1-6 マニア
************人物データ***********
ヨーヨー(人間族)
ジョブ ☆干渉者(7↑)魔銃士(1)
MP 16/16
・補正
攻撃 G
防御 G
俊敏 G+
持久 G
魔法 G+
魔防 G
・スキル
ステータス閲覧Ⅱ、ステータス操作、ジョブ追加Ⅰ、ステータス表示制限
魔撃微強
・補足情報
なし
***************************
また『干渉者』のレベルが1上がっている。
これはずっと変えていないからというのもあるが、ステータス閲覧や操作を頻繁に利用しているからだろうか。あるいは・・まあそれはいいや。
ただ、『干渉者』のレベルが上がったタイミングで、ステータス補正が上がった!ていう経験が1回もないのはちょっと気になる。
もしかして干渉者って、ステータスは上がらない系か・・?
前にちらっと考えたように、異世界から来たことが条件だとしたらそういう特別扱いがあっても変ではない。
それに、ジョブ追加なんてちょっとしたチート能力があるのだから、それくらいのデメリットがあってもいい、という気もする。
やはりジョブ追加Ⅱの取得が待たれるな。
ジョブ2を『魔銃士』に変更したのにはわけがある。今朝、傭兵ギルドに顔を出したが、エリオットはいなかったし、伝言もなかった。
そこで今日はソロでゴブリン狩りに向かう気だ。昨日の狩りで情報収集できたのが大きい。
ゴブリン達は門付近であれば少数集団で、強さもそこまでではない。
ヤバそうだったら逃げて門衛に泣きつく手もある。
おもいっきり評判が下がりそうだから最後の手段であるが。
そうはいっても、複数に囲まれたら危ないのでは? と思うところだが・・そこで魔銃の出番だ。
魔銃の先制攻撃で何とか1対1、せめて1対2に持ち込めば、木槍でも勝てる。
そして『魔銃士』の実戦経験を積みつつ、魔銃の技能を高めることもできるはずだ。つまるところ、『魔銃士』を育てる気になったのである。
なぜ『魔銃士』かといえば、素質がありそうなこと、今のところ魔銃が一番の切り札であることに加え、魔法系、というかMP使う何かをメインにした方が良いという判断である。
『魔銃士』を外してジョブ2を空にするとMPは10になる。つまり干渉者のMPだけで10だ。魔銃士ジョブはMP6が加算されるということになる。
普通はジョブは1つだから、MP6、今持っている銃であれば3発しか撃てない段階からスタートすることになる。まともに訓練するにも厳しい数だ。
だが、ジョブ2、将来的に予想通りであればジョブ3かそれ以上持てるかもしれない俺は、MPにかなり余裕があるのが長所だ。これは前にも考えた。
この歳まで特にこれといったスポーツもせず、精々日々の筋トレを行うくらいしかしてこなかった人間が、前衛系のジョブで活躍するのはちょっと厳しい。かもしれない。
・・やってみると意外と動けているのはある。だが、この世界で当たり前のように戦ってきたエリオットたちを見ると、やはり大きな差を感じたし、自信がない。
それに、前衛ジョブでも複数ジョブの利点をうまく生かす方法を考えつけば活路はあるかもしれないが、思い付かない。
そこで、長所を生かして、MPを活かす方向に能力を伸ばしてみる作戦だ。
さっそく北門で手続きをして、門から離れすぎず、人の少なそうな森へと入っていく。
北西方面には遠征に行くパーティがいそうなので、気持ち東寄りの北東方面だ。行き過ぎてもグリーンキャタピラの領域なので、危険はないはずだ。
慎重に歩を進めて、行き過ぎないように戻ってと歩いていると、2時間ほどして、ギャーギャーとわめきながら進むパーティを見つける。
草むらに身を屈め、息を潜めてじっと窺っていると、やはりゴブリンだ。
人のパーティだったらあんな無駄に騒がないはず。
魔銃を取り出し、魔石を静かに押す。
何かが身体から抜き取られるようないつもの感覚。
おそらくこれが魔力が移動している感覚なのだろう。
気持ち、いつもよりスムーズに魔石に魔力が流れるようにイメージを強くする。
ゴブリンの中心あたりに向けて、何度か射線を確認してから魔石を一気に押し込む。
キュインといつもより高い音が鳴り、光が射出される。前より弾速は速い。
