4 現状把握
そんなこんながあって、僕は両親であるヴァイドランド、グランエルザと、狼系魔獣を統べていたらしいガルラさん、その奥さんと1番小さいお子さんと一緒に生活をすることになった。
ガルラさんはとても真面目で、僕みたいな奴にもすごく丁寧に接してくれるので、こっちが居た堪れなくなる。
どう言った経緯で僕の父上は狼魔獣の王なんて使えさせてんのよ。おかしいでしょ。
ガルラさんの奥さんの名前はグローラさん。話してみるとおっとりした典型的なあらあらうふふ系天然お姉さんって感じだ。
僕のことも「ヴァルドランザ君」と親しみを込めて呼んでくれる。
ガルラさんはそのことに対して怒っていたが、
「ヴァルドランザ君が良いって言うんだから良いじゃないの〜。」
と、全く気にしていない。
それでもガルラさんは注意し続けるのだが、正直僕も「別に良いじゃないの〜。」と思う。
そんな2匹の末っ子である1番小さい狼の子はゴロラ君。
元気いっぱいの遊びたい盛りの男の子のようで、毎日走り回っては寝てを繰り返している。
年齢を聞いてみたら、
「んーとね、20歳くらい!」
と言われて心底驚いた。前世の僕より少し年上なのにまだあんなに幼いのか。一体何年生きるんだろう。魔獣って凄い。
ちなみにゴロラ君にとって【ヴァルドランザ】という名前は長いようで、僕のことは「ヴァル君」と呼ぶ。
ガルラさんは怒っているが、幼いのだから許してもいいと思う。幼くなくても別にいいし。
そんな彼らと数日過ごしてみて分かったことがいくつかある。
一つは、僕はお腹が空かないと言うことだ。
父上曰く、「龍に食事の必要はほとんど無い。食べても食べなくても良いが、我は食事が嫌いではない。」だそうだ。父上が食べるなら僕も食べることにした。
ただ、食卓に上がるのは主に生肉だから、あんまり食欲がそそられない。いつもちょっとだけ食べると後は育ち盛りのゴロラ君にあげている。
そして、僕はあんまり眠くならない。狼のみんなは定期的に眠くなるのでこの洞窟の中でも大体だけど1日の周期はわかる。でも僕は眠くならないので気がついたら次の日になっていたってことがたまにある。特にゴロラ君と一緒にいない時は。
そんな理由もあって最近はゴロラ君と一緒に過ごすようにしてる。父上や母上と一緒にいても同じようになっちゃうからね。むしろ父上と母上の方がタチが悪い。あの2人は下手したら数年とか起きっぱらしいからね。そのあと数年寝るそうだけど。
食欲も睡眠欲もそこまで強くないっぽいね龍って。
そんな僕はここ数日でなにをしているかと言うと、ゴロラ君と一緒に勉強だ。
ガルラさんからは基本的な座学。この世界の神話や地理などを教わった。
そして父上からは戦闘に関する勉強。こちらは主に実戦だった。山へ動物を狩りに出掛けたり、父上と闘わせられたりした。戦闘なんて出来るわけないと思っていたが、こちらも龍の体のスペックは驚くほど高く、ぐんぐんと吸収していくので、実はちょっぴり楽しい。体の動かし方や力加減などを主に教わっている。
最初は動物を殺すことに忌避感があるかと思ったが、驚くほど抵抗がなかったのはきっと僕が圧倒的に【邪龍】サイドだからだろう。
そして僕が1番気に入ってるのは母上から教わる魔法だ。魔法を教われると最初に聞いた時は大興奮だった。人間皆一回は魔法に憧れるよね。まあ僕もう人間じゃないけど。
魔法には属性がある。属性は主に7つある。火、水、土、風、光、闇、空。空は空間の空だ。
それぞれの属性に得意不得意はあれど、絶対に使えない、いわゆる適性が無いということは無い。理解を深めてきちんと練習すれば誰でも使えるようになるのだ。最高かよ。
主に7つと言ったのは、派生する属性があるからだ。2属性以上を十分に使えると、新しい属性が使えるようになる。火と風で爆発、火と光で雷、闇と水で毒など、組み合わせは他にも沢山ある。
僕は技術が足りないみたいでまだ派生属性は使えない。まあそりゃそうか。魔法を習い始めて数日だし。
また、派生属性の他にも、特殊属性というのもある。神聖、暗黒属性がそれだけど、まあこれらは今はいいや。
そして、属性を用いない魔法もある。身体強化魔法や、契約魔法などがそうだ。
身体強化魔法は、その名の通り身体能力を強化する魔法だ。
そして契約魔法は、まぁこっちもその名の通り契約する魔法だ。
本来は王侯貴族などの偉い人や、特別な商人などが使う儀礼的な魔法だったらしいが、今では奴隷契約などが横行しているらしい。やだね。
ちなみに母上は闇、水、風が得意で、派生属性は毒、氷が使えるらしい。
父上は火、風、光が得意で、派生属性は雷、爆発が使えるそうだ。
氷とか雷とかかっこいいよね。僕も早く使えるようになりたい。
ちなみにゴロラ君は属性魔法が苦手だ。でも身体強化は僕よりうまい。身体強化を使っているゴロラくんとかけっこすると、僕も追いつけない。ちょっと悔しい。
まぁ一対一じゃ負けないんだけど。