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【マイルド】異世界 きまぐれぶらり旅~奴隷ハーレムを添えて~  作者: さとうねこ


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1-7 キャンプファイアー

大人の事情でサブタイトルのスタイルを変更しました。

ゴブリン相手に剣を振り回す。

素振りの段階から感じていたことだが、重い。これでもニート中は腕立て伏せやダンベルを暇潰しに続けていたのだが、力任せに振り回すのでやっとだ。


魔銃で先制され、混乱しているはぐれゴブリンなら力押しで相手できるのだが、もうちょっと素早い魔物や人相手となると厳しそうだ。

剣マニアの夫を煽てて、もっと剣の使い方を教授してもらおう。


さて、魔銃の練習のほうは順調だ。

練習というか魔力操作の実験みたいになっている。


細かい試行錯誤は省くとして、開発した拡散弾の問題点が1つ。MP消費が激しい。

8つに分裂させるとして、1つ1つにMP1相当の魔力を込めると全体でMP消費8。

とてもまともに運用できるような消費ではない。

そこで色々と試した結果が、MP消費を3程度に抑える代わりに、威力と射程を犠牲にする方法だ。


拡散弾のキモは、「近接戦闘でも使える、狙わなくてもダメージや足止めを狙える」という点にある。

要は面攻撃できることが強みということで、1発1発の威力は度外視してみた。

それでも最低限の威力を確保するために、MP消費合計3が最低ラインだった。

射程は、魔力をエネルギーにするとき、早く燃え尽きる代わりに高威力にするという魔力操作が可能だったので、最低限の威力を確保するために切り捨てた。


近接戦闘用に欲しかった機能なので、射程は近接戦闘に利用できるレベルで良い。

まあ「ショットガンって攻撃力高いけど射程が短いよね」というゲームあるあるに引っ張られた発想なのだが。


こうして、何となく始まった「魔力操作で拡散弾を作ろう」計画は完遂された。


至近距離から全弾命中させれば、ゴブリンなら一撃で戦闘不能に追い込めることは確認したので、今後はいざというときの切り札として活躍するはずだ。


魔銃と剣を、異空間でやりとりしながら切り替える練習もした。

というか、異空間は剣が収納できるのだから、剣帯にそこまでこだわる必要はなかった。

でも後悔も反省もしていない。


戦闘の最初は剣を背負っておいて、手を回して剣を抜く。

これは必要だ。必要なのだ。

あまり人前で異空間を使うわけにもいかないからな。必然なんだ。



この日もゴブリン集団を3つほど壊滅させて街に戻ると、エリオットから「今日夕方に飯を食わないか」というお誘いメール(伝言)が残っていた。

二つ返事(伝言)をして、夕方までぶらぶらと時間を潰してギルドで待ち合わせた。



「やあ、元気だったかい!」


エリオットは元気に挨拶するが、ちょっと疲れた風だ。


「どうした、疲れてそうじゃないか。今日帰ってきたのか?」

「いや、少し前にね。その後臨時パーティでゴブリン狩りに行ったんだけど、これがなかなか難しくてね」


見れば後ろの女たちも同様に疲れた顔をしている。上位種にでも遭遇したのだろうか。


「とりあえず飯に行こう。俺のおすすめの店でいいか?」

「おや、ヨーヨーくんのおすすめかい? いいね」


すっかりゴブリンハンターとして暮らしている最近の俺は、北門付近の美味しい(かつ安い)店も色々と開拓していたのだ。ちょっと下町な雰囲気だが、エリオットとその奴隷たちなら楽しんでもらえると思う。


