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【マイルド】異世界 きまぐれぶらり旅~奴隷ハーレムを添えて~  作者: さとうねこ


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2-34 スパイスシチュー

途中で傭兵と魔物狩りのいざこざに巻き込まれて以降は順調に、野営をしながらタラレスキンドまで帰還することができた。

前と同じように、一番外側の壁で通行料を払い、それからいくつかの壁を潜って魔物狩りギルドのある区画へと戻る。

イヌミミマスターの酒場で依頼料を払い、魔物素材の利益を分配して、ラムザとは別れる。


「じゃ、俺はここで飲んでくからよ」

「ああ。世話になった」

「ああ……そうだ、人を紹介するってぇ話はどうする?」

「そうだな……」


何だっけ。一時的なパーティメンバーを紹介して貰うのは良いのだが……問題があるんだっけ。


「……信頼できる人物なんだよな?」

「ああ、人柄っつーか、下手なことはしねぇよ。嬢ちゃんに手を出したりとか、モメ事を起こすタイプじゃねぇ。少々……いやだいぶ変わりモンじゃあるがな」

「なら、お願いしようかな。どうすれば良い?」

「そうっさな……ま、ギルドに話を通しておくから、後は適当に会ってみて判断してくれや。それでどうだ?」

「構わない。助かる」


ギルドに丸投げということは、紹介に関して金を取ろうといった気はないということか。

純粋に善意で紹介してくれるなら、有難いことだ。


「じゃ、後で話はしとくからよ」

「ああ」


まだ日も落ちていないのだが、ラムザは手にした金で飲み歩くらしい。上機嫌になって酒を頼むのを尻目に、宿を取りに向かう。


「良い方でしたね」

「そうだな」


また何かの折には依頼をしてもいいかもしれない。

旅で会う人たちは、良い人と嫌な奴が半々、どっちでもないのがそれを合わせたのと同じくらいという感じだ。いや、嫌な奴より良い人の方が割合が多いかな?

まあ、地球で治安があまり良くない外国に旅行に行ったとしても、それなりに良い人はいる。ファンタジーな異世界に来たからといって、実際に人ってのは、そんなものなのかもしれない。

悪意を振り撒いてる人ばかりが居たら成り立たないだろうし、そうする必要性も薄いわな。


さて、ちょくちょく狩って、売っていた魔物素材の利益はそれなりに出た、と思う。

が、ラムザへの依頼料と、素材の利益の配分として人数割りした分、そして食事等をこちらが持った支出まで計算すると……資金はやや増加。

金貨1枚と、銀貨10枚……はない、くらいになった。


今回は研修のようなものだったから、黒字になっただけでも万々歳ではある。

ただ、そうできたのも安定したタンクであるラムザが協力、指導してくれたという部分が大きい。

次回から2人で潜ったとして、黒字にできるのかはちょっと不安だ。

そこでラムザの紹介には期待しているわけだが……まあ、それはどうなるか分からない。いったん置いておこう。


顔合わせが何日先になるか分からないので、しばらくは周辺でチョコチョコと狩りをしながら過ごすとして。

今後どうしていくかも考えていかねばならない。安定して稼げて、当たれば金貨が狙えるような狩場があると最高なんだけどな~。


現状、あるのが金貨1枚とちょっとだと、新たな奴隷ってのは厳しい。

異世界やらタイムスリップやらで奴隷を仲間にって展開は、いくつか小説やマンガ、あとゲームで見た気がするが……どうやって金を稼いでたっけな?

ゲームはまぁ、順番に敵を倒していれば勝手に億万長者になるシステムだったりするので除外するとして。小説・漫画とかだと、だいたい途中から内政チート?商売チート?とか、貴族のお世話になったりして金に困らなくなったりする事が多かったかな?

