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健太の決心

健太の出演する映画がめでたくクランクアップを迎えた、割と大々的なCMが打たれる中、健太の周囲の話題は今週のボクイヌに集中していた

と、言うのも先週の放送で山室が「美晴さんっ!!!オレとLINE交換してください!!!」

で番組を締めるという暴挙に及んでいた

これに対して世間の反応は「夢原くん見損なったわ!」や「リッキー鳴いてるのに何してるんだ」「許せん!俺の美晴さんに」と言った投稿が寄せられ、以前ほどではないが、やや炎上の雰囲気を呈していた

しかし当の仕掛け人である山室は至って冷静で

「これくらいの燃料じゃ世の中全然燃え上がりはしませんよ」

と、良いのか悪いのか炎上慣れを見せるのだった

一方、居酒屋「かっちゃん」は今日も売り上げ絶好調で満員御礼の忙しさだった

また、どこから情報が漏れたのかお隣のラーメン屋「万福」に健太が働いている間リッキーが預けられている、という情報が広まってしまい、しかもグリとグラの存在が万福のSNSから取り上げられ、こちらも連日連夜満員の客足で大忙しなのであった

「いやーリッキーのおかげで毎日忙しくていけねぇや」

とボヤく大将だったが、元々リッキーを可愛がってくれていたのがますます溺愛するようになっていた

ちゃっかりグリとグラと一緒にリッキーが食事するシーンがSNSにアップされ、とても微笑ましいと話題になっていた

「健太さーん、ボクイヌ来週どうなるんですかー、教えてくださいよー」

しつこくミキに聞かれる健太の様子に真二も聞き耳を立てている

「まぁまぁ、ネタバレしちゃつまんないでしょ、来週まで楽しみに待ちなさい」

と清美が助け舟を出す

「えー待ちきれなーい、美晴さんとどうなるのー?」

すっかり興味がボクイヌの趣旨から外れてしまっている、ミキも女の子だ、この手の話題は大好物らしい

清美は全てを把握しているため終始余裕の笑みを浮かべて楽しげだ

横で洗い物をしている竜一は涼しい表情を保っていたが、世話好きの竜一が興味を示さないのはおかしい

恐らくは清美から全てを聞かされているのだろう

「店長~健太さんもおカミさんもいじわるー」

他意のないミキが竜一にからむが、なまじ知っているだけに反応に困っている

「真二さ~ん、みんな教えてくれない~」

ミキの矛先が真二に向かった

「ミキちゃん、SNSが普及して情報の管理が厳しくなってる世の中であって、、」

と、もっともな理屈をこねて真二がミキをなだめにかかる」

「はいミキちゃん五平餅」

と、ここで竜一がミキに皿を出した

「わぁ、これどうしたんですか?」

「新メニューだよ、焼き鳥と一緒に焼けるように小さめの串で作った」

竜一の説明が終わる前に

「いただきまーす」

ミキはすでにほおばっていた

「アチチチ、あ、おいしっ!」

皿の上の一本を手に取り健太が尋ねた

「店長これいくらです?」

「三本一皿300円で出そうと思ってる」

竜一の答えに真二が

「やっす!こりゃ人気メニューの爆誕っすね」

美味しそうに五平餅を食べるミキを優しく見つめる真二の眼差しに

(あらあら若いわねぇ)と頬をゆるめる清美だった、もっとも、真二の思いなど店中の誰もが、それ

どころか万福の大将ですら勘づいている事ではあるのだが、、

「じゃあ来週の放送までずーーーーーっとモヤモヤしながら期待しておきますっ!」

ミキの不満は解散するまで収まらなかった

「おつかれさまでーす」

皆がそれぞれ帰路につく、健太もリッキーを伴って家路についた、家に着いたらやるべき事がある

健太は少し足早に、帰路を急ぐのだった


それから四日後、今日はいよいよボクイヌの放送日だった、普段は野球中継などを流している店内のTVだが、放送開始以来ボクイヌの放送がある時間はリアタイでボクイヌが流されている

