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【マイルド】異世界 きまぐれぶらり旅~奴隷ハーレムを添えて~  作者: さとうねこ


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69/401

2-38 ダー

西の野営地も、ラムザと泊まった南西の野営地と同様に魔物狩りギルドが簡単な管理を行っているようであった。

こちらはかなり空いているようだったので、奥まった位置にある代わりに少し広い場所を2つ借りて泊まることができた。

テントがないと言っていたピーターたちだったが、ピーターは薄い毛布にゴロ寝し、シュエッセンに至っては近くの木の枝に掴まって目を閉じるだけであった。


「おはよう」

「ああ、おはよう」


怒鳴るような声が聞こえて目を覚ますと、テントの外に出ると既にピーターは起き出して剣を振っていた。

シュエッセンは木の上だ。起きているのかはよく分からない。


「なんか煩かったが、何かあったか?」

「ああ、何か入り口でもめ事のようだ」

「見に行ってはいないんだな」

「興味ない」


そっすか。

巻き込まれるのも何だし、見に行かなくても良いだろう。

いつも通りに土魔法で簡易かまどを作り、朝食の準備をする。



「おはようございます……」


湯も沸き、そろそろ呼びに行こうかなというところでサーシャも起き出してきたので料理を任せる。



「美味い」


今日のメニューはおにぎりと味噌汁。和である。

おにぎりは昨日ここで売っていた、葉で巻かれたものである。具はないが、醤油的な調味料が混ぜてあって食が進む。

サーシャが行商に訊き出したところによれば、保存用の葉っぱに包んでおけば1週間くらいは持つらしい。ほんとかよ。


「さて、今日のルートだが」


おにぎりを頬張りつつピーターが話を始める。


「北に回り込みながら、目標を探すんだろ?」

「そう考えていたが、先ほど君たちが料理をしている内に確認した情報があってな」

「ほう?」

「狩りのルートが傭兵団に占有されているらしい」

「ええっ?」

「龍剣とかいう傭兵団だ。先ほどの騒ぎも、傭兵団の下っ端と、それに突っかかるパーティのものらしい」

「どこかで聞いた話だ」


マイナールールである狩場をマイナールールを無視して設定したとかいうトラブル、あったな。

マイナールールを無視するのにマイナールールを主張するってのも凄い話だよな。


「で、どうするんだ?」

「確認したところ、浅いところに広く狩場が設定されているということだ」


ピーターが味噌汁をズズズと啜って一息入れる。


「然るに、東に向かってまっすぐ登っていくルートならば面倒事にもなるまい」

「危険じゃないのか?」

「危険の少ないルートを選ぶ」

「そうか……ならそれは任せるぜ」

「ああ」


経験者がいるってのは楽だな。

ちょっと説明不足であるが。


「それにしても『龍剣旅団』ってのも、何がやりたいんだろうな」

「さてな。『龍剣』は貴族と軋轢があるという話もある。何やら思惑があるのだろうな」

「貴族と……」


なんかヤバそうだな。関わらないのが良さそうだ。


ところで今朝は静かなシュエッセンはどうしたのかと思ったら、サーシャの膝に抱えられてうつらうつらとしている。

サーシャが口元におにぎりを持っていってなんとか食わせているようだ。

うらやまけしからん。


「あいつ、あの調子で大丈夫か?」

「ふむ。相棒が朝に弱いのはいつも通りだ。問題ない。しばらくすれば五月蠅くなる」

