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第3話 チュートリアルは大事。(ただし母の出番は少なめ)

プロットが甘いせいで前話がちょいちょい改稿されております。

ご指導ご免辰のほど、よろしくお願いします。

「いきなり死んじゃうからビックリしたよぉ」


 酒場に戻ると、マミがニコニコと出迎えてくれた。

 隣のルイジーダはひきつった顔をしていたが。


「スミマセン。わざわざ来てもらった上に、こんなことで時間取らせてしまって」

「ううん。ママさんとタケル君ママとお話してたから大丈夫だよぉ」

「それにしても、何で今回は俺だけ城に飛んでいったのか・・・」


 最初の時は母親が棺に入れて運んだというのに・・・・。

 タケルは頭をひねった。


「それはぁ、タケル君が『オン』でぇ、アタシが『オフ』だからぁ、タケル君が死んじゃった時点でぇ、全滅判定されたんだよぉ」


 マミの説明によれば、勇者を含む冒険者には冒険状態の『オン』と非冒険状態の『オフ』があるとのこと。


「だからぁ、パーティー内の冒険者は『オフ』の状態だと非戦闘員ゲストとして扱われてぇ、『オン』状態のメンバーが1人もいなくなると『全滅』として判定されるのぉ。それでぇ勇者は所持金の半分と引き換えにぃ、王様のところで復活する決まりなのぉ」



 そう聞いてタケルが財布を開けると、王様からもらった500円が250円になっていた。

 テーブルに置いていたので札束が減らなかったのは幸運だったが、自分の命が250円で蘇ったと思うと悲しい気持ちになった。


「普通は『オフ』のメンバーも一緒に飛ばされるんだけどぉ、ここが圏内だからかなぁ?」


 マミが首を傾げると、ルイジーダが言葉を続ける。


「圏内っていうのは、王都など防壁に囲まれた一般人が生活している生活圏内のこと。一般的に冒険者は王都などの生活圏内では強制的に『オフ』にされるんだけど、勇者にはいくつか特権があってね、圏内『オン』もその1つ」


 冒険者が『オン』状態にする条件は以下の2つ。

 1.冒険者カードを所持する。

 2.武器を装備する。または、攻撃が可能なスキルを所持した上で生活圏内を出る。

 カードの設定が『オート』であれば自動的に、『マニュアル』であれば手動で『オン』にできる。


 つまり、タケルは剣をもらって腰に差した時点で『装備』したことになり、勇者カードをもらった時点でカードの設定が『オート』だったので『オン』になった。

 その上で『オフ』のマミとパーティーを組み、『オン』のタケルが母親に殺られたことで、パーティーは全滅と判定された。そういうことだそうだ。


「圏内で全滅なんて『非常事態宣言』が出された時しか普通は起こらないことなんだけど・・・」

 ルイジーダは母親を横目で見る。

 その視線に母親が気付く前に(もう気付いているかもしれないが)タケルは話題を変えた。


「『オン』と『オフ』ですか。何故そんなシステムを?常に『オン』だと問題があるんですか?」


 タケルの素朴な質問に対して母親が「ハイッ!」と手を上げた。


「それはチュートリアル担当のお母さんが説明しまーす!」


 出番がなくて置物状態だった母親の突然のチュートリアル参戦。

 タケルは真顔になって、ルイジーダは飲んでいたコーヒーにむせ、マミは手を叩いて喜んだ。


「状態切替がなかった時代に、酔っぱらったり、寝言なんかで攻撃魔法を唱えたり、攻撃系のスキルを使ってケンカをしたりする冒険者が後を絶たなかったのがシステムが生まれた理由です!」


 極めて普通で当たり前の理由だが、久々のセリフに満足の母親である。


(つまり・・・。母さんはスキルを使わずに俺を2回も王様送りにしたのか・・・・。)

 今さらながら、母親の底知れぬ力にゴクリと唾を飲み込んだ。


 さらに母親の説明は続く。


「でもね、魔王軍が襲ってきたりした場合は生活圏内での戦闘もあるから、王都は王様が、その他の都市ではそれぞれの地方統括者が制限解除する場合もあるのよ。それがルイジーダちゃんが言っていた『非常事態宣言』ね」


 そこまで言って母親は喉を潤すためにグラスの水を口に含む。

 そこでルイジーダが説明を引き継ぎ、

「さっき私が勇者の特権と言うのをタケル君は聞いたと思うけど、詳しく説明すると、

 1.生活圏内での冒険状態『オン』

 2.ソロでの死亡時または、パーティ全滅による死亡時の自動蘇生(ただし所持金半分で王様の前に強制移動)

 3.素材買い取り額5%アップ。

 4.買い物価格5%値引き。

 5.冒険者は買い物額100円につき1ポイントのところ、勇者はポイント3倍。

 6.勇者は・・・・」


「もういいです」


 タケルはルイジーダの言葉を遮る。


「3番目から特権じゃなく特典になってるじゃねぇか」

「えーっ。タケル君、ポイントは1ポイント1円として使えるんだよぉ!」

「そこじゃねぇ!」


 所帯じみた内容に勇者の意義がグラつくのを感じながら、タケルは息を整える。


「でもねぇタケル君。勇者とパーティーを組むとぉ、冒険者にもその特典・・・特権が与えられるんだよぉ」

「マミさん。『特典』言ってる」

「もぅ!ちゃんと聞いて!冒険者のみのパーティーだとぉ死んでもその場で横たわるだけなのぉ。24時間以内に蘇生できないとぉ、魂が消滅しちゃって蘇生不可になっちゃうからぁ、自動蘇生が得られる勇者とパーティーを組むのはぁ冒険者にとっても大きな恩恵なのぉ」


 プリプリしているけど動作が微笑ましい。


「ただしぃ、冒険者の場合は自動蘇生の対価として所持金の代わりにぃ、経験ポイントが減っちゃうのぉ。場合によってはレベルが下がっちゃうからぁ、何度も全滅しちゃうダメダメ勇者だと見限るメンバーもいるからぁ、タケル君も気を付けてねぇ」


 マミの顔は笑っているけど目は・・・・。

 過去に何かあったのかもしれないと感じたタケルではあったが、踏み込むにはステータスが足りなかった。


「あと裏ワザだけどぉ、所持金が減るのは勇者のお財布だけだからぁ、パーティー内のお金は勇者以外のメンバーに預けておいた方がいいよぉ」


 おばあちゃんの知恵袋的な小技が出たところで今後の活動を相談する。


「それじゃぁ今日はもう時間も遅いですし、活動は明日からでいいですか?マミさん」


 タケルとしては当たり前の提案だと思ったのだが、

「ちょっと、タケル!明日は学校があるでしょ!」


 ん?


「え?魔王を倒しに行くんじゃないの?」

「勇者の前にタケルは学生でしょ!学生は勉強が仕事です」


 えーーっ。タケルは混乱している!


「ごめんねぇ、アタシは平日にシフト入れてるからぁ明日は無理ぃ」

「ええ!?シフトって・・・せめて俺の放課後に活動できるよう何とかならないんですか?」

「すまないタケル君。こっちも人手不足でね、平日にマミに抜けられると店が回んないのよ」

「世知辛い!」


 マミとルイジーダの両者からも『ノー』を告げられ、検討の結果、タケルの勇者活動は土日のみとなった。


(魔王、倒せるのかなぁ。)


 それは、まぎれもなくタケルの本音であった。

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更新速度遅めなのが申し訳ないと思う今日この頃。
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