……参考にならねー。


そもそも貴族とお知り合いってどうやってなるんだよ。

そうそうタイミング良く、ゴブリンに襲われている姫様を助けるなんてイベントが……あれ、ちょっと違うけどゴブリンに囚われてた姫様っぽいポジションの娘は助けたな。そう考えるとあれ、すごく物語っぽい展開だったな。厳密には富豪の娘?だし、何のフラグも立たなかったけどね? 多分。たぶん……。


サーシャを買えたのは、そのアアウィンダお嬢様の救出報酬を弾んでくれたからだったな。

やはり、そういった幸運がない限り金貨がポンと入ってくるシチュエーションというのは難しい。

色々と魔道具を買ったり、メンテナンスをしたりなせいもあるだろうが、魔物狩りは出て行く費用も大きい。

ラムザの話を振り返れば、下級の竜種を狩れるような、それこそ『フルアタッカーズ』のような上級パーティであれば、金貨単位での稼ぎが出せそうであるが。

何か商売に手を出すか、純粋に魔物狩りとしてのステップアップ、スキルアップを目指すか。


むむむ。


「ご主人様、どうなさいました?」

「いや、今後についてちょっと考えていてな……」

「はあ」


とりあえず前回と同じ宿……はつまらないし、猛烈に疲れているから1ランク上の宿に入ってみる。


「いらっしゃいませ、ご宿泊ですか?」

「日数は未定だが、連泊したい。可能か?」

「はい、早めにご予約を頂けないと、場合によってはお断りすることもございますが……」

「構わない。とりあえず……3日でいいか」

「かしこまりました」


受付が丁寧だ。


「先にお代を頂きますね。お2人様の3泊で、銀貨5枚でございます」


高い……がそこまでじゃないな。

3で割り切れないのは、連泊で微妙に値引きしてくれているようだ。

というか、3泊銀貨5枚のセットが基本プランであるようだ。確かに、タラレスキンドまで来て1泊のみで出立ってのは珍しいのだろう。


「頂きました。では、2階の鈴の間へどうぞ。お食事は別料金となりますが、頼まれるのであれば、お部屋までお持ち致しますか?」

「今日だけ頼む。朝飯は貰えるのか?」

「朝飯だけは用意がございます。こちらは断っても、料金据え置きとなっておりますので、ご了承下さい」

「ふむ、なるほど」


特に案内もないようなので勝手に二階に上がり、鈴のマークを探す。

階段から一番奥の、窓から街の通りが見える部屋がそれだった。


「良い部屋ですね」

「安くはないが、値段相応には綺麗にしているって感じだ」


ビジネスホテルを大きくしたような感じ。

安宿の雑多な感じはなく全体として質素だが、ベッドに置かれているシーツ類は純白に輝いている。

元の世界では当たり前のサービスが嬉しいものだ。


「ここはリピートしたいな……金があれば」

「はい。お金があれば、ですね」


サーシャも同意するが、クールなままである。サーシャにとっては食事の内容の方が気になるのかもしれない。それも大事っスよね。


「とりあえず明日は休みにしよう……クタクタだ」

「そうですね。とりあえず私は、洗濯ができないか訊いてきますね」


そう言ってサーシャは荷物のなかから洗濯物をまとめ、部屋を出る。着ていた鎧下もはぎ取られた。良く働くナァ……。



************************************



コンコン、と音がして、ガラガラと台車を押した簡素な服の女性が入ってくる。台車の上には、高級レストランでありそうな銀色の丸い蓋のようなものが載っかっているのが見える。


