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PHANTOMEE  作者: カミムラカミウ
1章 夢見たステージへ
11/92

ーー10 第三師団騎士の二人ーー


「君、迷子?」



振り返って話しかけてきた人を確認する。薄い金色の珍しい髪色で騎士にしてはやけに整っている。というか、なぜだかムカつく顔だ。こいつ、きっと過去も今もたくさんの女性を泣かせてきたタイプだ。男の敵だ関わるな、と直感が俺に告げている。



てか今、俺はあんたのせいで騎士様の貴重な足さばきを見逃しているんだ。申し訳ないが早くどっか行ってくれと思いながら答える。



「いや、迷子じゃないです。ちゃんと通行証を提示して見学しに来ました。」



「そうなの?こんなに可愛いお嬢さんがいたら、知らない人に連れていかれないか心配だな。念のために私に通行証を見せてくれるかな?」



「おじょ、いや俺男ですけど?それと通行証を見せる分には構いません。ですが俺にとってはあなたが知らない人なので信用できません。あなたがここの騎士団員であることを先に証明してください。話はそれからです。」



そう伝えると横から、後ろで一括りにまとめた黒髪の男がやって来た。



「こりゃ一本取られたな。制服で隠しても、お前の胡散臭さは隠してくれないみたいだ。」



「全く、私の魅力は自分でも抑えることが出来ないから苦労するね、一葉(かずは)さん。」



「褒めてないからな、少しは隠してくれっていう意味だからなこれ。」



お嬢さん発言や通行証については一切スルーで、目の前では謎のやり取りがされている。



なんか、めんどくさいな…この人達は怪しいが二人とも騎士の格好をしているから変な人ではないようだ。もう放っておいていいか。そう思い訓練所へと目を向けると、先ほどまで練習していた騎士様達はすでに片付けに入ってしまっていた。



「うそぉ!練習がーーっ!」



「今日は何でも、お偉いさんが来るらしくね。でも安心して、第二師団の練習場所が変更になっただけだから、お嬢さん。」



「だから俺は…はぁそうなんですか。それってどこに変更したんですか?」



「場所はーー」



「一葉さん、待って。お嬢さん、ちょうど私達もこれから第二師団の変更場所に向かう途中なんだ。良ければ送るよ。」



「はっ?だが俺達は――」



「何か問題ある?今から行くところなんだから、一緒に行っても問題ないさ。それに、こんなに可愛らしいお嬢さんを一人にする騎士は、この世に存在しないと思うけど?」



「ったく、せめてお連れするならこの方の意見も聞いてからだ。


お嬢さん?私はここ、国家騎士第三師団所属の誠道(せいどう) 一葉(かずは)と言います。先ほどはこいつが失礼をしました。謝ります。


その上で急な提案で失礼しますが、宜しければ第二師団の次の練習先までは、私達で送らせていただけないでしょうか?騎士が所属するエリアで物騒なことは基本起こりませんが、あいつが言うように万が一は考えられますから。ただあくまでも提案ですから、お断りしていただいても――」



「あっだからお嬢さんじゃなくてですね…もういいや、別に同じ所に行く予定があったなら都合良いですし、あなたも一緒なら安心です。むしろお願いしたいです。」



「もちろんです。了承下さりありがとうございます。それではティックを呼んできますから、少々お待ちください。」



そう誠道が言い終わるや否や、胡散臭いと言われていた男の敵代表はこの場を離れた。あれ、あの男も第二師団に行くはずでは?



「あいつはティックを呼びに行きましたよ。なにか意外でしたか?」



マジか、そりゃ意外だろ。男の敵代表のあいつだぞ?こういう雑用作業は同僚とか後輩に押し付けて、女の子をナンパするんだろ。そうして同僚が持ってきたティックに女の子を連れ込んで颯爽と消えてく、と思ったのに。



ま、まぁ今回で言えばナンパ先は男の俺だし、何なら結果的には困ってた(?)所を助けてもらった。それに俺を誘ったのは誠道さんになるから、当の本人は提案しただけで…あれ、あいつ本当に男の敵代表だよな…?



「あ、いやすみません!顔に出てましたよね…実はちょっとだけ意外でした。」



「ははは、正直な方ですね。でもそう思わせたのは、あいつの自業自得ですからいいんですよ。それに、あれがそれだけの男じゃないということを知っていただけたみたいですし。」



「?それはどういう――」



話を続けようとしたら一台のティックが目の前についた。そして運転席から男の敵代表が颯爽と出てくる。



「二人は後部座席に乗ってね。私が運転するから。」



「え、あなたが運転されるんですか?運転手さんは…?」



「もちろんだよ。ティックの運転免許を持っている国家騎士なら、エリア内を運転手に変わって自由に運転できるんだ。さぁこっちだよお嬢さん。」



男の敵代表に促され後部座席に乗り込む。右隣にはすでに誠道さんが座っていて、男の敵代表も運転席に戻るとすぐに出発した。先ほどの誠道さんの言葉が気になったが、男の敵代表を前にしては何となく誠道にも聞きづらい。



