余ったので、胸元にワンポイント、実はこのワンポイントが凄まじいのです、私のヒップバッグと一緒の効果があって制服を引き剥がしたり無理やり子供を拉致したり等悪意に反応するのです、これはマーチのアイデアでもあったんだけど非力な子供達が真新しい靴や服を着ていたら強奪されないか?って言われたのが始まり、相手が刃物を持っていても障壁が発動するようになっている、こっちは「守って!」って言葉に反応する、後ろからドスってやられたら不味いけど、そこまで万能には出来なかった。


『ヨーコそろそろ』


「うん、今終わったよ、久しぶりにちょっと疲れた、シャワー浴びて休むよ。」


 ~~~~~~~


「おはよう~みんな、昨日は楽勝だったみたいだね、今日もクエスト?」


「今日も女の敵オークを狩ろうかと、毎年何人かの女性が被害に遭ってるそうですので片っ端から撲殺の予定です、幸いマーチがオークの集落を見つけてくれたので体の調子を見るにはちょうどいいでしょう。」


「いやぁ昨日ギルドでメシ食ってたらジューンが女冒険者に言われてな、アナタはオークに狙われやすいってよ、そしたらその気になっちまって」


「メイもブタヤロウやっつける!顔踏みつけてこのブタヤロウって言ってやるの!フンス!」


 ちょっと誰よメイちゃんに変な事教えたの!やめてよメイちゃんの口から豚野郎とか聞くとは思わなかったよ、本人はあんまりわかってなさそうだけど。


「ジューン!殺っちゃって、メイちゃんも頑張ってね、オクト2人をよろしくね、あとこれ小腹空いたらのサンドイッチね」


 メイちゃんがずっとフンスフンス言ってて可愛い、さぁ私も癒しをもらったから頑張らねば。


「ジューンまだお金大丈夫?」


「えぇ、昨日結構飲み食いしましたがギルドの食堂は安いみたいで、大銀貨2枚でお釣りがありましたよ、今日も早く終わったらそちらで色々注文する予定です。」


「あと、今日は荷馬車を何台か借りんだ、オークは食えるらしいからよ、持って帰って来てくれって、流石に新しい鞄にオークは入れたくねぇしな。」


「フンスフンス!」


「そう、くれぐれも油断して怪我とかしないでよね、気をつけて行ってらっしゃい。」


 3人を見送って宿裏のスライムを覗きに行く、昨日より少し濁ってるのかな?モヤがかかるレベルだけど、臭くもないし、今夜くらいには臭うのかもしれない、今の感じなら2日で1錠かな、後はゴミの量とかもあるのかもしれない、もう少し観察かな。


 市場に行くと何人か子供達が既に集まっている、5人くらいかな、とりあえずパンを取りに市場へ入ってパン回収、流石に100個だから両手に抱えきれないレベル、でもひと袋分だけリュックに入れれば大丈夫そうだ。


「カイトおはよう、今日はこれで全員?」


 目の前には15人くらい子供が待っていた、ん?随分とちんまいのもいるけど大丈夫か?