ゴブリンは突然の出来事に不思議そうに光を見ていたが、光がゴブリンに到着すると爆ぜたような音とともに中央のゴブリンの上半身が弾け、左右のゴブリンも血を流している。
・・威力増加は成功したようだ。
そのまま木の陰から飛び出し、木槍で止めを刺してまわる。
弾け飛んだゴブリンも胸の魔石は無事だったようだ、良かった。
思った以上の威力が出たなぁと苦笑する。
************人物データ***********
ヨーヨー(人間族)
ジョブ ☆干渉者(7)魔銃士(2↑)
MP 11/16
・補正
攻撃 G
防御 G
俊敏 G+
持久 G
魔法 G+
魔防 G
・スキル
ステータス閲覧Ⅱ、ステータス操作、ジョブ追加Ⅰ、ステータス表示制限
魔撃微強
・補足情報
なし
***************************
ありゃ、MPを5も消費したか。これはちょっと使いすぎだ。
ただ、魔銃も魔力操作を練習すれば威力が調整できることが判明した。
逆に威力を絞ってMP消費を軽減したり、ショットガン的な拡散する弾を撃つこともできるようになるかもしれない。
思っていたより柔軟性がある、いい武器だ。
MPは『魔銃士』で6のはずなので、普通は今みたいな攻撃をすれば撃ち止め。そこがネックになるのだろう。だが、俺は話が別だ。
これは魔銃をくれたアイツにも感謝せざるを得ない。
その後、2匹のゴブリンも見つけたので試してみると、威力を絞ったMP消費1の魔弾も放つことが出来た。その場合、一撃で倒しきれなかったのでその後がちょっと大変だったのだが。
MP消費2の通常弾なら、直撃させれば1匹を大ケガさせて、ほぼ間違いなく戦闘不能に追い込むことができる。
今日は浅い場所をぐるぐるしていたせいで、3パーティ8匹しか出会えなかったが、総取りできたので銀貨1枚に少し届かない程度を稼ぐことできた。
ぶっちゃければ、エリオットとパーティを組むよりも儲かる。
ただ、1人でいざというときにフォローしてくれる人がいないし、1人で警戒・索敵するのはかなり疲れる。同時にMP管理もしなければならない。
そういうデメリットもあり、エリオットと同行すれば会話から色々な情報を得ることが出来るし、彼やマリーに戦闘指南してもらえるということも考えれば、誘われれば彼の臨時パーティには参加するつもりだ。
魔物素材買取センターで換金してから宿に戻る途中、それまで貯めていたお金で防具も揃えた。
といっても、鎧ではなく旅人用の服である。
この魔物が跋扈する危険な世界の旅人なので、急所に薄い金属板が取り付けられ、それ以外の部分も堅皮で一応補強されている。
防御効果がどこまであるのかは不明だが、防具なし状態からは脱出することができた。
その他の消耗品も合わせて買い込み、またほぼ無一文状態に戻った。
「なかなか無一文から脱出できないな・・少しずつ前進しているとは思いたいが」
また奴隷市場を覗いて、綺麗な女奴隷はいないかと物色しながら帰った。いたところで買えないのだが、目標を再確認することでやる気を出したいのだ。
前に一度見てみた女奴隷ばかりのところは、相変わらず妙齢の綺麗どころを集めている。
きっと高いのだろうな。そのへんの薄汚い感じの女性でも金貨で売られているから、まだ見たことはないが、金貨よりも上、希金貨とかいう額まで動くかもしれない。
銀貨100枚で金貨、金貨10枚で希金貨という交換比らしいから、銀貨1枚が1万円だとすれば、希金貨は1枚で1000万円だ。
おそろしい。
しばし現実逃避してから、1泊銅貨43枚の安宿に帰還。
「ゴブリンは手堅く稼ぐにも、実戦経験を積むにも丁度いいかもなぁ」
もちろん、1度でも決定的な失敗をすれば死である。あの白髪のガキが助けてくれるなんて微塵も思っていない。あー死んじゃったのかあとか言いながら手を止めずに作業しているだろう。
あるいは優雅に茶でも飲んでいるかもしれない。
あいつは良くも悪くも中立である。魔銃を寄越してくれただけで出血大サービスと思うべきだろう。
さて、ステータスであるが。
************人物データ***********
ヨーヨー(人間族)
ジョブ ☆干渉者(7)魔銃士(3↑)
MP 7/17(↑)
・補正
攻撃 G
防御 G
俊敏 G+
持久 G
魔法 G+
魔防 G
・スキル
ステータス閲覧Ⅱ、ステータス操作、ジョブ追加Ⅰ、ステータス表示制限
