第一章【第二話】「ユニークスキルが「大賢者」と「捕食者」ではなく、「魔法少女」と「社畜ブタ野郎」だった世界線」
「―――彼女は、この紛い物のみたいな僕の人生に現れた、たった一つの光なんです!―――」
「―――君はね、私にはなーんの影響も及ぼさない。でも、そこが君の良さだよ!―――」
自身への影響を第一に考える二人が出会ったのは、まるで絵に書いたような理想のパートナーだった。
紛い物の日々と作り物の事実を求めて、二人の関係は発展してゆく―――
これはtrueENDを目指す、世にありふれた物語。
時は遡り、昨年の年末。
「事件は起こった」
などど大仰に巷では囁かれるが、実際は大したことない事件、のはずだった。
事のあらましを説明すると、昨年の大晦日に酔った大学生五人が一人の少女をナンパしようとした……とされている。そうお茶を濁すのは、彼らの話によれば少女は、五人もの大学生に囲まれていたにも拘らず、「気がついたらいなくなってた」との事だからだ。
もちろんその大学生に酔いが回っていて、幻を見ていた可能性は大いにある。だが、こういう都市伝説のような存在が好きな者の中には、そんな話を本当に信じこむロマンチストも少なくない。そして、この少年もまた……
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その日、少年の通う学校ではとあるイベントが開催されていた。その名も「クラス替え」である。
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クラス替えーーーそこで行われる内容は単純であるが、その捉え方は人によって様々であるものの代表格(学校ぐらし中限定)である。席替えと異なり多くは一年間、長いところだと六年間に渡り人間関係の基礎となり続けるため多くの高校生にとって一大イベントとなっている。気の合う友人や仲の良いグループの面子と同じクラスになる為に祈祷をし、薄ら寒く情報量に乏しいメッセージを深夜まで送り合う。翌日に、下駄箱前のB5用紙を前にして唯一の友人と己のクラスを知って崩れ去る少年や、三月ごろ「お別れ会しよー」「いいよー」「誰の家でやるー?」などと言っていたのに当たり前のように一緒にいる少女たちなどは、読者の皆様方には覚えがある光景であろう。尤も、クラスへの帰属意識ない系のクソヲタであった作者にはどの光景も覚えに無い…。そもそも小学校卒業以降女子との関わりなど無いに等しい学園生活を送ってきたゴミクズは己が妄想と見てきた二次元の世界のお話に基づき、このラブコメディを綴っているのだ。流石にイタいと言わざるを得ない。男子校許すまじ……!―――
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少年は「僕なんてどうせ一生童貞 食されるだけの金平糖です 醜い醜いウニの化身です ホワイト変態マリモ野郎です」と口ずさみながらも、新クラス――二年C組(材木座組)――へと歩を進める。そして少年は驚愕した。眼に映ったのは、夥しい数の男女が半径50cm以内にいる少女の存在だった……。
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ご精読ありがとうございました。