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【マイルド】異世界 きまぐれぶらり旅~奴隷ハーレムを添えて~  作者: さとうねこ


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9-29 指揮系

先週は更新できず、失礼しました。

ちょっとリアルがアレでした。

襲ってきた亜人、腕人を倒した。


偵察隊の面々が解体を受け持ってくれ、俺たちはまた夜警に戻った。

魔石の1つを俺たちパーティにくれるということで、ありがたく受け取る。


「お手柄だったねー、ヨーヨーちゃん!」


ヒュレオは持ち場に戻らず、俺の近くの焚き火で何やら魚を焼いて食っている。

いや、ヒュレオは一応総大将なんだし、持ち場とかはないのかもしれないが。


「その魚は?」

「ここの連中から買ったのよ。川も近いし、結構釣れるらしいぜ? あ、いる?」

「いらん。それにしても、シャクラン家の連中も、威張ってるだけの実力はあるな」


ヒュレオは魚の身をある程度齧ると、頭から丸呑みにして残りを平らげる。


「げぇーっぷ。ははん、ヨーヨーちゃん、ラキュちゃんのことかいね?」

「ああ」

「彼女はねー、剛力姫って呼ばれてた頃もあったらしい! 今度呼んでみなよ」

「それ、絶対本人が嫌がったやつじゃないか?」


呼んだら俺が怒られるやつだ。

くだらないいたずらを目論みやがって。


それよりも……。


「女だったか」

「あん? そりゃ、三毛なんだからそうでしょ」

「そうか、三毛か」


そういえば三毛猫ってメスがほとんどなんだっけ。

そんな地球世界での常識が、こっちの、猫人に適用されるとは、不思議な気がする。


「……ヒュレオ。いつまでここに放置されるんだ? 俺らは」

「さて、ね。正直、オレっちなら信用できねーとしても、とっとと前線に送り込んで使い潰すけどねー。何を考えてんだか」

「今、クダル家と揉めたくないから、それもし難いってことかね」

「あー。ま、それはあるかも! その辺のことは、マッチちゃんとモセちゃんに任せるしかないなー」


こいつは、モセ・シャクランがモク家に通じてるかもとか、流石にその辺の事情は知ってるんだよな?

俺の方が知ってるとかだと、さすがに謎すぎる。


あの切れ者っぽいマッチが、あえてヒュレオには雑音を届けていない可能性はあるが。


「そのモセと、アード族の面々は大丈夫か? だいぶ突っかかられてただろう」

「そうねー。みんな、ちょっとばかし勘違いしてる気はするんだけどね」

「勘違い?」

「ウチのお館様のことでサ」

「お館様……クダル家当主か?」

「まあ、そ。ジレルちゃんね。いつか会いに行ってあげてよ」

「俺と会ったところで、何があるとも思えんが」

「かもねえ。ま、ヨーヨーちゃんなら多分、怒られたりもしないだろうからさ」

「多分?」

「うん、多分。ジレルちゃん、年々怒りっぽくなってる気がしてさー」

「じゃあ嫌だよ。怖いだろうが」


クダル家の当主と言ったら、いわばお貴族様みたいなもんだ。

怒りっぽい貴族様とか、会いたくない存在だろうが。


「ホントはジレルちゃんも、大型の相手をして暴れ回りたいのかもしんねーなー。偉くなるって、ホントエネルギー使うよね」

「そうかもな」


現場で鳴らした営業マンが社長になって、フラストレーション溜めてるみたいなことか?