最近では出演者のいる店でボクイヌを見るのが通の嗜み、とばかりにわざわざ「かっちゃん」のTVでリアタイ視聴を決め込むコアなファンが存在するようで、番組の放送がある日は普段より混雑する始末で

ある、今や「かっちゃん」も立派な聖地の仲間入りである

19時30分となり、いよいよ放送が開始した、ミキは今日「私今日の放送中は仕事しませんっ!」と堂々のサボり宣言を事前に果たし、常連客が「ミキちゃんこの席空けたげるから始まったらここで見な」

と空けた特等席に、なんら遠慮する事もなく堂々と収まっていた

「僕と同居犬」のロゴが画面いっぱいに表示され画面右脇には健太の脇の下からリッキーがひょっこりと

顔を出す、ファンの間ではおなじみの通称「ひょっこりポーズ」の健太とリッキーが表示される

場面は先週の引きから始まった「美晴さんっ!!!オレとLINE交換してください!!!」

画面に食い入るように見入るミキの表情は(そこはもう見たから次、次)と語っていた

画面の中で健太が口を開いた

「オレは今日、映画の撮影で鹿児島まで行かなくちゃいけません」

真剣な表情で画面に見入るミキの鼓動の音まで聞こえてきそうな静寂、いつしか店内は、全員が画面

に見入っていた

「だから、LINEで連絡してください」

「な、何をですか?」

困惑した美晴が健太に尋ねた

「オレがリッキーを正式に引き取るのに必要な物と手続きを…」

一瞬の静寂の後、店内を割れんばかりの拍手と歓声が包み込んだ

「健太さんステキ!!!!!!!!!大好き!!」

ミキは感極まって涙を流していた、画面の中の信子も恵子も、そして美晴も、目を潤ませながら喜ん

でいた

「本当ですか夢原さん」

尋ねる美晴に健太は柔らかな微笑で

「ぼんやりと考えてはいたんですがね、さっきのリッキーの反応を見て、あぁこりゃダメだわ、離れられない、って…」

「ありがとう、、、ございますっ」

美晴も感極まったのか涙が頬を伝い落ちた

健太はリッキーを抱きしめた両手を離すとリッキーの顔を両の手のひらで優しく覆ってリッキーと額を合わせた

「ゴメンな、今日は仕事で行っちゃうけど、終わったら正式に迎えにくるから、ちょっと待ってな」

「ワン!」

リッキーが小気味良い返事を返す

健太はスッと立ち上がり、今度は振り返ろうとせず扉に向かって歩きだした、扉をくぐりざま健太は

「リッキーの事、よろしくお願いしますっ!」

クォーン、ヒュゥゥン

リッキーはまだ少し寂しそうな声で鳴いていたがやや落ち着いた様子になっていた

「よかったねリッキー」

歓喜する美晴たち職員3人に抱きしめられて、リッキーはシッポをブンブン振っていた

「うわぁ、これアタシが美晴さんだったらコロッと堕ちちゃうな、、」

ミキが無責任な事をつぶやきながら画面に見入っている時

「いけね、僕も行かなくちゃ…」

と山室の声がしたかと思うとおもむろにカメラが扉に向かい、ガチャッと音を立てて扉から出て行った

「ハァハァ、、」

小走りで健太に追いつく山室の声が入っており、終始間延びした場面になってしまった

「山室さんだいなしーーー」

ミキの辟易したつぶやきに店内は爆笑に包まれた、これを計算していたのなら大したものである、、

「皆さん、今日は新メニューのお披露目です、私からのオゴリとなりますのでご堪能下さい」

竜一の声に反応して真二と清美、少し遅れて健太がそれぞれ手に手に五平餅の皿を持って配り始めた

ありがとうございまーす、あざーす、店中から元気な声が竜一に礼を言った

店内にはワイワイと活気が戻っていた

番組は終盤に入り、いよいよ鹿児島から帰宅した健太が山室と共にリッキーを迎えに行く場面だった

小さな手荷物を持った健太と山室が二日ぶりにリッキーと対面する

健太の姿を認めたリッキーは千切れんばかりにブンブンとシッポを振り、クルクル回って歓喜した

健太はしゃがんでリッキーの突進を受け止めた

「あははは、リッキー大きくなったな、最初の頃より重いぞー」

眩しい程の笑顔を浮かべる健太にミキもそして店内の女性客もうっとりと見入るのだった