北門から西に何分か行くと、「ソラマチの酒屋」という看板の店に入る。

酒屋と名乗っているが、ここは飯が美味い。

米もパンも両方対応しているのも高評価だ。そして安い。なんでもスラム出身のオーナーらしく、低階級層に焦点を当てた店経営をしているようだ。


何度も通っているうちにオーナーに話しかけられ、訊いてもいないのに波乱万丈な半生を語られたことがある。

日本人は人が良さそうに見えるという話を聞いたことがあるが、長話をしても逃げなさそうな雰囲気でも察したのだろうか。

まんまと酒まで頼んで話の最後まで付き合ってしまった俺も俺だが。


スラムに関する気を付けた方がいいことなどの情報もゲットできたので、無駄ではなかった。

いまでは羊平の貴重な情報源の1つだ。


「おじさん、連れがいるから大テーブル席空いてる?」

「おや、ヨーヨー君珍しいな。友達いたんだね」

「・・」

「友達作れない人かと思って、色々話しかけてあげたんだけどね。はっは」


長話を聞かせられたのはそういう訳もあったのか。

親切なおじさんだ。半分は自分が語りたかったからだと思うが。


オーナーに導かれて席に座る。

流石に1:4に分かれるのはおかしいと思ったのか、マリーが羊平の右隣に座った。

エリオットは当然のように、パッチとトリシエラに挟まれた両手に花状態だ。すごく自然に奴隷たちがそういう配置につく。


「俺はスラブゲターの揚げ丼で。皆はどうする?」


エリオットたちは周りをキョロキョロと窺いながらメニューを決める。

メニュー表がないから、壁に貼ってある紙から探すしかないんだよな。

他の店にはあったりするから、メニュー表という文化がないわけではないと思うんだけど。低階級向けの店だからその辺が雑なのかな。


「それで、どうしたんだ? 今日会うことと何か関係するのか」

「いや、会おうと言ったのは彼女たちでね。今度また臨時パーティを組まないか、という話なんだけど」


エリオットではなく、彼の奴隷たちの方が? ちょっと意外だ。

あんまり好かれてはいないと思っていた。

首を傾げていると、マリーがおしぼりで顔を拭きながらため息を吐いた。オヤジくさいぞ。


「今日まで組んでたパーティが、大変でね・・男女のカップルだったんだけど」

「カップルなら、マリー達を狙うということもないだろう? 平和じゃないか」

「だけどねぇ、女の方が特にね。主人と奴隷っていう組み合わせを馬鹿にしていてね。特にあたし達は・・そら、いかにもエリィと情婦たちって感じがするだろう? 不潔だとか言って毛嫌いされてねぇ」

「・・なにが不潔なんだ?」


マリーとエリオットが顔を見合わせて笑った。


「ほらね、あんたはそういう性格・・価値観? だから楽なのさ。世間一般では、何人もの戦闘奴隷を情婦にしてただれた生活を送っているのは呆れたことなのさ」

「ただれた生活って。それで責められるのはエリオットじゃないのか? 奴隷を馬鹿にしていたと言っていたが・・」

「まあエリオットも馬鹿にされていたのかもしれないけどさ。やっぱり性奴隷っていうものを嫌うし、当たるのも奴隷の方になるのさ、そういう場合ね」

「論理的じゃないな、その女」

「ぷっ、そういうセリフ、いかにもモテない男って感じだよ」


マリーは愉快そうにまた笑った。

確かにモテてこなかったので何も言い返せない。

パッチとトリシエラも控えめに口元を指で押さえて笑っている。とりあえず元気になったならいいか。


「それで、本題は臨時パーティだっけ? もちろんいいぜ。防具も武器もかなり揃ってきたから、驚くなよ」

「本当かい?」

「まあ、防具は旅人の服だし、武器は安物の剣だけどな」

「剣かい? 確か君は槍を使っていなかったかい」

「変えた。槍は高いし、盾と併用しにくいからな。知り合いのアドバイスも貰って、剣を使うことにしたよ」

「ほう、そうかい! それなら僕やマリーと同じだね」


そういえば二人とも剣を使っていたな。

エリオットに剣を習えば彼のジョブ、『華戦士』になれるかもしれない。

・・なりたいかな? まあマリーも教え方がうまいし。


「ただ、今回は泊りがけの予定だよ。今まで経験はあるかい?」

「遠征するのか? 前、1人で野宿したことはあるけど・・。まともな野営の経験はないな」

「そうなの?」

「前の野宿は、本当に無一文になった直後にね・・宿に泊まる金もなかったから、門付近の木の陰で魔物におびえながら寝て過ごしたことがある」

「よくそれで生きていたね・・逆に感心するよ」

「そんなわけだから、そろそろ普通の野営を経験するのも悪くないな。力仕事を手伝うから、教えてくれると感激だよ」

「はっはっは、よかろうとも。二人はどうだい?」

「・・私は構いませんよ? ヨーヨーは馬鹿っぽいけど、私達を馬鹿にしないし」


パッチは賛成のようだ。


「いいよ。でも、絶対に私に変なことしないでね。するならマリー姉さんでお願い」

「するかっ」


トリシエラもOKと。泊りがけゴブリンツアーが決まった。

あっ、でも夜こいつらがゴソゴソしているのを横で聞くことになるのか?