それで怒りっぽくなられても困るが。


「……一応、ヒュレオも今回の総大将なんじゃないのか?」

「そそ。だからヨケーなことも色々あるわけ! あー、オレもかわい子ちゃんたちと旅してー。ヨーヨーちゃんみたいにさ!」

「フラフラして、似たようなことしてるだろうが」

「ヨーヨーちゃんまでそんなこと言って! まあ、モセちゃんはかわい子ちゃんと言えなくもないか。年を気にしなければ」

「……モセって、どれくらいの年なんだ?」

「んー、まあ、アバウトに伝えると、そうだなあ。まあ、おばあちゃんの範疇ではある」

「ばあさん」


いわゆる美魔女みたいな存在か。

あのツンツンした感じも、おばあちゃんだと考えると……余計腹が立つな。


「気を付けなよー、彼女、あんな態度なのに、不思議と心を開いちゃうってか、余計なことまで言っちゃうというか。多分何かのスキルなんだろね」

「え? 魅了的なスキルってことか?」

「それに近い物を種族スキルとして持ってるって噂もある。真相は闇の中だけどね」


なんてことだ。

ツンデレ猫の不思議な魔力は、異世界でスキルと化していたのか。


「せめて獣耳族のツンデレならなあ……」


少し離れて立っていたルキのウサミミが、こちらを向いているのが見えた。

しばらく見つめていると、そっと別の方向に向きを変えてしまった。



***************************



それからも数日待たされて、ようやくモク家の拠点に再び呼ばれた。

ヒュレオとマッチ、モセに加えて、何故か俺が呼ばれて中に入る。


「お待たせしているが、問題はないか?」


中で出迎えたのはタヌキみたいな顔をした人物。


「ないよ、魔物には何度も襲われてるけど」


ヒュレオが軽い調子で言う。


「……そうか。それでは朗報だ。あなたたちには西に向かい、前線の砦に合流する許可が出た」

「ほー」

「失礼。私から宜しいか?」


マッチがヒュレオの背後から口を出す。


「どうぞ」

「我々の指揮権はどうなります?」

「特に指示はない。したがって、移動を強制するものではない」

「自由に動いて良いと?」

「我らの指揮下に組み込むわけではないが、動くのであればこちらの指示には従ってもらう」

「現場での指揮系統は?」

「そちらはお任せする。特段の指示がなければ自由にやってくれ」

「特段の指示があれば従え、と」

「それは当然だ。貴殿も部隊を指揮する経験があれば、分かるだろう?」


マッチはただ肩を竦めた。


「西に向かった後どうするかは、またしばらく待つことになるでしょうか?」

「それは分からん。申し訳ないが、今は我らの上役も手一杯なのだ。諸々の不便は容赦願いたい」

「分かります」


マッチはそれ以上は特にないというように、話を短く締めた。

それに今度はヒュレオが口を挟む。


「1個良い? モク家のお偉いさんに、これだけは伝えといてちょ」

「……何だ?」

「オレたちは今回、本気で救援に来てるのよ。今までの関係で色々考えちゃうのは分かるけどさ、そんな場合じゃないでしょ。そっちも度量を見せなって」

「度量……」


タヌキ顔のヒトは何とも言えない表情でヒュレオを見ている。

何か感じ入るところがあったのか、はたまた偉そうに言われてムカついている顔なのか。


「機会があれば伝えておきましょう」

「よろしく!」


ヒュレオがうんうんと頷いて引き下がる。

おそらく、タヌキ顔のヒトがモク家の上層部に伝えることはないだろう。


「さてさて、やっとお仕事の時間だ! 皆、気合入れてこー」


ヒュレオが気合十分になっている一方で、その霧がかった顔を俯かせていた霧族のマッチが、こっそりと俺の肩を掴んで来た。


「少し時間をいただきたい、ヨーヨーさん」

「……ああ」


マッチが使っている臨時の指揮所に連れていかれ、マッチが人払いをする。

質素ながら比較的大きな机の上には、手書きの地図が広げられている。


マッチはその奥の椅子に座り、対面の位置となる椅子に座るように俺に示す。

護衛も残さず人払いをし、1対1の対話だ。


「アード族の連中から、余計なことを吹き込まれたかな?」


いきなりドストレートな質問。

最初は雑談から入るとか、探りの質問を入れるとか、一切なしだ。

思わず返しを戸惑う。


「それは……」

「ああ、ヨーヨーさんを責めるつもりは毛頭ない。何か密告めいたことがあったわけでもない。近頃の様子を見ていれば、誰でも察する程度のこと」

「俺から言えることは特にないぞ。何やら難しいことを考えているようではあるが、俺を動かしたいならあんた、マッチを通してくれと言ってある」

「ほう、存外に……。いや、その配慮はありがたい」

「別にあんたらに遠慮したわけじゃない。俺は単に面倒に巻き込まれたくないだけだ。俺が参加したのは、魔物狩りをするためだ」

「ふむ」


マッチは机の上の木製のコマを1つ拾い上げ、指先で弄ぶ。


「……ヨーヨーさんは、何故魔物狩りを行うのです?」

「はあ? いやそりゃ、生活のためでもあり……そもそもあっちから襲ってくる存在だしな」

「そうですね。ですが、単に魔物狩りを生活の糧とするためであれば、ここである必要はない。もっと東の安定した地域で、対象を絞った狩りを行った方が安全で、金にもなるでしょう」

「ああ、オソーカで狩りをする理由か? そう言われると、何だろうな……」


実際は、探査艦という拠点がオソーカにあるからだが。


「まあ、何となく、かな。この辺は前から縁があるし、人類の最前線ってのも面白いじゃないか」


口に出したことも、嘘ではない。

だからまた、変な判定スキルみたいなものが使われていても問題はないはずだ。


「……そうですか」


マッチは顎?を指先でさすり、何やら考え込んでしまった。

何のために呼ばれたんだ、俺は?

