1-4 パーティ
ふと気付くと、えんじ色のカーペット、お洒落な絵画と背の揃った本棚が見えた。ハッとなって振り向くと、高級そうなソファで白髪のガキが足を組んでいた。
「や、この間ぶり」
「ここは・・夢じゃないよな」
「違うね。君はええと、ヨーヨーくんだっけ。あんまり洒落た名前じゃないねぇ」
「ほっておけよ。今日は何の用だ?」
「前に言っておいたはずだよ、報告をしてもらうと。君の行った世界について、簡単に説明してもらえるかな?」
俺はガキに問われるままに、魔物を狩って暮らすようになった簡単な経緯や、世界について、そして湧き点など気になった事象について軽く説明した。
「ふぅーん、やはり想定していた以上に魔物に侵食されているね・・」
「金も武器もないまま放り出されて、どれだけ大変だったか!」
「それはすまなかったね。といっても、最初に転移した拠点は捜索しなかったのかい?」
「え?どういうことだ?」
「あそこはねぇ、逃げ出した犯罪集団のアジトだった場所でね・・。探せば、持ち出し損ねたお宝の1つや2つはあったはずなんだけど」
「ば・・っ!おま!先に言えよ!」
「ははは、そうか、気付かなかったようだね。まぁ今行っても、もう警備団に確保されているはずだから、遅かったね」
「マジかよ~・・無一文から、服売って、街壁の外で野宿して・・本当に死ぬかと・・」
「まあ、そんな頑張っている君に、今回は報酬を渡そう」
「報酬?」
「ああ、さあ受け取ってくれたまえ」
ガキが何かを投げる仕草をしたので受け取ると、金属の筒と持ち手の付いた謎の物体だった。
「これは・・形状からすると、銃に近いものか?」
「そうだね。正確には、そちらの世界で作られた魔銃というものらしいよ」
「魔銃・・銃という概念はあるんだな」
「純粋な銃も少数ながら生産されているようだね。性能としては残念なもののようだけど・・」
「ほぉ~。で、この魔銃というのは名前からすると、魔法の銃、と考えればいいのか」
「そうだね。そこのトリガー代わりの魔晶石を押すと、勝手に使用者の魔力を抜き取って魔法の弾を放つらしい」
「へぇ」
「別口の調査で手に入れたんだけどね、検査も終わったし、君にあげるよ。解析はちょっと面白かったけど、発想は平凡であんまり重要な代物じゃないからね」
「いいのか?」
「ま、正直に言えばボクの想定が甘かった。君以外にも何人か送り込んだけど、まともに生活できているのは今のところ君くらいだ」
「えっ・・」
「異様に魔物も多いし、それ以外もちょっと不自然なところがあってね・・。で、現時点では貴重な情報源である君に、多少の援助をしようと思ったのさ」
「ならもっと、金とか、防具とか欲しいものはいくらでも・・」
「残念ながら、それが限度だね。ボクは基本的にそちらの世界に干渉できない。だから今回はわざわざここに呼び出して、そちらの世界で作られたものを1つだけ与える。これがボクの限界なんだ、勘弁してほしいな」
「そうか、まあ何もないよりは助かる」
「それにしても湧き点、だったかな?これも想定外かもしれないね。明らかに普通じゃないよねぇ」
「そうなのか?俺の元の世界に近い世界では、魔物が跋扈しているのが普通なんだろう?ああいう、魔物を発生させるものがあるからなのかと俺は思ったが」
「うーん、それはそうだけど、普通はその世界で魔物が発生する要因があって、魔物が跋扈するわけだよ。でも湧き点というのは・・ねぇ・・」
「なんだと?」
「おっと、このへんにしておこうか。あ、次回以降の報告はわざわざ呼びつけたりはしない。報告のためにちょっとしたものを与えよう・・君が持っていった仮想空間用の端末はあるかい?」
「ああ、あったなこれ。そういえば、こっちの世界では起動しても展開できなかったんだけど」
「そうなのかい。まあいい、ちょっと貸してくれたまえ」
ガキは端末を受け取ると、手先で弄って何かをしたようだったが、俺には分からなかった。
「ふう、さて、こんなものでいいかな。君の端末を起点として、異空間へのトンネルを起動できるようにしたよ」
「なんだって!?」
「報告書は今後、毎月の1日にその異空間へ提出してくれたまえ。ああ、それ以外にも収納場所として利用してくれてもいいよ」
「その異空間ってのは、使っても大丈夫なものなのか?その・・世界の安全的に」
「大丈夫だよ、暴走してもせいぜい精神ほうk・・」
