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【マイルド】異世界 きまぐれぶらり旅~奴隷ハーレムを添えて~  作者: さとうねこ


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1-8 ゲラントヌスフ

ちょっと長くなりました・・10話までにヒロイン登場させたい。

「来るぞ」


エリオットがふいに立ち上がって剣を抜く。釣られて立ち上がって周りを見渡す。


「こっちだ」


エリオットが右奥を顎で示す。集中して何やら剣を握ってから、剣から光刃を放つ。

『華戦士』の技ってとりあえず光るから、夜の森では目立つこと甚だしいな。

木々を縫って近付いていたナイトゴブリンが一体切り裂かれ、地に伏せる。


「僕はここを死守する! 奥の1匹は頼んだよ」


エリオットは女達が休んでいるテントを守るらしい。

奥、と言われても良く分からないけど、テントから離れた位置にもう1匹いるということは分かった。

なんとなく1体目が倒れた方向に駆けていると、前方に影が動くのが見えた。あれか。


エリオットがピカピカと何かのスキルを使っているので、断続的に周囲が照らされる。

俺の相手をするゴブリンは剣を持っているようだ。

両手でそれを上段に構え、人間の剣士のような雰囲気を醸している。


振り下ろしてくる剣を盾でしっかりと受け止めてから、右から左へ剣を薙ぐ。

ゴブリンは後ろに引き、間合いを図る。

昼間のノーマルゴブリンよりもずっといい動きだな。


これがナイトゴブリンなのか。


先手はくれるようなので、突きを入れて牽制して、距離を詰めるとシールドバッシュ。

しかし一瞬怯むだけで、体勢が崩れない。何かしているのかな?

追撃で不意討ちに蹴りを入れてみるが、痛そうな声を上げるだけで崩れない。


体幹みたいなものがしっかりしているのかな。

とにかく先手先手でいこう。


盾で押し、剣を振るい、隙があれば足で蹴りを入れる。

何度か繰り返したところで、ゴブリンの方から剣を出してくるようになる。

何度かそれを盾で受け止めた後、中段に雑な斬り込みを入れてきたところでこちらの剣を合わせ、つば競り合う。


片手と両手だが、膂力はこちらが上だ。

ギリギリと押していき、相手が更に力をこめてきたところで、剣の力を抜いて盾を押す。

このカウンターが綺麗に決まって体勢が崩れ、止めに剣を振り下ろす。


「やあ、片付いたようだね」


エリオットが声を掛けてくる。息が上がっていて返事ができない。

これがナイトゴブリンか?

