2-44 魔具士
クイツトから壁の外にでると、大きな街道が伸び、途中で西からまもなく北へと街道の向きが変わる。ちょうどテーバ地方の北を通る形で、東西に大きな街道が通っているので、それに合流するためである。
だが、今回は主要な街道が北に転進するところで離脱し、そのまま西に進む。そしてクイツトから1日ほどの位置にあるのが、フィリセリアという小さな街だ。
のどかな平地に囲まれ、土地も豊かだという。少し西や南に足を伸ばせば、豊かな実りをもたらしてくれる森にも事欠かない。テーバ地方から運ばれてくる魔石もあり、燃料不足の心配も少ない。
が、このフィリセリア、それらの好条件を一蹴してしまうほどの悪い部分がある。
テーバ地方に近い。
これである。実際にはテーバ地方から魔物が抜けてきてパニックになることはほぼないらしいのだが、イメージというものがある。残るのはどうしても土地に愛着のある人、つまり昔から家族で住んでいるような住人たちだけになる。しかも、年頃の若者は一攫千金を夢見てテーバ地方に旅立ったり、逆に安心を求めて領都エインセリアに旅立ったりしがちなのだそうだ。
これらの情報は、テエワラが街道をテクテクしながら一通り語ってくれた。たまに仕事で訪れるらしい。定期的に発生するのが、夢に散った若者の遺品を届ける仕事らしいが。
魔法についても野営の最中などにいろいろ質問させてもらった。
実際に使える魔法を見てもらいもしたが、テエワラの感想は「随分とまあ、片寄っているね」だった。
テエワラから見て俺の魔法のレベルは「中の下」くらいらしい。
下、つまり初心者枠からは脱しているだろうとのこと。
なかでも、防御魔法の練度は異常だと言われた。最近では普通に盾代わりにしてたもんね。だが火魔法のファイアアローや土魔法のケイブなんかは「遅いし、雑」だ、そうだ。
魔法を制御し、形を整えたり身体の周りを飛ばしたりする技術はなかなかのもので、それゆえに防御魔法が得意なのかもしれない、らしい。一方で魔法エネルギーみたいなものを込めるのは不得意で、魔力に物を言わせて威力を上げているが、効率が悪いのでもっと練習した方がいいと。
その過程で、魔力量の多さにも多少驚かれた。もちろん、『干渉者』のことは言わずに「生まれつき多い」ということにしておいた。どうなんだろうと思ったが、普通に納得していたようなので、たまにある話なのだろう。
闘技大会に出ることを話して、何か役に立つ技をと願ったら、「そんなもの自分で考えるのが魔法使いってもんだよ」と渋い顔をされた。だが、なんだかんだ一緒に考えるという形で1つだけ教授してくれた。どこまで役に立つか分からないが、楽しみである。
そんな旅路も折り返し地点に近づき、主要な街道から外れ、土が丸出しの細い、少しでこぼこした道を歩く。
残り1時間ちょっとで到着するだろうという場所まで来たころ、前方で何か動きがあるとサーシャが報告した。
「……少し遠いですが、この動きは……おそらく戦っています」
「相手は?」
「人……いえ、どちらか亜人かもしれません。馬車を囲むようにして人影があり、それに応戦しているようです」
サーシャが比較的高い木に登って「遠目」で偵察する。
テエワラを見ると、じっと真顔のままこちらを見返してきた。
「どうするんだい? とりあえず、任せるよ」
「そうだな……馬車が何者かに襲われているとして、助けてどうなる?」
「商人だとしたら、多少金は出してくれるかもね。でも、あんまり期待しちゃいけないよ。助けを求められる前に動くと、それを理由に金を出し渋る奴もいる」
「そうなのか」
「それに、万が一に厄介事に巻き込まれると大変なんてもんじゃない」
「……とりあえず、襲っている方が亜人なのかどうかを確認しようか。そうだったら加勢するか声を掛けて、人相手ならこっそり退こう」
「そうかい。じゃあ、それでいいよ」
テエワラが少し微笑んで頷く。問題ないようだ。
前に俺、後ろにテエワラとサーシャを護衛するような形で慎重に近づく。
俺にも前方の人影が何となく動いているのが見える距離まで来ると、サーシャが声を上げた。
「亜人、です! ティーモンドではないでしょうか」
ティーモンド。……どんなのだっけ?