「ダメじゃねぇか!」
「まあ安心したまえ。ボクの作ったものがそう簡単に暴走しやしないよ。大船に乗ったつもりでいたまえ」
「そうかよ・・その収納はどれくらい可能なんだ?」
「残念ながら、広くはないよ。せいぜい、そうだなあ、広めのロッカーといったところかな?貴重品を置くにはちょうどいいんじゃないかね」
「入れておいて・・無くなる、なんてことはないよな?」
「多分ないねぇ、君以外にはボクくらいしかアクセスできないはずだよ。しかしボクも年頃だから、エッチな本とかそういう類は遠慮してもらえると助かるね」
「そんな物、入れるか!」
「そうかい?隠し場所としてこれ以上はないと思うけど。まあいいや、もし入れていても見なかったフリをするから、安心したまえ・・」
「そうかよ。まあ、金庫代わりとしては便利そうだな。ありがたくもらっておくぜ」
素直に感謝すると、ガキは少し怪訝そうにこちらを窺った。
「なんだかちょっと、何というか・・表情が素直になってないかい?」
「意外と他人に興味あるんだな」
「まあ、ねぇ・・」
「異世界でちょっとした目標を見つけたし、生きるか死ぬかの暮らしをしたことで無気力じゃなくなった自覚はある」
「そりゃあ、ニートの更生とはボクもいいことをしたものだ・・天国にいけるねぇ」
「自分が神のような存在じゃなかったのかよ」
「それは否定したはずだよ。まあ、見方によっては神と言えなくもない、というだけさ」
「分かったよ。それで、今回もまた、後ろの扉から出ていけばいいのか?」
「そうだね。じゃあ次回の報告を待っているよ。できれば後数年くらいは死なないでくれたまえ」
「数年かよ・・心配するな、うっとうしくなるくらいまで生き抜いてやるさ」
「ははは、期待しているとも」
なにやら机の上で作業をはじめたガキを横目に、扉を開けて白い壁を通り抜ける。気が付くと泊まっていた安宿のベッドへと戻っていた。
手には魔銃と仮想空間端末(改)を握っており、ただの夢でないことを証明している。
端末を操作しようとすると妙な挙動をするので、逆らわずに展開してみると端末の上方に黒いもやのようなものが現れた。
手を入れてみると、なるほどどこかの空間に繋がっているようで、手の先が消え、手を引くとまた現れた。
「あ、異空間の中に入れておくと時間は経過するのかとか、基本的なことを訊き損ねたな・・」
ため息をついて、とりあえず持ち金の半分ほどと、魔銃をしまっておく。もう一度展開し、すぐに取り出せることも確かめた。
既にお日様が高く昇っているので、寝坊したらしい。
魔銃のテストも兼ねてブラッドスライム狩りをしようと南門に向かうと「もう野宿は止めたのかい」と、顔見知りの門番に話しかけられ、無事に定住証明証を発行してもらったことを報告した。
門番は定住証明証を持って一度奥に引っ込むと、1分足らずで戻ってきて手続きの完了を告げた。
入るときも同様の手続きをするらしいが、この程度の手続きなら大した負担にはならない。取ってよかった定住証明証である。
人のいない荒野まで移動すると、さっそく魔銃を異空間から取り出して大きな岩に向かって撃ってみる。
何かが身体から抜け出すような感覚がして、筒の先端から光の塊が打ち出された。甲高い音がして、光が撃ち出されるところと相俟ってビーム兵器っぽいなと考える。
ただ弾速は遅い。10メートル離れたところから撃たれたとして、注意深く見ていれば避けられそうだ。
「ま、こんなもんかな」
そして、ステータス閲覧でステータスを表示する。
************人物データ***********
ヨーヨー(人間族)
ジョブ ☆干渉者(5↑)サバイバー(4)
MP 11/13
・補正
攻撃 G
防御 G+
俊敏 G
持久 F-
魔法 G
魔防 G
・スキル
ステータス閲覧Ⅱ、ステータス操作、ジョブ追加Ⅰ、ステータス表示制限
消化機能強化
・補足情報
なし
***************************
やはりか。
予想通り、MPが削られている。
魔力=MPということで間違いないだろう。
いつの間にかMP値が増えている気がするが、これも『干渉者』か『サバイバー』のレベルが上がったときに上がったのだろう。
全てのジョブにMPボーナスのようなものがあるとすれば、複数のジョブを設定できる羊平はMPで優位に立てる。
(魔法職とかも、考えた方がいいのかも・・?)