キツすぎるだろう・・。


「そいつはナイトゴブリンリーダー。上位種ってやつさ」

「じょ・・い種? これが・・そ・・か・・」


息を整えつつ、ナイトゴブリンリーダーの遺骸を見下す。

上位種にもなると、ああいう人間っぽい動きもするようになるのか・・。

やはりソロでの遠征は厳しいな。


「通常のナイトゴブリンが3体、リーダーがそいつ、そして斥候役のナイトゴブリンスカウトってやつが1体いたよ。計5体・・まあはぐれかねぇ」

「ふぅ・・ここはゴブリンの森近くだろう? どこかに仲間がいる可能性も高いんじゃないのか」

「ナイトゴブリン系統はもともと、あまり群れずにはぐれのパーティが多いんだけどね。仲間を呼んだりもしなかったし、この辺を襲うのははぐれの可能性が高いよ」

「そうか・・」


自分の倒したゴブリンリーダーの胸を裂き魔石を取り出す。

解体も昼間、下手すぎるとマリーに仕込まれたばかりだ。

筋肉の筋に沿って刃を入れて、魔石をひっかける様に肉をこそぎ取ると楽で早い、らしいのだがなかなかうまくいかん。

筋肉の筋に沿って、というのがまず、個体によって違うので難しい。


リーダーはちょっと今までのゴブリンよりも胸板が厚く、肉が硬い。

より難易度が高い。


結局リーダー1体を処理しているうちに、残りはエリオットが4体処理し終えていた。


「魔物の解体はまだまだだね」

「・・精進するよ」


その後、エリオットが呼びに行くまでもなくマリーが起き出してきて、交代となった。

女性陣ばかりを残すことにちょっとした不安というか、罪悪感のようなものがあったが、しっかりと休息を取らないと明日に差し障る。

1人用テントに入ってすぐ、睡魔に身を委ね、意識を手放した。



************************************



テントの端から薄っすらと明かりが洩れる。

ここは・・そうか、野営したんだっけ。


「・・おはよう」


入口を持ち上げて外の様子を窺うと、マリーやパッチがたき火のあたりで何やら作業をしており、一瞬こちらに目を向けた。


「おはよう」

「おはようございます」


「何か手伝うことはあるか?」

「んー、とりあえず顔でも洗ってきな。それから芋の皮でも剥いてもらおうかね」


マリー達は朝食の準備をしていたようだ。

後番の人はそういうこともするのかと勉強になる。

近くの水場で顔を洗い、装備も身に着けて手伝いをする。


朝飯は芋と干し肉のスープ。あと干した団子のような携帯食。

トリシエラが付近から採取してきたという野草のサラダもある。

このサラダ食えるのか? 大丈夫なんだよな?