「ヨーコさんあと10人は来ます、すみません集まり悪くて」


「大丈夫よ、それじゃ今いる子に先に制服配っちゃおうか、みんな並んで。」


 1番先頭にカイトが並び後ろに妹ちゃん、それぞれが制服を受け取りはしゃいでる。


「あらこの子も?ちゃんとお兄ちゃん達の後に付いて行ける?」


 4歳くらいかな、ちゃんと食べてないのだろうか、頬がこけてて心配になる。


「せっかく来てくれたんだからあなたにも、はいこれ」


 子供達はその場で着替えて嬉しそう、女の子もその場かよ、ちょっと隠してあげたいけど今は何も無い、あ!テントがある、急いでテントを取り出しセットした、女の子はその中で着替えるように指示をだして、ついでにみんなに浄化の魔道具をつかう。


「うわ、凄い、綺麗になった」


「お姫様みたいだね、綺麗になった」


 あちこちからそんな声がする、あとから合流した子供達にも制服を配った、多少の大きい小さいは我慢してね、袖をまくったり裾を折ったりで対応してもらう、用意したパンに比べて子供達はちんまいの合わせて25人、まぁ上出来だろう、そして仕事の話をする前に朝ごはんとして報酬とは別に初日サービスと言ってパンを一つずつあげた。


「食べながらで良いから聞いてね、アナタ達にやってもらうのは街のあちこちにいるダストスライムにこの錠剤をあげて欲しいの、スライムは錠剤を入れると透明になるから面白いわよ、一先ず3人1組で班を作って必ず3人で動く事が約束よ、今日はこの市場から冒険者ギルドまでのところに3本の太い道があるでしょ?そこを手分けしてやって、一応カイトがリーダーで振り分けて、あの小さい子はカイトが面倒みなさい。」


 子供達が班決めをする間に支給する鞄にパン2個と錠剤を入れる、ちんまい子はパンを口に入れてパタパタとカイトの後ろにくっついていた。


「それから、大人に何してんだ?って言われたら街を綺麗にしてますって言って、あとこれは重要、もし危険な目にあったら「守って」って言いなさい、制服がアナタ達を守ってくれるわ、攫われたり服を脱がされそうになったら、カイトは知ってるよねビリビリの刑ってのになるから安心して欲しい。良い?みんなは仲間だからね、周りのチームの様子もちゃんと見るのよ?変な人やサボったチームがいたらちゃんと教える事、質問はある?」


 まぁ初日だから質問の意味もわからないだろう、とにかく最初の目的は街の人に認知してもらう事、目立つ事、これだけで危険を未然に防げるだろうし。


「はい、みんな鞄配るわよ、これは仕事道具だから無くさないように肩から掛けてね、中にパンと白い粒が入ってるから白い粒をスライムにあげるの、パンをあげちゃダメよ?自分達のご飯なんだからね、3の鐘が鳴ったらここに集合してちょうだい、早く終わったら他の班を見て時間が掛かりそうなら手伝ってあげてね、全員が集まったら今日の報酬を渡すから。ふふっじゃぁ行ってらっしゃい。」


 早くも反省点一つ、水筒を持たせれば良かった、帰ったら作らなきゃ、ついでに脱いだ服も浄化してあげよう。


 テントを片付け荷物をリュックにしまう、市場のパン屋には明日の分も頼んだし、少し子供達の様子を見て来ようかな。


 うんうん、みんな真面目にやってる、やっぱり街の人に声かけられてる、ちゃんと受け応えして偉いなぁ、大人がしっかり教えればあんな危ない事しないんだよ、その手を差し伸べる勇気がいるし財力も必要、難しいんだけどね。


 おっ?ちんまいのが早速疲れてきたかな?あ、でもあの子根性あるな、ちゃんとカイトの後を追いかけてる、あの子がスライムに薬をあげんのか、大丈夫か?ちゃんと近くまで行ってポイッてしてる、頑張れちんまいの。


「ん~この調子なら思ってたより早く終わりそうだな、初日だから様子見てたけど思いの外しっかり動いてくれてるし、街の人もお揃いの制服着て目立つから気軽に声をかけてくれてる、良い流れだね」


 軽く調べたけど1つの通りに左右合わせて100匹くらいのダストスライムがいる、脇道にもひっそりと居るからその辺は不安だったけど流石路地裏の子供達、見逃さずに処理してる、おや?ギルドからガトーが出てきた、横にはメルティかな?あぁメルティがガトーに説明してる、透明になったスライムの匂い嗅いでるよ、なんか言ってるけど聞こえないや、ガトーが子供の頭撫でてるし、悪意がないから痺れなかったね良かった良かった。