無理もない、清美ですらが健太の笑顔に魅了されていた

今やパトラッシュとネロのように世間で認知されたリッキーと健太は、否が応にも女性陣の目を引いた

意外とおとなしい再開シーンに少し物足りなさを感じたミキが

「あら、意外と盛り上がらないんですね」

とつぶやいた時、まるでその声が聞こえたかのように美晴が健太にツッこんだ

「意外に特別感のない再会ですね♪」

それは嫌味でもなんでもなく、純粋に口をついて出た疑問だった

「特別じゃないですよ、リッキーはオレにとって家族だから」

と言った健太に不思議そうな目を向ける美晴だったが、次に放った健太の言葉がまたしても衝撃的だった

「でもオレにとっては特別な、世界で一番のパートナーです」

この言葉を聞いて何故か美晴は耳まで真っ赤になってうつむいてしまった

「いけ!健太さん、そこで何か気の利いたセリフを言えば、美晴さんはイチコロだ!!」

何故か拳を固めて真二が応援している

「そうだ!行くんだ健太さん!!」

ミキも全力で応援していた、やれやれ、番組の趣旨がズレてきてしまっている、、

残念ながら番組内でその後2人に進展が訪れるはずもなく今日の放送はエンディングを迎える事となった

ところが、だ、ここでボーナストラック的な切り取り動画がエンディングに差し込まれていた

テロップが流れエンディング曲が流れる中、健太が里親の書類に判子を押印を済ませた時、それは起こった

「それではこれでリッキーは正式に健太さ、ぁ、夢原さんの飼い犬となります」

ミキのアンテナが最大限に反応した(んんんんんんんん???健太さ、、)この2人って、ま、さ、か

すでにエンディングの最後も最後、そして曲の最中という事もあり店内に反応を示した者は皆無だった

不気味な笑いを浮かべたミキが

「あ~良かったぁ、皆さんすみません、仕事に戻ります」

と宣言し、いそいそとエプロンを着け始めた

(やるじゃん山室!!)心の中で密かな賞賛を送りつつも荒れ狂うSNSの荒波を山室が見事渡りきれるのか、一抹の不安を覚えながら、ミキは仕事にも戻った

その日の営業を無事に終え、「かっちゃん」は静寂を取り戻していた

「いやー今日は感動しましたねー」

呑気に語る真二にミキは少々イラつきを感じながらも、勤めて冷静に口を開いた

「健太さん」

ミキの呼びかけに健太は明るく応答した

「なに?ミキちゃん」

「山室さんの携帯番号教えて欲しいんですけど、ダメ、ですか?」

ミキの問いかけは健太には意図が読めなかった

「やっぱ人の番号勝手に教えるのはマズい、かな、ゴメンね」

ミキとしても元々これで教えて貰えるとは思っていなかった

「じゃあ今電話つないでくれませんか、どうしても直接伝えたい事があって」

健太は少し考え込んだ後電話を手に取って山室の番号を呼び出した

「じゃあ、かけるよ」

「お願いします」

健太は山室に電話した、しばらくすると通話がつながり

「や、やぁ夢原さん、どうされました?」

少しキョドり気味の山室に健太は訝りつつも

「山室さん、実はどうしても話がしたいって、うちの店のミキちゃんが言うので少しお話良いですか?」

「え、えぇ、良いですよ」

なんだか歯切れが悪い

「では代わります」

「はいミキちゃん」

と電話を手渡されミキは素早く受取った健太のスマホをスピーカーフォンに切り替えて通話を始めた

「はじめましてー居酒屋「かっちゃん」で健太さんとバイトしてます、ミキと言います」

ミキの元気な声に触発され山室も陽気にしゃべり出した

「ボクイヌ、リアタイでうちの店で流してました、もう先週からの引きが楽しみで楽しみで、ついつい休憩もらって見入ってました」

ミキの明るい声で褒めちぎられ、明らかに山室は浮かれている様子だった

「本当ですか?ありがとうございます、」

「アタシ元々健太さんのファンなんですけど、今回でますますファンになりました」

「夢原さん良い人ですよねー僕もファンです」

「ボクイヌも残り2回で放送終了ですけど最後まで応援してます、頑張ってくださいね」