「昨日はナイトゴブリンが出たって? あたしたちのときは特になにもなかったよ」

「おお、そうかい。君たちが無事で安心したよ」


マリーがエリオットと情報交換を始めた。


「エリオットがテント前から動かなかったからな。愛されてんな」

「・・馬鹿」


トリシエラが赤くなって俯く。


「はっはっは、当たり前じゃないか」


エリオットはどこ吹く風だ。


「あんたねぇ、襲撃があったら起こしてもいいんだからね? というか、5匹も来たなら起こしな」


マリーが呆れている。

そうか、別に起こしても良かったのか。

エリオットにその気がなさそうだったから、そういうものなのかと思ってしまった。


「あの程度なら僕が守るさ!」

「それでも万が一があるだろう? あたしたちの安眠よりも、身の安全を考えてもらいたいね」

「僕が守るから安全さっ!」


嚙み合わない二人。普通は夜襲があったら起こすのだと、俺の心のメモに記しておく。


「それで、昨夜のナイトゴブリン達はどれくらいの値段が付くんだ?」


エリオットたちのコントを終わらせるために、話題を振る。


「そうだねぇ・・。ナイトゴブリン4体で銅貨60枚以上、リーダーだけで40から50枚くらいじゃないかな?」

「おぉ。リーダーはかなり高値だな」

「ゴブリンは基本的に、身体の大きさと魔石の大きさが比例すると言われているね。そして上位種だと質も良いんだとか。昨日のリーダーならその程度にはなるさ」


良い情報だ。5人で分けても銅貨10枚弱に・・あれ? なんか少なく感じるな。


「今はゴブリン種の魔石は右肩上がりだから、もっと高い可能性もあるよ。おめでとう、ヨーヨー」


マリーが言う。


「あれ? おめでとうって、俺が貰っていいのか?」

「まあ、あの時は明らかに君一人で戦っていたからね? 君に所有権があるはずだ」

「そうなのか。それは有難い」


ゴブリン4体を相手にする方が大変だと思うけどな。運よくリーダーと1対1で戦えたのが幸運だった。


「そういう意味でも、僕がパーティを起こしていれば分割になっていただろうから、感謝したまえ!」

「なんか感謝しづらいんだけど・・まあ、うん、ありがとう行動イケメン」

「イケ・・? なんだい」

「おっと。えーと、格好いい男性って意味かな。エリオットにぴったりな言葉、だろう?」

「そうかい! まさに僕を指す言葉だねぇ」

「はぁ・・馬鹿らしい・・」


マリーは苦労してそうだな。


「今日はどうするんだ?」


出発前の予定では、ゴブリンの森周辺の状況を見つつ、外周部を回るか森に入るか、あるいはもっと奥を目指すかを決めることにしていた。


「そうだねぇ、もうちょっと様子を見たい気もするけど・・。稼ぎ時だし、浅いところまで森に入ってみるかい」

「大丈夫なのか?」

「浅い所なら大丈夫だと思うけどね。他のパーティとよくかち合うのが難点かな」

「その分、いざというときに救援を受けられそうだけど」

「そうだけど、それは救援を求められる可能性もあるってことだよ」


とマリー。


「嫌なのか?」

「そういうのはトラブルの元だからねぇ・・。ま、あんたはそういうのを含めて学んでみればいいさ」


反対というわけではないらしい。

黙って話を聞いているパッチと、興味なさそうに飯を食うトリシエラも特に意見はなさそうだ。

というか、トリシエラはエリオットあたりと小声で話しているところをちょくちょく見掛けるんだが、パッチは必要がなければ仲間内でもほとんど話さない。

たまに本気で存在を忘れそうになるが、あれで大丈夫なんだろうか。


「・・なんですか?」


つい見ていたことがバレたのか、パッチが心なしかジト目になってこちらと目を合わせる。


「い、いや。パッチたちも何か意見があれば聞いておきたいなと」

「特にありません。マリーさんが必要なことは言ってくれています」

「そ、そうか」


大丈夫なんだろう。目を逸らしておく。


「はっは、パッチは頭が良いからねぇ。本当に必要な場面ではきちんと意見を述べてくれるから、安心したまえ」

「・・おう」


トリシエラが容器を空にして、ごしょごしょとマリーに何かを告げている。

マリーがすぐに鍋をかきまわしているから、おかわりでも要求したんだろうか。

社会性欠乏者の性か、内緒話はなんとなく悪口を言われている気分になる。


森の入口をしばらく探ってから、昼前には森の中へと足を踏み入れた。

当然見晴らしが悪くなるので、お互いに気付かず遭遇戦というのもあり得る。

より気が抜けない。


「ちょっと止まっておくれ」


マリーがひょいひょいと木に登って辺りを見渡す。身軽だな。


「やっぱり、ちょっと気配がすると思ったら、北東少し行ったところに何かいるねぇ。ゴブリンかも」

「待ち構えるかい?」

「・・そうだね。近付いているようだから、この辺の開けたところで迎え撃とう」

「私は罠を仕掛けますね」


パッチは罠を作れるらしい。これも勉強と、後ろから付いて行って見学する。


「・・手が空いているなら、手伝ってください」

「はいよ。何をすればいい?」

「こっちのひもをそっちの枝に・・いやそれじゃなくて、もっと上の太い・・それでいいです。結んでください」

「結び方は?」

「なんでもいいですよ」


2本ないから簡単な固結びにできない。とにかくグルグルと巻き付けて体裁を整える。・・俺は不器用なんだ。

パッチは結び目を見て一瞬固まってため息を吐いたが、それ以上何も言わなかった。


「・・周囲の警戒をお願いします」

「・・分かった」


匙を投げられたようだ。


「そろそろ近付いて来たよ! パッチは戻ってきな」


マリーが木の上から声を上げる。パッチは手早く罠を完成させると後ろに戻っていった。

単にゴブリンの進行方向に糸を張るだけの簡易罠がほとんどだ。トラバサミのようなものも1つ設置していた。


「来るよ!」


前線にエリオット、俺、そして木の上からマリーが降ってくる。パッチが何かを投げて、破裂音がする。グレネード的な魔道具だろうか?


「あれは単なる信号弾だよ。注意を引き付けているのさ」


エリオットが落ち着いた様子で解説してくれる。

これだけ準備したのだから、確実に罠のある方角から来てくれるように誘導している、ということかな?


ギィギィ、キィキィと叫び合う声が聞こえて木々が揺れる。

先頭の1匹は張ってあったヒモに引っかかったらしく盛大に転んだ。

脇にいた1匹は叫び声をあげて足を抱えている。トラバサミかな?


