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【マイルド】異世界 きまぐれぶらり旅~奴隷ハーレムを添えて~  作者: さとうねこ


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10-34 あちら

軍の作戦で他の部隊に混じって南に進んでいる。


速さは結構なもので、重武装で進むと、かなり体力が持っていかれる。俺たちは何とか付いていけたが、経験が薄いという護衛たちは時間とともにかなりへばって来た。他人の肩や頭を借りて止まり木にしている丸鳥族を除いて。

シタケなどは脱落するかという瀬戸際まで追い込まれたが、気合いでついてきている。


数日間そんな強行軍に付き合った後、分かれ道でニールから転進を告げられる。

規律が厳しい部隊を中心に、多くはそのまま南へ。

そして少数の部隊ばかり、数部隊は西へ。

俺たちはどちらでもない。南西に進む小道を行く。


南西への道は、ほどなくして森に入っていく。

まっすぐ道を通したというよりは、森の地形に合わせて踏み固められた道だ。

くねくねと曲がりつつ、奥に進んでいく。


途中、川の傍のやや開けた場所で野営を挟む。


「ニール曹長」

「なんです?」


神経質そうな連絡係を呼ぶ。

彼はかなり本格的な鎧を着ているが、ここまでの行軍でへばった様子はない。

戦闘ジョブではないからといって、ひ弱だとは言えないらしい。


「森に入ってからのスピードからして、どれくらいで着くか分かるか?」

「分かりませんが、おそらく明日中には着くんじゃないでしょうか」

「そうか……あいつらのことだが」


少し離れた場所で寝息を立てているシタケ達を目線で示す。


「彼らが何か?」

「ここまで、俺たちとの手合わせも少しはしたし、俺なりに見ていたが」

「はい」

「……あまり使い物になるとは思えんな」

「はい。そうお伝えもしましたが?」

「いや、別に疑っていたわけでもないんだが。こうなると、どう使ったものか」

「ヨーヨー隊長」

「ん?」

「作戦成功のことを思うなら、使いつぶす……彼らを囮にするなり、そういった使い方をすべきなのでしょう」


森を抜けて目標のメリジリアに達したら、まずしなければならないのは集落の様子を探ることだろう。

そのとき、試金石として村に派遣して、敵の攻撃の有無や場所を観察する。

そんな使い道のために、彼らは当てがわれたのかもしれない。


ニール曹長は淡々とそのように説明した。


「しかし、同時に私は……これは軍人としての言葉ではなく、個人的なお願いですが。彼らを見殺しにする作戦は取ってほしくありません」

「ほう」


こいつ、護衛たちに情があったのか。

あるいはここまでの行程で情が移ったのか。


「彼らの寝姿を見てください。まだあどけない……その辺りの村にいる若者です。私などより、どれだけの可能性を秘めているかも分からない」

「可能性ねぇ?」

「はい。未来と言い換えても良い」

「未来ね。まあ、俺も別に進んで見殺しにするつもりはない。死にそうなときに助けるかどうかは、約束できんが」

「ありがとうございます」


ニールは軽く頭を下げる。


「素直になってるあんたに、ついでに聞いてみたいんだが」

「なんでしょう」

「……お味方の決戦で、勝てる確率はどのくらいだと思う?」

「……なるほど。その話ですか」


ニールは自分の長めの髪を整えるようにしながら、神経質そうな表情を一層曇らせた。


「正直に言いますと、4割」

「4割?」


多いのか、少ないのか。

微妙な数字が出た。


「状況が状況ですから、3割と思うところですが。しかし、こちらの士気も上がっている。私が思うよりも大軍が援軍として来るかもしれませんし、4割というのが率直なところですかね」

「味方がもし、万が一敗走でもしたら。俺たちが落とした拠点はどうする?」

「難しい問題です。可能な限り維持して、敵が来ても遅延作戦を行うべきですが」

「そこまでは俺の契約範囲外だな」

「そのようですね。普通はダメ元でも、もしもの場合の遅延作戦の実施くらいは契約に入れておくのですが……」

「俺たちが撤退したら、あんたはあの護衛たちと残るのか?」


ニールは寝ている護衛たちに目をやり、そして頷いた。


「そう、せざるを得ないでしょうね」

「あいつらは皆死ぬぞ?」

「そうですね。なんとか1人でも、生きて返すために努力することが、私のできる唯一のことでしょう」

「そうか」


若者が心配でも、軍としての任務を放棄するわけにはいかないと。

この世界でも、結局戦争で死んでいくのはこういう奴らなんだろうな。


「それで……ん?」


気配察知に妙な反応。

気配探知をそちらに何本か放つ。


「……剣を抜け」


チリンチリン、と風流な音がする。

こっちはサーシャが仕掛けた音罠だ。

気配がした方向と同じ方向だが、少し角度がズレている。


団体のお出ましか。


「敵か!?」


キスティが音に反応して跳び起き、それにつられてサーシャ、ルキが目を開ける。


「おら、起きろ!」


いまだに夢の中にいる護衛たちを蹴り上げる。


「な、何ぃ~?」

「えっ? なんだ夢か……」


リュズとシタケが寝ぼけている。

モクナはドンに寄りかかってまだ寝ている。こいつら、生き残る気あるのか?


