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龍の牙〜Gods is playing the game〜  作者: こばん
第四章 龍の牙
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#93 街中での異変

寝落ちしてました・・・


「さあ、ようこそスレイの街へ!」


門を潜って街の中に入ると、戯けたように右手を胸にあてヤザクさんが言った。


「まずは宿に向かいましょう。お二人ともお疲れでしょうから」


そう言うが早いか、さっさと歩き出す。ヤザクさんの後に続きながら街並みを眺める。俺はこの世界に来てから大きい街には訪れていない。

元の世界で言うなら、やはり中世くらいの雰囲気の建物が並んでおり、道ゆく人々は思っていたより雑多な種族が歩いている。

流石に獣人はあまりいないが、背が低くずんぐりしているのはドワーフだろうか、すらっとした耳の長い種族もいるし子供くらいの背しかない種族もいる。


「ファンタジーだ・・・」


ここに来て改めてファンタジーな世界に来たと思い知る。


「ここスレイは大陸の南北を行き来する玄関口ですからね、様々な種族の方がいらっしゃいますよ」


大断崖を挟んで北にも南にもこの街を通らないといけないのだから当たり前か。


「さ、もうすぐおすすめの宿に着きますよ。その宿のいいところは何と言っても・・・ん?」


宿の紹介をしだしたヤザクさんの言葉が止まった。いや、止めさせられたのだ。

ヤザクさんを押し除けるようにして、俺たちの前に立ったのは以前見たことのある出で立ちの者だ。

お揃いの鎧に身を包んだ騎士らしき男が三人立ちはだかった。


「龍の牙からの使いの者だな」


騎士は何の挨拶もすることなくそれだけ言うと、俺たちの周りを囲むように立っている。まるで逃げるのを防ぐためのような動きと、居丈高な物言いに何かおかしいと感じた。

俺たちは使者で、招かれてやってきているはずだ。迎えが来るにしても、もう少し丁重に扱うはず。


隣のニアはすでに緊張した気を放っている。後少し挑発されれば殺気に変わるだろう。流石にこんな街中でこの国の兵士に逆らうのはまずい。

俺たちが逆らうと言うことは、龍の牙がこの国に逆らうことになりかねない。

あの砦を離れたくない獣人たちにとっては、この国と出来る限り友好的な関係を築いておきたいはずだ。


「そうです、龍の牙からやってきました。宿で旅の汚れをとってから伺うつもりだったのですが、わざわざの出迎えご苦労様です」


雰囲気がこれ以上悪化する前に友好的に持って行こう。ニアがこちらを見ているが、今は抑えてくれ。

しばらく俺を見つめて察してくれたのか、剣呑な空気を引っ込めてくれた。


「ふん。本来ならケモノくさい人間など王宮の門を潜ることなどできんのだからな。何の用で呼ばれたのか知らんが、うろちょろするなよ」


思いっきり見下した目でそう言うと、着いてこいとばかりに歩き出した。どうやらついていかないといけないらしい。せっかくお勧めの宿を紹介しようとしてくれてたヤザクさんに両手を合わせて頭を下げて謝った。

そういえば、思いっきり元の世界のジェスチャーだったけど通じたかな。


そう思っていると、当のヤザクさんが走ってきて俺たちの先を歩く騎士の一人を捕まえて何か話している。


「いくらイファン商会の知人であろうと今回はダメだ。あいつらは獣人の仲間なんだぞ?野蛮な連中だ、やめておけ」


おい、聞こえてるぞ。どうもヤザクさんは俺たちのことを何かお願いしてくれているようだ。騎士の男の返事からして、話したいとか時間を与えてくれとかだろう。傍目に見たら俺たちは騎士に連行されているみたいだもんな。

しかしせっかくのヤザクさんの好意もあの騎士たちには通じなかったようだ。

そもそもあの口ぶりだと、獣人を見下している種類の人間みたいだから、その獣人の使いである俺たちに対して優遇してくれることはなさそうだ。


ところが、諦めるかと思いきやヤザクさんは懐から何かが入った袋を取り出して騎士に押し付けた。騎士はその袋を凝視して固まっている。


「う、ゴホン!ここまで急いできたから、喉が乾いたな。おい、イファン商会の会長の気持ちだ。そこの屋台で飲み物を買ってこい!」


この中で一番偉そうな騎士はそう言って部下に飲み物を買ってくるように命じた。

あの様子からして、中身はお金だろう。しかもかなり入っていると思われる膨らみだった。


「アストさん!時間がありませんから要点だけ言います。まずこの状態は異常です、他国からの使者をこのような扱い方をすることはありません。何かよからぬ力が動いていると思いますから、どうかお気をつけて。私はできる限り情報を集めて必ず解放させますから、どうか短気だけは起こさないようお願いします」


ヤザクさんは時折、休憩している騎士たちの方を気にしながら早口で一気に話した。


「おい!もう出発する。ぐずぐずするな!」


見ないふりをしながらこちらを確認していた騎士はヤザクさんと長く話すのをよしとしないようだ。


「ありがとうございますヤザクさん。会ったばかりの俺たちにそこまでしてくれて。ですけど、あまり深入りしないほうがいいと思います、これまでの事と情報だけでも過分なくらいなんですから。これ以上煩わせるのは・・・」


お礼を言って離れようとした俺をヤザクさんが強い力で引き留めた。


「アストさん、私は一端の商人のつもりです。商人と言うものは信義を第一としています。その上でアストさん達に受けた恩を借り倒すわけにはいきません。私を巻き込まないよう言ってくれるのは嬉しいとは思います。なので私が勝手に動く許可だけください!」


「おい!何をしている。いい加減にしないと拘束して連行するぞ!」


ヤザクさんも騎士も引かない様子だ。ヤザクさんの目は真剣だし、下手したら反抗するかもしれない。


わかりました、ヤザクさん。恩どころか迷惑をかけることになりますが・・・頼りにさせてもらいます」


それだけ言うと、急いで騎士の元に戻った。これ以上機嫌を損ねるのはまずい。こいつら武器までは取り上げていないが、時折ニアの手がピクピク鞘の方に動いてるからな・・・






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