「そうか……」


こいつら、見た目も性格も見事に凸凹だよな。たしかに凸凹コンビだわ。

どうやってコンビを組むに至ったのかは大きな謎だ。



************************************



「サボテンだ、頼む」

「おう」


ピーターに指示された方向にサンドウォールを展開する。

ザシュシュと音がして、ウォールに多数の針が刺さる。

西から登っていくルートは植物が少なく、食人植物といった類の魔物が少ない。

一方で、とにかくサボテンが多い。もちろん、ただのサボテンではなく「棘飛ばしサボテン」という魔物だ。

その場からほとんど動かずにトゲを飛ばしてくるという魔物なのだが、厄介な存在だ。

トゲはそれほど攻撃力がないとはいえ、とにかく数を飛ばしてくるので対処が難しいのである。


そこで、防御魔法である。

とりあえず魔法で受け止めて、弾切れならぬトゲ切れになったらピーターが斬り倒す。シュエッセンが凍らす。あるいはスルーして逃げる。


そのため、サボテンを発見してはウォール系を張るのが仕事になっている。

地味にしんどい。


「こんなところにアーマービーストがいるのか?」

「こんなところだからだろう」


ピーターが素っ気なく答える。

もう少し、説明をプリーズ。


「ご主人様、アーマービーストの好物はこのサボテンです」

「……なるほど」


サーシャペディアの解説で納得した。

全身ガチガチの装甲があるらしいアーマービーストなら、トゲも怖くないから都合の良いエサになるのか。



そんなサボテン退治を根気よく続けていると、昼過ぎになってサーシャが何か動くものを発見した。


「うーん……人のような造形の、土人形でしょうか」

「大魔石岩人形か? アーマービーストほどではないが金になる。ついているな」

「では狩りますか」

「ああ。ヨーヨー、あれには魔法が効かない。周辺の警戒を頼む」

「一人で大丈夫か?」

「任せろ。……だが、余裕があれば、援護をくれてもいい」

「了解」


そこでシュエッセンとサーシャに警戒をしてもらって、魔剣で参戦することにする。

『剣士』をセットして、準備体操をする。


「無理はするな」

「ああ。ピーターが戦い始めてから隙を見て援護するよ」

「それでいい」


ピーターは左手の短剣を対人用のものへと持ち替えて接近していく。

その意味は、対する岩人形の動きで分かった。


……両手を手刀の形にすると、身体の中心にあるコアのような場所が光り、手の先から光の剣のようなものが伸びて現れたのだ。

なにそれ。カッコイイじゃないの。


両手にビームソード(?)を装備したので、ピーターと双剣同士の対決だ。


上半身を回転させながら岩人形が斬りかかるが、ピーターは避けて、避けて、短剣で受け流してその動きを止めた。


「ハァッ!」


ピーターは一度距離を取り、そこから岩人形のコアを目掛けて連撃を加える。

岩人形は関節部分を人ではあり得ない方向に曲げたりしながら、防戦する。

こちらを警戒する余裕はなさそうなので、やっと俺も近づいて一太刀を入れた。


それに気を取られた隙に、ピーターが素早くコアに剣を突き立てる。

電池が切れたように岩人形が崩れ落ちる。

早くも終わったらしい。


「このコアの中に魔石がある。ほら」


ピーターが慣れた手つきでコアを解体すると、中から多面体で陽光を反射してきらきらしている、エメラルド色の魔石を取り出す。


「へえ、綺麗だな」

「うむ。魔石として以上に、宝石として人気だ」


そうなのか。

勿体ないというか、なんというか。これだけで銀貨20枚以上すると聞いて驚く。

