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始動!

打ち合わせは19時まで及んだ、健太とリッキーを囲んだ打ち合わせは白熱し

会議室にはいつしか10名を超える人数が集っていた、中心にいる健太とリッキー

とりわけリッキーは大人気であった

「わーリッキーが撫でさせてくれるなんて、すっごく嬉しい」

後から合流してきた若い女性職員が目をキラキラさせながら喜んでいる

しかし、いささか撫でられる事に辟易したのかたまに低い声でうなり出す

グルルルルァ

「ハイハイ、怒んないのリッキー」

健太がしゃがんでリッキーをたしなめるとすぐにご機嫌になり

嬉しそうにクルクル回ったかと思うと、健太の脇の下からひょっこりと顔を出すのだ

「きゃー可愛い」

なんとも愛らしい仕草に職員たちから黄色い悲鳴が上がる

「ハイ、ちゃんと話し合い進めるわよ」

美晴の号令で打ち合わせが再開される、皆が浮かれるのも無理はない

リッキーが撫でさせてくれるのだ、人の輪の中に居るのだ

美晴とて踊りだしたいくらいに嬉しかった、だが今は仕事に集中しなければならない

せっかくのチャンスなのだ、この企画で世に里親制度を広く知ってもらい

少しでも多くのペット達に幸せを掴んでもらう為に

「では定点カメラは三台、リビングに2台とキッチン1台っと」

山室がディレクターらしくしっかりとプランを練っている

「リビングの二台のうち1台は三脚に付けて移動出来るタイプにします、寝室にリッキーがよく現れるようなら画が欲しくなると思いますので…」

山室の要望に

「そうですね、うちは洗面所は別になってますので着替え等で困る事はないと思います」

健太が答える

番組の構想は順調に練られていき、当日の会議では細かなすり合わせを残した叩き台が完成した

「じゃあ今日はここまでですね」

美晴の言葉に一同全員が大きく息をつきその場で伸びをした

「んーーーっ、いよいよだねー」

満足げに言葉を発した清美に健太が答える

「リッキー、俺たち一緒に暮らすんだぞー」

リッキーに話しかける健太、そのたびに

「ワン!」

と、歯切れのいい返事を返すリッキーが実に微笑ましい

「リッキーは夢原さんが話しかけると必ず返事するんですね」

取り囲む職員たちが不思議そうな表情で健太を見ている

「なんか、コイツの事は昔から良く知っているような気がして…」

それは最初にリッキーを見たときから健太が漠然と感じていた事だ

(どこかで、会ってるような気がするんだけど、気のせいか、コイツ生後半年だしな、、)

自身の感覚に納得のいかないものを感じつつも健太はそれを気のせいと断じた

「ま、気が合うって事ですよ」

強引な結論で自身を納得させその日は解散となった

山室が健太と清美を送った際、健太からの提案で山室は健太の部屋を内見する事となった

「いいですね、僕もこのぐらいの部屋に住みたいです」

山室さんの部屋ってどんな感じなんです?

健太の問いに山室が

「あ、1Kですよ、男1人暮らしなんで…」

山室は軽い口調で答えたのだが

「さみしいわねー早いとこ彼女でも作って手狭さ味わいなさいよ」

と清美がデリカシーの無い事を言うのだった

「じゃあリビングは東の角と和室の入り口上、キッチンはオーソドックスにコンロ上から

足元が写る感じで設置しますか」

山室の提案に健太も清美も賛同した

「不便があったらすぐ連絡して下さい、カメラを止めるなり移動するなり迅速に対応します」

山室はとても親切だった、この番組に対する思い入れも深いようで、言葉の節々に本気を感じる

健太はリッキーとの新しい生活に思いを馳せていた

(うちにリッキー来るのかー、アイツ可愛かったな)

