最終回、そして打ち上げ
ボクイヌの撮影も残すところ後1回となった
番組は健太の衝撃的なリッキー引取り回の影響もあり、番組公式X、YOUTUBE、TIKTOK
インスタグラムなど、累計20万再生を数える大バズりを見せた
健太は胸に去来するえもいわれぬ喪失感に襲われていた、例の匂わせエンディングが放送されて以降
ボクイヌのHPには2人の関係を追求する投稿が跡を絶たなかったが、当の健太と美晴が沈黙を貫い
ている事もあり、徐々に話題は鎮火しつつあった
いよいよ来週、ボクイヌの最終回の撮影を控えていた、最終回はこれまでの出演キャストがリリーフ
アニマルで総出演しての撮影となる、健太としてはもう美晴と顔を合わせる事なくボクイヌの撮
影を終えたかったのが正直なところだ、だがこればかりはどうしても避けられない、健太が美晴を避け
た結果、美晴にありもしない憶測や噂がつきまとう事など、それこそが健太が恐れる事態そのものな
のだから、、、
当日は波風立てずに粛々と撮影をこなし、夜には居酒屋「かっちゃん」で打ち上げを行い、それで美
晴とはサヨナラだ…
健太の決意は固かった、よくも悪くも自分は中途半端に有名になってしまった、その自分自身の有名
税とも言える物の為に、大好きな美晴を傷つける事など、到底出来なかった
何の事はない、最初に戻るだけ、たまたま仕事で知り合って、一緒に仕事をするだけの関係、それが
リッキーを預けたり、トリミングを頼みに行くだけの関係になるだけ…
健太は自分に言い聞かせた、間もなく終わるボクイヌの撮影と共に、、、、
「で?ちょっとは進んでるの??」
ミキの問いかけに、しどろもどろで山室が答える
「頑張ってはいるんだけどねー、僕みたいなおっさんだと50人ってのはなかなかハードルが高くって」
「泣き言聞いてる暇はありませんー、ボクイヌの打ち上げは明日なんだから、気合入れてなんとして
でも50人達成して!」
ミキは山室に厳しい指示を飛ばしていた
(たぶん2人は連絡も取っていない、健太さんは何でもない振りしてるけど、アタシには分かる)
「アタシは世界一の健太さんファンなんだから!!」
不意に叫んだミキの大声に怯みつつも、山室はセコセコと努力を重ねていた
「達成したらすぐ連絡しなさいよ!予行演習するんだから」
容赦の無いミキの催促に
「分かってる、あとちょっとだから頑張ってみるよ」
と、答えてはみたものの根拠のない言葉だという事は山室が一番自覚していた
ミキは万福の裏でグリとグラと戯れていた
「相変わらず可愛いねー君たちは」
両脇にグリとグラを抱きかかえながらミキは大将が裏庭に出てくるのを、今か今かと待ちわびた
そこへ
カチャッ、とクレセント錠を開ける音が聞こえてきたと思うと、ガラララララ…ベランダのガラス窓
を開ける音と共に万福の大将がベランダへ出てきた
「悪ぃーねミキちゃん、遅くなった」
満面の笑みを浮かべる大将にミキが尋ねる
「大将スマホ見せてもらって良い??」
笑ったまま対象がスマホを差し出してきた
「ホラ、見てみなこれでいいのかな??」
フォロワー422人、最近頑張ってフォロワー数を伸ばしたミキでも250人ちょっとなのに、、
ミキはちょっとヘコんだ
「うちは店の公式アカウントだし、それに強い見方がいるからね」
とグリとグラを指差す
「そうえばそうだった、リッキーだってゲストで出てるしね!」
「そうそう、おかげで店は大繁盛だ!!!」
ニッと破顔した後、表情を真顔に引き締め大将が尋ねた
「健ちゃんの人生がかかってるって??」
ミキは真剣な表情で答えた
「そうなの!お願い大将、助けて!!!」
ミキはおずおずとこれまでの経緯と、明日の打ち上げでの計画を大将に語り出した
「まーかしときな!バッチリ手伝うぜ」
親指を立てて笑う大将にミキは満面の笑みで礼を言った
ピンポーン♪ 聞きなれた呼び鈴の音が部屋の中にこだまする
「おつかれさまでーす」
ドアを開けると見慣れた山室の顔が滑り込んできた
山室の姿を認めたリッキーが小走りで駆け寄る
「リッキー今日はご機嫌だね」
山室が伸ばした手をペロペロ舐めながら、シッポを振っている
山室は自覚がないようだが、実はリッキーは山室に懐いている、健太にはよく分かるのだが
他の人には見せない仕草を山室には見せる場面が多々ある
例えば今、山室に見せているように立った状態の人間に対して自分も立ち上がり、足に前足をかけて
もたれかかる、この動作は他の人間にしている所をみた事がない
当の山室は自覚してないようだが、、
「さぁ行きましょうか」
リッキーを引きつれ車に乗り込む、この軽バンともお別れか…
最後と思うと不思議なものでなんとも言えない哀愁を感じ出した
「今日はスケジュール的に過密なのでバタバタしますけど、よろしくお願いします」
「というと??」