ミキの応援に一層気を良くした山室はさらに気合の入った声で返答した

「誠心誠意、可能な限りの努力を持って走り抜けます、応援よろしくお願いします」

「打ち上げの際には是非、当店をご利用下さい、それでは失礼しまーす」

変にあっさりとしたやり取りでミキは通話を終えた

「健太さん、ありがとうございましたー、アタシちょっとトイレ行って来ますね」

そう言うと健太にスマホを渡し、ミキは足早にトイレに駆けていった

トイレに入るや否や鍵をかけるのももどかしく、ミキはボールペンと不要なレシートを取り出した

自らの頭に記憶した山室の電話番号を書きなぐる

山室への礼などどうでも良かった、ミキの目的は最初から山室の電話番号を健太のスマホで盗み見る

事が目的だったのだ

当初の目的を終え必要の無い水を流してミキはトイレを後にした


「おつかれさまでしたー」

今日の仕事を終え、「かっちゃん」のスタッフそれぞれが帰路に着いた

ミキは歩くのももどかしく足早に自宅を目指すと、そのまま途中の公園のベンチに腰を降ろした


一方その頃、自宅に帰り着いた健太の元に、美晴からの着信があった

「もしもし、美晴さん今日は早いね、まだ着替えてもないや」

呑気な健太の反応に対し、美晴は切羽詰まった声で訴えかけてきた

「健太さん、今日の放送見ましたか??」

美晴のただならぬ様子に健太は疑問を持ったが

「店でみんなで見ましたよ、とても好評でした」

「そうなんですね、じゃあエンディングも皆さんで見たんですか?」

「エンディング??さぁ??その頃は店長の新メニュー発表があって作るのと配るのでいっぱいいっぱいでしたから、、、」

健太の答えに

「なるほど、だから騒ぎにならなかったんですね、、、」

健太には美晴の言葉の意味がよく分からなかった

慌ててレコーダーで本日分のボクイヌの録画画面を呼び出す

「今録画呼び出してます、今日の分のエンディングですね、えーと、、」

コントローラーを操作して今日の分の放送をエンディングまで素早く送る、エンドクレジットと曲が流れ始めたところで通常再生に切り替える

~♪エンディング曲にかぶさるように美晴の音声が小音量ながら聞こえてくる

「それではこれでリッキーは正式に健太さ、ぁ、夢原さんの飼い犬となります」

(あぁこれか、、、)

「見ました?マズい、ですよね、これ…」

恐らくは山室が故意に行ったのだろう、しかしこれではまるで、美晴が故意に匂わせしたかのように

見えてしまう、、、

「どうしましょう?私たち、もう電話もしない方が良いですか?健太さん、大事な時期です、よね、、」

健太にとって今や美晴は大事な存在になってしまっていた、鹿児島での2日間、健太は美晴と長電話

で取りとめのない話をしていた、最初はリッキーの話題だったのだが、次第に話はそれて、お互いの

職業観、人生観、そして恋愛観、いまや健太の中で美晴はもっとも気になる異性、そしてかけがえの

ない存在へと成長していた

美晴にとってもそれは同じ事であった、しっかりとした目標を持ち、地に足つけた生活を構築している

同時に自身の夢を諦めておらず、尚且つなんといっても動物好き、である、美晴にとってこれ以上の

相手はもはや今後の人生で出会えないのでは?とまで思わせる相手なのだ

それがこんな形で邪魔が入ろうなどとは

「美晴さん」

健太が真剣な口調で切り出す

「はい??」

「もうすぐオレの出演した映画が公開になります」

「えぇ」

「申し訳ないですがそれまで、オレとは連絡を取るのを止めてもらえませんか?」

健太の申し出はもっともだった、健太にとって一生を左右する大事な場面、それを自分のせいで邪魔

したくなどなかった

「SNSを確認している最中なのですが、これを匂わせだとする投稿、そうではないとする投稿、様

々な憶測が飛び交い出してるところです、今下手に動くと火に油を注いでしまいます」

「この間のような事には絶対にしたくありません」

(特にあなたは絶対に巻き込みたくない)

