このお菓子の家は出来損ないだ。食べられたものじゃないよ。
本作は某グルメ漫画の影響を多大に受けています。
森の奥で見つけたお菓子の家。
ビスケットで出来た外壁をかじった兄はまずそうに呟いた。
「このお菓子の家は出来損ないだ。食べられたものじゃないよ」
「な、何だと小僧!このワシ自慢の一軒家を侮辱するとは許さん!生きて帰すと思うなよ!」
老婆は出刃包丁を手に、生意気な兄に向かって怒鳴りつけた。
「え、どういうことなのお兄ちゃん?」
「このクッキー生地に使われている卵、舌先に残るパサパサとした触感。これは古い卵を使った証拠だ。それにバターも問題だね。無塩バターではなく、アメリカ産。大量生産された塩分たっぷりのバターが混ぜてある。こんなニセモノのクッキーでいい気になるとは、ほんとオメデタイぜ」
「は、はん。卵位でそんな事を言われるとは心外だ。それに、バターがアメリカ産で何が悪い」
唐突な暴言にめげない老婆。
だが、兄はヤレヤレといった様子で呟いた。
「ビスケットだけじゃない。屋根はチョコレートで作られているようだが、これは海外で作られた安物だ。カカオの既定が無く、なめらかさに欠ける」
「(ペロッ)本当だわ……どこか口どけが悪くてくどい味……」
「そ、それはお前らクソガキの舌に合わないだけじゃ!本物の味は、大人にしか分からんのじゃ」
狼狽える老婆。
兄は毅然とした態度で叫んだ。
「大量の防腐剤にまみれ、倉庫でいい加減に保管されているようなチョコレートが、果たして安全なのか。婆さん、気が付かなかったのか。アンタの一軒家に動物は愚か、虫の一匹でさえたかって来ない。アンタのお菓子の家はまずいって証拠なんだよ」
「ぬ、ぬぬう……」
老婆はその場に崩れ落ち、涙を流しながら呟いた。
「儂は愚かだった……。安くて手に入れやすいという理由だけで材料をそろえ、食の安全など全く配慮していなかった。なんという愚かな事をしたものか……」
「本当に美味しいお菓子っていうのは、誰が食べても分かる物だと思いますよ、おばあさん」
「その通りだ。国産の材料を使い、きちんと手間を掛けて作ったお菓子なら、誰もが喜んでくれるはずさ」
兄妹の慰めに励まされた老婆は感謝の気持ちでいっぱいになった。
「こ、今度こそは。子どもが見たらむしゃぶりつきたくなるような一軒家を作ってやるぞ!今に見ておれい!」
「期待してるぜ」
「ふふふ、頑張って下さいね」
海〇雄山は出て来ません。
ここまでお読み下さり、ありがとうございました。