「いままでの出演者の方に登場してもらいますので結構な人数になります、病院、ドッグラン、トリ
ミングサロンと順に回ってもらい、最後が保護舎となります」
「リッキーとオレが順に回って行く感じなんですね?」
「そうですね、病院では検診、ドッグランではリッキーに遊んでもらって、トリミングサロンではリッキーのトリミングもお願いしてます」
淡々と話す山室だったが全部実際にこなすとなると午後までかかるだろう
「じゃあ半日以上かかりますね」
滞在する時間が長ければ長い程、美晴と遭遇する機会も増えてしまう
健太の胸に複雑な思いがこみ上げる
(私情を捨てろ、今日は仕事に徹するんだ)
自らに言い聞かせる健太だったが、胸中穏やかではない
リリーフアニマルに到着し、山室がいつもの駐車場に駐車している最中に、健太は歩いてくる人影を
認めた
美晴であった、駐車が終わり車から降りる2人に美晴が
「おはようございます」
いつもの明るい口調で挨拶してきた、が、その表情はいつもと違いやや曇って見えた
健太とは目を合わせようとしない、、、
「今日は長くなりそうですね、各担当には説明してありますので病棟から順にどうぞ」
言うが早いか美晴はきびすを返し行ってしまった
「ありがとうございます」
山室と健太は美晴の背中に礼を返す事しか出来なかった
「行きましょう、か」
山室は動揺していた、自らが軽はずみに放送に載せてしまった匂わせ動画のせいで、健太と美晴に
決定的な溝を刻んでしまった、それをいま目の当たりにした
(なんとかしたい)
漠然とそんな思いを抱く山室だったが、いま現在山室に出来る事は皆無だった
しばし立ち尽くす山室だったが健太の姿がはるか先に進んでいるのを見てあわてて駆け出す
病棟ではリッキーの検診が行われた
担当医はリッキーが入所当初から替わっていない
「ハイおわり、良い子だったね」
リッキーは、口腔内、足、シッポと全身くまなく検査されたが終始おとなしく担当医は
「この子がうちに来た時は暴れて手がつけられなくて口輪をはめて検査したものです」
出会った直後のリッキーを知る健太も山室も納得だった
「それが夢原さんと暮らすようになり見違えるように人懐っこくなって」
担当医は感無量といった表情で語る
立ち上がって山室の足に寄り添うリッキーを眺めながら終始ゴキゲンの様子だ
「でもこれオレか山室さんにしかしないんですよ」
健太の言葉に担当医ではなく山室が
「え??そうなんですか??気づかなかった」
意外な事実でも知ったように山室はしきりに驚いた表情を浮かべている
健太的には番組で使えるいわゆる撮れ高になる情報を発信したつもりだったが、山室にとっては違う
効果が出たようだ
「ありがとうございました」
病棟を後にする際山室が
「僕がリッキーのリードを持ってみて良いですか?」
と、意外な申し入れをしてきたからだ
「どうぞ、多分山室さんなら全然大丈夫だと思います」
リードを受取り上機嫌で歩き出す山室の後をリッキーが違和感なくついていく
ドッグランでの撮影は山室の提案で、楽しく遊ぶリッキーを眺めながら
健太と山室が番組開始当初を振り返る、という映像を撮る事になった
「リッキー、あんな楽しそうに遊ぶワンコだったんですね」
しみじみ語る山室に健太は
「アイツは元々優しい犬ですよ」
優しい笑顔でリッキーが遊ぶ様を眺める健太の眩しいまでの笑顔に、山室は本来の健太の表情を見た
気がした
ドッグランではリッキーと柴犬のミックス犬、そして黒のラブラドールレトリーバーが楽しそうに
駆け回っている
(リッキーがあんなに楽しそうにしてるのはあなたのおかげじゃないですか)
出かかった言葉を山室は飲み込んだ、賛否両論を呼んだ健太とリッキーの出会いは
今ではYOUTUBEで度々見かけるほど有名動画になってしまった
山室は番組内でそれを想起させる発言は控えるよう上から言われているのだ
その後健太と山室はあの時はああだった、この時は、と、しばしとりとめのない会話を続けた
「ありがとうございました」
ドッグランを後にした2人は、今度はトリミングサロンに向かう、山室ははちゃっかりリッキーのリ
ードを持ち、とても上機嫌だ
「こんにちはー」
実はトリミングサロンではリッキーは落ち着きが無い、シャンプーが苦手なのだ
不安そうに健太の顔を見上げてはしきりにソワソワしている
「はーい、じゃあ綺麗にしようねー」
その割には大人しく診査台に抱き上げられるのであった
先ほどの検診同様に全身くまなくチェックされブラッシングが施される
「じゃあ移動しようねー」
いよいよシャンプー台に移動させられるリッキーは健太の方を向いて目を離さない
ドナドナが聞こえてきそうである
お尻からゆっくりお湯をかけられいよいよシャンプーの開始、となる時リッキーは決まって
健太の方を向き
(こんな事されてんですけど?)