シベリアンハスキーとはいえリッキーは生後6ヶ月、まだ柴犬より一回り大きいぐらいだ

ぼんやりと考えていたところへ

「では、次回の詰めの会議で細かい部分はすり合わせ、ということで」

山室の言葉で我に返った

「はい、次の会議で詳細決定したら、いよいよスタートですね」

「そうですね、それまでに、必要な事、要望などありましたらまとめておいて下さい」

この言葉を契機に山室は立ち上がり玄関に向かっていった

「では、おじゃましました」

軽く頭を下げる山室に、健太もお辞儀して答える、すると真剣な表情を浮かべた山室が口を開いた

「今日確信しました!この番組はきっと良いものになります、これからよろしくお願いします」

と力強く右手を差し出してきた

「こちらこそ、よろしくお願いします」

答える健太の右手にも力がこもっていた

同じタイミングで健太の部屋を辞する清美に

「家までお送りしますよ」

山室が言った

「あ、近いんだけど悪いわね、お願いしていいの?」

清美の言葉に

「どうぞ、乗っていって下さい」

山室は快く答えた

「じゃあね健太くん、またお店でねー」

「ハイ、おカミさんも、今日はありがとうございました」 

手を振る健太に笑顔で答え清美と山室は帰路に着いた


「ごめんなさいね、勝手についてきた挙句に送ってもらっちゃって」

「いえいえ、女性の夜道は危険ですから」

くだけた会話を交わす両者だったが硬い表情を浮かべた清美からの一言で空気は一変した

「山室さん」

それまでと明らかに違う清美の空気に山室は一瞬たじろいだ

「はい、どうされましたか?」

思わず返事がかしこまる山室、そして

「今日の健太くん、どう思った?」

清美の言葉は予想外ではなかった、山室も同じ事に思い至っていたからだ

「正直驚きました、あんな行動に出るなんて」

山室の言葉に対して清見は逆に

「おっどろいたわよねーあれはなんて言うんだろうねー」

くだけた調子を取り戻し明るい口調で話すのだった

「でも…」

山室の言葉に清美が聞き耳を立てる

「僕がいい番組になる、と確信したのはそこじゃなくて、なんと言うか

リッキーに笑いかける夢原さんの笑顔なんです」 

山室の言葉に清美は満面の笑顔でうなづいた

「でっしょー!健太くんはね、笑顔が良いの!」

満足のいく答えを受け取ったのか帰りの道すがら清美は終始ご機嫌だった

「ここで良いです」

清美の言葉で山室は路肩へ車を停車した

「山室さん」

やけにかしこまった清美が真っ直ぐに山室の目を見つめて言った

「健太くんの事、宜しくお願いします」

深々と頭を下げる清美に、慌てて車を降りて駆け寄った山室が言った

「良い人を紹介して頂いてありがとうございます、誠心誠意努力させて頂きます」

不器用で堅苦しい物言いが山室の人柄を物語っているようだった

「じゃ、またね」

振り返り手を振る清美に一礼し、山室も帰路についた

「必ず!良い番組にしてみせます!」 

新たに決意を固め山室は車を走らせた


リッキーが健太の家にやってくる日は、来週の月曜日に決まった

おカミさんがその日は健太に休みをくれ、竜一や店員一同は何の不満を口にする事もなく

「おまかせあれー」 と余裕の表情を浮かべていた、バイトリーダーの健太としては複雑なものを感じつつも、今はリッキーを最優先に考えることにした

清美や竜一からおおまかな事情を聞かされていた真二とミキだが、肝心のリッキーには会ったことが無いため、ヤキモキする反面、やや疎外感を感じているような、ある種複雑な心境のようであった

清美からリッキーの画像を見せられた際「可愛いーこの子いつくるんですかー」「おぉ可愛いっすね」と真二もミキも犬好きの一面をのぞかせていた、二人とも万福のグリとグラとは大の仲良しなのである

「健太さんが仕事してる間は万福の裏庭に居候させてもらう感じなんすよね?」

真二の問いに

「ありがたい事に大将がそうしてくれるって」

健太は笑って答える、まぁ健太よりも先に大将の元へ話がいっていた訳だが、、

「ヤバいねー天国じゃん裏庭」

犬好きのミキらしい発想だ

「そう単純な話でもないけどねー、何かあったら全員でフォローよろしくね」

清美の言葉に一同が

「あいあいさー」 元気に答える

(ほんと恵まれてるなー)

しみじみと自らの置かれた環境に感謝する健太だった

「さーてみんなお疲れ様、今日はなかなか混んでたねー」

清美の言葉でその日の仕事にピリオドが打たれた

「おつかれさまでしたー」

店を出て行く一同を見送りながら暖簾を外す清美が健太に声をかけた

「あれから美晴とは連絡取ってる?」

「えぇ、必要な連絡はしてますよ」

健太の返答に背中を向けた清美はそっけなく

「そぅ…」

ちいさな返事を返した

「必要な連絡ねぇ、、」 

健太の返答に不満げな清美だった


いよいよ月曜を迎えた、13時にリリーフアニマルに集合という事で12時30に山室が健太を迎えに来た、

相変わらず時間にキッチリしている

今日は初日の撮影という事もあり、重要な場面だ、専用のカメラクルーも二人同行し、いつもの軽バンは4席が全て埋まる事態となっていた

助手席ではなく後部座席に座り、景色を眺める、普段と違う新鮮な雰囲気に健太も否応なしに実感を深めた(いよいよ始まるんだ)