何度か魔銃を発射してみて、一発につきMPを2消費することが確認できた。
今のところ、他にMPを消費する予定もないので、消費2くらいなら使えそうだ。
少し歩いてブラッドスライムを発見すると、10メートル以上離れた位置から魔銃を放ってみる。相変わらずビーム兵器っぽい高音を響かせながら、光の塊、魔弾が着弾する。
ブラッドスライムは気付いていないのか足が遅すぎるのか、まったく避けることなく当たる。
そして赤い液体を吹き出し、すぐに力を失った。一撃である。
「一撃か・・これなら使えるぞ!反撃を気にする必要がないのはデカい」
その後、木槍に持ち替えて突っつき倒す実験もして、木槍でも十分倒せることを確認してから街に戻った。
木槍は射程があるぶんナイフより楽なのだが、なにぶん木製なので耐久性には不安がある。まぁ安物だから壊れたら買い替えればいいと言えば、そうなのだが。
当分は、木槍を主武器、ナイフを副武器、そして切り札として魔銃を隠し持つという方針とする。
今日の収入は、ブラッドスライムの魔石×6で銅貨50枚強。1つ銅貨10枚を切っている。大量発生の予兆が知らされたことで、大量供給が予想されて値崩れしているという。
大量発生があると、行政予算から出される討伐報酬が増えるが、それ以上に市場価値が下がるために、やや値下がり傾向が続くという。そろそろブラッドスライム狩りも卒業すべきかもしれない。そうなると、次はあのゴブリンなのだが・・。
ゴブリンはとかく徒党を組む。ソロで狩るのは何かとリスクがあるのだ。
「あら、ならパーティでも募集すればいいんじゃない?」
少しくだけた口調で話すようになった、魔物買取センターの金髪ロングお姉さん(だったおばちゃん)が言う。
「パーティってどこで募集すればいいんだ?」
「傭兵組合ね。この街の傭兵組合では、個人傭兵の登録やら、臨時パーティの応募にも対応しているのよ」
「なるほど。早速今から行ってみる!」
ゲームのような冒険者ギルドはなかったが、傭兵組合がその代わりをしているのかな。
あるいは「個人傭兵」の部署が独立して、魔物対策として利用され始めると冒険者ギルドが設立されるのかも。
その前段階にあるのかもしれない。
傭兵組合は、今まで利用したことのない北門付近、スラムの入口ちょっと手前あたりにあった。
中に入ると、個人傭兵部門と、傭兵団部門では完全に部署が異なるようで、個人傭兵部門の窓口付近には何人かの強面たちがたむろしていた。
「個人傭兵の登録と、パーティの勧誘または応募について説明を受けたいのだが」
今度は勢い余ることなく、きちんと相談のための窓口を見つけて、カウンター内にいたマッチョな人に話しかけた。
「登録はこちらの用紙に必要事項を記入して、後程2番のカウンターでご登録ください」
「あ、はい」
「パーティにつきましては、当組合のサービスという形で、個人傭兵に登録を済ませた方を対象に情報のやりとりのみしております。その結果、何らかのトラブルが生じた場合にはご自身の責任となりますので、ご了承ください」
「なるほど」
「個人傭兵の登録後、ご希望でしたら奥のカウンターで中の者にお申し付けください。条件に合うパーティの応募がないか、確認できます」
「勧誘は?」
「同じく用紙に必要事項を記入して奥のカウンターに出していただければ、その情報を当ギルドで残しておき、問い合わせがあれば後日お知らせするという形になります」
「なるほど」
個人傭兵の登録は簡単に済んだ。「対象とする事業」には「魔物の討伐」、「指定依頼の可否」には「保留」としておいた。
戦争などは関わらないつもりだ。
メンバーを募集しているパーティの情報は、いくつか見つけた。臨時のほうはもちろん、継続的なパーティを募集する方にも、目的が「ゴブリン討伐」が多かったのは意外であった。
てっきり、継続的なパーティはもっと「魔物狩り」など曖昧な設定にして、色んな依頼を受けるイメージがあったのだが、そればかりではないということだ。
つまり彼らは、ゴブリン狩りのみを目的とするパーティを結成していることになる。
それだけゴブリン狩りが儲かるのかもしれない。
ただ、そういったパーティの多くは3日に1度や6日に1度といったペースで活動しているものが多い。専業ではなく、本業が他にあるということだろうか。
とりあえずは臨時でゴブリン狩りを募集しているところを探すと・・
(明日までに募集しているのは、2つ、か。片方は本日面接ってなっているけど、どういうことだろう?)