とでも言いたげな表情を見せる、これがネットではちょっと話題で過去2回のトリミング回の
放送後「要救助者」や「救援要請」などとイジられている
シャンプーを終え、爪切り、お尻まわりに毛を整えてもらう頃にはすっかりピカピカになっていた
リッキーがすっかり美麗に生まれ変わった頃にはすっかり正午を回っていた
「すみませんね、強行軍なスケジュールですっかりお昼まわってしまいました」
トリミングサロンのスタッフと健太に頭を下げる山室に一同は
「気にしないでください」
と、さして気にもしない様子で答える、最後まで番組環境は良好である
「では失礼します、夢原さんもお昼にしましょう」
「了解です」
返事をした健太に
「僕、車に荷物を取りに行くついでにお昼にしますんで夢原さんは適当にお昼どうぞ、13:30に総
合受付の前に集合でお願いします」
と告げて山室は歩き出した、何故かリッキーを引き連れている、よほど嬉しかったのだろう
「行こうかリッキー」
さっきから一生懸命リッキーの呼びかけるが健太のように返事はもらえないようだ
(じゃあオレもお昼にしようかな)
健太は自販機のある休憩所に向かった、休憩所はトリミングサロンの隣にあり石のテーブルと
ベンチが設置されている
自販機で紅茶を買い、ベンチに腰掛けるとコンビニで買ってきたサラダとサンドイッチを取り出す
包装を破いてフォークでサラダを突いていると、自販機の方で飲み物が落ちるガタンという音がした
健太が振り向いた瞬間、自販機の影から歩みだした人物と目が合った
美晴だった、手には弁当袋の様な物を持っている、あきらかに休憩所を目指してきたようだ
一瞬その場で凍り付いたように立ちすくんだ美晴だったが、逡巡した後、健太の方へ歩きだした
「ここ、良いですか」
健太に尋ねる美晴の態度はどこかよそよそしかった、お互い沈黙を保ったまま黙々と食事を続けて
いたが、不意に
「あれ?リッキーは?」
と尋ねた事で会話が始まった
「あぁ、山室さんが連れてってます、仲いいんですよあの二人」
山室とリッキーを二人と表現するところに健太の人格がにじみ出ていた
「そうなんですね♪」
弾むような声色で美晴が答えた
「あのリッキーが、山室さんと、へぇ~」
とても上機嫌で嬉しそうにしている美晴に
「嬉しそうですね」
と健太も微笑む、二人ともリッキーの最初の姿を知っている、感慨もひとしおだ
そこからは会話が止まらなかった、お互いの近況、職場の状況、健太の店に来た変な客の話など
他愛もない話題でどんどん会話が膨らむ、美晴の方はと言うと、最近病院に来たキツネの子が
とてもかわいかったのだと言う
「でもキツネって何か触っちゃダメなんじゃなかったっけ?」
健太の問いに
「あぁエキノコックスですね、きちんと虫下しを飲ませて処理してあります」
「へぇ、じゃあ触ってもいいんですね」
「生後1ケ月ぐらいで保護されたんですがもうかわいくてかわいくて、見てください」
そういうと徐にスマホを取り出し、嬉しそうに健太に動画を見せる
「うわ、ヌイグルミみたいだ」
「でしょう、ほら、シッポがフサフサで」
食事を終えた山室は、午後の撮影の前にトイレに行っておこうとリッキーを連れ駐車場を後にした
トイレを済ませ自販機でコーヒーを買おうと立ち寄った山室の耳に聞きなれた声が二つ聞こえてきた
身を隠しながら自販機の向こうの休憩所を見やると、一つのスマホを肩を寄せて見ている健太と美晴
の姿が目に入った、傍目には恋人同士にしか見えない
山室はすばやくしゃがみ込み小さな声でリッキーに言い含めた
「頼むから吠えないでくれよー」
「ワフッ」
こんな時に返事を返すリッキーに山室は飛び上がりそうになりながらスマホの動画アプリを起動した
これ以上ない、というぐらい身を縮こめながら動画を撮影する
二人の会話はまばらにしか聞こえてこないが「健太さん」「美晴さん」といった呼び合いは確認出来た
しかし、不意にはたと我に返った山室はその場を離れ、動画の撮影を停止した
「野暮は止そうかリッキー」
少し歩いた先の路肩柵に腰掛け、山室は自戒の念に囚われていた