「光、斬・・刃っ!」


エリオットの剣が輝きを増し、いつもより大きな光刃がゴブリン達を襲う。

真正面はエリオットと後衛で対処できそうだ。それなら俺が警戒すべきは迂回ルート。

案の定、罠に足を取られる先発隊を見て、何匹かのゴブリン達はその脇をすり抜けようと迂回して近付いていた。


「思ったよりも数が多いね! 近くに仲間もいたようだ、ごめん」

「問題ない!」


マリーが不手際を謝りつつ、短剣のようなものを投げて動きをけん制している。

そんな技もあるのか。

森に入ってから、エリオットのパーティが本気を見せてきた感じがあるな。


「右に回った奴は俺がやる!」


陣形の右に居るのだから当たり前といえば当たり前のことなのだが、一応自分の動きを伝えておく。

右からは1匹の短剣持ちゴブリン、その奥から最低2匹続いてきているのが見える。

弓っぽいのは見えないから、とりあえず一匹ずつ処理していけばいいだろう。


半身になって左手を突き出し、盾で受け止める構え。

短剣ゴブリンはそれを見て、フェイントを入れつつ回り込もうとする。想定していた動きなのでそちらに剣を出して牽制し、無理やりシールドバッシュに巻き込む。

蹴りを入れて動きを止めたら振り下ろし。うまくいった。


後ろから棒と剣を持ったゴブリンが2匹。ソロなら魔銃を使うタイミングだが・・。

引きながら敵に囲まれないようにして、カウンターでダメージを与えるようにして粘る。

粘る分には問題がなかったが、さらに後ろからゴブリンが近付いてくるのが見えた。


まずい、もう一匹増えるとどうなるか分からない。


そこで、後ろから飛んできた矢がゴブリンの足を射抜くと、一瞬の空白時間が生まれる。

その間に覚悟を決めて、剣使いを猛撃する。棒ゴブリンが回り込んで横から殴り付けてくるが無視する。

棒にトゲのようなものを付けているのか、思った以上に痛い。泣きそうだ。


一度腰をひねって棒ゴブリンを牽制して、また剣ゴブリンを斬る。

この動きがちょうどフェイントのようになったみたいで、剣ゴブリンのガードが失敗し、おびただしい血しぶきを散らす。

棒ゴブリンはこちらに完全に気を取られていたらしく、後ろから飛んできた矢に頭を射抜かれて倒れる。よし。


その瞬間、右手のあたりが熱さに包まれる。


なんだ? 斬られた!?

いや、これは単純に燃やされている!


最後のゴブリンに振り向くと、棒のようなものをこちらに向けている。


いや、棒ではなく杖なのか?


「ゴブリンマージだ、回避行動をとれ!」


誰かが叫んだ。

盾を突き出し、ジグザグに斜めに動きながら近づく。

回避運動と言われてイメージできたのがこれだったのだ。


ゴブリンマージは立て続けに2発の炎球を放ったが、運よく脇をすり抜けて避けられた。


勢いのままに盾で殴り付ける。

右手はやけどが酷いのかじくじくと痛むが、構わず剣を突き入れる。


身を引いて逃れようとするゴブリンに、何度も盾で殴り付ける。

やがてぐったりと動きが鈍った相手の首を斬る。

刎ねるというよりも、潰す感じになったが、止めを刺した。


左手の仲間を振り返ると、エリオットが剣を振っているがトリシエラとパッチがこちらに注目していた。あちらもほぼ終結していたか。

振り返るまで、仲間がどういう状況なのか確認していなかったな。興奮すると、我を忘れて戦闘に没入してしまうフシがある。反省しよう。


マリーは周りを見渡して、見逃した敵がいないかを確認しているようだった。


「こっちは終了だ、状況は?」

「大丈夫、エリィが相手にしているリーダーが最後」


トリシエラが落ち着き払った様子で答えた。


「おいおい、援護しなくていいのか?」

「あの程度に負けない。それに組み合いに弓では援護できない」

「マリーさんが警戒してますから」


パッチも落ち着いている。


「そうか。いや、俺は全然周りの援護とかできなかったな。すまなかったな」

「ん、視野が狭い。でもよくやったと思うよ」


トリシエラが俺を褒めるだと? 違和感がすごいな。


「・・何?」

「いや、何でもない。お、エリオットの奴も終わったようだぞ」


心配でチラ見していたが、最後にピカピカ光って何かをしたら、ゴブリンが倒れていた。

倒れる間際にゴブリンがけたたましい鳴き声を上げた。

あれも彼の『華戦士』のスキルか? 本当にいっつも派手だな。


「怪我はないですか?」

「ああ、右手を焼かれてかなり痛い。やけどって治療できるか?」

「できます。少し待って」


パッチが何かを準備して近付いてくると、右手をしげしげと眺める。


「表面だけですね。火力も弱いですが、広範囲なので治療が必要でしょう。この薬を塗ってください」


渡された箱には、ねっとりとした塗り薬が詰まっていたので、左手ですくって塗っていく。

その間、パッチは手をかざして、癒術を発動すると何やらブツブツと言っている。

「あれっ?」とか「ああ~、そういう」とか聞こえる気がするが、医者のつぶやきほど怖いものはないので聞かないでおこう。


というかマジで怖いから黙ってやってほしい。


マリーとエリオットはゴブリン達の死骸を集め、魔石回収を始めた。

あちらは無傷かな?