大きさと色・形が良ければ、20枚よりも高く売れることもザラだという。


「もしかして、西ってかなり儲かるんじゃないか?」

「そうでもない。確かに儲けの大きな魔物はいる。しかし、中型以上の魔物に遭遇する割合がそもそも少ない」

「サボテンばっかりだったもんな……」

「後は、避けて通っているが虫型の巣もあちこちにある。だがそれは儲からない」

「虫か」


キモいのが多いイメージだし、儲からないなら避けて通るわな。


魔石をしまって再び岩山を登る。

次に発見したのもアーマービーストではなかった。

人の上半身があるイモムシみたいな見た目で、全身がぶよぶよしている。よく見ると薄緑の肌のあちこちが爛れたようになっており、手は鋭く尖っている。

一言で言えば、気持ち悪い。


「ピエータだな。少し待っていろ」


ピーターがそう言って身軽に斜面を登っていくと、魔物の両手を斬り落としてから切り刻み、胸の辺りに突きを入れて止めを刺した。

かなりの早業である。


「早いな」

「こいつは戦闘が長引くと毒液を吐く。手早くやるのが正解だ」


ううむ、頼りになるなピーター。

ピエータってちょっと名前被っているけどな。


採取してきた魔石を渡されたので「今のは単独でやったろ」と返そうとしたのだが、「頭割りで良かろう」と受け取らなかった。

律儀というより、細かいやり取りをするのが面倒な様子。


ちなみに、魔物素材はだいたい俺とサーシャが預かっている。

ピーターは『双剣士』で両手を使うので空けておきたいうえに、先頭で警戒する役目も担っているため、できるだけ身軽にしたい。そして、シュエッセンは小さな肩掛けカバンのようなものを持ってはいるが、身体構造上荷物の運搬に適していない。

ということで、基本的にヨーヨー組が運搬役をすることになったのだ。

ここまでの収穫としては、いくつかの魔石とサボテンの肉くらいしか取れていないが。


「さて、先に進もうか」



それから何度か、サボテン伐採作業をしたり、はぐれたバッタ型魔物を狩っているうちに時が経つ。

無理は禁物ということで、来た道を帰る形で野営地へと帰還した。



************************************



鉄板の上で、ジュージューと焼ける音が響く。

小さなトングを使ってそれをひっくり返したりしているのがサーシャだ。

ヨーヨーは既に焼き上がったそれを皿に載せて吟味していた。


「うーん、なんというか……不味くはないが美味くもないな」

「そうか? 私は好みだがな」


ピーターは解体用のナイフで削ぎ切りにしながら豪快に口に放って味わっている。

机の上に乗ったシュエッセンは小さな手で器用に固定し、嘴で突いている。


食べているのは昼間散々狩ったにっくきあいつ。棘を飛ばすサボテンである。ダーではない。

夕飯をどうしよう、というときにサボテンの肉が大量に余っていたので用途を訊いたところ、食用だったのである。

……まあ、正直予想はしていたけど。


皮つきのままにして適切に保存すれば、1か月くらい保つ携帯型食料兼飲料水代わりになるらしい。

味は……ちょっと苦くて粘り気のあるアロエ?

いや、アロエももともとは苦いのだっけ。


メキシコなんかでサボテンも食うという話は聞いたことがあったが、こんな味だったのか。それとも魔物サボテンは別物なのか。

普通のサボテンを食ったことがないので分からない。


サボテンのステーキということで豪快に切って焼いて塩を振って頂いているのだが、調味料を工夫すればもっと美味しく食べられる感じもする。サーシャ先生の今後に期待をしよう。