「ヨーヨー」


少し離れた場所で仮眠していた、セラが寄ってくる。


「敵の情報は分かるか?」

「今確認した。亜人だ」

「何体だ?」

「群れだ。10以上いる」

「了解」

「俺は回り込む敵がいないか警戒する」

「頼む。俺たちは正面の奴らを迎え撃つ」


側面はセラに任せ、寝坊助たちより前に陣取って剣を担ぐ。

隣にはキスティ、ルキが並ぶ。


「グアアァ……」


低い声を発しながら現れた亜人は、人間族と同じようなサイズ。

ヒゲで毛むくじゃらの顔に、鋭い歯、赤い目。尖った耳。

かなり猫背だが、二足歩行ではある。

手は長く、何かの動物の骨を組み合わせた武器を握っているように見える。


そして下半身にはボロリと、巨大なイチモツ。


気に喰わんな。


「ウガアアア!」


こちらを視認すると犬歯をむき出しにして走り寄ってくる。

人型なのもあって、動作がゾンビっぽいな。


「オラァ!」


走り寄ってきた亜人の腹に、キスティのハンマーが直撃する。

身体が吹き飛び、後ろの亜人を巻き込む。


キスティのハンマーの威力を見ても、怯むことなく続く亜人が寄ってくる。


「アイスランス」


氷の槍を創り、亜人の頭を目掛けて放つ。

直撃してのけ反る亜人。

しかし頭蓋骨を貫通はしなかったようで、ますますヒートアップして走り寄ってくる。


ゾンビっぽいからヘッドショットをしてしまったが、こいつに攻撃魔法は勿体ないか。

近付いてきた敵に、フェイントを掛けながら「魔閃」を発動。

首がもげ跳び、身体だけが後ろに転がっていった。


「ギャッ!! 気持ち悪い!」


後ろからリュズっぽい悲鳴が聞こえる。

なにやってんだ。


次々と亜人が現れては、俺とキスティにやられていく。


「ヨーヨー!」

「セラ。どうなってる? 10体を超えたぞ」


幸い、敵は亜人であっても、協調したりするタイプではないようだ。

こちらを見ると目の色を変えて走り寄ってきて、そして各個撃破されている。


「湧き点が近い可能性がある。移動しろ!」

「そういうことか……チッ」


湧き点の情報すら、軍からはなかった。

おそらくだが、そもそも把握してないんだろう。


「敵以前に、魔物に殺されて終わりってのは……クソみたいなオチだな!」

最初の数体は骨を組み合わせたような武器を持っていた。

しかし次第に、それすらなくなってきた。

素手で、こちらに組みついて来ようとする。


素手では射程も短いし、ちょっとしたフェイントにも簡単に引っかかる。

こいつは楽勝すぎるな。

ただ、数が多い。


ルキも攻撃に回り、サーシャもヘッドショットを放ち始めた。

それでも討ちきれずに、俺の後ろにいる護衛たちに襲い掛かる奴が出る。


「来るな、来るなー!」

「ふっ! やぁ!」


リュズが叫びながら矢を浴びせ、シタケが息を荒くしながら戦っている。

さすがに素手相手に負けはしないようだが、時間がかかっている。

その間に2体目がシタケを襲おうとして、サーシャの放った矢で倒れる。


「よし、戦いながら移動するぞ!」

「どっちに!?」

「セラ、湧き点の位置は……む?」


何かが周囲を包む。

霧のようで、霧ではない。


気配探知がまともに作動しない。

これは……一度経験がある。湧き点が出来ている?

いや、拡張している?


「下がれ、これは湧き点だ!」


声が届いているのかも分からない。

無理やり、味方の位置を探ろうとする。


視覚、聴覚、あらゆる五感。

気配察知と気配探知。

何か、何かあるか。


最近少し慣れてきた、しかしそれとも少し違う。

蛇口を捻るように、それを動かすように念じる。


広がった。

繋がる。

広がる海……砂漠?


今俺はどこにいる?


目が合う。

赤い目だ。


それは俺を見て、畏れたように伏せる。

そして再度見上げた顔は、醜く歪んでいる。


さっきの亜人!



蛇口を逆に捻るように、空間を閉じる。

亜人は驚き、叫ぶ。


音は届かない。



なんだ、あそこは。

行ってたまるか。

戻れ、と強く念じる。


森の匂いが戻り、音と、そして俺の肩を叩く感触に振り向く。


「主、大丈夫か?」

「キスティ」


見渡すと、霧のようなものはなくなっている。

そして、辺りに転がるのは亜人の亡骸。


「……ああ、大丈夫だ。俺は今、どうなっていた?」

「いや、白いもやに隠れてしまって分からないが。大事ないか?」

「そうか……」

「湧き点が拡張して、そして収縮したのだろう。たまにあることと聞く」

「収縮、か」


きっとそうなのだろう。

しかし、俺には妙な確信があった。


あれは単に収縮したのではない。俺が、閉じたのだ。

いや、狭めたというべきか。


まだあの世界と、ここの近くは繋がっている。


「まだ湧き点が近いだろう、すぐに進むべきだろう」

「ああ。ニール、無事か?」


声を大きくしてニールを探す。


「ええ、なんとか」

「ここから目標に進むべきか、戻るべきか?」

「……進んだ方が早いとは思いますが、大丈夫ですか?」

「俺は問題ない」


そうだ、問題ない。


俺が白いもやの中で感じた、既知の感覚。

驚いたが……考えたら、この世界の偉いさんもそれくらいは予想しているだろう。


湧き点って、転移だったんだなぁ。

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