「お待たせ致しました」


銀色の蓋ごと持ちあげると、部屋のテーブルの上に載せ、上の部分をカチリと押す。すると中の食事だけを残して、銀色の蓋が持ち上げられる。

女性は一礼すると、再び台車に蓋を載せ、押して帰っていく。

なんとなく高級感溢れる演出じゃないか。

テーブルに取り残された食事の内容は、魚のムニエル?的な物とサラダ、柔らかそうな白パンである。無難なチョイス。


「ギーギ?」

「ほれ」


寄ってきたドンのためにパンをちぎって与えようとして……中からドロっとした何かが溢れてくる。慌ててパンを立てるようにして落下を防ぐ。


「……なんだこれ」

「パンが二層になっていて……中には硬パンの生地と、シチューのような物が入ってますね」

「まじか」


とりあえずちぎったパンをやって、残ったパンを食べてみる。ふむ……。


「なんか……ホワイトカレーっぽいな」

「カレー?」

「あー、なんだろ。色んな香辛料を合わせて作られた辛い味のシチュー?」

「スパイスシチューでしょうか」


スパイスシチュー。カレーを別の言葉で表すとしたら、確かにそんな感じか。


「まあ、美味い。美味いが、主食がなくなってしまうな」

「そうですか?」


サーシャは、パンがあるじゃないかと言いたげだが、そうではない。米に対しておかずの分量が多いとき特有の、あの焦り……。民族特有のものなんだろうか。


「魚は……ん? こいつ、足がないか」

「シムラッテという小型の魔物ですね」

「……そうだったか」


足の生えた魚を凝視しつつ、慎重に身をほぐして口に運ぶ。

うん、白身魚だわ。実に美味い。添えられているバターにも合う。


これで一食銅貨16枚であった。これも安くはないが、高くもないな。


「この魚の魔物は、カンセン川で捕れるのかねぇ」

「かもしれませんが、確か西の湖が漁場になっているそうですよ」


良く覚えとるな。でも西って、危ないんじゃなかったっけ。


「魔物の魚は寄って来ますから、捕りやすいみたいですね。拠点を作って警戒して、護衛を雇いながら捕っているようです」


すごいな。そこまでしなくても、安全な場所で漁をすれば良いのに……いや、タラレスキンドの小金持ちたちが新鮮な魚を食うために金を出しているのかね。


「その護衛の仕事ってのはどうだ? 金は稼げそう?」

「どうでしょう。しかし、そういったところは傭兵団にまとまった人数で依頼しているのではないですか?」


……ありえる、な。


「それに、水上警備ならそれなりの技能が必要でしょうし、周辺の陸地の魔物も手強いです。現状では厳しいものだと考えられます」


そうだよね。まあ、そこまで真剣に検討していたわけでもない。


「西に行くと、国軍と絡みそうなのも少し気が引けるしな。まあ、それはそれとして」

「はひ」


話しつつも箸を止めないサーシャ。口を忙しなくもぐもぐとしながらこちらを見る。


「今後のことだがな。ラムザに紹介される人がどうかにも拠るんだが……」

「サザ山で狩りをするのでは?」

「それはする。ただ、ある程度まとまって稼ぎたいし、気になることとか何かあれば言ってみて」

「……うーん、今は正直魔物狩りとしての腕を磨いている状況ですから、あまり色気を出すのも失敗の元かと思います。私はもと商人ですが、商売の才能があったわけでもないですし」