 このまま浸透したらビリビリ制服はいらなくなるかな、あれ?衛兵さんまでなんか聞いてる、また頭撫でられてるし、街の人は基本良い人ばかりなんだな、やべぇガトー達に見つかった、ひぃぃこっち来たァ~


「嬢ちゃん、本当にスゲェなあんなに臭かったダストスライムが全然匂わねぇ、それどころかぁちょっと良い匂いすら感じらぁ、どうなってんだ?」


「魔獣にさ自分の匂い消して狩りするのがいるでしょ?あれがヒントになってね、錬金術で分解して成分だけ抜きとったのよ、それが子供達に配ってもらってる薬」


「フォレストウルフかぁ!確かにアイツら匂いを消すから新人はよく騙されるんだ、なるほどなぁ錬金術ったぁスゲェもんなんだな、ダンゴの旦那が知ったらまた飛びついて来るぜ?」


「ダンゴさんもそこまで暇じゃないよ、それにスラムの子供が相手だったからさぁ、色々弊害もあるでしょ?お店の評判とか、幸い私に資金があったから個人的に始める分には誰かに文句言われる筋合いもないし、街が綺麗になれば感謝は実際に動いている子供達に行くでしょ?そしたら子供達にも自信がつくし食べれてさえいれば危険を犯して悪さもしないからね、偽善でその場しのぎだけど、やらない善よりやる偽善って言うしさ。」


「かぁぁ、頭上がんねぇな嬢ちゃんにゃ、前の領主が悪徳でよぉスラムなんつーのが出来ちまって、それがいつの間にかデカくなっちまってこの有様だ、俺んらも出来る事ぁやっからよ、ガキんちょ共を見守るくれぇしか出来ねぇが。」


「それが1番大事よ、子供達が安心出来るのは見守られてるって感じる事なんだから、もちろん悪さしたら叱ってやってよ?ガトー絆されて甘やかしそうだからね。」


「確かにガトーは甘いからねぇ」

「メルティうるっせえ。」


「それにしてもウチの生地が可愛らしい服になって、私も嬉しいよ。」


 メルティがニコニコしている、本当にポンのコツじゃなきゃ可愛いのに残念。


「さて、街の有力者の中から誰が最初にアプローチかけて来るかな、楽しみだわ」


「嬢ちゃんはやっぱり怖ぇわ、笑顔が黒いんだよな、まぁ最初は冒険者ギルドだろうな、もう話題に出てっからよ、スラムのガキんちょが街を綺麗にしてるって、んで誰が黒幕で何のためにって調べてるっぽいからよ、俺ぁ一切嬢ちゃんの事ぁ言わねぇから安心しな。」


 冒険者ギルドかぁ、どうアプローチしてくるんだろ、依頼を出せとかなら本末転倒だから突っぱねるけどそれには乗り越えなきゃいけない年齢ってルールがあるからね、そこを曲げる融通は無い気がする。

 

「楽しみにしとくよ、私はどこの誰が来ても通常運転するだけだから。」


「わぁ~少し空気が良くなったね、塀に囲まれてるから匂いが残るんだ、防衛上仕方ないけど。」


「あぁ匂わねぇな、外の空気とほとんど一緒だ、ちなみにこれはどれくらい続くんだ?」


「今の所1回の投薬で2日から3日かな、スライムが濁り始めると匂いも少し出てくるから子供達にはローテーションで周回してもらうつもり、フォレストウルフ1頭から役300錠くらいできるから、コスト面でもそこまで掛からないと思うよ。今後はさらに改良して効果を伸ばす方法を考えなきゃって思ってる。」


「そんな頻度なんだな、んじゃガキんちょ共も大忙しだな」


「今日はティンダーの市場からメインストリートをやってるんだ、これが浸透して行けば職人街とか平民の住宅が多い所とかからも依頼があるかもしれない、でも私が出来るのはメインストリートをスラムの子供達にやってもらうことくらいかな、他は錬金術師に頼んで同じ薬を作ってもらって地域の子供達を使ってもらって、予算は自治体で出してもらうしかないんじゃない?私も子供達も手の届く範囲しか出来ないからね。」


 これは街を巻き込んだデモンストレーション、貴族街やその他の地域に関してはハッキリ言って知らんぷり決め込む、文句を言って来たら自分でやれと言えるし、頼まれても薬の製法を教えるだけだ、金を出すと言われても手が足りないから人も出せと言うし、早く誰か声を掛けて来い、1番最初が得をするぞ?するかも?貴方次第。


「ねぇガトー、ヨーコがまた悪い顔してる、ちょっとどうにかしてよ。」