寝られるかね。


「テントは持っているかい?」

「いや。これから買いに行くよ」

「それなら、ウチの予備のものを貸すよ。寝袋さえ持ってきてくれればいい」

「ありがたい。・・夜の声は抑えてくれると嬉しい」

「はっはっは、善処するy・・」

「変なことはしませんから!普通に寝るだけですからぁ!」


トリシエラが立ち上がった。『性術士』なのに初心な娘だ。


エリオットから、街を離れていたときの話も聞きながら食事をした。

スラブゲターの揚げ丼は、チキンカツ丼だと思えばいい。ただ地球のチキンカツに比べて、よりジューシーで肉汁があふれる。

まあ安物のかつ丼チェーンばっかり食べていたから、あんまり偉そうなことは言えないけども。

これで銅貨4枚だぜ?安すぎるだろう。


************************************



翌日、寝袋や着火剤といった野営グッズを抱えて傭兵ギルドに行った。

まだエリオットたちは見当たらない。

ステータスでもいじっているか。


************人物データ***********

ヨーヨー(人間族)

ジョブ ☆干渉者(9↑)魔銃士(5↑)

MP 18/18(↑)

・補正

攻撃 G

防御 G

俊敏 G+

持久 G

魔法 F-(↑)

魔防 G

・スキル

ステータス閲覧Ⅱ、ステータス操作、ジョブ追加Ⅰ、ステータス表示制限

魔撃微強

・補足情報

なし

***************************


おっと、エリオットたちが来る前にジョブを変更しておこう。


************人物データ***********

ヨーヨー(人間族)

ジョブ ☆干渉者(9)、剣士(2)

