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龍の牙〜Gods is playing the game〜  作者: こばん
第三章 獣人の里
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# 75 妖魔からゾンビへ

一応門の様子を見に行ってみたが、フォレストが言うようにこちらが優勢のようだ。一匹に対して複数で相手できているし、怪我をしてもすぐに交代して休めるように後ろに交代要因と傷の手当てができるものが控えている。


敵の数が多いので時間はかかるが、少ないこちらの戦力比をうまくカバーできている。ただ、獣人は自然の中で動くのが得意だそうで、固い均された地面とひらけた場所ではやや動きにくそうにも見える。


でもこういうやり方しか、圧倒的な戦力差を埋める方法がなかったのだ。無策でぶつかっていれば、個々の戦力は高くとも数に押されてあっというまに押し潰されていただろう。


門の所は問題ないだろう。そう判断して、見張り台へのはしごを昇る。妖魔達はかなり数が減ったから、時間さえあれば倒すか追い払うかできるだろう。

あとは残っているゾンビの部隊と騎士隊がどう動くかだ。


見張り台の上に着くと、開戦の時よりも明らかに弛緩した空気を感じた。飛び道具を担当していた者たちは半分ほど休憩しているし、話している表情からも余裕が見える。張りめていまにも切れそうな糸みたいだった開戦の時とは大違いだ。


まぁ、圧倒的な戦力差の妖魔をほとんど撃退できたんだから無理はないのかもしれない。そう思い、懸念のゾンビと騎士がいるであろう場所に目を向ける。


騎士達の人は移動していないように見えるが、ゾンビの集団はすこしこちらに向けて移動しているように見える。

まだ、攻めてくる気らしい。そう考えた時、無性に腹が立った。


ゾンビ達は元々人間や獣人だった者で、いってみればイムスリアの被害者だ。ただ労働力や戦力として無差別に攻撃されて命まで略取されてしまった者の末路だ。

どこからどんな手段を使って連れてきたのか知らないが、妖魔たちを相手にするのとはすこし訳がちがうだろう。

中には知り合いや大切な者の顔を見かけるかもしれない。ゾンビとの戦いは体力だけじゃなくて精神力も削られる事だろう。


それだけでも腹がたつが、一番許せないのはそういった者たちを無造作に捨て駒のように扱う事だ。

なんの作戦もなくただ数に物を言わせて攻め寄せる。それでいくら損耗しようが気にもしない。それでいて自らは矢一つ届かない安全な場所で眺めているのだ。


少なくとも司令官を配置して有効に活用することもできたはずだ、それすらしないのは、ただこちらの戦力を削ればいいくらいの完全な捨て駒としてしか見ていないのが分かる。

今ごろは遠くに見える幔幕の中で安全な所から見ているのだろう。


どうにかして煮え湯を飲ます事ができないかと、考えを巡らせたが今の状況では出来ることがなかった。

あの騎士達に近づくためには、やはりゾンビ達をどうにかするしかないのだ。



・・・できれば獣人達とゾンビ達を戦わせたくはなかった。俺の頭に獣人の里への途中で見た村を思い出した。そしてあれから姿を見せないがタルアの事を。


親しい者をゾンビにされ、しかもそれを無造作に扱われているのを見て怒らない者はいないだろう。

ただ殺されただけなら、いつかは心の傷も薄くなっていくかもしれない。

でもゾンビになってしまうと生前の姿を連想できる程度の姿は維持して、別のものとして存在してしまうんんだ、それを見てどれだけ辛い思いをするかはタルアの姿が語っている。


門の方では数が減っているのにようやく気づいた妖魔が逃げ腰になっているのが見える。ゴブリンは誰かの後ろに隠れようとしているし、オークは近寄るな!とでも言わんばかりに手に持つ武器を振り回すだけの者もいる。


前方ではじわじわとだが、前進しているゾンビ達。妖魔達が全滅するか敗走するかしたら本格的に前進してくるだろう。

ゾンビ達の後方で、例のベルらしき物を鳴らしている姿も見える。


動き出せばもう止められないだろう。何かいい方法はないだろうか・・・

見張り台の上行ったり来たりを繰り返しながら思案するが、気持ちが焦っていい考えも浮かんでこない。

何往復した頃だろうか、考えにふける俺の腕を急に掴んで、物陰に引っ張りこまれた。いきなりで油断していたのと、ものすごい力だったのでまったく抵抗できなかった。


見張り台の脇の方に物資を入れた木箱が積んである。木箱は大人がしゃがめばすっぽり入るほどの大きさだ。

最初は驚いて身を固くしていたが、途中から相手が分かって抵抗もしなかった。俺を軽々と抱えたその人物は、重ねて置いてある木箱の間に俺を下ろした。


「タルア。普通に訪ねてくればいいじゃないか」


苦笑しながら相手に話しかけた。その相手はまさにさっき考えていた男だったのだ。片目の狼の獣人族のタルアが俺を見下ろしていた。

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