「無理だ、俺に嬢ちゃんは止めれねぇ、むしろ焚き付ける方だからよっ!」


 その方が面白いでしょ?ちゃんとガトーを楽しませてあげるね。


「うぅぅぅブルブルッ、ちょっと寒気っしたぜ、なんだったんだ今の。」


 そんなくだらない話をしていたら右の大通りを担当していた班が終わった、早いなぁ比較的年長者が多かったのでスムーズに終わったみたいだ、私は彼らの動きを見ていたが、ちゃんと他の班を手伝いに行った、本当にこれは大事、助け合いは団結を強くするからね。


「あの子達、他の道を手伝いに行った、中々大人でも出来ないね、ちょっと感心した~スラムの子達を見る目が変わるよ、ヨーコが躾けたの?」


「こら、躾けたって良くない言い方だよ、あの子達は自発的に行ったんだよ、全員が集合しないと報酬が出ないからね。」


「はぁ〜上手いよねそういう所、助けられた方は自分達が終わったら今度は借りを返すって思うからね、自然と助け合いの精神が生まれる、やっぱりヨーコ黒いわァ」


「だから言い方っ!」


「んでも良いんじゃねーの?そうやってガキのうちからわかってりゃ自分勝手な大人にゃならねぇだろ、中にゃいるかも知れねぇけど絶対的な数は減らぁな。」


 中には道を外れる子も出てくるかもしれない、ガトーが言うようにそういった子供が仕事を通じて減ってくれるのを願うばかりだ。


「それじゃ私は集合場所に向かうからまたね。」


「おうっ、またな」


 ガトー達と別れて集合場所で待機していると子供達が戻ってきた、まだお昼を少し過ぎたくらい、ちゃんとちんまいのも自分の足で歩いて来てる、頑張ったねぇ。


「おかえり」


「ヨーコさん、漏れは無いと思います、言われた範囲は終わりました。」


「うん、お疲れ様でした、やって見てどうだった?」


「大人の人達が応援してくれました。」

「ちょっと大変だったけどスライムが嬉しそうだったぁ」

「そうそう嬉しそうだったね!」


 へぇ~宿屋の裏の子はそんな感じしなかったけど。


「そっかそっか、明日からもやれそう?」


「やる!」

「できるよ~」

「頑張る」


「良かった、明日は衛兵さん達のいる道2本だけど道が広いから大変かもよ?」


「足痛くないから平気」

「そう!痛くない」

「足が早くなったの~」


 靴の力は偉大だ。


「良かった良かった、今履いてる靴も服も持って行って良いからね、それ着て変な事したらみんなに迷惑かかるからしちゃダメよ?じゃぁ今日は疲れただろうから早めに終わりましょう、お待ちかね報酬を渡すから落とさない様にね、じゃぁ並んでください。」


 それぞれに報酬を渡す、たった銀貨1枚分、それでも今日、明日、明後日はパンが食べれる、飢える心配がないのは何よりも心を安心させる。


「来たな~ちびっ子、頑張ったねぇ、はい報酬だよ」


「いーの?私も、途中疲れてカイトお兄ちゃんにおんぶしてもらったのに」


「いーの、貴女が大っきくなってカイトに返せば良いの、だからいっぱい大きくなるんだよ、明日も待ってるね。」


「うん!」


「カイト、リーダーお疲れ様、どうだった?大変だった?」


「はい、周りを見ながら作業しなきゃ行けないし、遅れる訳にもいかないし、少し大変でした、でも明日もできます。」


「そう、なら明日からもリーダー頼むわね、はいこれリーダー手当てが付いてます、30人を超えたらサブリーダーを3人選んでおきなさい、カイトが頼りに出来る子にしてね。」


 カイトには他の子より大銅貨1枚多く渡した、体より心がキツかったはず、だから頑張ったご褒美、明日は人数増えると良いな。


「ありがとうございます、また明日お願いします。」


 カイトが頭を下げて妹の方へ走って行った、あれ?ちんまいのもカイトに付いてってる、仕事して懐かれたか?微笑ましいわ。


「お客さん……」


「ん?市場のパン屋さん?どうしました?」


「あのだな、こいつらが話しがあるってな」


 申し訳なさそうにボソッとパン屋が喋ると後ろから数人の人達、その中から1人の女性が前に出てきた。


「お嬢さん、今日アンタのやってた事を見てたんだけど……」


 なんだ?因縁つけられるのか?戦うよ?