MP 12/12

・補正

攻撃 G+

防御 G

俊敏 G+

持久 G

魔法 G

魔防 G

・スキル

ステータス閲覧Ⅱ、ステータス操作、ジョブ追加Ⅰ、ステータス表示制限

斬撃微強

・補足情報

なし

***************************


『剣士』はわりとすぐに獲得できた。

『槍使い』よりは素質が高いことを祈る。


ステータス補正は攻撃と俊敏が上昇。

いかにも剣士っぽい。スキルは「斬撃微強」。

見た通りに斬撃の攻撃力が増すのだろう。


ギルドの隅でステータス画面を眺めていると、突然肩を叩かれた。


「やぁ、今日はよろしく。どうしたんだい、変な所見ていたけれど?」


肩に手を置いたエリオットは俺の見ていたステータス画面の先にある何もない床を目で追った。

ステータス閲覧の画面は、他人には見えないらしい。

そうではないかと思っていたが、思わぬ形で確認できた。


「なんでもない。そちらの準備は出来たか?」

「万端、さ。すぐにでも出発しようと、マリーなんかは気が逸っているみたいだね。僕はちょっと疲れているけれど」


肩から手を離したエリオットが、自分の肩をすくめた。よく見るとそうでもないのに、何となく仕草でイケメンっぽく見えるから不思議だ。


「そういえば帰って来てから休みを挟まないんだな。1日くらい休むもんじゃないのか?」

「そうだね。そのへんは行きながらおいおい話すさ。マリーたちに怒られないうちに、行こう」


追い立てられてギルド前でマリー達と合流し、北門から出発進行した。


エリオットたちが休みも入れずに遠征するのは、俺の理解したように短くまとめれば、ゴブリンのボーナスタイムだから、だそうだ。

ゴブリンはいつでもすぐに繁殖するが、最近はそのなかでもちょっと出てくる数が多くて注意が向けられていたらしい。

ただ、ブラッドスライムの方が騒がしくなって戦士団の数があまり割けなくなり、衛兵に応援を頼んでやりくりしていた。


しかもちょうどスラーゲーに滞在する個人傭兵の数が少なく、現場は大変だったらしい。

そこに他の地域の影響でゴブリンの魔石の流通量が減ったらしく、結果的に値段が上昇し、ゴブリンが多少おいしい獲物となった。

戦士団が割けない以上、民間の協力に期待して、ゴブリンに対する討伐報奨金も色を付けられているはずだ。


獲物の数は多く、利益は大きい。とすると、たまたまスラーゲー付近にいた傭兵たちにとっては、ゴブリンのボーナスタイムの到来である。

全然知らなかったけれども、いつの間にか俺もそのビッグウェーブに乗っていたようだ。


エリオットたちはいち早くその情報を掴むと、すぐに日を跨いでの遠征に乗り出し、それなりに儲けを出したのだが、前に言っていたように、パーティの雰囲気が最悪で、続けていられなくなった。


そこで、一度街に戻ってから、諦めて自分たちだけで出ようとしていたところ、マリーが俺の存在を思い出した、というわけだった。

なるほど。


要はかき入れ時だから休んでいる暇はない、という話らしい。

特にパーティの財布を握っている女性陣のやる気はすさまじく、エリオットは街でゆっくりニャンニャンする暇もなく働かされている、というわけだ。南無。


その話の中で知ったが、エリオットたちには戦闘に参加しないで家の留守を預かる奴隷がいて、その人が筆頭奴隷として家を仕切っているらしい。

エリオット、しっかり尻に敷かれているんだな、奴隷に。


そんな話をしながら、遭遇するゴブリンの首を叩き切っている。


「しかし、ヨーヨー。剣をはじめてそんなに経っていないんだろう? けっこうサマになっているじゃないか!」

「ありがとう」


マリーが、前線できちんとゴブリンと渡り合うようになった羊平を見て感心したように褒めてくる。


「師匠・・というほどでもないけど、そのような存在もいたし、剣は俺の性に合っているみたいだ」

「へぇ、それは良かったじゃないか。盾の使い方も多少マシになっているしねぇ・・うーん」


師匠のような存在とは、もちろん朝に会話する素振り夫婦の夫、剣マニアの事だ。

とりあえず彼の動きを真似するようにイメージしているが、マリーから見ても動けているようだ。よしよし。


「ジョブはまだ『サバイバー』なのかい?」

「いや、エリオット。これを機に『剣士』に変えることにしたよ」

「『剣士』かい!? そうかい」

「・・ジョブを変えた? ということは、レベルは低いんだろう?」


マリーは怪訝そうにした。


「おう。まだ2くらいだと思うが」

「2? それにしては・・」

「おかしいか?」

「動きが良すぎるというか、身体の線から考えられるイメージと、少しズレがあるというか・・」

「イメージ? ズレ?」

「あたしはその人の身体を見て、どれくらい動けるかなんとなく分ったりするのさ。それとズレがあるというか・・悪い事じゃないんだけど・・」

「剣のセンスがあるってことか?」


それにしては、褒めてくれるというよりは納得できないという感じが出ている。なんだろう。


「うーん、そうかもね。まあ、いいか」


気になるけど、まあ、いいか。切れ味の悪い剣だが、突きは普通に刺さるし、重量をぶつけて殴るようにすると殺傷力も十分だ。ゴブリンは身長が低いから、とりあえず横なぎにしておけば急所(頭)に当たるから楽だわぁ。人相手だと、いろいろと勝手がちがいそうだ。


「さて、ゴブリンの森の前まで来たから、今日は早目にテントを建てて用意に入ろう」


ゴブリンの森と呼ばれるゴブリン頻出地域の前には、いくつかの野営ポイントが存在している。

周囲の地面がならされ、火を起こす場所や用を足す場所などが簡単に整備されているため、利用するパーティは多い。

ゴブリン達も、手練れがウロウロしていることが多いからあまり襲わないという。ある種の簡易安全地帯と化しているわけだ。


俺はエリオット達の予備テントを借りて、少し離れた場所に設置する。

もっと離しておきたいところだが、あまり離すといざというときに困る。

多少のニャンニャン声は耐えよう。


「夜の見張りは、ヨーヨーとエリィ、それから残りの3人で交代しよう。日の入りから夜中くらいまで、男たち頼むよ」


完全にマリーが仕切っている。

あれ、奴隷ハーレムってそういう感じなの?