流石だな・・。


「おおっ、大型とスカウトがいるぞ。こりゃ悪くない稼ぎになったね」

「こちらはノーマルばかりさ・・リーダーもいたが」


中央はノーマルゴブリンで陽動にして、左に上位種、右に魔法使いを配置していたのかな?

ゴブリンも色々と考えるもんだ。


大型ゴブリンは、その名の通りゴブリンを一回り大きくした、純粋な上位種といったところだ。リーダーのようにフォルムが引き締まっていないし、技術も荒いが、力が強い。

ゴブリンスカウトは緑色のゴブリンで、動きが素早いのが特徴だ。名の通りに、斥候役をしているのかは不明だ。


俺が相手をしたゴブリンマージは魔法使い系で、成長すると緑色をしていることが多いらしいが、今回のはノーマルに近い黄土色の肌をしていた。

それほど成長していなかったのだろう。

いずれも魔物買取センターの資料で予習はしていたが、実際に見るのは始めてだ。

ゴブリンの森という名前に恥じぬゴブリンパラダイスだ。


と思っていると、エリオットとマリーが深刻そうに話し合いをしていた。


「・・やっぱり、あれかねぇ」

「間違いなさそうだね」


なんだ?


「上位種の割合が多く、統制が取れている。そして最後の警戒音・・結論だけ言えば、巣があるだろうということさ」

「巣・・」

「最後の警戒音、あれは仲間に対して危険を報せるものだ。単なるはぐれパーティなら、最後にリーダーがそれを発する理由がない。どこかにまだ仲間がいる可能性もなくはないけどね」

「ふぅむ」


「この辺は入り口に近い。巣があれば掃討されているはずだし、少なくとも最近まではなかったことは確認している」

「ということは、ブラッドスライム騒ぎで警戒が薄くなっている隙に、新しい巣が作られた?」

「・・と、いうことなんだろうねぇ」

「じゃあ掃討しちまった方が良いのか?」

「そうだねぇ・・少なくとも怒られるということはないかな」

「ん? その言い方だと、巣を掃討すると怒られることがあるのか?」

「・・君、もう少し勉強しといた方が良いかもね。まあソロだからそうそう一人で巣を掃討するなんてことも考えられないけど、ね」


どういうことなんだ?

頭にはてなマークを浮かべていると、マリーが一度戻って飯にしようと声を掛けてきた。

後で、詳しく聞いておいた方がよさそうだ。


森から出て、休憩所に戻るとスープ作りが始まり、保存食を溶かしながら食べる作業に移る。


「それで、さっきの話を続けてもらってもいいか?」

「ん? ああ、巣の掃討の話だっけ?」

「そう、それ」

「そうだねぇ。君、ゴブリンの森の北側にはいくつかの巣があるのは知っているのかい?」

「一応、センターの資料で目は通したけど」

「あれは掃討できないのではなく、していないというのが実情なんだけど、理由はわかるかい?」

「魔物の巣を放置しているのか? ・・駄目だ、分からん。なんでなんだ?」

「ゴブリンの森の北には平原があって、そこと周辺が湧き点のポイントとされている。だからまあ、ゴブリンの森の北からゴブリンが湧いてくると考えてみたまえ」

「ふむ・・なるほど。まあ、ゴブリンの森の北側は絶好の巣作りポイントになりそうだっていうのは、分かるけど」

「そうそう。じゃあ、仮に君が湧き点から生まれ出てきたゴブリンだと想像したまえ」


転生したらゴブリンになっていた件。みたいな小説はありそうだな。

あの湧き点もなんか怪しいし、あの神っぽいガキに近しい何かが作っていたとしても驚かん。


「想像できた? さて、君は森に入って、巣を作りたい。その前に、エサを採るためにも森は絶好の場所だよね。なんとしても森に入りたい・・しかしそこには大きな巣がある」

「あっ・・」


ちょっと話の流れが見えてきたぞ。毒を以て毒を制す的な話か!


