転生した啓吾。女神の国でアルバイトをする!
タイトルもサブタイも仮と思って頂けると助かります笑
『─と言う訳です。ご理解頂けましたか?』
啓吾の目の前に申し訳なさそうな顔をした女神が、重たそうな本を閉じそう言った。
「はぁ···。俺は、死んだの?」
『はい。お亡くなりになっております』
(さて、困ったぞっと)
啓吾は、考えた。母さんに知られたら絶対に怒られるであろうある荷物が、あの日届く筈だった。それは、どうなったのだろうか?
『届いておられますよ。お荷物は無事に···』
「······。」
女神は、にこやかに笑って言った。
(終わった)
いや、俺死んでるから怒られる事はないんだけど!
啓吾は、唾を飲み込んで女神を見た。
『どうかされましたか? お顔の色が···』
「はは···っ」
顔を引きつらせ、深く溜息をついた啓吾に、
「啓吾さま? もう宜しいですか? 他にも並んでおられる方がおられますので。こちらへ」
声を掛けられ、見上げれば天国?では似つかない黒服の男性が立っていた。
「失礼いたしました。私、現世と異世界を管理しているアロン·ポーロと言います。お見知りおきを」
黒服と見えたのは、実は濃いグレーであり、このアロンと名乗る男性は燕尾服を着ていた。
『アロン? 宜しく頼みますよ?』
「は! 畏まりました。ソフィア様···」
女神は、ソフィアと言うらしくアロンは、深々と頭を下げ、
「さ、こちらへ。これから色々な手続きを致しますから」
啓吾は、訳もわからず(死んだのは分かった)、後をついていくことにした。
(俺の後ろに並んでた人っちらも、みんな転生するのだろうか?)そんな事を考えると、
「そうですね。転生する方やそのままこちらの世界で暮らす方がおられますよ。楽しいですよ? この世界も」
人の考えてる事を勝手に読み込み、アロンは笑いながら啓吾を見下ろし、こう言った。
「あの···」
(つか、こいつデカい)
「実は、私も日本の生まれなんですよ。と言っても、かなり昔なんですけど···。身長ですか? 187cmあります」
「······。」
「さ、まず館内の案内をしますから。これにお着替えになって下さい」
アロンは、啓吾にふわりとした布製の物を差し出した。
(いまどっから出した?)
「はい、こちらで···」
話を遮るように啓吾は、その布製の物を掴むと広げてみた。
「これは? 俺男だけど? スカート?」
「違いますよ。それは、男女関係なく着るサキュレという服でございます。この館内の中で、過ごすにはこれを着ていないといけません」
「はぁ」
「では、こちらへ」
少し歩くと大きな建物があり、そのドアからは同じような格好をした男女が出たり、入ったりしていた。中には、子供もいた。
お辞儀はするものの、会話はなかった。
真っ赤なレッドカーペットが扉から階段に敷かれており、忙しそうに歩くアロンと似た服の男性やエプロン姿の女性が居て、アロンや啓吾に軽く頭を下げて通り過ぎて行った。
「あの、少し聞いてもいいですか?」
「どうして、誰も会話を、ですか?」
(またしても、こいつは···)
「はい」
「じきにわかりますよ。さ、こちらで着替えて下さい」
Gentlemanとプレートの付いたトビラを開くと、中にはコインロッカーみたいな物が無数についていた。
「あ行からロッカーにお名前がついてますが、自分の名前を言えば案内灯がつきますから」
「はぁ。ありがとうございます」
扉が締まり、啓吾は自分の名前を言うと、ピピピと軽い機械音がし、矢印がついた。
「こっちか···」
右に行ったり、左に行ったりを繰り返し、自分の名前のロッカーにつくと、着換え始めたが···
「戻れるのか? つか、どうやって?」
来た扉を戻るのか?とも思ったが、実は違っていて、着換えが終わるとどこからか、
『オデグチハコチラ! オデグチハコチラ!』
とまた矢印の灯りがついたのを辿ると、先程入った扉とは違う扉があり、外に出たらアロンがにこやかな顔をして、
「お待ちしておりました」と言った。
「なんか落ち着かない」
初めて着るスカートみたいなワンピース。
「お似合いですよ?」
そう言うアロンを睨み、また歩いていく。
「さ、今度はこちらで健康診断です」
(これが病院?!)