「あたしらこの市場で商いしてる者だ、パン屋からアンタがスラムの子供達集めて街を綺麗にしてるって聞いてさ、私らにもなんか出来ないかと思ってね、前の日余ったクズ野菜にはなるけど具の入ったスープでも作ってやろうかと思ってね、スラムの子に今まで目を背けてた私らが今更出しゃばるのも不愉快だと思うけど、ここで何もしないのはちょっとこの街の住人として罪悪感があるのさ、金はいらないからどうかね、邪魔にはならないようにするからさ」


 あぁ異世界人も捨てたもんじゃないな、確かに盗みやスリする子供に助ける価値はないかもだけど、心のどこかで手を差し伸べたいとは思っていたんだろうね、きっかけが欲しかったのね。


「大歓迎です、でも無料でいただくのは皆さんの負担になるでしょう、そうは言ってもお代として支払えるのはお椀1杯につき銅貨1枚くらいです、予定では明日30人くらいは来ると思います、前後したとして毎日銅貨35枚支払います、それで良ければこちらからお願いしたいです。」


「無料でも良いんだよ?気持ちなんだから」


「それならあの子達を見守ってあげてください、見かけたら声を掛けていただけるだけであの子達も安心するでしょうし、街の皆さんに見られていると知れば間違った道には進み辛いでしょ?悪い大人に騙されそうになっている子がいたら一声掛けてくれたら未然に防げる事もありますから。」


 市場の女性は集まった人達に目配せさせると大きく頷いた


「わかったよ、「街の子」として見守る事を約束するよ、お嬢さんありがとう、私らにも気を使ってくれて、それに空気が良いとなんだかやる気も出るってもんさ、感謝してるよ。」


「こちらこそ、あ!申し遅れました、私はヨーコと申します、どうぞ今後もよろしくお願いします。」


 市場の女性と握手して私は貴族街へ向かう、エリックに腕時計を渡しに行くのだ、本当なら夕方くらいに行って貴族飯をご馳走になろうと下心満載だったけど、子供達の頑張りで早く終わった、エリックは午後の予定は空けとくって言ってたし、今から行っても平気だろう。


 貴族街の入り口の門番に今日の要件と名前を伝えると案内をしてくれた、昨日は馬車からだったけど今日は歩き、貴族のお屋敷を見ながら楽しい散歩道、でも一緒に歩く門番さんに悪いなぁと思いつつ後に続いて歩く。


 30分程楽しい散歩をしてエリックね屋敷に到着、やっぱり良い建物バランスが良くて私の好きな建築だ。


 使用人に案内されエリックの執務室に入るとこちらに気付いたエリックがソファーの方へ移動してきた。


「想像以上に早かったな、掛けてくれ。」


 使用人がお茶を淹れてから部屋を出る。


「早速見せてくれるか。」


 私は魔馬の革鞄から時計を取り出した、全て特製のケースに入れてある、王族のケースはエルダートレントにオニキスを貼り付け小さなダイヤで王家の紋章であるグリフォンを形取り、四隅には装飾を施した金の縁を付けた。


「素晴らしいな、しかしケースだけでこれか……中を見るのが怖いな。」


 恐る恐るケースを開くエリック、中を一目見てすぐに閉めた、上を見上げて目を瞑り固まった。


「ちょっとエリックさん?それは失礼じゃないですか?自信作ですよ?」


 それを聞いたエリックは私を一睨みして溜息をついた。


「やり過ぎだバカ者、自重と言う言葉を知らぬのか?これ一つで国が買えるぞ?」


 そう言いながら再度ケースをあける、中は金色が映えるようにブランジュと呼ばれる植物型の魔物の綿毛を緩衝材にして、上から黒く染めた真シルクにパールを混ぜてキラキラした生地を張り付けている、高級感あるでしょ?その中心にドッシリと構える黄金の腕時計、映える。


 四公爵のケースはオニキス張りではないがエルダートレントを使って、紋章を彫り各公爵の色の宝石で装飾したシンプル仕様。


「いや、素晴らしいのは間違いない、これは国宝の上を行く一品だ、しかし今私を悩ませているのは献上する口実だ、なんと言えば……。」


「え?日頃の感謝の気持ちですじゃダメなんですか?」

「ダメに決まっているだろう!」


 悲痛さを声にしたようなトーンで即突っ込まれた。


「それでは、作った職人に王様をイメージして作るように命じたらコチラになったでは?あくまでも作った職人のイメージですから、華やかで気品があり力強いイメージとか何とか口八丁で」

 

「はぁ、確かに我が王国の王が身に着けるに相応しい気品と力強さは感じる……、その方向で進めるか。」


「王族に渡す時には鑑定士をつけた方がいいと思います、全て鑑定できるように隠蔽しないでおきましたから、どんな効果があるかわかれば安心出来ますよね?公爵様方も同様にそれぞれ付与されてますから、あとこれはエリックの。」


 1番内容はどぎついけどシックなデザインの時計をケースと一緒に取り出した。


「私に?待て、頼んでなどいないぞ?」


「これから街を良くする領主様に先行投資です、住み良い街にして下さいね?」


 自分の時計を手に取りじっと見つめる。


「良いのか?」

「もちろん」


 腕に着けてベルトの調整方法を教えた、王様が着ける時は貴方がやるんだからちゃんと覚えてよね?