「サボテンはかなり栄養もあるんだぜ。好き嫌いするんじゃねぇ」


シュエッセンが嘴休めの木の実を摘まみつつ言う。


「ギギッ!」


ドンさんは生のままのサボテンがそれなりに気に入ったようだ。

器用に前歯を使って皮を裂き、サボテンを貪っている。

サボテンの刺身って美味いかな? もとが魔物と考えると、ちょっと怖いが。


「しかし、サボテンはともかく岩人形の魔石は高く売れたな」


野営地に戻って確認してみると、ギルドの派遣員に魔石の買取りはしてもらえた。

サボテン素材も少しだけ買い取ってもらえたが、こちらは雀の涙だ。

ぶよぶよのピエータの魔石はまあ普通。

嬉しい驚きは岩人形の魔石、高いとは聞いていたが銀貨40枚で売れた。


「大きさも形も悪くなかったからな。ギルドにしては高く買ったものだ」


とはピーター。


今まで魔石は実用品として需要があると聞いてきたが、岩人形のは宝石としても人気があるからこそ、高価になるのかもしれない。

なかなかの儲けにホクホクしながら、西の岩山での1日目の狩りを終えた。



************************************



サボテン、サボテン、ピエータをはさんでまたサボテン。時々虫型。


そんな感じで狩りを続け、滞在3日目となった。

1日目と比べて2日目は成果に乏しく、ぎりぎり赤字にはなっていない程度であった。

一度、アリ型の魔物の小さめの巣を殲滅してみた。


後悔した。

シュエッセンと2人で巣の入り口に魔法を放り、出て来る端から駆逐したのだが。

その死骸を押し退けるようにして奥からアリが湧き出ること、出ること。


手が足りなくなって、魔剣で前線に参加しながら隙を見て巣の奥に魔法を放る作業を繰り返し、MPが4分の1ほどになったところで終戦した。

ピーターが手早く解体するも、魔石を持っている個体は10分の1に満たず。他に眼が安く売れるらしいが、採取が難しいらしいので放置。


あまり長居していると、更なる援軍があるかもしれないということで半分以上の死骸を放っておいて撤退。散々であった。

ピーターは、巣の規模を読み誤ったと謝っていたが、虫型とも戦ってみようと提案したのは俺なのでお互い様だ。

当初の、虫型を避けて通るピーターの判断が正しかったという訳だ。


とほほ。



そして、今日も何とか赤字を免れるくらいかな……と諦観が漂い始めたころ、岩に登っていたサーシャが遠くに何かを発見したという。


「光の影響で、はっきりとは分からないのですが……銀色の何かが見えます」

「ほう!」


今回狙っているアーマービーストは体表が銀色だ。

まあ、だからこそアーマーなんて名付けられているわけなのだけれども。

サーシャが発見した銀色のなにかは、目標の可能性が高い。


「……どうするかね? 時間的にはややギリギリかもしれない」


そう言うピーターを中心にして、作戦会議に入る。


ピーターの言っていた時間的にギリギリとは、野営地までの帰路のことを指している。

せっかく大物を狩っても、夜までに野営地に運べるアテがないならば、危険性が高い。

そこをどう考えるかという話だ。


「今日で3日目、当初の予定からすると最後のチャンスかもしれない。俺は挑戦してみたいが、ピーター達の判断を尊重しよう」


なんせ、虫型の件では判断を誤ってしまったわけだし。やはり経験者を頼むべきなのだな。


「わしはやりたいのぉ。数だけ多い雑魚ばかりで、腕が鈍っているしな」


シュエッセンは積極。


「……私も異存はないが、状況次第だな。まずは念入りに偵察しよう」


ピーターの意見により、まずは情報収集を進めることとなった。


「風下に回って、サーシャ君の遠目で大きさなどを確認する。そして相棒が空中から偵察して、周囲の安全を確保する」

「了解」


全員でソロソロと慎重に移動し、サーシャが遠目で確認する。


「……これ、1体ではなさそうですね。2体……だと思います」

「なに? 本当か」

「陰に1体。行動を共にしているようです」

「2体か……」


アーマービーストはそれほど群れる魔物ではないが、オスメスや親子など数体で行動することはあるらしい。


「うーん……間違いなさそうですね。1体と比べて、身体が小さく見えます」

「だとすると親子か」


ピーターが無表情のまま俯く。


「親子で2体ならばやり様はある。だが1体の場合よりもリスクは当然高い」


どうする? と問い掛けるような目線。


「どの程度のリスクだ?」

「1体なら私が確実に抑えられるだろう。だが、2体となると、幼体とはいえ残る1体が自由に行動してくることとなる。ヨーヨーが抑える形となるがどうだ?」

「アーマービーストと熱岩熊はどちらが強い?」

「熱岩熊か? 幼体なら熱岩熊の成体よりは御しやすいと思う」

「なら問題ないな」


それからシュエッセンが偵察に出て、上空から見る分には近くに危険はないとの報告が入る。

さて、今回の狩り本番、ってとこかね。




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― 新着の感想 ―
【良い】 『箸休め』と読んでたよ違ったね。細かい所にも作者様の遊び心を感じました。 ちなみに読み返した時に気付きました。 >シュエッセンが嘴休めの木の実を摘まみつつ言う。
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