「思い当たったかい。第一に、適度な巣が北側にあることは、湧き点から無造作に湧いてくる新人ゴブリン君たち、特にケンカっぱやいはねっかえりから順番に駆逐してくれるわけだ」

「なるほど・・」

「いちいち、ゴブリンを監視して1つ残らず始末していたら、いくら人材と金があっても足りないからね。お偉いさん方も工夫するのさ」

「第二は?」

「今言ったことの裏返しかな。駆逐する金がない。だから程良く管理して、スラーゲーにとって望ましい形を維持する」

「管理っていうのは?」

「いくつか巣がある、と言ったよね?これが巨大な1つの巣になると、危険なほどの上位種が生まれたり、規模が大きくなったりして制御できなくなる恐れがある。だからそうなる前に、ほどほどの大きさになるように剪定する」

「ほう・・」

「そして、ゴブリンの領域そのものが広がりすぎると、管理しきれないし不測の事態もある。だから、地域的にゴブリンの森周辺から出さないようにする」

「それはそれで大変そうだけどな」

「そうだろうね。新人ゴブリン達全員が森に行くわけではないから、他の方向に行ったゴブリンを監視して、駆除する必要がある。湧き点を管理できず、他領でゴブリン被害が拡大したりしたら、領主の面子も丸潰れだしねえ」


この世界の領主って、大変そうだな・・。

魔物は絶えず生まれてくるから、常時戦時体制のようなものだろうし、そのくせ魔物のせいで生産に当てられる土地は限られている。よくこれで成り立っているわ。


「そうか、それで緻密な管理が必要なのに、個人が好き勝手に巣の掃討までしてしまうと、計算が狂うから怒られるわけだ」

「そう。傭兵団を登録するときは口を酸っぱくして言われるらしいし、個人傭兵たちも基本的にある種の常識として弁えているからねぇ。大規模パーティを組んで巣を目指す、なんて募集は目にしたことはないだろう?」

「言われてみれば、そうかもしれないが・・。規約などに書いておいて欲しいと思うよ」


「そうだねぇ。規約の『法に定められた事項のほか、一定の手続きに従って公告された要請、命令に従う事』という項がそれに当たるみたいだね。多分、なんとかいう名前で要請なり命令になっていて、傭兵ギルドの資料のどこかに書いてあるんだろうとは思うけど」

「なるほどねぇ。まあ、確かに個人傭兵レベルならソロで巣を狩ろうとするやつはいないだろうし、大っぴらに人を集めはじめたら注意すればいいのか」

「そういうことかねぇ」


「何にせよ、助かったよ。まだまだ学ぶことがあると知ったよ」

「その姿勢はいいね。お偉いさん方の言うことなんか知ったことか、という姿勢の者も少なからずいるからねぇ」

「えええ・・捕まったりしないのか、そんな感じで」

「問題になる前にギルド側で対処することが多いからね。巣の話にしろ、具体的に刑罰に問えるかというと難しいし。でも、配慮しないと目を付けられてスラーゲーで活動できなくなるから、注意すべきだ」


ああー、罰則はないけど行政指導で・・みたいなことか。


逆らってもいいけど、そうしたら営業に必要な許可が次回は何故か下りないかもしれませんよ?

ニッコリ、みたいな。


なんか地球とやっていることは何も変わらないな。

親しみがわくと思えばいいのか、ファンタジーな世界でも人間は生々しいなと嘆けばいいのか。


「・・重々考慮するよ」

「はっはっは」


それから食休み中にエリオットたちがイチャイチャしている内に、ステータスを確認しておく。


************人物データ***********

ヨーヨー(人間族)

ジョブ ☆干渉者(10↑)剣士(3↑)なし

MP 12/12

・補正

攻撃 G+

防御 G

俊敏 G+

持久 G

魔法 G

魔防 G

・スキル

ステータス閲覧Ⅱ、ステータス操作、ジョブ追加Ⅱ(up)、ステータス表示制限

魔撃微強

・補足情報

なし

***************************


どうやら『干渉者』と『剣士』のレベルが1つ上がった・・え?