健太は新たなリッキーとの生活に思いを馳せていた

リリーフアニマルに着くと美晴以外にいつもの見慣れた顔が二人、美晴と共に出迎えた

40がらみは平岡信子、明るく人当たりが良い、実際山室は美晴以外に物を尋ねるときは平岡に頼りっきりだった、20代の控えめな女性は大石恵子といい、口数は少なく、いつも半歩下がった位置取りで出すぎた真似をしない印象だ、だが健太との接触後、人と触れ合う事を許したリッキーに一番デレデレしていたのは彼女だった、、、リリーフアニマルへ就職した志望動機がダダ漏れであった

「じゃあ恵子ちゃんリッキー連れてくるのをお願いして良い?」

美晴の問いに早くも駆け出しながら

「じゃあ連れてきますねー」

言うが早いか早足で駆けていってしまった

「ちょっと待って下さいね、すぐカメラ用意しますので、、、」

年かさのカメラマンがいそいそとカメラを準備しだした、大事な健太とリッキーの顔合わせ、是が非でもカメラに収めておきたいのだろう

ちょうどカメラの準備が整うのを見計らったように恵子がリッキーを連れてきた

「リッキー、夢原さんよ」 

声をかける恵子をリードごと引きずるようにリッキーは一目散に健太の下へ駆け寄った

しゃがんで両手を広げている健太の下へ、リッキーは飛び込んだ、尻尾をブンブン振りながら最高の表情を浮かべるリッキーと健太の眩しいばかりの笑顔が、見る者の心を和ませた

「夢原さん」

美晴の呼びかけに健太が顔を向ける

「保護犬の引き取りには以前も説明しましたように、里親さんの誠実性の確認、経済的、環境的なワンちゃんの順応性、里親さんを取り巻く様々な環境がワンちゃんに対して適しているかが重要となります」

真剣な美晴の面持ちに健太も真剣な眼差しで答える

「はい、承知しています、リッキーにとっての幸せが守れるよう、全力でお世話します」

「もう言うまでもない事でしたよね、すみませんでした」

「通常トライアルという形式をとり、一ヶ月程度で見極めとなるのですが、夢原さんの場合は三ヶ月という期間を設け、トライアルではなく飼い主としてリッキーと暮らしてもらいます」

美晴は尚も続ける

「もちろん夢原さんの不利益、不都合、逆にリッキーの不利益、不都合が発覚した際には

随時相談に乗りますのでご連絡下さい」

「今日からリッキーはあなたの家族です、いつの時も心の中にリッキーの存在を忘れず

共に幸せな生活を作っていって下さい」

ニッコリととろけそうな笑顔で美晴に見つめられながら、健太は少し照れつつ

差し出されたリッキーのリードを受取った

健太はリードを受取り、リッキーの重みを掌中に感じながら深々とお辞儀した

「ありがとうございました、またちょこちょこと撮影等で顔を出すと思いますので

その際には宜しくお願いします」

山室が人懐っこい笑顔を浮かべながら美晴に言った

「えぇ、お待ちしてます」

美晴も屈託のない笑顔で答えた

「リッキー元気でねー」

寂しそうに口にする恵子とは対照的に

「いい人と出会えてよかったね、幸せに暮らして」

信子はサバサバした印象だった、ここらへんはベテランと言わざるをえない

「じゃあ宜しくお願いします!」

かしこまった女子3名が弁天TVの軽バンに向かって深々とお辞儀した後

山室はゆっくりと車をスタートさせた

いよいよリッキーとの生活のスタートである、健太は足元に乗っているリッキーの頭を

撫でながら後部座席の窓を開け風を入れた

5月の風は心地よく、健太の頬を撫でるのだった


健太のアパートに到着した一向はすぐさま作業に取りかかった、リッキーは部屋に

着いた直後こそ落ち着かなかったものの、すぐに部屋にも慣れた様子で元気よく駆け回りだした

カメラスタッフ2名は素早くキッチンとリビングのカメラを設置し、全員で画角の確認を行い

微調整を施した

「このカメラのうち固定の3台はライブで弁天TVのPCと繋がってます、1台のハンディカムは夢原さんのセンスにお任せします、散歩に行く際や、ここぞ、という時、どうしても撮りたいリッキーとの一瞬、そんな時に夢原さんの判断で手持ちで撮るなり三脚で据えるなりお任せします」 山室の言葉に