「この面接というのはどういうことなんだ?」
カウンターの向こうで資料に目を通している、やる気のなさそうな女性に尋ねる。
「それはですねぇ、人となりを見極めてから判断したいってことでぇ、やりますぅ?」
「じゃあ頼む」
こちらも先方の人となりを見てから判断できる方が安心できる。
カモを探している、とかでなければいいんだが・・。
今からパーティのリーダーに連絡して、夕方に待ち合わせるということで一度組合を出た。
組合は結構人が集まっており、中は少し熱気が籠っていたようだ。外に出ると爽やかな気分になる。明日の準備でもしておくか。
少しばかり金に余裕が出てきたので、追加の服や新しい布袋、干し肉などを買い足していく。
歩き回って疲れてきたころに、陽も傾いてきたので組合へと戻る。
「パーティの件で待ち合わせをしていたのだが・・」
「おおっ、君がそうかい?付いてきたまえ」
カウンターに声をかけようとすると、後ろに立っていた男がグイグイと入ってきた。
「あんたが『ブリームティの花々』のエリオットさん?」
「そうだ。とりあえず今日は夕食でも食べながらどうかね?」
「それでいいのか?面接というからてっきり・・」
「はっは、結局応募してくれたのは君だけだったからね!お堅いのはナシでいこう」
エリオットは、戦士然とした長身に、肩まで伸ばしたロングヘア、しゅっとした顔のイケメン風優男である。
風、というのは、よく見るとイケメンでもないのだが、雰囲気で何となくイケメンっぽく見えるという人種である。雰囲気イケメンというのだったか。
エリオットに連れてこられたのは、予想外にもちょっと高級な、レストランといった風情の飯屋だった。
「あの、俺あんまり金ないんだけど・・」
「今日は僕が持つから、気にしないでくれたまえ」
「えええ・・いいのか」
「何、仲間となればこれから長い付き合いだ。遠慮はいらないよ」
「ん? 待って、そもそも臨時パーティじゃないの」
「その通りだが、面接を合格すれば今後も定期的に組んで欲しいという要望だったはずだよ?受付のレディーから聞いてないのかい?」
「いえ、まったく」
あのやる気なし女・・。完全に忘れていたろ。
「そうだったのかい・・ウチはちょっと特殊でね、信用できる相手と組みたいし、そういう相手を毎回見つけるのは大変だからね。定期的に組んでもらいたいのさ。だめかい?」
「いや、俺もその方がありがたいな。登録したばかりで、トラブルに巻き込まれるといやだし」
「そうかいそうかい。予約していた席はあちらだ、さ、行こう」
エリオットに連れられて、大テーブルを囲むように女性が3人座っている個室へと入った。
「エリィ、それが仲間候補かい?」
入って左側に座っている大柄の女性が窺うような視線を向けてくる。
髪はくせのある赤毛ショートで、化粧などしていない。ちょっと、そばかすがある。ザ・女戦士って感じか?