「木で出来た人のような見た目をした亜人です。脅威度としてはゴブリンと同程度でしょうか」
「そうだね。ゴブリンよりも多才だが、動きはやや鈍い。やるかい?」
「とりあえず声を掛けよう」
馬車に向かって小走りで駆け寄りながら、ファイアボールを乱射する。
突然の乱入者にティーモンドたちが足並みを乱したところで、包囲の輪の中に飛び込む形で馬車に接近する。
「俺たちは個人傭兵だ! 助太刀が必要か?」
「おおっ、テーバの魔物狩りか? 頼んますぅっ!」
馬車の窓がガパリと開いて、中にいたおじさんが眼を輝かせて応答してくる。
「あんたが責任者か?」
「そうです、商人のテンパスといいます。お前たち、異存はないな!」
テンパスが馬車の周りで抗戦する護衛らしき人たちに怒鳴る。
「た、助かった」
護衛達は5人ほどで、周囲に2人ほど倒れている人もいる。
馬車は2台あったようだが、1台を壁代わりにし、荷物を積み上げてバリケードにして、なんとか応戦していたようだ。
テンパスが搭乗する馬車を護衛する態勢だが、馬車がまたデカい。
普通の馬車の倍ほどの大きさがあるのではないだろうか……。
「気を付けろ、奴ら魔法を使うぞ!」
護衛の中心にいた弓を構えた大男が警告してくる。
それを待っていたかのように、左右から土の塊が飛んでくる。
咄嗟にファイアウォールを展開して防ぐも、貫通して1つが腹に当たる。衝撃を感じ息が詰まるが、怪我をするほどではない。防御魔法が威力を削いでくれたのだろう。
「反撃するよっ!」
亜人、ティーモンドたちは包囲しているといっても、1つの方向に2~3体くらいで、あまり連携が取れている感じではない。少し離れている個体を合わせても、15体くらいだろうか。
助太刀をしなくても護衛たちで勝てたかもしれない。が、助けを求められたことだし一肌脱ぐか。
「防御魔法を使う! 弓でどんどん反撃してくれ」
土塊のほかにも、火球や水球も何個か飛んでくるので、防御魔法でこれを受け止めながら声を張る。護衛たちはほとんどが弓装備なのだが、バリケードを利用しながら敵の魔法を凌いでいたようだ。防御面での不安がなくなれば、本来の仕事をしてくれるだろう。
言っている間にサーシャが弓を放ち、一体がそれをまともに受けて蹲った。
「矢は効くんだな」
植物的な魔物なら効果ないかと思ったが、普通に腹に矢が刺さるだけで悶絶しているのを見ると、植物ではなく動物がベースなのだろう。
それを見た護衛たちもおそるおそる前に出てきて、矢を放ちはじめた。テエワラも態勢を整えて味方に魔法を掛けている。
散発的に飛んでくる魔法は防御魔法でことごとく迎撃してみた。
水や火の方が展開しやすいのだが、土魔法が飛んでくるときはサンドウォールで受け止めてやらないと貫通してくる。
大変だが、ちょっと防衛ゲームみたいで楽しくなってきた。
ほぼ完ぺきに魔法を迎撃していたところ、業を煮やしたのか体格の大きなティーモンドが2体飛び出してきた。が、味方の総攻撃を受けて針の山に。少し余裕のできた俺もファイアアローで攻撃してみた。
ティーモンドは身体を震わせながら崩れ落ち、もう1体は南の方向に逃走しはじめた。それを合図に、残りのティーモンドも南に撤退をはじめた。ティーモンドの死体は6~7体といったところか。半分くらいは倒せたのかな。
「いやいや、助かったよ魔法使いの旦那」
戦いが完全に終結したのを見計らって、馬車から商人、テンパスが降りてきた。
よれよれの服を着た、やせぎすの男だ。ビジュアル面は商人らしくない。
「ああ、間に合って良かった」
「ここで倒した亜人の素材は全て差し上げるんで……」
「ありがたく頂こう」
「……」
「……」
テンパスの差し出す利益はそれっきりらしい。微妙な沈黙が流れた後、横にいたテエワラがそれを破った。
「商人の旦那、どういう状況だったんだい?」
「えー、えぇ。まあ、いつも通りこの道を通っていたところ、狙ってたのかたまたまなのか、奴らの群れの中に突っ込んじまったようでして。いきなり四方八方から魔法で攻撃されたもんで、護衛にも被害が出ちまって大変だったんです」
「とりあえず、倒れてた2人は応急処置したけど。命に別状はなさそうだね」
「そうかい、そうかい! いや、不幸中の幸いですわ」