魔撃微強
・補足情報
なし
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『魔銃士』がぐんぐん成長している。レベルが低いうちは上がりやすい、といったこともあるのかもしれないが。それにしても1日で2レベルアップは今まであまり見なかった。
魔銃の威力を操作したり、狙い方をいろいろ工夫してみたりしてみたのが、「『魔銃士』に必要な経験を積み、技能を高める」という条件に当てはまったのだろう。
選択できるジョブも少し増えた。
旅人(3)
市民(1)
ごろつき(1)
サバイバー(4)
短剣使い(2)
魔法使い(1)
魔銃士(3)
槍使い(1)
学者(1)
槍使い、学者ジョブを獲得。
学者は図書館で調べ物をしたからか。
少しだけだけど、専門書まで読み込んだのが良かったのか。地球での経験が評価されたのか。
(問題は、エリオットたちと組むとき、『サバイバー』に戻すべきかどうか・・)
魔銃は切り札なのでジョブ経由でバレたくないという思惑もあったのだが・・ステータスを表示できるスキルがあまりなく、基本的には司祭・助祭といった教会関係者に近付かなければバレないと知ったので、警戒しすぎかもしれない。
あるいは、サブ職業として『槍使い』を育てるのも手か。
『槍使い』ならば、バレたとしてもそれほどダメージはない。
秘密にしていたけど、教会に寄付して変えてもらったんだよと言えばいい。実際に槍を使っているわけだし。
ジョブを変えないことで入る継続経験値は惜しいが、槍を使うときは『槍使い』、魔銃を使うときは『魔銃士』と使分けていけば、「相応しい経験」の経験値は効率的に稼ぐことができるしね。
よし、そうしよう。
************人物データ***********
ヨーヨー(人間族)
ジョブ ☆干渉者(7)槍使い(1)
MP 2/12
・補正
攻撃 G+
防御 G+
俊敏 G
持久 G
魔法 G
魔防 G
・スキル
ステータス閲覧Ⅱ、ステータス操作、ジョブ追加Ⅰ、ステータス表示制限
刺突微強
・補足情報
なし
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『槍使い』で上がった補正は攻撃と防御、スキルは刺突微強・・『短剣使い』と同じだな。
突くのが基本動作だから、短剣の場合より使いやすそうだ。
お金もなくなったし、また明日もゴブリン狩りだな・・と思いながらいつの間にかベッドで意識を手放していた。
明くる日、傭兵ギルドのやる気のないお姉さんから伝言があると声を掛けられた。
エリオットから、しばらく留守にするので伝言チェックをしなくてもいいよ、とのことだった。伝言してくれた受付のお姉さんに礼を述べて、今日もまた1人でゴブリン狩りに向かう。
ジョブ2に『魔銃士』をセットし、魔銃を異空間から出す。
今日はMP消費を2程度に固定して、弾の性質を変えられないか、色々と考えていたことを試すつもりだ。
1時間ほど北東に進むとゴブリンが何かを囲んでいるのを発見する。
どうやらグリーンキャタピラが迷い込んだらしい。
囲んでいるゴブリン勢は・・5匹か。ちょっと多いな。
木の陰に隠れながら、片膝をつき、ブレない姿勢にして、手をまっすぐ伸ばして射線を確認する。
魔銃にMPを吸い込まれるときの感覚はいつも通りに済ませて、魔石を押し込んで弾が発射するときに、気持ち魔力を拡散するように操作してみる。
何となく光の濃度は下がって弾が大きくなった気がするが、気がする程度の差しかない。
光はそのまま背中を見せていたゴブリンの頭に当たる。
ゴブリンが一瞬沈黙し、顔を見合わせるうちにもう一発。今回は変なことはせずに撃つ。
奥にいたゴブリンの右腕が爆ぜ、痛そうにその場でうずくまる。急所は外したか。
ゴブリンはこちらを完全に認識した。まだ射撃姿勢のまま、出来るだけ素早く魔力を込めるようにして銃を連続で発砲する。
ゴブリンが動くので2発外したが、1発はゴブリンの足、もう一発が別のゴブリンの胸に当たった。
これで無傷なのは1匹。木槍を掴み立ち上がる。
無事なゴブリンが激高して飛び上がってくる。
勢いをつけてそのまま手に持った鈍く光るものを叩きつけるようにする。剣を持っているのか!
