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【マイルド】異世界 きまぐれぶらり旅~奴隷ハーレムを添えて~  作者: さとうねこ


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8-7 ケケラウス様の思し召し

宿場町のシシュクで、スライム鍋を食べた。


シシュクで一泊した後、早朝に町を出発する。

小雨が降っているが、傘があっても差さないくらいの弱さ。

それくらいの小雨でも、索敵はかなりやりにくくなる。俺の気配察知や探知、サーシャの遠目スキルなどが影響を受けてしまう。


少しずつ強くなる雨に神経を尖らせながら、野営地で一泊する。

テントを持ってきていないので、簡単な雨よけの器具を設置した。水を弾く布を周囲の木や地面に立てた棒に結びつけ、その下に固まって集まる。

肌寒いし、ざあざあという音や、火も点けられずに周りに広がる暗闇が不安を誘う。テントの重要性を思い知る。


そんなことを言いつついつの間にか寝落ちしていたのだが、夜中に目を覚ました。

アカーネとルキが起きて周囲を見ている。


「アカーネ。後ろの森の方向に……チッ」


サーシャたちを踏んでしまうかもしれないが、そんなことを気にする場合でもなく、魔導剣を拾って抜く。


「キシャアアアァァ」


飛び出してきたのは、尖った棒を持った下半身が蛇のような亜人。上半身はしわが目立ち、ごわごわした髪の老婆のようだ。


剣で棒を払うと棒が折れ、短くなった棒をそのまま振り下ろしてくる。余裕を持ってそれを避け、無防備な腹に蹴りを入れる。

空中で剣を回し、転がった亜人の胸に突き立てるように振り下ろす。


「キシャ…ァ…」


胸を貫いたまま、短剣で首すじをかっ切る。


「ふう」


気配探知で念入りに探るが、他にはいない。


「主様。申し訳ございません」


ルキが盾を構えて、ウサ耳を動かして全方位を探るようにしながら近づいてくる。


「いや。ルキの五感でも気付けないなら、隠密が得意なヤツなんだろう」


ルキは優れた探知スキルがあるわけではない。

しかし種族的なものか、聴覚や嗅覚が鋭く素の索敵能力が高いのだ。加えて夜目も利く。

俺が起きたのは「レストサークル」の範囲に引っかかったからで、相当近づかれてからだ。

しかもこちらに気付かれたことを察してか、俺が起きてからはアカーネたちに警告する暇もなく急に俊敏に動きやがった。

隠れ方、対応ともに隠密的な能力に優れた敵だったのだと分かる。


「あー、念のため確認しておくが、亜人だよな? これ」


実はこういう見た目の変わった種族のヒトで、どこかの特殊部隊員とかじゃないよな。

いや、それだったら流石に装備が木の棒ってことはないか。


「リゴウリという亜人だな、それは」


少し離れた場所から答えが返ってくる。いつの間にか起きてきていたらしいキスティだ。


「有名なのか?」

「いや……南にもいるから知っているだけだぞ。特別に魔法や能力を使うわけではないが、とにかく狡猾でな。こうして雨や、風の強い時に夜陰に紛れて襲ってくるという魔物だったはずだ」