「てっきり、新しい女を連れてくると思ったけどね・・」
「はっは、それもいいが、応募してくれたのが彼だけだったからね!」
「そりゃあ、ゴブリン狩りごときの臨時パーティで面接する人なんていないでしょう・・あんたもよくこんなところ受けに来たもんだ」
ジト目で睨まれる。普通はないのか、こういうこと。あの受付の女、それくらい説明なりフォローなりしてくれても良かったのに。
「ちょうどゴブリン狩りを始めようと思っていたところでね。ゴブリン狩りで面接ってのも面白そうだから、応募してみた」
「・・酔狂だねえ」
ハッと馬鹿にしたような笑いも漏らしたが、女戦士の雰囲気と合っていて嫌な感じは受けない。
「先に紹介するとしよう、左から、今話していたのが『剣士』のマリー、それから、『癒術士』のパッチ、そして・・トリシエラさ」
「ん?トリシエラだけジョブの説明がないのはなんだ?」
「・・うるさい」
トリシエラと呼ばれた切れ目のボブカット美人が照れたように目をそらす。するとイケメン風男子がこちらを手招いて、小声で話す。
「トリシエラは『性術士』さ。僕のわがままでなってもらっているから、あまりいじめないでくれたまえ」
「は、はぁ!?性術・・っ?」
思わずぞわっとして飛退くが、エリオットはさわやかな笑顔で追撃してくる。
「おや、『性術士』のジョブを知らないのかい?見掛けによらず、初心なんだねぇ」
「いや、ジョブの勉強はしていなくてな・・すまない、あんた・・トリシエラも、馬鹿にするつもりはなかった。すまなかったな」
「いや、いいけど・・」
トリシエラは真っ赤になって俯いている。
性に関する魔術師なのか、性の術を極める人なのか・・。
どっちにしろエロ関係なんだろうな。この恥ずかしがる反応からしても。
「それにしても、ジョブって初対面で言ってもいいものなのか?」
「人それぞれじゃないかね?僕は特に気にしないけどな!」
「そうかい・・じゃあ一応言っておくか。俺は『サバイバー』だ」
「『サバイバー』!渋いジョブを使うねぇ」
「珍しいのか?」
「うーん、ジョブの選択肢に出ることは多いみたいだけどね。選択する人は少数さ」
「そうか」
「しかし、ステータス補正はそう悪くないという話だし、魔物狩りをするには便利なスキルも色々あるらしいじゃないか。期待できるね」
「レベルは高くないから、あまり期待しないでくれ」
女性3人は、こちらの話をじっと聞いているだけであまり混じってこない。面接だからか、エリオットがリーダーだからか。
「自己紹介が遅れたな、俺はヨーヨー。訳あって無一文になって、それから魔物狩りをして暮らしている」
「それは大変だったねぇ!いつからなんだい?」
「ここ最近さ。つい先日までは、グリーンキャタピラを狩ったり、ブラッドスライムを狩ったり・・。ブラッドスライムの情報を入れたのも、俺なんだ」
「グリーンキャタピラは臭いからねぇ・・。じゃあ、ゴブリンは初めて?」
「そう。初心者でも入れてくれるか?」
「そりゃ構わないよ。武器は?」
「槍だ。後は・・まぁおいおい説明していくよ」
魔銃は出してもいいのだろうか?とりあえず最初は木槍を使おう。
「前衛ならありがたいねぇ。僕とマリーは剣、トリシエラは弓を使うよ」
「そういえば・・エリオットのジョブは?」
「僕かい?僕は『華戦士』さ」
「『華戦士』・・。」
「珍しいジョブだろう?ジョブ獲得条件は秘密さ!」
「前衛向けのジョブなのか?」
「そうだねぇ、まぁ普通の『戦士』のカッコいいバージョンと思ってくれればいいさ!」
「かっこいいんだ・・」
ナルシストなのが条件だったりして。
「それで、俺は合格なのか?不合格なのか?」
「君たち、どう思う?」
エリオットは女性陣に話を振る。
「あたしは良いと思うけどね。あたしらより弱そうだから、襲われることはないでしょ」
「私も構いません」
これは今まで喋っていなかった、真ん中のパッチだ。『癒術士』・・だったかな?回復系統のジョブか。水色っぽいショートで、地球にあり得ない色なのでちょっと目を引く。剣士マリーと並ぶと小柄なのが良く分かり、小動物といった感じだ。受け答えが真面目っぽい。
「・・別に良いけど」
性術士のトリシエラは大人しい、というか暗い感じだ。
ジョブはアレなのに、まったくビッチっぽくない。
ずっと俯いているせいで、サイドテールにした茶色い髪が後ろに見えている。
美人だし、ジョブからいってエリオットの恋人か?