バックステップして大ぶりな一撃を避けると、槍で顔を突く。体勢を立て直す前に前に出て、みぞおちを蹴り上げる。
胸を撃たれたゴブリンが、苦しそうにしながらも近付いてくる。こちらは異空間から取り出した盾を構えつつ、敵の攻撃を防ぎ、胸の傷を抉るように突く。
蹴り上げたゴブリンも再度こちらへ来る。
魔銃を再度取り出して速射する。怯んだところで盾を突き出し体勢を崩すと、魔銃をしまってまた槍で突く。
心臓あたりを深く刺したから、たぶん無力化できた・・・と思う。
胸を抉ったゴブリンはもう息も絶え絶えだ。
同じように盾を突き出して体勢を崩してから槍で胸を深く刺す。
シールドバッシュからの止めのコンビ強いな。
足を撃たれたゴブリンはのろのろと近付いてくるので落ち着いて魔銃を取り出し、頭を撃つ。腕を撃った遠くのゴブリンはいつの間にか逃げ出していた。頭の良いやつだ。
グリーンキャタピラはゴブリン達に致命傷を負わされたらしく、動いてなかったので念のために槍でメッタ刺しにして止めを刺しておく。
魔銃をしまい、ゴブリンだったものを槍で突いて生きていないことを確認すると、大型ナイフを取り出して解体を始める。
「5匹同時はちょっと辛かったが、なんとかなったなぁ」
残りMPは1。先制攻撃で2発。近付いてくる敵への攻撃で4発。近接戦闘中に1発。最後の仕上げで1発か。
MPが1残ったということは、戦闘中にMPが1回復したか、どれかがMP消費1だったということだな。多分近接戦闘中に撃ったやつだな。速射のために早く撃った。
剣を持っているのがいたし、少し焦ったかもしれない。
ゴブリンの残した剣を拾いあげると、存外に小さく、剣というよりナイフと言うべきかもしれない。刃こぼれも激しい。ちょっと使い物にはなりそうにない。
ゴブリンの見た目は、ゲームのものとは少し異なる。鬼のような出で立ちのそれとは異なり、背中に毛が生えていて、手足は細い。小柄な猿人類といった印象。
何にせよ小柄なので、持っている物が大きく見えたようだ。
これなら解体用ナイフの方がまだ使いでが良さそうであるし、売り物にもなりそうにない。よってそのまま放って置く。
「MPもないし、今日はここまでだな・・」
気持ち東寄りに遠回りして帰還する。
東寄りなら、ゴブリンではなくグリーンキャタピラの領域だからだ。イモムシならMP切れでも勝てる。
途中1匹グリーンキャタピラを狩りながら、無事に帰還した。
町中に入ると、大通りの方が少し騒がしい。
人垣、というほど集まってはいないが、道脇にたまった人の集団の後ろから覗いてみると、戦士団か衛兵らしき武装した人々が通りを誇らしげに歩み、それに対し歓声が沸き上がっているようだ。
凱旋、の二文字が頭に浮かぶ。なんだろうと思って、隣の訳知り顔で頷いていたおじさんに訊いてみると、ビッグブラッドスライムが討伐されたお祝いらしい。
このビッグブラッドスライム、かなり狡賢いそうで、放っておくと何をするか分からない怖さがあるんだそうだ。それを早々に討伐できたことで戦士団がドヤっているという話だ。
ブラッドスライムの大量発生を早目に発見できたから討伐も早かったのだとすれば、自分も少しは力になれただろうか。
ちょっとほっこりした気持ちで戦士団に手を振っておいた。
翌朝、早めに目が覚めたので宿の中庭で槍の素振りをしてみる。
同じように魔物狩りをして暮らしているらしき夫婦も途中から一緒になって剣の素振りをすることになって、訊いてみると毎朝続けているらしい。
ちなみに夫婦の奥様の方は、赤い肌をしており頭に角のようなものが生えていた。
デリケートな問題かもしれないからスルーしたけれど、ものすごく気になって何度もチラ見してしまった。
「君は個人傭兵か?」
夫の方が剣を振りながらこちらに目線だけをやる。
「そうだ。貴方たちは?」
「マニフーロ団という傭兵団に所属しているよ」
「傭兵団・・」
「魔物狩り専門の傭兵団だよ。この辺では少し珍しいのかな?」
「そうなのか?」
「多分ね。妻の出身であるオソーカっていう国では割と普通なんだけどね」