「リゴウリ、ね」


肌はしわしわで、毛は禿げたように薄い。ハダカデバネズミだったか、不細工な地球のネズミを思い出す。


「しかも、特に売れる素材はないぞ! 稀に小さい魔石が取れるくらいだ」

「金にならんのか。狩りがいがないな」


……だからこそ討伐されずにここまで生き残ってたのかもな。


「適当に埋めてやろう。穴掘りを手伝ってくれ」

「合点。群れる魔物ではないが、別口がいるかもしれん。注意してくれ主よ」

「了解」


俺が「レストサークル」を会得しておらず、リゴウリの武器がもっとまともな槍とかだったら、果たして全員怪我なく無事でいられただろうか。

何かひとつ掛け違えただけで、積み上げてきたものが終わってしまう。本当に油断ならない世界だ。敵の亡骸を葬りながら、そんなことを思う。


「主!」

「ああ、分かってる」


穴を掘って亡骸を埋めている間に、少し遠くからジリジリと迫ってきている気配。これは牙犬っぽいサイズだな。また、あの火を吹く魔物じゃないと良いが……。



***************************



夜中に牙犬や、コウモリっぽい魔物、ハエっぽい魔物と相手にしているうちに、夜明けを迎えた。

一応野営ポイントっぽいんだが、魔物ポイントの間違いじゃないのか。

数は多くないが、断続的に襲われたせいで疲労感が凄い。


夜明けには雨は小雨になり、昼過ぎには晴れ間がのぞいた。完全に晴れた頃には、次の街へと到着した。


次の目的地、パジュクは小さな町だった。

その割には壁の中にはいくつか馬車が止められており、宿も揃っている。いくつかその分普通の町によくある、住宅街ゾーンが狭い気がする。

野営地がそのまま町になったみたいな印象だ。

それ以外は特に見るところがない、確かに平凡な町だ。


夜、食事がてら酒場に繰り出してみる。

というか、食堂的な場所が空いていないので酒場に流れた。


「よう、綺麗どころを連れてるな、兄さん。カウンターで良いかい」

「ああ」


カウンターに5人も並ぶと、会話はしづらい。

端っこに座り、サーシャが頼んだ料理をゆっくり食べる。こういうところで食う、やけにしょっぱい肉料理も乙だな。


「よう、兄さんは護衛かい?」


カウンター越しに、マスターらしき中年男性が話しかけてくる。キスティとアカーネ、ルキとサーシャがわいわいと話しているので、ハブられている俺が主人とは思わなかったのだろう。


「そんなところだ。この辺で何か耳寄りなことはあるか?」


小銀貨を、チャリンとわざとらしく音を立てて置く。3枚ほど置いたところで手を止めると、男がさっと手を伸ばして受け取った。


「兄さんが知ってるかは分からんが、ちょっと北の方で戦が起こりそうだ」

「北? 西じゃないのか」

「そいつは王様が戦ってるデカい戦だろう? そんなもんじゃなくてな、もっと身近で、ショボい戦さ。そうは言ってもそれぞれ戦士ばかり数百人は集まってぶつかるってんだ、大したことだぜ」

