表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍の牙〜Gods is playing the game〜  作者: こばん
第一章 アストと獣人
4/114

#3 異世界転移?

夢を見ていた。時々ある、これは夢だなって自覚できるやつだ。


そこで俺はじいちゃんと一緒になにかの神事を行っていた。じいちゃんが祭壇に向かって祝詞をあげながら神楽鈴を振り鳴らす。

俺はそれに合わせて刀を手に舞う。お神楽舞いってやつだ。お神楽は巫女さんが舞う事が多いけど、うちの一派では男性の祭員が舞ったりもする。

手に持つ刀は大昔にうちの神社に奉納されたという由緒ある刀だ。真剣で刃もちゃんとついている。


祭祀とはいえ、真剣を手に舞うのだから幼い頃から厳しく仕込まれた。同時に代々伝わる古武術である剣術も・・・


刀は相変わらずずっしりと重い。昔の侍はこんな物を振り回していたと考えたらゾッとする。二刀流とか正気の沙汰じゃないね。


いつもの癖で他人事のようにぼんやり考えていたら、またあの違和感を感じた。

嫌な予感がして、周りを見てみるとさっきまで祝詞をあげていたはずのじいちゃんの様子がおかしい。


「・・じいちゃん?」


俺が声をかけるとじいちゃんはゆっくりと振り向く。


「・・!」


そこには知らない森のなかで出会った、あの人と動物の中間みたいな男が立っていた。


「ひっ!・・」

我ながら情けない声を出し、後ずさりしようとするが体が動かない。

・・・あの時と同じように後ろにも男がいて俺を羽交い締めにしていた。違うのは俺ののどに当てられている刃物が、さっきまで俺が持っていた刀に変わっていることだ。


「なんでっ!俺を・・あんたらいったい!」


もがく俺に、半獣の男がゆっくり近づいて俺の顔のすぐそばまで来た。

フシュル・・フシュル・・と、獣のような息づかいか近づいてきて、言った。


「龍の意思だとよ」


そこでまた意識が暗転した。


気づくとビッチョリと汗をかいていた。生臭いような汗くさいような臭気が鼻をつく。

まだ頭がシャキッとしてないのか、さっきまでの出来事のどこまでが夢で、どこからがそうでないのか整理がつかない。


固い場所に薄い何かを敷いて、そこに俺は寝かされている。辺りは真っ暗でここがどこであるのかは全くわからない。

そっと体を動かしてみるが、拘束されてはいないようだ。

よく考えてみれば知らないところに転移して、剣を持った半獣に襲われるなんて荒唐無稽な部分は夢だろう。ラノベじゃあるまいし・・


だとしたらここはうちの神社の神殿か?何か発作をおこして倒れたとか・・

しかし暗くて様子はわからないが、ここは違う。と思えた。

神殿はもっとこう、静謐な場所だ。あまり信心深くない俺でもそう感じるぐらいの場所だ。


この場所からはそんな感じは全くしない。主に俺が寝かされているこの敷物が・・

まるで、汗かいたまま洗濯もしないで一年間放置した道着みたいな臭いをはなつ敷物が静謐などではなく、粗野を主張している!