「それは少し違う」
ふぅ、ふぅと素振りに息を持っていかれながら話していると、妻の方が入ってきた。
「オソーカは国ではない。同盟している勢力の連合・・そんな感じだ」
突っ込みが入ったのは、オソーカについてだった。
知らん国だからそこはどうでもいいのだけど。
「傭兵団は、個人傭兵よりも良いのか?」
話題を気になる方向へ戻す。
「安定はするよね。1人で全てやるんじゃなくて、用意や調整をしてくれる後方支援の人たちもいるし。万が一怪我をしても、他の人が仕事をこなすから多少はお給料を貰える」
「へぇ・・安定ね」
「デカい仕事をしたときにピンハネされないのは個人傭兵の強みかな。あとは集団行動をしなくてもいい自由か。逆に言えば、それ以外はやっぱり組織に属した方がメリットは多いさ」
「・・・」
組織での安定と協調か。俺が元の世界で最も苦手としたことでもある。
この世界ではそんなことを言っている場合ではないのは分かっているが、やはり組織人として上手くやっている自分が思い描けない。
(まあ、奴隷ハーレムを構築したらどのみち協調は難しいみたいなことはエリオットも言っていたしな・・できれば個人傭兵でいたいところだ)
「しかし、あんたその槍はないぞ。もう少しまともな武器は買えないのか」
夫の方が俺の持つ木槍を見て苦笑しているので、俺も苦笑した。
俺だって木槍にしたかったわけではない。金がないのでこれにしたのだ。もう少し金を貯めたら、次は武器だなと思案する。
その日も魔銃で先制→数が減ったら木槍で止め、の流れでいく。
5体相手は少し危うかったので、4体以下の群れを相手にしていく。
見える範囲に5匹以上のゴブリンがいたら、無理をせずに引き返した。
これではさほど儲からないが、安全マージンの確保は絶対だ。
戦闘経験と魔銃の練習と割り切る。
魔銃の操作では、昨日失敗した拡散する弾の撃ち方に関して1つ重要な発見があった。
魔力を込めてから拡散させようとしても、心持ち弾が膨れたな、という域を出ない。
しかし、魔力を込めるときに、間違ってMP1程度しか送れなかったので、追加で魔力をMP1分だけ送ってみたときに、見事に弾が2つに分かれて撃てた。
MPを込める段階で小分けにしておけば拡散弾が作れたのである。
なるほど、充填された魔力を変質させることには限界がある。
あらかじめ自分の体内で分割させておけば、無理なく拡散弾を再現することができる。
考えてみれば単純だ。
これによって、拡散弾の完成は大きく前進して目途が立ち、さらに別種の開発の光明が見えた。
弾を拡散させる以外にもいろいろと応用は利くはずだ。
とりあえずは地球に実在する銃器を参考にすれば色々と案は出そうだ。
拡散弾もショットガンのイメージから考えたのだから。
たまに弾を2つや3つに拡散させてみながら、ゴブリンをちまちまと倒した。
翌日からも、特に変わらず魔銃と木槍でゴブリンを追い回す日々だ。
毎朝できるだけ早起きして、素振り仲間の夫婦とは会話するように心がけている。貴重な情報源だ。
しばらくして、銀貨7枚ほどの余剰金ができたので武器屋を覗いた。木槍の経験を活かすならまともな槍にランクアップすべきなのだが、ここにきて剣にしようかと考えている。
理由の1つは、それはある意味最大の理由になるのだが、金がないということだ。
剣は品質に拘らなければ、銀貨数枚のものも探せばある。だが、きちんとした槍は高い。
ましては弓やらボウガンやらに手が届くはずもない。
そしてもう1つの理由が、槍が合わない気がしてきたからだ。
基本的にソロで動くときは、魔銃メインになってきている。
サブウェポンとして考えたときに槍は邪魔だし、とっさに切り替えづらい。
『短剣使い』はあっさり獲得できたのに、『槍使い』はなかなか獲得できなかったから、素質が低いんじゃないかとも思っている。
後は盾との関係だ。槍をメインで使っていくなら、やはり両手持ちが基本となる。
片手槍もいいが、動きが制限されるのでソロではメインにしづらい。