商人との交渉……雑談?はテエワラに任せ、亜人の素材を回収する。
皮、というか木のようになっている部分は売れるらしいが、剥ぐのが大変らしいので放置。胸を裂いて魔石を取り出す。
小さいが、球体といえる綺麗な形をした茶色の魔石だ。
「これ、そのままサーシャのマジックシールドの燃料にできないか?」
「できそうですね」
サーシャは魔石を腕輪の中に入れてみて、確かめている。どうやら使い物になりそうだ。
周りにいた商人の護衛らしき人たちも、黙って解体を手伝ってくれた。
「ところで旦那、何を商ってるんだい? 食料なら買っても良いかい」
黙々と作業をする俺たちを他所に、テエワラはテンバスと話を続けている。
「いや、私のところはちょっと特殊でね……」
「なんだい? 禁制品じゃないだろうね。あたしらを共犯にされたら困るよ」
「いや、いや。勘弁してくださいよ、姉御。違法なモノじゃないですわ、参ったな。これが、しがない奴隷商でして」
「……奴隷商か。個人でやってるのかい?」
ほう? 興味が湧く話をしているじゃないか。作業の手を休めて、そっと耳を傾ける。
「主に街の商館に仕入れをしてましてね。この辺を巡りながら、小さく商っておるわけですわ」
「もしかして、あんたの乗っていた大きな馬車はそれ用かい?」
「そんなとこです。一応訊いておきますが、奴隷はお入り用ですかい?」
「いや……」
「話を聞こう」
スラーゲーにいた回り込みじじいばりの機敏性を発揮し、むんずと商人の肩をつかむ。
商人、テンバスはやや面食らったようで目を白黒させながら、ぎこちなく頷いた。
「え、ええ……旦那、良いですが、正直冗談半分でっせ? 今も奴隷を運んでたとこなんで、話は出来ますけどね。私はほんとに地方の零細商人ですもんで」
「あんたのところで買うと、不味いのか?」
「そんなことはありませんよ! 正規の許可証だって持ってます。でもね、要は隷属契約をして運ぶだけの仕事しかしてないもんで、奴隷への教育とか、そういうことは一切してないってことで」
教育をしていない、か。何か問題でもあるだろうか?
「ご主人様、奴隷としての教育がなされていない場合、反抗的だったり奴隷法について無知がゆえにトラブルを起こしたりという問題が生じます。それなりにリスクがあります」
「なるほど……」
「もしやそちらのお嬢さんは奴隷で?」
「さあな。だが、2人旅は厳しいから、そろそろ戦闘奴隷でも買おうかという話をしていたんだ。渡りに船だと思ったんだが」
「戦闘奴隷ですか。今、馬車にいるのは周辺の村落で暮らせなくなった者たちですから、戦闘奴隷はいないと思いまっせ。確認してみます?」
「いや、ちゃんとした戦闘奴隷を買うほどの金はないから、素質のある者を育てようかと思うのだが」
「ふぅん、素質ね。とりあえず確認だけします?」
テンバスも多少乗り気になったようなので、馬車に移動して商談することとした。テエワラは興味ないとのことで、出発の準備を任せた。
解体をサボった分、交代ということで丁度良かろう。
テンバスの乗っていた大きな馬車に乗り込むと、奥には何も置かれていないスペースがあり、そこに人が押し込まれていた。全員が薄茶色いローブのようなものを被っており、その人相や表情を窺い知ることは難しい。ここにきて、想像上の奴隷っぽい奴隷に会ったという気がする。
「いや、いや。狭いのは我慢してもらっとりますけんど、そう悪い扱いをしてるわけじゃありませんよ」
テンバスはヨーヨーの視線に気付いたようで、何やら言い訳のようなものをしながら奥へ進む。
「この中で、戦闘の経験があるっちゅう人はいたかい?」
「……」
奴隷たちに反応はない。
「うーん、ま、そうかもなあ。どうします、素質ってのがどんなものか、私には分かりませんが」
「少し顔と身体つきを見ても良いか? 一緒に旅をしてもらうから、健康状態が良くなければ困る」
テンバスに手伝ってもらって、奴隷の情報を集める。とりあえず書類にまとめているという基本的な情報を持ってきてもらって、その間に健康状態を調べるという態で身体を多少さわる。
この小芝居の目的は1つ。ステータスを見たいのだ。
*******人物データ*******
?(緑肌族)
ジョブ ?
