誤解
看守に付いていくと看守がある所で立ち止まる。
立ち止まった先は、香が閉じ込められているところだった。
「入るぞ!」
と言い、看守は何が何だかわからない様子の香の手を拘束し始めた。固く拘束し終えると香を引っ張るように連れ出す。
そして、また歩き出した。
少し歩いた先に、頑丈に作られたに面会室が見える。もちろん石造りだが。
俺たちは看守とともに中へ入り、
「さあ、三人とも入れ」
看守はそう言って俺たちを入れ、木製のドアを閉めた。
ドアから振り向くと、長い白髪が目立つ年老いた老人が座っている。いかにも村長です!って感じの人だ。
「座ってよいぞ」
と言い、俺たちを座らせる。落ち着かない。
「わしはルージャ・ベルロット ベル爺と呼ばれておる。」
「どうも、左から...」
「自己紹介はいらん」
いや、させてくださいよ一応。重い空気だから言えないけどさあ。
「あの、自分たちはなぜこのようなことになっているのでしょうか。」
湊が聞く。
こいつは真面目になるといつものふざけた感じじゃなくなる。完全に真面目になるのだ。
本当に不思議だよ。
湊の問いにルージャは、
「とぼけるなよ...」
睨み付けてきた。完全に何か誤解している。
すると香を指差し、
「そいつはそこの村、いやこの国を抜け出し、何かを企んでいる反逆者ビーオ・ディイラーだろう?わかっておるのじゃ。さっさと殺せばよかったものをあの馬鹿が拘束しおって」
ルージャが言った。
ビーオ・ディイラー?
変わった名前だ。聞いたこともない。
「私は違うよ~」
香は言う。
「違うのなら証拠はあるのか?どこからどう見てもビーオなのだが?」
「証拠ならあるよ!」
香は力強く主張する。
「なにかね」
「これだよ‼」
「これは⁉」
ルージャは驚いていた。
俺も驚いた。拘束された手で器用に自分の身分証を出したのだ。
まあ、ルージャが驚いた理由とは違うと思うが。
でも通用するのか?この身分証。
「間違いない... 本当に申し訳ない。」
ルージャが謝る。
どうやら誤解が解けたようだ。
よかったよかった。