「時間を合わせて魔力を通すと動き出します、通常は装着者の魔力をほんの僅かに使うけど、外している時は内蔵されている魔石から動力を取るので外していても10年は止まる事は無いはずです。」


「美しいな、それでいて主張し過ぎない、黒の盤面も品がよく全体の煌びやかなイメージをキュッと締めている、芸術品と言っても過言では無い。」


 気に入ってくれたかな、私はそれぞれの仕様と取り扱い方法、手入れ方法を書いた説明書を渡した。


「待て待て待て待て待てっ!私の時計だけおかしな事になっているではないか!オールバフだと?戦時中でもないのにこんなものが付与されているだと?隠密?なんだこれは!諜報員では無いのだぞ私は!」


「命大事にですよ、保険はたくさんあった方がいいですからね。」


 ワナワナしているエリックにニヤリと微笑む私。


「たっ確かに……感謝する事ではあるな、驚いて我を忘れた、すまない。」


「特別仕様ですから。」


 それぞれの仕様を読みエリックが疲れた顔で王太子の腕時計に質問してきた。


「王太子は未来の王国を背負って立つ方ですし、外遊などの機会も王様よりも多いと判断したので、そんな王太子の周りに変な輩がいても国は良くならないですよね、必然的に忠臣しか残らないはずです。」


 王太子は非常に人徳者と聞いていたからね、外交手腕もあり臣下からの忠も厚いって、そんな人を死なせるのは勿体ないからさ。


「ふむ、確かに太子は民の信頼もあるからな。」


「それと、王族が何人いるかわからなかったからまとめたけど暇だったからこれ作った。」


 女性用のネックレスと男性用の腕輪、全てに毒無効が付与されている。


「これもまた…確かに歴代王族は毒殺に酷く警戒をしていた、それぞれデザインが違うのも好印象だろう、有難く受け取らせてもらう。」


 さて、これで全部かな。


「聞くのが怖いが、これらの代金はいかほどだ?」


「あ~お金か~考えて無かったなぁ、お友達価格で言い値で良いですよ?1つ銀貨1枚って言われたら否定しないで認めますし、これ全てエリックの為に作った物だから、エリックの納得する金額で、それにお金じゃなくても良いですし。」


「体か!」

「違ぇわ馬鹿!あっ、失礼しました。」


 秒で否定したらゲラゲラ笑いやがんの、不敬罪とかにならなくて良かったけど。


「わかった、私に出せるのは白金貨5000枚だ、これらの品の価値には遠く及ばないがプラス何かこの街で困難にあった時に手を貸す事を約束する、ヨーコが求めていた館も代金は要らぬ、すぐに譲渡の手配をする、使いの者に書類を持って行かせよう。それと最後にどんな状況になろうと私の全てを使ってヨーコを守ろう、例え王から殺せと命令を受けても命令を無視して安全な所へ逃がしてやろう、今の私に出来るのはこれくらいだ、良いだろうか?」


「はい、ありがとうございます、かなり貰いすぎな気もしますが最後のお気持ちは感謝しかありません。」


 私は代金を受け取りエリックの馬車に乗せられて宿まで帰った。





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