劣等感
朝だ。朝起きるのは苦手で、起きた頃には二人は朝食を済ませていた。
ああ、異世界でも寝坊した。
今日はルージャが話があるそうで、ホリリー村のお偉いさんが集まる屋敷に呼ばれている。ホリリー村は正確には俺達がいる帝国のウェリンスという領地の都市である。ウェリンスは辺境の中でも結構発展しているそうだ。
結構発展しているんだなここって。
急いで朝食を済ませさっそく向かった。
地図とうろ覚えの勘を頼りに行く。すると途中から俺らを見つけた従者がご丁寧に案内してくれた。
従者が建物の中の応客室のようなところへ連れていく。扉を開けると、ルージャが待っていた。
「朝早くにすまんな。身分証はできたか?」
「まだ渡されていない。名前だけでも作り直せないか?」
「無理じゃな」
即答された。作り直したい...
「ところで何のようですか?」
湊が聞く。
「今から優秀な平民や貴族の子供が通う学園へ向かう。この学校は魔法使いや騎士を育てるところじゃ。そこで魔法の適正を検索する。その後、学校に通うか、働くか選んでもらう」
「わかった。なあ、一つ聞いてもいいか?どうして俺たちにそこまでする?普通は差別され、奴隷落ちが普通なんだろう?」
前から思っていた疑問を聞こう。
するとルージャは暗い表情で話した。
「わしはビーオの襲撃にあったとき、一人の異界人に助けられた。その人はわしを庇い亡くなってしまったのじゃ... その恩に報いたいと思うのじゃ。だから、この町ではわしは異界人を助けようときめたのじゃ。 まあ、あんたらが初めてだがな」
思ったより深い理由だった。ただのお人よしだと思っていたのだが。
「まあ行こうか」
ルージャは静かに笑った。
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「ここが学園か...」
思ったよりデカい。いかにもお嬢様とかが行きそうな学園だ。
当然、中も広い。
中をしばらく歩くといかにも教会ですという感じの建造物が見えた。近くには気持ち悪い仮面を付けた人が見えたので俺達は見なかったことにした。
「魔法の適正を調べるからの。担当はここにいるケースディじゃ」
「「「え?」」」
一瞬何と言っているのかわからなかった。俺達は前に、嫌というほどこの世界の基礎を叩き込まれてトラウマのレベルに達したので、正直関わりたくないのだ。
「またまたよろしくぅ」
「「「嫌だ~!」」」
俺たちは叫んでしまった。こういうときだけ三人の息が合うという悲しさを感じる。
「じゃあさっそくできた身分証を渡すね。」
順に渡していく。見るとやはりクロガミになっていた。もういいか。
「そしたら、魔法の適正を見ていこう!」
ケースディは笑顔で水晶を取り出した
「はい...」
俺たちは力無い返事をした。
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ケースディの詳しすぎる解説を要約すると、こうなった。
湊改めミナトは水に大きな才能を持っているらしく、魔力量も学園の平均の3倍はあるという。そのため持つ属性の少なさを嘆かれる結果となった。
しかし、ミナトは魔力量の多さから、この学園での無試験編入を果たしたのだった。
カオルは光属性の中でも珍しい回復魔法が使えることが分かった。他には火にも才能がある。
この結果、カオルは学園に入ることを決め、さらに才能が認められ、カオルも無試験編入をすることになる。
俺はというと、能力を二つ持っていることがわかった。
一つは、『ゲート』という場所と場所との距離を短縮するというもの。ただし、自分から半径500メートル以内だけみたいだ。
聞いた感じだといい能力かもしれない。しかし、短縮するゲートを開くのに30秒位かかる。しかも、無駄に開いている間、目が光る。すばやい戦闘などがあったら全く役に立たない。
もう一つは全く分からなかった。ケースディ曰く、水晶が曇って見えないとのことだ。
俺は能力が分かるまで学園へ編入することになった。
ミナトとカオルは才能が認められたのに、俺だけ認められないことに劣等感を感じざるをえなかった。
俺は魔法が全く使えない。騎士の方を志願した。なのに魔法を習うことになった。『能力者だから』という理由で。
これから編入手続きをして、学園の寮で暮らすこととなった。だが、俺は少し疑問を覚えた。