・・・またぼんやりとそんな考え事をしていた。俺の悪い癖だ・・・

でもそのおかげ?で冷静になれた。結局こうしていても始まらないんだから行動しないと。


そう考え、俺はなるべく物音のしないよう起き上がった。


「目が覚めたか?」


・・・今ダントツで聞きたくない声がしました。



答える事ができないでいると、声の主が動き出す気配がした。キュッキュッと何かを回す音、続いて低く呟くような声がしたかと思うと、暗闇のなにポッと小さな火が点いた。

その火は少し移動して止まった先で少し大きくなり、辺りを照らした。

キュッキュッとガラスの蓋を締めてランタンを手に持った男が近づいてきて、俺のそばに腰を下ろした。


「言葉は通じているのだろう?」

じろりと俺を見ると、半分獣のような男が問いかけてきた・・・




男はガルフと名乗った。いわく、猪の獣人らしい。

ガルフは見た目と違い、意外に紳士的だった。いろいろ諦めた俺が、質問に答えるがやはり通じない部分が多い。

要領を得ない俺の話をガルフは辛抱強く聞いてくれた。

とりあえず異世界がどうとかは伏せて、自分が誰かぐらいは分かるが、ここがどこでどうしてここにいるのかわ分からないと説明した。


「魂の迷い子か・・・」


俺の説明を聞いたガルフはそう結論付けた。俺みたいな転移者が他にいるのか単に記憶喪失なのか、まれにそうした者がいるらしい。


「そうした人はどうなるんですか?」

話しているうちにガルフのいう男は見た目ほど危ない奴ではないと分かった俺は、少し落ち着いてきたので尋ねてみた。下顎の牙のせいで言葉は不明瞭だけど、だんだんなれてきたしね。


「俺も近しい者がそうなった事がないからな・・詳しくはわからん。だが、人族には優れた癒しの魔法を使える者がいるだろう。頼めば治るかもしれんぞ」


魔法か・・・あるのね。しかし、慣れてくると興味がわいてくるな!

俺はその魂の迷い子とやらではないから治してもらう必要はないが、この世界の常識がわからんからね。

記憶もない足手まといはさっさと殺される。事もあるかもしれないから一応聞いてみたのだ。


「しかし、これからどうするのだ?旅をするような格好でもないし、この辺りは魔物も出る。記憶もなくては何をするにもままならんだろう?」


ガルフは俺の格好を見ながら言った。いきなりこんなとこに放り出されたんだ、なんの準備もしているはずがない。

とりあえずわからないと答えておいた。迷い子設定意外と便利だ。


「とりあえずしばらくはここで過ごすがいい。けして快適ではないかもしれんが飢えさせはしないと約束しよう。もしかしたら厄介ごとに巻き込まれるかもしれんが、その時は俺たちにさらわれたと言え。そして体力が戻ったら好きにしろ。・・・もし行くところがなければ頼みがある」


獣人さん意外と親切でした。ただ少し気になるワードがあったので聞いてみよう。


「すみません、厄介になります。ただ・・厄介ごととは?」


俺が聞くと、ガルフは少し考えたが答えてくれた。


「俺たちは、世間では盗賊や山賊みたいな扱いになっている。まあ、生きていくためにそれに近い事をしているのは確かだしな。だからイムスリアの兵士などが捕らえようとしているのだ」


みたいな扱いか・・・初見ではそうとしか見えなかったが、何か理由があるらしい。


「そう言えば俺に聞いてましたね、お前イムスリアかって」


「ここはイムスリアの領内だからな。時々軍の輸送隊などを襲撃して荷を奪ったりしているからな。正直いつ討伐隊が来てもおかしくない。ただ色々あって、今イムスリア領内は混乱している。盗賊などに目を向ける余裕があるかは・・微妙だな」


そんな危険をおかしてまでここに居座るのは理由があるんだろう。あと、さっき言った頼みってやつもまだ聞いてない。


「そこまで話すと長くなる、頼みというのも強制はしない。だが余計なことは知らんほうがお前にはいいのかもしれんぞ?それでも聞くか?」


ガルフは俺が思っている以上に俺の事を考えてくれているようだ。でも、そう言われると逆に知りたくなるし、これから世話になるんだから何かしらの恩は返したいとも思う。


そう言うとガルフは少し笑って・・たぶん笑って言った。


「なら飯でも食いながら話そう。腹は減っているだろう?」


そう言うと立ち上がって、俺にも手を差し伸べてきた。

食事のために移動するのだろう。正直ここで食えと言われなくてよかった・・俺は特別きれい好きってほうじゃないけど、ここの臭いのなかだと確実に食欲が半減するからね・・・


俺はガルフの手をとって立ち上がり、歩き始めたガルフの後について行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