MP ?/?
・補正
?
・スキル
聴力強化?
・補足情報
?に隷属?
*******************
相変わらず、こんな感じだ。あまり情報は入らない。
ただ、何人かジョブが見えた人がいる。
*******人物データ*******
?(人間族)
ジョブ 魔具士
MP ?/?
・補正
?
・スキル
?
・補足情報
?
*******************
*******人物データ*******
?(?)
ジョブ 市民?
MP ?/?
・補正
?
・スキル
?
・補足情報
隷属対象なし
*******************
*******人物データ*******
パオロ(トゥトゥック族?)
ジョブ 農民
MP ?/?
・補正
攻撃:E?
俊敏:G?
?
・スキル
?
・補足情報
?
?
*******************
これである。
魔具士、市民?、農民、である。魔具士ってのがめっちゃ気になるんですけど!
魔具士の人と農民の人はどちらも、左奥にいた小柄な人物で、身長の小さいグループのようになっているところにいた。
市民? は手前にいた大柄の男である。一番戦えそうな体格なのだがジョブは市民?かあ。「?」が付くけどまあ、市民なのだろう。除外だ。
「あんた……えーと、テンバスさん。この小柄な集団は子供か?」
「ええ、そう思います。もし買うならそうやなあ、子供なら金貨1に銀貨50ってとこかいな」
ここでサーシャから異議が入る。
「テンバスさん、戦闘経験もなく、困窮した子供でしょう? ならば、その半額で充分買えるはずです」
「……ええ、そうかもしれませんねぇ。ただね、中には器量よしもいるし、まだジョブを確認してない子も多いわけですわ。もっと高く売れるかもしれんのです。せめて金貨は頂かないと」
「なら金貨1枚で充分ですね?」
「子供なら、良いでしょ。でも、大人ならその倍は頂きたいですわ」
「ちょっといいか? それなら、どの人が子供で、どの人がそうでないかを分けてくれ。金もないし、子供から選ぶとしよう。子供に素質がありそうな者がいなければ、話はなしだ」
そう口を挟んで、選別してもらう。
魔具士の人が子供に分類されるなら、購入を真剣に検討してみよう。顔が汚れているしローブだしで分かりにくいが、見てみたときに女の子っぽい気もした。不細工でなければこの際、可だ。
ジョブが気になるし、男でもまぁ検討はする。
「こんなところですわ。左が子供、ということでどうでしょう?」
狙い通り、魔具士の人は左の集団に入れられた。ついでに農民の人も。たしかに身長子供だと思うけど、トゥトゥック族って大人でも子供みたいな見た目なんじゃなかったっけ。大丈夫か?
「子供のみんな、ローブを取って顔を見せてくれるか」
左に集められた4人がローブをめくり、顔が露わになる。
……ほう。
魔具士の人、やっぱり女の子だと思う。それ以上に興味深いのは……アジア系の顔で、黒髪黒目である。顔は汚れていて髪がベリーショートに切られているので男女の区別が付けにくいが、やはり女性だと思う。子供に分けられたが、もしかしたら言うほど年少ではないかもしれない。
何かと言うと、すごく日本人っぽいのだ。顔が。黒髪黒目のせいでそう見えるのかもしれないが……。日本人は幼く見られがちだという話を思い出す。
『この言葉で分かるなら反応してくれ。助けられるかもしれないぞ』
「……?」
子供たちに向けて日本語で語り掛けてみるが、きょとんとしている。違うか。
とりあえず日本人の転移者というわけではなさそうだ。まあ、そもそもこの前会った転移者は金髪だったし、日本に片寄っている確証はない。だから日本語に反応しないことで転移者でないという証明にはならない。だが、逆に言えば転移者であると判断する理由もない状態。気にしなくて良いだろう。
「いや……なんでもない。さて、この4人のなかで、戦闘をしても良いと思うやつはいるか。俺は魔物狩りだから、育てて一緒にパーティを組めるようになる奴隷を探している」
「……」
子供たち?は互いに視線を交わしながら、特に何を言うでもない。突然のことで整理がついていないのかもしれない。どうしたことかとこちらも考えていると、サーシャが俺の前に出た。