豪華な建物の扉を潜ると、アルコールの匂いがし、懐かしくも感じた。
そこで、身長や体重、視力や聴力、握力等を測られた。
「─のはいいんだけど。なんであんな···とこまで」
啓吾は、恥ずかしくなり股間を抑えた。
「規則ですので···。私も恥ずかしかったですよ。初めてでしたから···」
アロンもまた当時を思い出したのか、手で隠しながら啓吾に耳打ち。
「健康な身体なんですね」
「病気なんてしたことがないからな」
啓吾が、唯一自慢できるのは大きな病気や怪我をしたことがないことだった。無論、おたふくや麻疹等は経験したが、高熱があっても寝込む事はなかった。
「お腹空きませんか?」
「お腹?」
死んだのに?とも思ったが、どこからか美味しそうな匂いが漂い、腹が暴れてきた。
「あそこで食事にしましょう。その後は、滞在先の部屋やお仕事先も決めないといけませんから···」
「仕事?」
「はい。どの世界で住むにしろ、お金がないと大変ですからね。無論、こちらで手にした報酬はその世界の通貨に換えてお渡ししております」
啓吾は、16になればアルバイトが出来るのをある意味楽しみにしていたが···
「あるの? バイトなんて···」
「御座いますよ。この世界のペートは、1000Gです。日本円にするといまは、1000円ですか?」
その金額に啓吾は、驚いた。狙っていたコンビニのバイトでも、昼間の時給が890円だったから···
「うわっ。すげ、マジ?」
話をしながら、テーブルの上に置かれたメニュー表を見ると日本でよく食べていたハンバーガーや和食が乗っていた。
「どの世界でも食べられるものばかりを扱っております。イタリア人が手にすれば、イタリア料理ですし」
啓吾があたりを見回すと確かにいろんな人が居て、自分と同じキュレに身をまとった男女が嬉しそうに笑ってはいた。
「あ〜、そう言うこと? 同じ人とは会話が出来ない?」
「はい。さようです。規則を破ると墜ちますから···。転生する事もこの世界にいる事もなく、何もない真っ暗な世界へ墜ちます」
それが何を意味するのかは、わかった。
「自分の担当する管理者とでなら、こうして会話は出来ます」
啓吾は頷き、食べ慣れた肉じゃが定食を頼んだ。
啓吾が、亡くなる前日母親が田舎から送られてきた野菜を使って作ったニを食べたからだ。
「いいですね? 食べた味を忘れないで下さい」
アロンが何を思ってそう言ったのかわからなかったが、啓吾は頷いた。
注文した料理が、運ばれてくる。
ふわっと醤油の匂いが鼻をつく。
「さぁ、食べましょうか?」
「はい」
「「いただきます」」
食器も日本であるような茶碗に汁碗···
箸でじゃがいもを挟み、口に放り込む···
「うそ···だ」
盛り方は、店らしいが味は···
啓吾は、驚きアロンを見るが、アロンは何も言わず食べていた。
「美味い···美味いよ、これ···」
あり得なかった。こんなところで、母さんの味がする肉じゃがを食べれるだなんて!
「どうですか? お気に召しましたか?」
「う···ん。でも、なんで? 作った人違うんでしょ?」
「そうですね。作った人は違います。生きてる人間を呼ぶことは禁ですからね。でも、このレストランは、味や切り方の再現は完璧に出来るんですよ」
肉じゃがも少し固めな米も飽きてる筈の油揚げの味噌汁も、どれもこれも啓吾が生まれてからずっと慣れてきた味だった。
(ごめんよ。母さん。親不孝な息子で。父さんと仲良く暮らしてくれ)
「届いた荷物、まだ開封されてませんから。すり替えておきますね?」
アロンが、ふて思い出したようにそう言った。
(荷物? あぁっ!! あれは···)
「でも、今の時代なんでもインターなんとかで手に入るんですね」
「う···。ま、まぁ」
不意をつかれ、言葉に詰まる啓吾だったが、
「すり替える? 出来るの? だったら···」
今更遅いかも知れない。けど、出来るなら···
と啓吾は、ある事をアロンに頼んだ。
「畏まりました。では、そのようにしておきます。さ、次に行きますよ?」
啓吾は、涙を拭きながら、レストランを出た。
レストランを出て、滞在する部屋を決め、その日の内にアルバイトも決まった。
「これを差し上げます」とアロンからスマホみたいな形のを渡された。
「スマホ?」
「では、ありません。この世界に電波というものは存在しませんから」
「じゃ、なに?」
「あとでわかりますよ。男泣きは、一度だけですからね。明日からは強い男でおられなさい。では、明日。時間になったらお迎えに参ります。では」
啓吾が、言葉を返す前にアロンは目の前から消えた。
「なんだろ? これ」
新しい部屋には、既に調度品が揃えられており、バスルームもトイレもあった。テレビはないが、それに似たものはあった。
「Forward? 転送?」
電源を入れるとズラッと各諸国の言葉が表記され、啓吾はJapanを探した。
「すっげー。本だ! これ全部読んだことがある」
表記されたのは、昔読んだ事がある週間漫画の類だった。それも初期のものから最近のまで!
とりあえず、最近のを読んでみたくて、転送ボタンを押すと、手にしていたスマホみたいなのが震え始めた。
「あ、これに来るのか?」
真っ暗な画面ではあるが、急に明りがつき小さな文字でダウンロード完了と表記されていた。
が···
「なんだこれ? メール?」
見慣れた手紙のマークが、チカチカしていたから、ベットに腰掛けて見ることに···
「母さん···。父さんまで···。おかしいな。雨でも降ってんのか?」
画面の中には、大きな仏壇があった。中には俺の写真!
開けられた小さな箱があった。
「ごめんな、母さん。母さんの大事な本。あんなビリビリにしちゃって···」
啓吾は、中学受験に失敗した時、母親がいつも読んでいた小説をビリビリに破いた事があった。母親は、目を涙を溜め、啓吾をただただ無言で見つめていた。
「ごめん。ほんと、ごめん」
そんな事をした啓吾にいつもと変わらぬ愛情を注ぎ、ここまで父さんと一緒に育ててくれた。
捨てるに捨てられなかった小説と古いけど同じ小説が、母親の胸にある。
「ごめん···」
いつしか啓吾は、眠りに落ち、翌朝アロンに叩き起こされた。
「今日からお世話になります。イトウケイゴです。宜しくお願いしますっ!」
新しいバイト先は、優しそうな店主の商店。
“トワレボール”だ!
こうして啓吾は、次の世界に住む資金を稼ぐことになった。