「そうか。そうだよな」


まあ俺も、何か商売のタネがあるか? と考えても、何も出て来ないんだけどね。

アレがあったら流行りそう! みたいな商売チートも、大概あったりするからね。この世界。

過去の転移者のおかげなのか、普通にこの世界で発達したものなのかは判別できないが。


「コツコツやってくってとこかな。そうすると、ラムザの紹介が重要になってくるんだが……」

「妙な性格をしているようですが、変に品行方正な人物よりもうまくやれるのでは?」

「それは……否定できんなぁ」


まず女奴隷と二人旅って時点でねぇ。

奴隷ってのは言わなければばれないとは思うが。

奴隷をバカにするカップルとパーティを組んで、エリオットが苦労していた話を思い出す。

確かに、お互いに変だよねで終わるなら、その方が格段に楽である。


「出来れば、そのうち竜種とか狩れると嬉しいなあ」

「竜種、ですか。それは……」


サーシャが深刻そうな表情でこちらを覗き込む。


「すぐに、とは思ってないから安心しろ。そのうちだよ、そのうち。それにしても、あの夜の白竜はすごかったなぁ」

「……はい。身が竦みました」

「威圧感が凄かったからなぁ。ただまあ、何というか、凄かった」

「美しい竜ではありました」

「うんうん。幻想的な夜空に、ブレスの火で照らされた白竜が浮かび上がって……これぞ冒険ってな」

「……そうですねぇ」


なんだろう。サーシャとの温度差を感じるわ。

漢のロマンは分からないってやつかね。けっこう感動したんだけどな~。


「竜種はともかく、ああいう冒険って感じの風景がもっと見たいと改めて思ったよ」

「命が一番大事ですから、無理はなさらないで下さいね?」

「あ、うん」


サーシャが心配そうだ。無理をして危険な場所に行かれると、サーシャも困るからな。

やはり感じる温度差。ま、当たり前か。


食事を終えたら食器を外に出して放置。後は宿側で勝手に回収してくれる、まあ良くあるシステムである。美味かった。


それ以降は、まったりとした夜を過ごした。



************************************



柔らかいベッドで目を覚ます。


「おはよう」


しばらく堪能しているともぞもぞと動き出したので、声を掛ける。


「おはようございます……。朝ごはん、食べましょう……」


第一声がそれかい。

苦笑しつつ手早く着替えて、下の食堂へと向かう。


出された献立は……蒲焼だ。見た目はウナギとかアナゴとかそれっぽい。

朝から重いと感じるところだが、こっちの世界ではわりと普通だ。

魔物狩りも含めて身体をしっかり動かす職種の人は朝はガッツリ、昼は手軽な携帯食で夜は酒のアテ、という感覚の人が多いと思われる。

実際の生活スタイルに合わせてそうなっているのだろうが、とにかく朝が一番ガッツリしていたりする。もちろん、人や時によるけどね。


ガッツリな朝飯を取った後は、少しまったりして外に出る。

ちなみに、ゆっくりな起床時間だったので、入れ替わりでドンさんはすぐに眠りに入った。ああ悲しきかなすれ違い生活。

一応こちらが起きるまで寝るのを我慢してくれていたようなので、感謝しかない。本当に頭が良いよね、ケルミィって種族は……。


「さて、今日はどうしようかね」


今日くらいは、完全オフで各自休みとかでも良いんだけど。

そうすると、だいたいサーシャは洗濯とか裁縫とかこまごましたことをやり始める。休まないのだ。

性分なのか、奴隷教育の賜物なのかは不明だ。


「ラムザさんの紹介を、ギルドで確認しておいた方が宜しいのでは?」

「ん? まあ、そうだな」


昨日の今日ではあるが……。ほかにやりたいこともないし、ギルドに寄って聞いてみますか。



************************************



「はい、ございますよ」

「え、あるの?」


ギルドに入ってみたら人も少なく空いていたので、カウンターで「ヨーヨーへの伝言の有無」を確認してみると、まさかの展開に。

ラムザ……しかいないよなぁ、伝言するの。いや、クロスポイントがらみで戦士団から何か依頼が入った可能性も捨て切れないか。


「誰から?」

「えー……ピーター、というギルド員です」


誰やねん。小憎たらしい兎みたいな名前しおってからに。


「読み上げますか?」

「じゃあ、お願いする」

「えー、一度お会いしたいので、都合の良い日にちを伝言してほしい。とのことですが」


何だ、何だ? こちらの世界のナンパか?


「えっと、ピーターさんなら今、訓練室にいますが」

「えっマジ」


ピーターいた。

どうしようか……まあ、考えられるとしたら変な勧誘か、そうでなければラムザの紹介、かな?

ラムザから話が行って、後は本人でということで本人が伝言を残した?

うん、それが一番ありそうだな。


「分かった、会いたいが……訓練のジャマになるか?」

「ええと、では少し待ってください。確認してきちゃいますので~」


たのんだ。

しばらく、カウンター周りの掲示物などを確認して時を過ごす。


……お、クロスポイント南方の入場制限が解除されたらしい。

警戒されていた新型魔物の湧きがないことを確認……。そうか。あの新型フェレーゲン、湧いていたわけではなかったのだな。当初の予想通り、人を食ったカニの魔物が変異しただけだったと。

あるいはどっからか流れてきたのかな? 分からないが。


「確認してきました、問題ないのでいつでもどうぞとのことです」

「あ、どうも」


職員にピーターが使用中の訓練室の位置を聞き、さっそくその足でお邪魔してみることにした。

さて、鬼が出るか蛇が出るか……。




ここのところ感想を頂けるので嬉し。


途切れないようにだけ頑張ります。




ちょっと前に、怒涛の誤字修正ラッシュをくれた人もありがとう。


助かります。

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