何より、自身の気持ちとして、盾は持ちたい。相手の攻撃を受けるとき、盾があるとないとでは安心が大違いなのである。
日本生まれの平和市民たる羊平には、相手の攻撃を盾で受ければ死にはしない、という安心感が必要なのだ。羊平がとりわけビビリだとかいうわけではないのだ。きっと。
以上の真剣かつ極めて論理的な自己分析により、「やっぱり盾+片手剣が鉄板じゃね?」という説が高まっているのだ。
剣を見ていくと、刀のような片刃で鋭いものから、刃が三日月状に反ったシミターのようなもの、RPGゲームなどでよく見るような武骨なロングソードなど様々な種類が無造作に陳列されている。
1つ1つ手にもって見ながら、重さや値段を確認していく。特に値段が大事だ。
いや値段以外に大事なことが1つあった。刃の形が肉厚なことである。
薄くて鋭利な刃は切れ味が良いだろうが、すぐに刃が欠けたり血や汚れで切れ味が鈍って持ち味を損なう。
その点、肉厚な剣は長持ちする。相手を斬るより、力で圧殺することに比重が置かれるからである。
この街でも、衛兵などの装備には切れ味の良さそうな剣が多いが、傭兵ギルドで見るような無頼者たちは重そうな大ぶりの剣を携帯していることが多かった。
その辺は、剣にしようかと思っていると朝の夫婦に相談したときに長く、ながーく語られた。
真偽のほどは不明だが、そういうものなのだろうと素直に受け取って安くて肉厚な剣にしようと思った。
(これはすぐに折れそうだ・・こいつは持ち手が小さすぎる。これはいいが・・値段が金貨かよ!冗談じゃねぇ)
ガタガタと物色していると、奥から店主が出てきて「探し物はなんだ?」と不機嫌そうに訊かれた。安く肉厚な剣と正直に答えると、「この辺から選べ」と言いながら、店のあちらこちらからいくつかの剣を引き抜いては羊平の前に並べた。
(すげぇな・・無造作に並べてあると思ったけど、全部把握してんのか?)
内心感心しつつ、並べられた剣を見る。
銀貨5~6枚で収まる、という条件だけで半分以上弾くことになった。
(やっぱ銀貨10枚くらいまでは「安い」の範疇なんだな)
選んだのは、刃の長さ65センチくらいで肉厚、中古品なのか刃の端は少し削れてしまっており、切れ味が悪いどころか斬れない部分もありそうな片手剣。諸々のオプションも込み込みで銀貨6枚だった。
「そいつか。まあ見た目はかなりくたびれてるが、もともとの物は良いからそれなりに持つだろうと思うぜ」
店主はやっとニヒルな笑顔を見せながら頷いた。機嫌が悪いのではなくてこういう人なんだろうな。
「油も付けてくれ」
「仕方ねぇな」
手入れ用の道具も付けて銀貨6枚にするよう交渉した。
「諸々のオプション」のなかには、剣帯のオーダーメイドがあった。
これは頑として背中吊りに拘った。
「腰に吊るせればいいじゃねぇか」と呆れられたが、背中からスラっと剣を抜いて敵に向かうのはロマンである。
結局、調整次第で腰にも吊るせるし、背中に固定もできる。背中側の腰に横にしておくこともできる。という便利な剣帯を付けてくれることになった。
安物しか買ってないのに申し訳ない。いつか儲けたら還元すると心で誓っておく。
売る前に剣も少し磨いておくということで、優れたサービスに感心しながら大満足で店を出た。
また無一文か。
まあ宿代・飯代は確保しているだけ以前よりかなり改善してはいる。
次の日に剣を受け取り、さっそく背中に固定しようと四苦八苦していると店主に笑われた。
ロマンの分からないオヤジめ。まあ色々世話になったので笑わせておく。
朝の素振りの練習で、剣を自慢して素振りの方法を教えてもらう。
槍党の人間が剣に宗旨替えしたのが嬉しかったらしく、ウキウキと剣の基本の型と、どこかの流派の奥義まで教えてくれた。
奥義は理解できなかったが。
赤肌の奥様は苦笑しながらも何も言わなかった。
出来た奥さんだて。夫の方を剣マニアと心の中で命名しておく。
ランキングタグ設置してみました。
公式ランキングとはまた違った感じなのでたまに覗くと楽しいやつです。





