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龍の牙〜Gods is playing the game〜  作者: こばん
第三章 獣人の里
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# 69 前途多難

遅くなりました、本日分の投稿です!

「ちょ、ニア!」


止める事もできず、ニアの姿は重力に引かれ崖下へと落ちていく。

後は手に持つロープをしっかり握って落下速度をゆるめるくらいしかできない。薄い革製の手袋をつけているがロープとの摩擦ですぐに熱くなるけど離す事はもちろん力を緩める事もできない。


両足を踏ん張り、力の限りロープを支える。やがて、ふっとロープからテンションが消えた。おそるおそる崖下を見てみると、元気に駆け回るニアの姿が・・・

もうね、一気に脱力したね。すぐには力が入らなくなるくらい・・・


今夜はお説教確定です。


ロープを回収して、ニャオの体に結びつける。一気に飛び降りない事を何度も念押しして崖下に送り出した。同じようにしてロキも降ろす。すぐにロープを回収して・・・次が問題だ。

しばし子ゴブ達と見つめあう。

砦に帰ったらお前達にもそれぞれ名前をつけてやるからな。その前にいろいろと問題があった気がするが、今はいいだろう。


自分の腰に回して結んだロープの確認を終えて、子ゴブたちに合図を出した。

今回は子ゴブ達はここで留守番だ。戦えないという事も理由の一つだけど誰かがロープを上げたり下ろしたりするために、この場所に残る必要もあるのだ。


自分でロープを送り出してやりながら、ゆっくりと崖を降りる。俺の頭の中では、以前テレビで見た特殊部隊員がロープを使ったラベリングで高層ビルの屋上から壁を蹴りながら下りていき、目的の部屋の中に侵入する映像がイメージされている。

実際は超へっぴり腰で、崖にしがみついた格好で、おそるおそる下っていく姿なのだが・・・

命綱があるとはいえ、ほとんど躊躇いもなく崖を飛んだニアの神経が理解できない。


全身に無駄に力がかかって、下につく頃には体中バキバキになっていた・・・

俺が降りる頃にはニアの加勢もあり、ゾンビとの戦いは優勢に進められていた。


「おう、無事だったな。あまり心配させんな!フォレストが殺気立って居心地が悪いの何のって・・・」


俺を見たグランが、冷やかしまじりに声をかけてくる。後半意味がわからない事を言ってフォレストに睨まれていたが・・・


「ごめん。見過ごせなくてさ」


苦笑いしながら言うと、フォレストが瞬間移動か?と思うくらいのスピードで寄ってきて俺の襟首を掴んだ。


「お前は俺に多額の借金があるんだ。完済するまで離れるんじゃねぇ」


完全に人殺しの目で言われた。頷く以外の選択肢が浮かばなっかたよ・・・


軽口を叩いているが、フォレストもグランもかなり疲弊しているようだ。先行していたけが人達のグループに追いついてしまって、敵を留めるのにだいぶ無理をしたそうだ。

さらに戦える者が何人もいなくなったんだから大変な思いをしたんだろう・・・


俺とニアが加わった事で、近づいてきているゾンビを一掃する事ができた。後続の姿も見えるが、ゾンビの移動スピードならしばらく大丈夫だろう。


今の内にロキと二人で崖の上に戻って、子ゴブたちを下に降ろした。


「お前・・・どうすんだ?妖魔なんぞ連れて来て・・・どこに連れて行っても大騒ぎになるぞ」


さすがにグランも呆れたような顔になっていた。


「わかってるけど・・・ほっとけないだろ。ゴブリンとはいっても、あんな頼まれたら断れないって・・・」


「ゴブリンが人の言葉を話す事も驚いたが・・・いくら頼まれたからって引き受けるお前らもお前らだ」


確かに。何も反論できません。

ただ、経緯はどうあれ一度助けると言ったこの子ゴブ達はなんとかしたい。今も俺たちに話が理解できるわけもないんだけど、察しているのか三匹寄り添っておびえた表情をしている。


「大丈夫だ。おまえたちにお母さんが俺に託したんだ。そう簡単に手放したりしないよ」


身を寄せて震えている子ゴブ達に安心するように、穏やかな表情と声を意識して話しかけておいた。


「アスト、お前を信じて任せるが、不穏な真似をしたら斬るからな」


せっかく安心させていたのに、フォレストがそう言うもんだからぶち壊しだ。

グランはわりと屈託無く対応してくれるが、フォレストはだめだ。フォレストの冷たい雰囲気に子ゴブ達も萎縮するし、フォレストも妖魔に恨みでもあるのかきびしい反応だ。


まぁ連れていくと決めた時点でトラブルは覚悟していた。妖魔というのは人に限らず全ての種族から敵視されている。

長い歴史で妖魔というのは、常に敵側にいて殺し殺されした間柄だ。今でも古代帝国の遺跡からはみ出てきた妖魔や、野良の妖魔と遭遇して襲われたなんて話には事欠かない。

会話ができる、意思の疎通ができるなんて誰も想像もしてないだろうから友好な関係を築くこともなかったし、これまでお互いに歩み寄る事も無かっただろうしな。


すっかりおびえてしまった子ゴブ達を、ニアが話しかけてなんとか落ち着かせて移動を再開した。


フォレストと目が合うとおびえてしまうので、俺とニアで挟んで連れて行く。

前途は多難だが、なんとかなるだろ。


最後の丘を登ったところで、砦の入り口の門が遠くに見えてきた。後ろを見てみると、ンビや妖魔の群れが、俺たちの通ってきた道を埋め尽くす勢いで迫って来ていた。


しかし、俺たちと砦との中間ほどに、先行した者たちが砦に向かっている姿も見える。

一気に砦に逃げ込む事はできない。


少なくとも先行したけが人達のグループが砦に戻るまでは、時間を稼ぐ必要がある。

乱戦になってしまえばけが人達は逃げ切る事はできないだろう。


「ここまで来て敵に追いつかれたら厄介だぞ。あともう少しだ。急ぐぞ!」


グランの号令が飛び、砦に向かい歩き出す。言葉がわからない子ゴブを促すために背中を押してやって俺も歩き出した。


けが人グループが砦に辿りつくまで敵が追撃を始めない事を祈りながら・・・


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