女の数が増えると、男の地位は下がると言うしなあ。


だが賢くなにも言わず、頷いておく。

日の入りから真夜中だと、そのあと日の出まで寝られるのか?

思ったほどはキツくないな。

夕飯は、各自街で買ってきたお弁当を貪り食う。俺は定番のおにぎりと肉串の組み合わせだ。


「じゃあ、私も寝るから夜中になったら起こしてね。ナイトゴブリン達にはくれぐれも気を付けて、ヨーヨー」


マリーがテントに潜っていき、たき火の前で毛布に包まって周囲を警戒する。


これぞ野営って感じだな。ちょっと修学旅行っぽくて楽しい。

いや、地球での修学旅行はあまり楽しかった気はしないが・・まあ、ネガティブな思い出は封印しておこう。


「ナイトゴブリンってのはどういうやつらなんだ? 今まで実際に戦ったことがないのだが」

「だいたい黒い肌をしていて、タイプは色々あるから一概には言えないけど、夜行性のゴブリンだと思ってくれればいいよ」


ゴブリンはすぐに生態変化を起こす。

ダーウィン的な進化とはもちろん違う。生まれたときとは違う姿形に変化する、ゲーム的な「進化」に近い。


地球の用語でいえば、「変態」だろうか。

いや、SYOKUSYUとかコートを着て通学路で見せびらかすおじさんとかそういう類のヘンタイではない。

イモムシが蝶になったりするところの、理科で習うあの「変態」だ。まあ俺もあんまり覚えていないけど。


ゴブリンは自分の経験や資質によって、ノーマルゴブリンから色々なゴブリンへと姿を変える。

魔物バージョンのジョブシステムといえるかもしれない。

ナイトゴブリンというやつは、夜に行動することが多いゴブリンがなるもので、色は黒くなって夜闇の保護色となり、夜行性になって人の寝込みを襲う。


武器はバラバラで、中には魔法を使うものもいる。「ナイトゴブリンマージ」とかいうらしい。

ただ、闇魔法を使う・・というわけではなく、普通に火魔法が多いらしいので、夜に使われると目立つ。

そして、目立って真っ先に狙われるという可哀そうなやつだ。


「色が黒いから、発見しにくいのが大変だね。ただ身を隠す能力は低いから、音に気を付けておくといい。草をこする音がしたら要注意だ。あとは弓持ちがいると奇襲が怖い。盾はいつでも構えられるようにしておいた方がいいさ」


エリオットの解説に従って、毛布に包まるのは止めて盾を左手で握っておく。

心なしかたき火から離れて、居場所がすぐに分からないようにしておいたほうが良いか。


「警戒しすぎても疲れるけどね、まあ2人だけだからちょっと集中した方が良いかな」


エリオットも剣と盾を手許に置いて、女性陣の眠るテントの入口を守るように座っている。

さすが、行動がイケメン。雰囲気イケメンではなく行動イケメンと呼ぼう、心の中で。

集中のためには黙っていた方が良いが、そうすると眠くなるのでボソボソと言葉を交わす。


「エリオットは色んなパーティと組んでいるみたいだけど、奴隷の数を増やして対処しないのか?」

「ああ、それもアリなんだけど、そうすると自分達で完結してしまうから、情報が入ってこないし、同業と交流がないのも怖い。あんまり戦闘をしても良いという妙齢の女性もいないから、今のままでいいかと思っているんだよ」