健太は喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ、最悪の場合、今なら何もなかった事に出来る、と

美晴は涙が溢れそうになるのをグッとこらえながら健太に答えた

「そうですね、、、今は連絡を控えます」

「申し訳ないですがそういう事でお願いします」

健太はあえて冷たく言い放った、心を鬼にして、それはリッキーを置いていく時に感じた心の痛みに

似た感覚だった…

「では失礼しますね、、」

美晴はなるべく早く電話を切りたかった、長く話していれば不必要に追いすがる言葉が、喉をついて

出てしまいそうになるからであった

「あ、美晴さん…」

健太もまた同じ心境であった、だが本来言いたかった言葉を堪えて、当たり障りの無い言葉を選んだ

「おやすみなさい」

たった一言、それだけに込められるだけの心を込めて、健太は美晴に告げた

皮肉にも同じ心境の美晴が全身全霊で同じ言葉を返す

「おやすみなさい」

通話を切り、健太は着替えるのも忘れ布団に倒れ込んだ、はたで見ていたリッキーが心配そうに、健太

の元へ寄ってきては、しきりに頬を舐めた

健太はリッキーを抱きしめた、こんな時に側にいてくれてありがとう、健太は心から感謝した


一方その頃、山室はミキからの電話で小一時間ほどこっぴどく叱られ続けていた

最初ミキから電話がきた時、山室は小躍りして歓喜した

「もしもしミキです、山室さんの電話で間違いないですか?」

ミキの第一声を聞いた時、山室は思わずガッツポーズをしていた、だが、次に続いたミキの言葉で状況

は一変した

「今日のエンディング見ました、一体どういうつもりなんですか??」

ミキに問い詰められ山室はテンパった

「え、えぇ??今日のボクイヌは最高の出来だったってさっき褒めてくれたじゃないか?」

「番組は最高でしたよ、先週からの引きも天才的でした、でもね、最後の匂わせ、あれは何ですか」

ミキの圧に気おされながらも山室はテレビマンらしく持論を展開する

「それは~最近あの2人が良い雰囲気で、しかもたまたまあんな画が撮れちゃった訳で、これは使うしかないかな~と、、、」

「え、それだけ??ノープランなんですか?あれだけの匂わせをわざわざ投下しといて!?」

会ったこともない20代の女の娘に良いようになじられているが山室にはさしたるプランはなかった

言い返す材料が無いのだ…

「前も健太さんが炎上してる時に動画投稿したりして、健太さんに恨みでもあるんですか!?」

ミキに尚もなじられ山室も思わず声を荒げる

「そんなはずがない!断じてない!夢原さんには感謝しかない、それだけは誓って言える」

「じゃあ炎上で売ってやろうとでも思ってるんですか?そんなの迷惑です」

ミキのあまりの剣幕にタジタジになりながらも山室は口にした

「僕は夢原さんを尊敬している、あの人のおかげで、とにもかくにもボクイヌは大成功だ、大貫さんも

同様に感謝しかない、僕はあおの2人にうまくいって欲しいんだ!」

「あ~あ、これじゃ炎上する訳だ」

「へ????」

「いい?健太さんはね、優しいの、ナイスガイなの、私が今まで見てきた中でぶっちぎり一番、ナンバ

ーワンなの」

「うちの店長もとってもいい人なんだけど、健太さんは特別、もう最高に良い人!!」

「????」

「ここまでは分かる??聞いてる山室!!」

ついに呼び捨てにされ出した…トホホホ

「その健太さんが選んだ人なんだから美晴さんもいい人、絶対間違いない!」

続けざまにミキが言い放つ

「問題はここから、アンタが投下した匂わせのせいで今ネットはくすぶり始めてる、いずれ大きな炎を

上げて炎上するかもしれない」

「それについてはどう思うのよ??」

突然のミキからの問いに

「炎上して、お互いがさらに意識するようになれば、二人の距離もさらに縮まるかな~と、、」

空論を振りかざす山室に

「バッッッッカじゃないの!!!!!!!」

ミキが怒鳴った