「聞きなさい。あなたたちがどういう経緯で隷属契約を結んだのかは分かりません。ですが、ここにいるということは、何らかの理由があって故郷なり家族なりの元にいることができず、良い待遇であることを願って隷属契約をしたのでしょう。こちらにいる方は裕福ではありませんが、働いた分の贅沢を許すという方です。変なところに売られるよりも、ここで魔物狩りとして、戦闘奴隷として生きていくことを選択する者はいませんか?」
「……」
サーシャの演説に反応を示すものの、自分から何か言葉を発することがない。横にいる市民?の男が「待遇が良いなら、戦闘奴隷になりたいんだがな」と呟くのが聴こえたが、無視である。
市民ジョブの、ガタイがいいだけの男に金貨とか、ちょっとな。すまん。
しばらく沈黙が続くので、うちのチームに入るメリットを説明して営業してみる。
戦闘に参加するといっても、基本は前衛を俺がやるので前線で使いつぶされるということはない。というかそんなもったいないことはしない。
出来ればジョブのレベルを上げて、戦力になって欲しいが具体的なジョブは本人の希望通りにする。
将来のことは分からないが、今はそれなりに生活できており、儲かっているときはデザートなど付いて3食、主人である自分と同じ物が食べられる。というか奴隷の方が良いもの食ってることがある。何故だ。
……などなど。
熱弁をぶっていると、おずおずと手を挙げる者がいた。『魔具士』の女の子(多分)である。
「どうぞ、何か訊きたいことがあるのだろう?」
「……はい。ジョブを自由にというのは、戦闘系のジョブにしなければなりませんか? たとえば、戦闘の役に立つ道具を造ったり……」
「作れるのか?」
「多少は、ですけど……」
「役に立つと判断すれば、むしろそちらを専業にしてもらうかもしれない。その場合も、待遇としては十分なものを用意するつもりだ」
目当ての子が乗り気になってくれるよう、ここぞとばかりにプッシュする。ちょっと『魔具士』の子が気押されている。
「な、なら……あの……そちらのお姉さんの腕に付けているのは、魔道具ですよね?」
「ん? これか。そうだ。マジックシールドの道具だ」
「そ、そういったもの……を作るのは少し難しいけど、メンテナンスくらいなら出来るかも」
「おお! いいね」
『魔具士』が気になっていたのは事実だが、魔道具のメンテができるとすると大当たりだ。もう普通に買いたい。
「魔道具が作れるなんて聞いてないで。それで金貨1枚だって?」
テンバスが慌てて間に入る。
「つ、作れるわけじゃないんです……。おじいちゃんの作ってたのをちょっと見ていただけだし……」
「値段は交渉済みのはずですよ? それに子供が聞きかじった知識だけで、そんなに値段が上がるわけがないでしょう」
そしてサーシャにバッサリとやられる。
「まあ、まあ。テンバス殿、それでは色を付けて金貨1枚に銀貨20枚を支払いましょう。これで契約成立ですね!」
「なんやいきなり口調が丁寧になってません? ちょこっとモヤモヤするけど……まぁ~いいわ。街まで行って空ぶるよりはマシですわな。その値段で契約しましょ」
よしっ。
「そういえば君の名前は?」
「あ……アカーネです」
「……茜?」
「アカーネです」
ア・カ・ネと平坦な発音ではなく、ア・カーネという感じで、カーネはカが高音になってそのあと下がっていく感じ。つまり日本人の「茜」ではない発音なのだが、もう「茜」としか思えんぞ。
悶々としているうちに、テンバスが隷属契約を更新し、ステータスの補足情報で「隷属者」に「アカーネ」と表示された。代金は即金で支払う。よしよし。ついに、2人目の奴隷だ。
改めて見たアカーネのステータスは、こうであった。
*******人物データ*******
アカーネ(人間族)
ジョブ 魔具士(13)
MP 20/20
・補正
攻撃 N
防御 G-
俊敏 G-
持久 G
魔法 F-
魔防 G+
・スキル
魔力感知、魔導術、術式付与Ⅰ、魔力路形成補助
・補足情報
ヨーヨーに隷属
*******************
思ったより優秀。
既にサーシャさんよりもレベルが高い。そしてスキルがなんかいっぱいある。
いいね、これは拾い物だったという気がする。
と、いうわけで大変長らくお待たせしました。
2人目やっと登場です。
2章も大詰めです。
3章はある意味、ツッコミどころ満載の展開になるかもしれませんが……生暖かい目で見守って下さい。