「そうか・・エリオットも色んなことを考えるんだなぁ・・」

「はっは、君も奴隷を買ってパーティを運営するようになると、色々と考えると思うよ」


「・・そうなったら、相談させてもらうよ、先輩」

「そうだねぇ。でも、結局自分で答えを見つけなきゃいけないことも多いよ。頑張ってね」

「ああ。それはそうだな。でも傭兵団に入ろうとも思わないしな」

「君はどこかに入って、奴隷は家で待っていてもらうこともできるんじゃないかい?」

「・・そうだな。いや、出来ればエリオットたちのようなパーティが理想なんだが」

「ほう? なんでだい?」


「単に俺は組織人としては致命的だと思うだけだ。協調は苦手だし、足の引っ張り合いがあったらすぐに投げ出してしまう自信があるんだ」

「・・君もたいがい、社会に向いていないね」

「そう。社会不適合者ってやつだ」

「不適合者か、そりゃあ面白い言い方だ。僕なんかも、不適合者なんだろうねぇ・・」

「どうだか」


エリオットは組織でもそれなりに飄々と生きていけそうな気がするのだが。どこで踏み外したのやら。


「エリオットは何故奴隷ハーレムを作ろうと思ったんだ?」

「うーん、最初はなんとなくだよ。実家から追い出されるときに、それなりに金を持たされてね。若かったから色事にも興味があって、仕事で一緒になった男と話していたら、金があるならプロの女に貢ぐよりも、自分用の性奴隷でも買えば早いじゃないかって。今思うとただの軽口だったんだろうけど、そのときはそうか、その手があったか、て思ってね。それで買ったのが始まりだよ」


「それから奴隷の良さにハマった、という感じ?」

「いや、正直奴隷は1人か2人いれば足りるよ。飽きて替えるというならともかくね。ただ、気が向いて奴隷商に行ったら、安売りされていた子供を見て可哀そうになって買ってしまったり・・気付いたら数も増えて、彼女たちに支えられて生活するようになって、そのまま彼女たちと暮らすようになった。という感じかな。今でもたまに奴隷商は見に行くよ、変な話だけど、趣味なのかなあ」


「見ても買わないと?」

「そうだねぇ。彼女たち以上の奴隷はなかなかいないしね。それを確認しては満足するのが趣味なのかも」

「おかしな趣味だ」

「まったく。でも意外と楽しいよ、奴隷たちとの暮らしも。そうなると、もう普通に嫁をもらってという暮らしも考えづらいだろう? ますます彼女たちが大事になって、結局売ったりしたことはなかったねぇ」

「へぇ」


「最初は、飽きたら売って、いつか普通に結婚してと思っていたんだよ、これでも。そこまで奴隷というものに思い入れもなかったし、本当に性欲処理のためと思っていたんだ。でも今考えると、彼女たちが孤独を癒してくれて、色んなことを一緒に乗り越えて・・性的なこと以外の部分で支えになってくれていたんだなと思うよ」

「奴隷というのも色々なんだな」


「そうだよ。人と人の関係に絶対なんてない。夫婦だって、親子だって、その数だけそれぞれの関係がある。夫婦だからこうでなければならない、なんて幻想だけで生きようとしても苦しいだけさ。奴隷だから不幸なんだろう、なんて決め付けは当て嵌まらない。僕たちは主人と奴隷たちという繋がりだけど、どんな夫婦よりも親子よりも幸せになってやるつもりさ。そう思ってる」

「良い話だな」


「そうかい? 普通の人にこんな話をすると、奴隷を好きに使っているくせになにを善人ぶっているんだとか、普通の家族を持てなかった落伍者だとか、そんな風に言われるよ」

「そうか・・でも俺自身が自分を落伍者だと思ってきたからかな。そんなふうに割り切れないよ」

「うん、君はそれでいい気がするよ。なんとなくだけど・・」


エリオットが笑った気がする。たき火の炎に照らされた影が揺れる。彼は彼なりに考えてきたようだ。人生だなあ。


「僕は、奴隷を持ったことでむしろ、自分が何をしたいのか、何を築きたいのかを考えるようになって、やっと自分の芯を持てたと思っているよ。それに気付けて、幸運だったよ。誰に何を言われようと、ね」

「そうか・・」


子供のころ、「あなたの夢はなんですか?」という作文を書かされた。まあ、よくあるやつだ。

「家でゴロゴロしていても怒られなくなることです」と素直に思ったことを書いた。

真面目に考えなさい、というお叱りとともに「立派なサラリーマンになることです」に落ち着くまで書き直しさせられたことを覚えている。


それでも「サラリーマンって・・」とちょっと渋い顔をされた。

スポーツ選手に憧れはなかったし、政治家は大変そうだなとしか思えなかったのだから、他になかったのである。

「奴隷ハーレムを作ることです!」なんて書いていたら、どうなっていたことやら。




楽しくなかった修学旅行のキャンプファイアーを思い出しながら、揺れる炎をただ見詰めた。




徐々にブクマ頂いているようです。ありがとうございます。

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