(僕が軽はずみに電波に乗せた映像で、今あの2人は当たり前に出来た会話もままならない)
(今だってもし僕が現れたら、2人は会話を止めてしまっていたろう)
考える人のようなポーズで後悔する山室、をリッキーが心配するかのように立ち上がって顔を寄せた
山室はリッキーの頭を撫でると微笑んで抱きしめた
最後は総合受付での撮影となったリリーフアニマルの全施設を紹介し、午前中のリッキーの足跡だけ
では放送に乗せきらなかった部分を主にクローズアップし撮影する内容だった
撮影も大詰め、いよいよ健太へのインタビューを残すばかりとなった、事前に言う事を考えてきた
健太だったが、いざカメラの前で自らの言葉を話すのはやはり緊張を伴った
「どうでした?ここまでリッキーと生活してみて」
山室に話を振られ、少し緊張した面持ちの健太は語りだした
「最初はおっかなビックリでした、今触ってもいいかな?何してあげると嬉しいかな?好きな食べ物は?
オモチャは?どこか行きたい所あるかな?と」
「でも、いつの間にか自然になったんです、リッキーがいる事が、寝て起きてご飯を一緒に食べて
ソワソワしてた ら一緒に遊んで、散歩に行ったらお気に入りの場所があって、あ、そうそう、
リッキーって散歩行きたい時リードを咥えて運んでくるんですよ」
「なんか、きっとこうなる運命だったのかな、って最近では思ってるんです」
ここで伏せていた顔を上げてカメラをまっすぐ見据えながら健太は言った
「だから、リッキーに出会わせてくれたこの番組に感謝してます、ありがとうございました」
山室と美晴たちスタッフに向かって健太が深々と頭を下げた
何故か目を潤ませた山室が健太とガッチリ握手しカメラを停止した
「以上で本日の撮影、および僕と保護犬の撮影は終了となります、おつかれさまでした!」
ハキハキとした山室の挨拶で撮影は幕を閉じた
「つきましては、今晩19時より居酒屋「かっちゃん」にて打ち上げを行いたいと思います、都合のつく
方はこぞってご参加下さい」
事前に告知した際に参加人数を確認したところリリーフアニマルからの参加は15人との事だった
もちろん美晴も参加する、絶対絶対きて下さいね、と不自然なほど山室が誘った訳だが、、、
16時に健太をアパートに送った山室は
「ではまた後ほど」
といって一度自宅に帰っていった
健太は自室にわずかばかりの荷物を置くとリッキーの散歩に出かけた、近所の小学生がちょうど
下校中でリッキーを見かけて駆け寄ってきた、近所では知名度が高いのである
「リッキーかわいい」
一応リードを根本で保持している健太に子供たちが
「リッキー怖くない?噛まない?」
と尋ねるので
「大丈夫、お兄ちゃんが持ってるし優しく撫でてあげれば怒る事はないよ」
こわごわ手を差し出す子供たちだったが
「お目目青くてキレイー」
活発な子がリッキーを撫でてるのを見て安心したのか、我先にと優しく撫で始める
ひとまわりリッキーに触れて満足したのか子供たちは口々に
「ばいばーいリッキーとお兄ちゃん」
とブンブン手を振りながら帰路に着いていった
「人気者だなリッキー」
子供たちを明るい表情で受け入れるリッキーがたまらなく愛しく誇らしかった
散歩を終えリッキーの水とご飯を与え終わった健太は二次会の準備の為、1時間早く「かっちゃん」
に向かった
「おつかれー、撮影どうだった?」
店に着くなり竜一が聞いてきた
「はい、無事終わりましたよ」
答える健太に
「準備なんざ俺たちに任せときゃいいのに、ま、座ってろ、もう終わりだ」
とカウンターの上を指し示した
大皿のサラダ、から揚げ、煮物、焼き鳥、普段でもよく出るメニューだったが今日のはザックリと
多めに盛ってある
「まぁ俺たちも今日は飲むからな」
嬉しそうに言う竜一の後をついで清美が
「そうそう、今日は無礼講だからアタシ達も楽しむ側」
無事に番組が終了を迎えた事を喜んでくれているのだろう
大皿と取り皿を各テーブルにくばっている時に真二が入ってきた
「おつかれさまで~す」
「おう来たか、ま、座れ座れ、もう準備は終わりだ」