聞くのを諦め、窓の外を見ていると窓に反射して誠道の姿が映った。



そういえばさっき、この二人が第三師団所属だと知った時は内臓が飛び出るほど焦ったのを思い出す。なるべく避けようとしたのに、こんなにすぐ出会うとは思わなかった。



それでも不幸中の幸いなのか、リデルさんの知り合いではなかったのが良かった。普通知り合いに身元確認するわけないからな。それでもこの人達の知り合いにはリデルさんの顔見知りがいるかもしれないから、引き続き言動には気を付けよう。



覚悟を決めて乗り続けること数分、とうとう目的地についた。



「さぁ、着いたよお嬢さん。」



男の敵代表にドアを開けてもらい降りると、豪華な作りをした建築物の玄関口に着いた。あれ、第二師団は外に訓練所があったのに、第一師団は違うのか?



「ここは第一師団の訓練所でね、第二師団と違って外からは見られない造りになっているんだ。景観を大事にしてるんだって。入り口はこっちだよ。」



促されるまま男の敵代表と誠道さんが進む後についていくが、まさか造りから違うとは。それじゃあ外から見つけられないのも無理はない。



二人に追い付くと何やら入口の守衛さんと話しているようで、時たまチラリと守衛さんが俺を確認してくる。



あぁ俺のことですね、そりゃ皆さんからしたら怪しいですよね?通行証あるから聞いてくれてもいいんですよ?と思い待っているが、何を聞かれることもなく中へと入るよう促される。



「あの俺、通行証あるので自分の申請をーー」



「先ほど一緒に済ませたから大丈夫だよお嬢さん。それよりも訓練所に行きたいんだよね?案内するね。」



「えっ、でも二人はこれから用事があるんですよね?迷惑かけてばっかりなので、さすがにここからは一人で行きます。」



「うーん、そう?じゃあお言葉に甘えて、お嬢さんとはここでお別れかな。楽しい時間だったよありがとう。また近いうちに会えるといいね。」



「良ければ次は第三師団にも見学に来て下さい。私の名前を伝えてもらえれば、案内もできますから。」



「誠道さん、と名前の知らないあなたも、今日はありがとうございました。」



俺が二人の言葉に続いて流れで感謝の言葉を伝えると、男の敵代表は驚いた顔をした後、急に笑いだした。な、なんなんだ今度は?



「ふふふ、ごめん笑っちゃって。私、あまり自分の名前を言うことがなくて、うっかりしていたよ。マティって言うんだ。良ければ覚えてくれると嬉しいな。」



どんな理由だよ!というか名前を言うことがないなんて…まさかかなりの遊び人として名を轟かせているから言わなくても分かるよね?スタンスなのか。やはりこのマティという男、男の敵代表であることには代わりがないようだ。



「は、はははは。あまり、他人の名前を覚えるのは得意ではなくて…」



ガキャン!!!



話していると突然、耳をつんざく音がフロアに響き渡り、続いて何十もの足音がそれの後を追うかのように大きくなって、消えていった。



「おや、この音は…私たちはもう行かないといけないみたいだ、失礼するよ。今度会うときは、お嬢さんの名前も教えてね。それと訓練所の中は基本安全だけど、赤い狼には気を付けないと食べられちゃうから注意するんだよ。」



「はい。え、狼?」



マティは矢継ぎ早にそう言うと、二人ともどこかへと行ってしまった。騎士団員だから、緊急で今の音の発信源の元へと向かったのだろうか?とりあえず音の発信源と俺は関係ないので、先ほど誠道からもらった道順が書かれたメモを見て訓練所を目指した。



それにしても赤い狼とは、何のことだろう?第一師団では狼を訓練犬のようにして飼っているのだろうか?それならちょっと見てみたい気もするが…



『気を付けないと食べられちゃうからね。』



…うん、俺はこれでも平和主義なんだ。血を見るようなことは嫌なので、ここは素直にマティの言葉に従おう。



書かれた道順で進んでいると、次第に声が聞こえてきた。まさか、この声はっ!逸る気持ちを抑えきれず駆け足で近づくと、第二師団が丁度よく訓練中だった。先ほどからの距離では人の顔が豆粒ぐらいにしか見えなかったのに、今は判別できるほど近い!あぁでも、もう少し右側のほうが…



「あんた何してんだ?」


***

拝読ありがとうございます。

この作品を読んで下さっている方がいると知り、少し、いやかなりびびっていますが、その反面かなり喜んでおります。

簡単なご挨拶となりましたが、引き続き楽しんで頂けたら嬉しいです。感想、☆評価も受け付けておりますので、ぜひご意見お聞かせ下さい。

それでは、また次の投稿で。

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