「責任重大ですね、、」

健太が難しい顔をした

「なぁに、もっと気楽に構えて下さい、凄まじい衝撃映像とか求めてる訳ではないので」

山室の言葉で気が楽になった

「おさらいしますと、「ボクと同居犬」は毎週水曜19時~19時30分の30分枠で放送されます、初回はこないだ撮影した夢原さんの自己紹介動画とリッキーの紹介、そして先ほど撮影した到着映像、そして来週への引き、となってます」 おおまかな説明の後山室はさらに続けた

「弁天TVの過去動画サービスにて番組バックナンバーも随時アップされていきます」

「リッキーのファンそして夢原さんの個人ファン、両者が増えて賑わってくれる事を願っています」

山室の言葉に健太は恐縮しつつ

「オレの個人ファンなんてそんな、、」 

と複雑な表情を浮かべる健太だったが

「失礼ながら夢原さんは役者をやっておられるのですよね?」

山室が健太が言うのを遮って言葉をかぶせてきた

「え、えぇ、まぁ…」 

健太の自信なさげな返事に対して山室は

「おそらく一定数以上夢原さんの個人ファンがつくのでは?と私は考えております」

高い熱量で語る山室に気押されながらも健太は

「そうなるよう頑張ります!」

善処する胸を伝えた

「気負っても仕方ありません、視聴者と日常を共有するコンセプトの番組ですから

なるべく自然で居てください」

山室の助言で健太も頭の中を切り替えた

(そうだ、役者である必要はない、オレはオレのままで自然に振舞えば番組が成立するんだ)