竜一の言葉で一同がカウンターに座って雑談を始めるのだった
「しかし三か月経つの早かったなー」
「ほんと、あっという間でしたね」
「オレもそう感じました、リッキーと一緒に暮らしてると毎日充実してて」
「いい相棒が出来たって感じよね健太くん」
ワイワイやってると開始15分前ぐらいにミキが現れた
「お、遅くなりました…」
なんだか現れた瞬間から疲れた様子のミキに
「どうしたミキちゃん大丈夫か?」
竜一が気遣った言葉をかける
「あ、大丈夫です、すみません寝坊してしまって」
「準備は終わってるから大丈夫、今日は仕事じゃないと思ってって言ったじゃない」
「ありがとうございます」
などどやり取りしていたら表がガヤガヤ騒がしくなってきた
「お、来たみたいね、真二くん皆さん入れてあげて」
「わかりましたー」
にわかに活気づいた店内で健太が立ち上がった時ミキが
「健太さんはここです、主役なんだから」
6人掛けテーブルの片方の端を指し示しながらミキが言った
「主役は動いちゃダメです、ドッカと座ってて下さいね」
「そうだぞ~健太、今日はお前が主役だからな」
2人に促されて健太は席についた
「さぁ、どうぞどうぞ」
真二の声に導かれ、山室とリリーフアニマルの職員一同が入店してきた
「今日はよろしくお願いしま~す」
美晴の声に続き職員一同がまばらにお願いします、と口にする、と不意にミキが
「美晴さんこっちこっち」
と健太の隣の席をポンポン叩きながら手招きした、美晴は状況がわからないながらもおずおずと
導かれるまま席に着いた
「おじゃまします」
美晴の声に
「ど、どうぞ」
と他人行儀に応える健太だった
「山室さんはここ~」
と美晴のとなりの空いた席を指定した
「このテーブルの空き席は開けといて下さい、アタシと店の者が座ります」
「あとは適当に座っちゃって下さい」
ミキの仕切りで皆が席に着きだした
「あれ?ミキちゃんオレは??」
真二が聞くのだが
「え?真二さんはカウンターの中だよ」
の言葉に店内がドッとわいた
「うへ、参ったな~」
と、言いながらも真二はテキパキと飲み物の注文を取り竜一と共に素早く作り出した
清美が素早く各テーブルに飲み物を配り終えると竜一を伴って健太のテーブルに着座した
ミキはちゃっかり
「アタシ健太さんの向い~」
と言いながらとっくに着席していた
飲み物が行き渡り乾杯の音頭を任された山室が立ち上がり大げさに咳払いをした
「ゴホン、この度は「僕と同居犬」が無事撮影終了を迎えられました事、本当に感謝いたします」
この言葉に拍手が沸き上がる
「最初にお話しを頂いた時には、正直不安でした、僕自身ペットを飼った事など小学生の頃のカメ以来
でましてや気難しい保護犬、どうなる事かと」
皆真剣に聞いている
「ですが初回、、、あまり世間的には言及するのは良くないのかもしれませんが健太さんとリッキーの
あの出会い、そして健太さんの腕を気遣うリッキーとそれを見つめる健太さんの笑顔を見た時
あぁ、この番組はきっと良いものになるそう確信しました」
「いろいろありましたが今日こうして無事に撮影を終える事が出来ました、それというのもここに居ら
れる皆さんのご協力あってこそです、皆さん本当に今日までありがとうございました、乾杯!!」
「カンパーーーーーイ!!」
かくして二次会が幕を開けた
ドリームドッグは実は部分的に実話で、作者が見た夢を題材にキャラクターや
ストーリーを肉づけした物です
ある日私が見た夢、それは犬を飼う夢、平凡だけど変わった夢、子犬から成犬
、そして死の間際まで、夢の中で一匹の犬の生涯に触れ、目を覚ました時、私
の頬は涙で濡れていました
作者はその当時犬を飼っていましたが、どうやら彼は夢の犬とは違ったようで
す、でも、もし今後の人生で夢の犬に出会ったら、そんな思いを、物語に載せ
て描いてみました、私が人生で初めて綴った拙い文章です
無駄な表現、セリフ、分かりづらい部分、読み苦しい部分も多々あるでしょう
が、なにとぞ、生温かい目でご容赦下さると幸いです。




