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龍の牙〜Gods is playing the game〜  作者: こばん
第三章 獣人の里
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# 61 襲撃の合間

敵陣が慌てふためいているのを、フォレストはいつものように無表情な顔で見下ろしている。

たった今しがた、あそこを駆け抜けていたとは思えない顔だ。


「よし、これから一時間休め。一時間後にもう一度仕掛けるぞ」


そう言うが早いか、地面に寝っころがってしまった。フォレストには高揚するという事はないんだろうか。

いつも無表情で動揺したところや、驚いているところを見た事が無い。


休めと言われても、さっきまで敵陣のど真ん中を突っ走っていたのだ、なかなか落ち着いて休む事もできない。戦場を駆け抜けてきて気分が高揚しているのと、もしかしたら敵の部隊が現れるんじゃないかという不安が織り交ざった複雑な心境だ。

周りを見ると、ロキ達獣人も不安そうに周りを見たりして落ち着いているものはいない。


「傭兵をやってるとな、どんなところでもどんな時でも休める時は休める特技が身につく。魔物にうようよいるダンジョンの中で寝ることもあれば、すぐそこも見えないような闇の中で休むこともある。今度の作戦は敵を休ませない事が目的だが、お前らまで休めないようじゃ意味はないぞ」


グランもマントや外套を丸めてクッションのかわりにしながら、くつろいだ姿勢になっている。


それを見て、お互いの顔を見合わせていた獣人のうち、数人は同じように地面に横になった。

ロキやニャオが困ったような顔を向けてきたので、「どんなでもいいから休んでればいいんだよ」と告げ、俺も木の幹に背中を預けてゆっくりして姿勢をとった。


まだ、すこし迷いが見えたがめいめい俺の近くに座りだした。ちなみにニアは馬とお話中だ。




・・・目を閉じていたら、いつの間にか少し眠っていたみたいだ。周りを見ると。ロキとニャオ以外は獣人同時で固まって横になっているが、頻繁に寝返りしているし時々ため息も聞こえるから眠ってはいないようだ。

ニアも馬の世話を終えて、今は俺の肩に頭を預けて目を閉じている。手に鞘に納めたまま剣をつかんだままなので、緊張はしているのかとも思ったが普通に寝息を立てていた。


そんなニアの寝顔を見ていると、最近よく考える事がある。なぜニアは俺になついてくれてるんだろうか。

男女間の機微には自身がないけど、色恋の類ではないと思う。家族を求めているのかとも思ったが、それには付き合いが浅い気もするし・・・

家族と言えば彼女の父、マリウスの問題もある。特に何も言わないが、きっと気になっているだろうし・・・


自分の事だってあるんだけどね。じっくり考えてみたんだけどこの世界にきてから、らしくない行動をするのは現実感が無いんじゃないかって思ってる。

まるで小説の中みたいな世界観と住人たち。そこにいきなり放り込まれて、どこか心の底では現実を受け入れきれずにゲームをしているような感覚になっているんじゃないかと・・・

しかも一度死んじゃったしね。


しばらく考え事にふけっていたからか、休憩時間が終わったようだ。目覚ましもタイマーもないのにフォレストとグランはほぼ同じタイミングで起きだした。


「準備をしろ、次の作戦に入るぞ」


俺をちょっとだけ見るとそう言ってさっさと準備にとりかかった。

グランが固まって休んでる獣人達に準備を促し始めたのを見ながら、俺によりかかるニアを揺り起こす。


「む?」


フォレストたちとは対照的に思いっきり寝ぼけた声を出している。ここはいったん放置だ。

半分しか目覚めてないニアをそのままに、近くで横になっているロキとニャオに声をかける。こちらは眠る事もできなかったのか、つらそうな顔をしている。

ロキ達が起きたのを見て、ニアに向き直った。・・・寝てるな。

まあ想定内だ。ニアはとても寝起きが悪く、一度起こしたくらいでは目覚めてくれないのだ。


「ニア!」


あまり大きな声は出せないのがつらいが、強めに肩を揺らしてなんとか起きてくれた。


一度起きてくれればしゃっきりしてくれるんだけどねぇ・・・


ふだんならゆっくり目覚めてもらえばいいけど、こんな軍事行動中に寝ぼけ眼で怪我でもされたら目も当てられない。


「・・・眠い。」


作戦終わって砦に戻ったらゆっくり寝ていいから。

最終手段で、脇の下に手を入れて少し強引に立たせて眠気を覚ましてもらおう。


「!!」


手を入れたとたんニアの肩が跳ねた。くすぐったかったかな、弱かったっけ?

などと思っていたら睨まれた。


少し機嫌悪めに起きたニアが剣を帯びているのを横目に俺も準備を始める。

さっきは使って無かったから特に手入れは必要ない。そのまま腰に下げ、フォレストの所へ集まった。


「さすがに警戒しているようだな」


フォレストの言葉に敵陣のほうを見てみた。確かにさっきより見張りの兵も増えているし、かがり火も増えている。妖魔は半分はおきてうろうろしている。ゾンビはさっきと同じだ。


「さて、行くか」


まるで散歩にでも行くような気軽さでグランが大槍をかつぎながら言う。

さて、次のターンだ。

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