やわらかな笑顔を浮かべた健太に山室も納得した様子で

「その表情です、夢原さんは笑っていてくれた方が番組にもリッキーにも良いです」

「番組の公式X、インスタは私が管理します、基本的には今ここにいる3名と夢原さんの

少数精鋭で製作していきます」

少数精鋭と言えば聞こえは良いが要はローカルなケーブルTV局だ、言ってしまえば零細企業なのだ、、

「あと、最後にリッキーを連れ歩く際、特に散歩の際などは十分に注意して下さい、昨今の

SNSでの拡散状況をかんがみるに、、」

山室がみなまで言う前に健太が答えた

「分かってます、フンやゴミの後始末、オシッコのさせ方、僕自身の立ち振る舞い、十分注意します」

健太の言葉に山室は満足した様子だ

「では今日はこれで私たちは失礼します、何かあったらすぐご連絡下さい」

立ち上がった山室にカメラスタッフ2名も続いた

「ありがとうございました、何から何までご用意していただいて恐縮です」

ケージ、リード、エサ入れや水入れ、ペットシーツからなんとリッキー用のカッパまで用意してくれた

山室いわく「カッパ着せた方が番組的に映えますからね」 ということらしい

弁天TVスタッフたちが部屋を辞去した後、健太はすぐにお隣の部屋に挨拶に向かった

まずは104号室の佐々木さんだ

呼び鈴を鳴らすと聞きなれた音が響いた ピンポーン

ドタドタと早足な足音と共に玄関のドアが開く

「こんにちは、隣の夢原です」

健太が名乗ると共に声の大きめな佐々木の返事が返ってきた

「おー夢原さん、という事は来たのですね?」

事前に弁天TVの方から大家に話を通してもらい、住人には事情を知らせてあった

当然SNS等で事前に情報が拡散しないよう注意もしてある

「僕にも見せてもらっていいかなぁ、、、」

佐々木が申し訳なさそうに口にした

「あ、どうぞどうぞリッキーに会ってやって下さい」

健太は快諾した、これから長いつき合いになるかもしれないお隣さんだ

健太が部屋のドアを開けると勢い良くリッキーが駆け寄ってきた

「おー君がリッキーくんか?」

健太に抱き上げられたリッキーが明るい表情で佐々木を見つめる

「いやかわいいな、ハスキーなんだね、まだ小さいようだけど何ヶ月?」

「6ヶ月です、まだまだ子犬ですね」

「かわいい盛りだね、いっぱい可愛がってあげてね」

ペット可のアパートの住人で自らも黒猫を2匹飼っているだけあって非常に理解がある

健太はありがたく感じながらも

「吠え声やドタバタが気になるようでしたら言ってください」

「ちょっとぐらいじゃ気にしないさ」

リッキーの頭を撫でながら佐々木は言った

「ほら、リッキーもこれからよろしくねーって」

リッキーの前足を持って健太が差し出すと佐々木が右手の人差し指と親指でちょこんとつまんで握手する

佐々木との顔合わせは無事すんだ、後は反対隣の106号室大山さんだ

呼び鈴を鳴らすと大山は佐々木とは対照的なゆったりとした足音で出てきた

「夢原さん?どうしました」

おそらく寝ていたであろう大山はゆったりした口調で聞いてきた

「本日、我が家にリッキーというハスキーの子がきまして、ご挨拶に」

「お、来たのかいどんな子?」

「見ますか?部屋にいますよ」

健太の問いに「僕は猫派なんだけどね、、」と猫派を強調しつつも興味ありげに健太の部屋へやってきた

玄関で健太を見上げブンブン尻尾を振っているリッキーに、興味がありつつも手を伸ばすのを躊躇っている大山だったが、健太がリッキーを抱っこしたのをキッカケにリッキーの頭に手を伸ばすと優しく撫でやった

「かわいいねー僕は猫派だが君は別枠だ」

猫派の強調は忘れずに大山が言った、どうやらリッキーは認められたようだ

「鳴き声とかうるさかったら言って下さいね」

無事両隣の部屋の主にも気に入られ、リッキーは晴れてこの部屋の住人になった

「じゃあリッキー、この辺りの地理を知るためにも散歩に行くか?」

「ワン!」

健太が語りかけるとリッキーは高い確率で返事をする、健太は本当に言葉の意味が分かっているんじゃないだろうかと思うほどである

今日からリッキーとの新しい生活が始まる、それが自分にとってプラスになるのかマイナスになるのか、はたまた役者人生にどう影響するのか、健太には想像もつかなかったが少なくともリッキーに出会えた今この時に感謝しつつ、健太とリッキーは歩き出した

「とりあえず「かっちゃん」に行くか、みんなリッキーに会いたがってたし」

健太の言葉に「ワン!」と歯切れ良く返事を返すリッキーを微笑みながら健太は歩を進めた

明日からは徒歩通勤だ、健康の為にも良いだろう


山室からの電話で健太は目を覚ました

「もしもし、あ、その声の感じだと寝てましたか?」

山室からの問いに

「えぇ、まぁ、でも構いませんよ、どうしました?」

「「僕と同居犬」初回放送の結果が来ました」

健太は身構えた、自身にとって大事な番組の結果である

「おおまかに言ってしまうと、可も無く不可もなくです、、」

山室によると以下のような話であった、ケーブルTVは民法キー局などとは違いCMスポンサーなどがついて番組制作し、結果を求められるものではなく、インターネットプロバイダ契約のパッケージングとしてケーブルTVがカップリングされている、また映画やアニメ、スポーツチャンネルといった人気コンテンツと違い、弁天TVが作ったコミュニティ番組は地域密着のそれこそ一部の需要に特化したコアな番組で平均的な視聴率はあればあったに越した事はないのだが、言ってしまえば元々ドカンと視聴率が上がる事など期待されていない、ということだった

「でもボクイヌ公式Xでは150件以上のリプが来てますし、すべり出しは上々と言えるでしょう」

(ボクイヌと略すのか、、、)

「インスタのストーリーズでは夢原さんとリッキーの出会いのシーンが順調に再生数を伸ばしてます」

「番組HPの動画視聴回数も当初の予定よりは多く視聴されていて、全体的には可もなく不可もなく、どちらかと言えば成功と言って良いと思います」

30分弱話していたらしい、山室との通話を終えた健太はコーヒーを淹れがてらリッキーのオヤツを持ってきた

敏感に包装紙の音を察したリッキーが嬉しそうに駆け寄ってくる

サイコロ状のソフトフードのオヤツを健太の手から食べるリッキーはとても良い表情をしていた

思わず健太の表情もゆるむ

「リッキー、番組の滑り出しは上々だってさ、良かったよ」

「ワン!」

相変わらず反応の良いリッキーに微笑を返し、健太は仕事の準備にかかった



                     









ドリームドッグは実は部分的に実話で、作者が見た夢を題材にキャラクターや

ストーリーを肉づけした物です

ある日私が見た夢、それは犬を飼う夢、平凡だけど変わった夢、子犬から成犬

、そして死の間際まで、夢の中で一匹の犬の生涯に触れ、目を覚ました時、私

の頬は涙で濡れていました

作者はその当時犬を飼っていましたが、どうやら彼は夢の犬とは違ったようで

す、でも、もし今後の人生で夢の犬に出会ったら、そんな思いを、物語に載せ

て描いてみました、私が人生で初めて綴った拙い文章です

無駄な表現、セリフ、分かりづらい部分、読み苦しい部分も多々あるでしょう

が、なにとぞ、生温かい目でご容赦下さると幸いです。

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