「王家以外も戦ってるのか」

「その辺は詳しくは分からんさ。どっちかが王様の敵で、どっちかが味方ってことかもしれん」

「戦になっているのはどの辺だ?」

「ルスキーの町さ。そこを取り合ってる」

「知らんな。どの辺だ?」

「北の方には行かないのかい? ここから北、ユメロ付近の分かれ道を北西に行った先さ。シスタナ地方のほう」

「……なるほど、北西だな」


もともと、スラーゲーに向かうにはユメロという町から東に向かう必要がある。

今回の情報で、ますます西に向かうセンはなくなった。


「戦をしてるのは何て奴らだ?」

「おっと。これっぽっちじゃ、そこまでは……」


男はチャリチャリと手にした硬貨を鳴らしてくる。

小銀貨を更に3枚渡してやる。


「へへへ、どうも。ブレファス家とオークリン家って貴族様のことは知っているかい」

「いや、知らんな」

「覚えておきな。どっちもシスタナ地方の貴族でね、昔から犬猿の仲だ」


スラスラと貴族家の名前が出てくる。


「まさかと思うが、戦の詳しいいきさつも、本当は知ってるんじゃないのか」

「へへへ、そういうことは言いっこなし。だろ? 兄さん」


渡した金が少なかったってことか。まったく。


「で、どっちが勝ちそうなんだ?」

「そいつは嘘じゃなく、分からないんだ。オークリン家の騎兵隊は強力だが、ブレファス家も今回は気合が入ってる」

「今回は?」

「そう、前回はオークリン家の圧勝だったのさ。それでルスキーの町はオークリン家のものってわけ」


国内の動乱にかこつけて、昔奪われた領地を奪還しようとしている貴族がいるってことかね。興味はないが。


「兄さん、ケケラウス様の思し召しは好きかい?」

「おぼしめし? なんだ、それは」

「分からないのかい? 意外だねぇ。たとえば、皆で戦の行く末を予想して、ちょっとした銀貨を預ける……」

「賭け事か」

「風情がないなあ、兄さん。で? 興味があるなら、一口乗るかい? 銀貨1枚から受け付けているよ」

「胴元は?」

「こんなチンケな酒場が、と思ったかい? 安心してくれ、北の大商会が仕切っていてな、俺は窓口の1つってところだ」

「そうか。いや、すまないがやめておく」


ここで銀貨を預けたら、勝ってもまた受け取りに来る必要があるってことになる。それは面倒すぎる。

そもそも賭け事は別にそこまで好きではないのだ。


「そうかい? 残念だよ。こんな機会はなかなかないんだが」

「ちなみに、どうやって賭けるんだ? どっちが勝つかだと、二択になるが……それだけか?」

「いや、引き分けって線もある。それに、圧勝とか指揮官の生死とか、ルスキーの町の顛末とかも入れて、色々予想するんだ」

「ほう。細かい予想が当たると、配当が増えるってところか」

「そんなところだ」

「例えば、別の領主が参戦するなんてのもアリか?」

「おお、そいつは熱い展開だ。大いにアリだよ」


推しのスポーツチームについて語るかのように、楽し気にする男。

壁の中に押し込められているこの世界の一市民としては、戦の顛末も娯楽というわけだ。


「スラーゲーの領主が参戦する、なんてことも?」

「スラーゲーかい? 今はシパール家か。う~ん。まあ、大穴だね」

「参戦は薄いか」

「そもそもあそこは、貴族でもない。少し離れているし、1つの町しか領有していない太守の出る幕じゃないだろう」

「……そうだな」


こいつ、かなりの事情通だな。

一応スラーゲーに暮らしていた俺も分からん情報がスラスラと出てくる。


なんにせよ、スラーゲーは平和ということだな。

それさえ分かれば良い。


「ユメロじゃ観戦ツアーも組まれているって話だ。賭けないんじゃ面白味がないかもしれんが、寄ってみたらどうだい?」

「観戦ツアー?」

「戦場になりそうな場所は分かっているからねぇ。そうなると、その場所まで案内するって商売するやつが出てくる」

「そいつは商魂たくましいな」


戦まで商売にするとは。

まあ、俺には関係ないか。



***************************



酒場で戦のことを聞いた翌朝、パジュクを発って更に北に向かう。

次の町はユメロ、東西南北への街道が枝分かれしている、交通の要衝だ。


ユメロを東に向かうと、ようやくスラーゲーだ。

北西に向かうとシスタナ地方に続き、そのまままっすぐ進むと戦が始まりそうだという地域に続いている。


歩きながら酒場で聞いた話をサーシャ達にも話すと、サーシャが反応した。


「ご主人様。北西での戦というのは、近々起こるのでしょうか?」

「そんな感じだったな、観戦ツアーが組まれているって話もあったし。どっちにしろ、俺たちの目的地はスラーゲー近くの村だ。スルーして進むぞ」

「……いえ。ご主人様。出来れば観戦に向かいませんか?」

「え?」


スラーゲーの方に向かっているのは、サーシャのご両親の墓参りというのが大きい。

そのサーシャがそんなことを言うとは、思っていなかった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ・戦争観戦ツアー オチョウ情報なら今後も国家間で戦う大乱の時代が続き関わらざるをえないだろうからこの辺で予習するのは悪くない 読者的にもこの世界の戦争見たいし サーシャの意図がリアリス…
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