ジョブ追加Ⅱ、キター!

レベル10で開放だったのか。

これはもしかしたらジョブ追加Ⅲも期待できるかもしれん。


さっそく「なし」となっているジョブ3を変更して、選択候補を表示。


旅人(3)

市民(1)

ごろつき(1)

サバイバー(4)

短剣使い(2)

魔法使い(1)

魔銃士(5)

槍使い(1)

学者(1)

剣士(3)

戦士(1)

翻訳家(1)

遊び人(1)

盾士(1)


『遊び人』までは、出発前に獲得済みだったジョブだ。

今日の戦闘で、『盾士』というものを獲得したらしい。

まあ盾は結構使っていたから、そういうジョブが取れても変ではない。

『戦士』、はまあ、実戦経験を積んできたからというか、実戦しかしていないような状態だからその辺のことだろう。


『翻訳家』は・・こちらの言語が、地球でいうところの何だろう? という思考は結構していたし、その辺で取れたのかなぁ。


ちなみに、名詞に出てくる横文字、例えば「ゴブリンリーダー」の「リーダー」などは、そのままの名前ではなく意訳だ。

こちらの世界の古代帝国語というやつで「長、率いる者」を指すところの「ゲラントヌスフ」という単語が名称になっている。


こちらでいうと、「ゴブリン・ゲラントヌスフ」と言われているわけだ。

この古代帝国語、この周辺の諸国で一種の国際共通語のようになっている。

もう滅んだ国の言葉だし、政治・宗教の要所で使われるという類の言語のようだが、庶民にもある程度浸透している。


地球でいうと英語かなあ・・と思って意訳して、自分の中では「ゴブリンリーダー」と理解しているけど、使われ方としてはむしろ地中海世界のラテン語なんかに近いのか?と思う。

まあラテン語なんて分からないから無視だ、無視。


思考するときはまだ地球の、というか日本の言葉でしているので、こういう意訳問題が発生するのだが、それをグルグルと頭で考えているところが翻訳の経験としてカウントされたのかもしれない。

 

分からないのは『遊び人』だ。

遊んでねぇぞ。

こっちの世界に来てからむしろ勤労すぎてちょっと気持ち悪く感じるレベルで働き詰めだ。


思い当たるところとしては、あれかな。

普通はほとんど変えない、人によっては一生変えないジョブを、必要に駆られて、または面白半分でコロコロ変えているからだ。

どのジョブも長続きせず、飽きては変える。しかも普通の人はそのたびに金も必要になる。

そりゃぁ~とんだボンボンだ。金をもてあました神々の遊びだわ。

遊び人だわこりゃ。

認める。

認めますわ。


とりあえず今は戦闘力が欲しい。

できればババーンと放つスキルも欲しい。


候補としては、汎用性が高そうな戦闘職である『戦士』。

いつもお世話になっている盾関係を強化できそうな『盾士』。

の2つかな?


レベルの高い『サバイバー』か『魔銃士』を取ってステータス補正に期待する、というのもある。


ただステータス補正というのが、実際どういう働き方をするものなのかをきちんと調べていない。

この世界の住人としてはかなり基本的なことっぽいので、エリオットに訊くのも憚られる。

たぶん常識を知らない馬鹿認定されているだろうけど、あまり度が過ぎると何かおかしいと思われるかもしれない。

そういうのは出来れば回避したい。


次回の図書館案件だな、ステータス補正の効果に関しては。


「よしっ」


決めた。これにしよう。ささっとジョブ3を設置すると、最後にもう一度ステータス閲覧で確認してから、腰を上げ出発の準備を始めた。



1-6を加筆いたしました。


端的に要約しますと「ゴブリンの持っていた剣は粗悪品だったので捨てた」です。

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― 新着の感想 ―
遊び人……いやまあ、無償でバンバン変えられるんなら始めのうちは固定での増加を考えずに変えてったほうが良さそうだしね 適正とかそういうのも掴めるだろうし、手札が増えるのは良いことだ。使う時に効率よく変…
長文になりすいません。 【良い】 じわじわ強くなってきてますね。 序盤はどうしても持ち金がゼロになったりカツカツですが装備は更新されて強くなってるのでこの繰り返しのじょじょに前に進めている感覚が良いで…
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