「いい?健太さんみたいないい人と美晴さんみたいないい人が炎上するかもしれないと分かったら、

とる行動は恐らくひとつよ」

「そ、それは??」

山室は恐る恐る尋ねた

「燃料を投下しないようにもう会わない、連絡も取らない、最悪の場合、別れるまであるわね、、」

「な、そんなバカな!?」

「今現在の2人の関係がどれくらいなのか?それにもよるけど、うちのおカミさんですら知らない様子

だったから、恐らくは正式に付き合い始めてはいないんでしょ」

再び山室はこわごわ尋ねた

「そうなると、どうなっちゃうの、かな???、、、」

ミキはズバリと言った

「アンタのせいで2人の関係はお、し、ま、い…」

ガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!

山室にとっては全く予想もしていない言葉だった、何故だ、僕は、2人に、幸せになってもらおうと、そんな、そんな、そんなつもりは、まったく、、、、、、、、、、、、

「なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜなぜ

なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ、、、」

「落ち着きなさいよ!」

ミキに言われたが山室はおさまらない

「だって僕のせいで2人が、2人が、、、、、」

「今更言っても始まらないでしょう、いいから落ち着きなさい!ホラ深呼吸」

山室はミキの言葉に従って深呼吸した

「すぅーーーーーーっ、はぁぁぁぁーーーーーっ」

「すぅーーーーーーっ、はぁぁぁぁーーーーーっ」

「少しは落ち着いた?」

ミキの問いかけに山室が答える

「あぁ、ありがとう、少し落ち着けた」

「じゃあ良く聞いて、いい?」

山室はかしこまった

「は、はいっ」

「アンタはもう余計な事しないで、2人を見守ってて」

「仕事中でも余計な事言わない、しない、特に今回の匂わせについては、2人の前で口にもしちゃダメ」

「わ、わかりました」

「それから何か変わった事があったらアタシに電話して、いい?必ずよ、勝手に動かないで相談して」

すっかり敬語になってしまった山室が返事をする

「わかりました」

「お願いね、絶対だからね!!」

山室は自らの愚かさを反省しつつ力強い返事をした

「あの2人には幸せになって欲しい、ってか絶対幸せになってもらう!」

「その為には多少2人がギクシャクして見えても絶対手出し無用よ!いい?」

落ち着きを取り戻した山室が力強く返事した

「はい、わかりました!」

「あ、それと、」

「どうしました??」

山室が尋ねたがミキはしばらく黙ったまま、、、、

「ボクイヌの打ち上げは必ずうちの店でお願い!」

ミキの申し入れに山室は明るい声で

「あ、それについては元々そのつもりでした」

と答えるが

「絶対よ!これだけは変更しちゃダメ!」

ミキの強い口調に山室は狼狽えた

「必ず!」

このようなやり取りを終えてミキが自宅に着いたのは、夜中の2時過ぎだった…

(アイツ、絶対ぶっ飛ばしてやる!!)

物騒な決意を胸にミキは寝りにつくのだった…







ドリームドッグは実は部分的に実話で、作者が見た夢を題材にキャラクターや

ストーリーを肉づけした物です

ある日私が見た夢、それは犬を飼う夢、平凡だけど変わった夢、子犬から成犬

、そして死の間際まで、夢の中で一匹の犬の生涯に触れ、目を覚ました時、私

の頬は涙で濡れていました

作者はその当時犬を飼っていましたが、どうやら彼は夢の犬とは違ったようで

す、でも、もし今後の人生で夢の犬に出会ったら、そんな思いを、物語に載せ

て描いてみました、私が人生で初めて綴った拙い文章です

無駄な表現、セリフ、分かりづらい部分、読み苦しい部分も多々あるでしょう

が、なにとぞ、生温かい目でご容赦下さると幸いです。

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