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〜出会い〜

 それは、美しい中性的な容貌を持った、自然界の妖精

 人と共存しては、人より長い寿命故に、多くの人の死を見届ける

 殺されない限り、続く寿命は、幸福か、呪いか……

 それが、エルフという妖精


〜出会い〜


 季節は、晩秋を迎えていた。

 もうすぐ雪が降ろうかという時期。

 人と共に生活するエルフも多い中、彼は一人、森の奥で薬師として生計を立てていた。

 彼と、外界を繋ぐものは週に一度やって来る、村の病院の娘。

 彼は必要上に外界と接触するのを嫌っていた。

 外界と…いや、人間と。


 その日は朝からやけに冷え込んでいた。

 彼は寒さに目を覚まし、窓の外を確認する。

 初雪だ。

 小さな欠片程の雪がちらほら降っている。

「これは寒いはずだ…」

 彼は独り言を言って、段戸に薪をくべ、火をつける。

 まだ、起きるには早すぎる時間だった。部屋が暖まるまで、二度寝しようかとも思った。

 その矢先。


 ばしゃん!と大きな水音がした。


 近くに大きな滝のある河がある。

 多分、そこだ。滝の上には大きな街がある。そして、その滝は自殺の名所でもあった。

 結ばれない恋人達、娼婦、介護することに疲れ果てた老人、生きることに意味を失った物達が飛び込む。

 彼は「またか」と独り言を言って、上着を取る。

 外は、雪がちらつく中、精霊達がざわめいていた。そのざわめきで場所はすぐわかった。

 滝壺の近く。

 敏感な嗅覚が血のにおいを察知する。

 また死体か?彼の脳裏をふとよぎる。

 

 しかし、違った。

 人の息づかいが、荒く聞こえる。よくよく運のない。

 あれだけの高さから落下して、命を取り留めるとは。彼はそう考え、その呼吸の主を捜す。

 ここまで来て、見捨てることも出来ない。

 岩場まで来ると、その人は大怪我をしてるものの、河から這い上がろうとしていた。

 女だった。

 まだ若い。年の頃は15、6か?

 派手な薄い衣装を身にまとっていた。娼婦か?それにしてはまだ若い。

「おい、お前ーー…」

 彼は若干戸惑いながら声をかけた。

 元々、人間は苦手なのだ。

 彼女が、彼の声に気づいて、躰をびくっとさせる。追手かなにかと間違っている?

 河の冷水に冷えた躰が、さらにかたかたと震える。彼女はまだ彼を目視していないようだった。周りを見渡す。

「大丈夫だ。俺はあんたに何も関係ない者だ。そのまま、そこにいろ。今行くから」

 その時、彼は何故そんなことを言ったのだろう。

 人と接触するのが大嫌いな、彼が。見捨ててもよかったのにーー。

 彼は岩場から彼女の居る場所まで、服の裾が濡れるのもおかまいなしで進んで行って、血にまみれた彼女を抱き上げた。

 まだ、震えている。

「娘、エルフを見るのは初めてか?」

 彼は彼女の震えが、異端の物を見たからかと思い、言った。別に、そんなこと慣れていた。

 しかし、彼女は首を横に振っただけだった。

 ーー河の冷水と、高い崖から落ちた怪我で、彼女は気を失った。

 彼はため息をつき、家路に戻る。

 小さく舌打ちして「これじゃあ、放っても置けないじゃないか…」とまた独り言を言う。


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