少しの間が空いて、マッチが再度口を開いた。


「シャクラン家のことですが」

「……」

「彼らがモク家と誼を通じているのは、おそらく事実です」


何故そんなことを俺に言うのか。

身構えつつ、耳を傾ける。


「しかし、誼を通じることと、裏切ることは同じことではありません」

「……そうか?」

「誼を通じて、首尾よくモク家と話せる仲になったとして。だからといって、すぐに裏切るわけではないですし、必ず裏切るわけでもないです。実際は展開次第で、機会があれば裏切ることも視野に入れる程度でしょう」

「なるほど。そうかもしれないが」


クダル家が勢いがあるうちは裏切らない、みたいなことはあり得そうだ。

裏切らないまま目標を達成できるなら、あえて裏切る動機もないだろうし。


「万が一完全に向こうに取り込まれていたとしても、私がモク家だったら、シャクラン家に分かりやすく裏切れなんて言いません。むしろクダル家の情報を送ってもらった方が有用ですから」

「……つまり、シャクラン家を排除する必要はないと言いたいのか?」

「いえ、場合によっては排除した方がいいこともありえます。ただ、上もシャクラン家のことは知った上で、この救援部隊に入れていると考えるべきということです」

「なるほど。それは分かったが……それを諭すべきは俺じゃないのでは?」


俺は余計なことをする気はないのだから、暴発しそうな連中に言ってほしい。


「そうですが、それだけではありません。シャクラン家も、アード族の若手たちも、上が選出しました。何かが起こっても、まあ想定内でしょう。しかしあなたは違う」

「ヒュレオに突発的に誘われたからか」

「ええ。ヨーヨーさんとそのパーティメンバーは、おそらく上が思っている以上に力があります。あなた方を味方にした方に勝ちが転ぶなんてこともあり得ます」

「俺が動くと、上の想定外になってしまうということか?」

「そうですね、そう取ってもらって良いでしょう。もしシャクラン家や……他の暴走した連中を排除するのに手を貸してもらいたいときは、私から声を掛けますから、それ以外は動かないでいただきたいのです」

「分かった。とりあえず余計なことはしないでおく」

「助かります」


マッチは頭を下げた。

今まで、マッチがそのようにしていたのは見たことがない気がする。感謝の意、ということで良いのだろうか。


「逆に、あんたに頼まれたとしても、必ず引き受けるとは言えないが、良いか?」

「それは致し方ありません。ヨーヨーさんは組織の外の方ですから」

「理解してもらって助かる」


それなりに力があると認めてくれたようだが、そのせいで矢面に立たされるのは避けたい。


「ついでに訊いていいか? あんたとヒュレオは、実際のところどんな関係なんだ? 霧降りの里の件でも一緒だったよな」

「私とヒュレオさんですか。それほど深い話はありませんよ。現場で組まされることは多いですから、似た境遇とは言えるのかもしれませんね」

「ヒュレオがあんたを指名しているわけではないのか」

「どうでしょう。裏ではあるのかもしれませんが、そう言われたことはありませんね」


実際にそうなのか、何かはぐらかされているのか分からない答えだ。もしはぐらかされてるなら、それ以上聞こうとも思わないから良いのだが。


「なるほど。そういえば前の腕人戦では、火戦の祈りだったか? 援護してもらって助かった」


政治的な話から、ジョブの話題に転換する。

マッチと人払いされた場所で1対1で話せるのはレアな気がするから、聞きにくいことを聞いてしまおう。ジョブやスキルの情報はいくらあっても困らないのだ。


「あれですか。溶岩魔法にも効果はありそうでしたか?」

「おそらく、という程度だが使いやすかったと思う。あれは所謂、バフというものか?」

「そうですね……。バフと言って良いものか分かりませんが、そう取ってもらって良いでしょう」


微妙な答えがくる。


「俺の火魔法の威力を上げてくれたのだよな?」

「ああ、いえ。あれは一帯の火属性スキルの威力を底上げするものです」

「む? つまり……敵のスキルも?」

「はい、そうです。ですから、常に展開できるものではないと思ってください」


敵が火を使ってきたら、使えないということか。

敵のスキルも強化してしまうから。


「既にご存じかもしれないですが、私のような指揮系ジョブは、バッファーというわけでもありません。戦場の状況整理をして、有利に導く役割と言いましょうか」

「なるほど……指揮系ジョブか」


指揮官の道を極めるためのジョブ系統ってところか。軍の指揮官とかも、きっと取ってるのだろうな。

なかなか面白い。


「もう宜しいかな? 私の用件は先ほどの話で済んだのだが」

「ああ、すまない。俺ももう行くとしよう」

「最前線では何が起こるか分からない。ヨーヨーさんパーティの活躍、期待していますよ」

「ああ、期待に応えられるように頑張るよ」


頑張ってダメそうだったら逃げるけども。

そう思いながら、自分たちの部屋に戻った。

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