「トリシエラは、エリオットと付き合っているのか?」
「はっは、彼女らは全員僕の奴隷さ」
「・・えっ」
「・・エリオット様」
パッチが咎めるように声を出す。どうやらバラすのはもっと後の予定だったらしい。
「まあまあいいじゃないか、彼は合格したんだし、もう話してしまおう」
「はあ」
「僕たちは、僕と奴隷たちで組んでいるパーティでね。ただ、ゴブリン相手だともう少し数が、特に前衛が欲しい」
「なるほど」
「ただ、彼女たちのような魅力的な女奴隷を連れているというのは、何かとトラブルの元でね・・。面接方式にしたのも、彼女たちと上手くやっていけるか、おかしな気を起こすような人でないかを見たかったのさ」
「まあ、そういうことなら手は出さないけども。まさかパーティに3人も奴隷がいるとは・・よくあることなのか?」
「戦闘奴隷を使う人は少なくはない。個人傭兵なんて、信用できる仲間を得るのが一番大変だからね。その点、きちんと隷属魔法を掛けた奴隷ほど、安心できるパーティはいないと言える」
「なるほど、隷属魔法か・・」
予想だが、主人を攻撃できないとか、命令には従うといったことが魔術的に強制されているというところか。厳しくしなくても、裏切らないことを担保できるのだから、地球の奴隷とはまた別の文化が発展しているのかもしれない・・。
「ただ、戦闘奴隷として使うにはやっぱり男性、年齢も高めの方が多いね。僕みたいに若い娘を戦闘奴隷としてもいるのは、かなり珍しいんだろうねぇ・・」
「それで警戒していたわけか」
これは罠とかではなさそうかな。
罠だとしたら、わざわざこんな変な設定にする必要が感じられない。まあ、最低限の警戒は続けるが。
それよりもこれは好機かもしれないな。
「実は俺も、奴隷ハーレムを目指していてな。是非話を聞かせてくれ」
「はぁ?アンタバカだねぇ・・」
マリーには呆れられたが、エリオットは目を輝かせて頷いてくれた。
「おお、同志だったのかい!まだ奴隷はいないのかい?」
「ああ、無一文になったときに、成り上がって奴隷ハーレムを築こうと決めたのさ。だからまだ全然金が足りないというところだ」
「そうかい。僕としては、1人は『性術士』にして・・おっと、トリシエラが睨んでいるから何でもないさ」
「奴隷ってのは、裏通りにある奴隷市場でやりとりするのが普通なのか?」
「うーん、僕は店舗に行くけどね。市場は掘り出し物があるという話だけど、基本的に質が悪かったり、ワケありだったりして大変だからねぇ」
「そうなのか」
「少し割高になっても、きちんとした店で取引をした方が教育もきちんとしているし、病気もないし、安心できるかなぁ」
「参考になる・・値段はどれくらいなんだ?たとえば・・」
3人娘をちらりと見て、ちょっと失礼な話題だったかなと思う。
「彼女らは金貨数枚じゃ足りないよ。ただ、パッチとトリシエラは小さいころに引き取って育てたから、当時はそれほどじゃなかったけどね」
「子供だと安いのか」
「旬の年齢よりはそりゃ安いさ。老人よりは高いがね」
「やはり金が要るな・・」
「ま、僕のパーティはゴブリン以外にも、色々やっているから、ぜひ参加してくれたまえ」
「ああ、ありがとう」
一定の手続きをすれば、傭兵組合を通して、相互に伝言を残すことができるらしい。今後も声をかけてくれるように話をしておく。





