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【マイルド】異世界 きまぐれぶらり旅~奴隷ハーレムを添えて~  作者: さとうねこ


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1-21 案内庁

部屋に荷物を置き、貴重品を異空間にしまうと街中へと繰り出した。

流石の中核都市、観光都市といった活気であふれている。新宿並とまではいかないが、人ごみを避けながら進むことになる。

後ろを振り返ると、サーシャが人に流されて遅れているのが見える。少し立ち止まって追い付くのを待ってから、おもむろに手を差し出す。


「えっと」


なんだろう、という顔で首を傾げるので強引に手を取って引っ張って行く。


「迷子にならないようにな」

「あ……、はい」


エモンド商会があった大通りまで舞い戻って、広場の入口に建つ小さな建物に入る。

宿に向かいがてら、発見していた場所だ。

扉には大きな木枠に『オーグリ・キュレス港案内庁』の文字。


「いらっしゃいませぇ」


中は意外にも空いており、カウンターでは背の低いおばさんが職員と小声で話している。

その隣のカウンターで対応を待つ。


「ご用件は?」

「初めて来た。このへんの地図か何かがあれば貰いたいと思ってな」


奥からぬっと出て来た青年に用を告げると、無言で頷き資料をめくり出す。


「えーっと、はい、一枚銅貨30枚になりますが」


金取るのかよ。

と、まあ、地図は時代によっては貴重品だし、軍事機密として厳重に扱われていることも多かったって聞いたことあるしな……。仕方ないのかもしれん。


「それで頼む」

「取ってきますので、少々お待ちを」


そう言って奥に引っ込む青年を見送ってから、カウンター付近にある資料をぱらぱらと捲って時間を潰す。ふーん、都市案内情報提供機構というのが運営母体か。

何とかという貴族がトップらしいが、とても重要な地位とは思えない。一線を退いた老貴族の天下り先みたいなものかもしれん。


「お待たせしました、一枚でよろしかったですか?」


探しに行く前に訊けよ。と思いつつ、まあ一枚でいいかと頷いて受け取る。

表は、この周辺の地図だな。この区の大雑把な道の分岐が描かれ、いくつかの店や有名所が書き込まれている。

何となく道を把握するには使えるが、地形を見たりするのは無理だろう。軍事的な機密を守るために、敢えてそうしているのかもしれないが、ちょっと残念な感じだ。

裏は、縮尺の大きくなった地図で、他の区域との位置関係や、そこに至る門の位置などがざっくりと記されている。

残念だった表面以上に情報がない。うーん。


「地図はこれだけか?」

「はい、それだけです」

「この案内所で、何か……行きたい店の位置を知ることなどは可能か?」

「案内庁です。そうですね、私に分かることであればお教えしますが」

「そうか。魔法を習うのに便利な場所はあるか?」


青年は数秒、考え込むように黙ったが、眉を寄せて答えた。


「魔法、ですか。ええと、魔法使いでらっしゃる?」

「あーいや、うん、なろうと思っている段階かな」

「そうですか。魔法を教える学校なら、中央区の高等学院の他、私立の教育所がいくつかございます」

「ふむ」

「そうでなくて、個人的に習いたいというのは……うーん」

「難しいか?」

「魔法使いに弟子入りする、とかですかねぇ……後は、魔法使いになってから魔法使いギルドに行ってみれば何か分かるかも」

「ほう、魔法使いギルド?」


面白そうなものがあるじゃないか。


「はい。といっても、商業組合や職責ギルドみたいなものをイメージしていると、違いますよ。魔法使いの同好会のようなものです」

「同好会……」


一気にショボい感じが出たな。


「魔法使い系のジョブの人たちが集まって、雑談を……意見交換をしたり、新しい魔法の研究を立ち上げたりしているそうです。私は魔法使いではないので、この程度しか知りませんが」

「そうか。ありがとう」


あんまり期待できないが、ガチガチの排他的組織や利権団体よりも、ゆるいサークル的な組織の方が敷居は低いな。後で行ってみよう。


「旅をしていて武具が必要なんだが、そういった店はどのへんにある?」

「決まった場所はございませんが、品揃えでいえばこの通り沿いの大店を探すとよろしいかと。有名なのは……ここ、セイクラッドという店と……ここ、アーミンの武具店という店でしょうか」


青年は地図上を指でなぞりながら、場所を示してくれる。とりあえず受付にあったペンでばってんマークを付けておくとしよう。


「ふむ」

「より高い質を求めるか、オーダーメイドで注文するなら職人街にある店を訪ねるのが早いでしょう。このへんですよ」


この商業区2区には職人街も含まれているらしい。ここだけで完結して生活できそうだな。


「他の商業区の方が充実している武器などもあるのか?」

「さて、武具に関してもあまり詳しくありませんので……。ただ、2区は商区の中でも賑わっている方ですので、大体のものは揃うと思いますけど」

「そうか、ならいい」


地図の裏面、都市の全体像(概略)を見ると、東西南北と中央に1つずつ商区があり、その間には居住区があるという造りのようだ。

中央には高級住宅街があり、おそらく貴族や富裕層が暮らしているっぽい。

形や規模はそれぞれ異なるが、西南北はそれぞれ似たような構造で設計されている。東は海に面しているので独特だ。軍港としての役割、交易港としての役割を担うために様々な配慮がなされているようで、地図がもやっとしていて特に情報が少ない。

分かるのは、船の乗入れ場の大雑把な位置と、各所に割り振られた数字の羅列くらいだ。


「参考になった。礼を言う」

「いえいえ」


青年を労う。一見やる気のなさそうな感じだったが、なかなかどうして役に立った。


「あ、そうだ、1つ忘れていた。書物を閲覧できる場所はこの地区にあるのか?」

「図書館ですか。そうですねぇ、公的なものは小さなものが1つあったかと。大きなものになると、中央区に行く必要がありますね」


つまりは高級住宅街方面に行かないとないのか。


「私的なものもあるのか?」

「ございますよ。主に商人の方が有料で、手に入れた書を読ませている場所があります。中央区に行けば、貴族の方が手に入れた書を無料で貸し出しているところもあるそうですが。そういった場所は、だいたい紹介がなければ立ち入れませんから」


なるほど、この世界の本の扱いとして、現代日本以下、地球の中世・近世以上という感じを受けていたが、それなりの貴重品としては扱われているようだ。

貴族の私設図書館にコネを作って入るのは難しいだろうから、商人の有料図書館に行くか、中央区まで行くか、か。


立ち去り際に、もしかして必要かな? と思いチップとして銀貨を置いてみたら、青年は嬉しそうな顔をして受け取っていた。うむ、正解だったか。

というか、情報を訊く前に置いておけば、青年の口ももっと滑らかに動いたかもしれないな。失敗した。

とりあえず、地図に場所を書き込んでもらった魔法使いギルドにでも寄ってみるか。



************************************



魔法使いギルドはなんというか、立派というほどでもないが、そこそこの大きさのある地方の公民館といった風情で佇んでいた。

かなり裏通りに入っていったところにあり、ちょっと周囲から存在が浮いている。浮世離れした魔法使いのイメージにぴったり、なのかもしれない。

中に入るとがらんとした空間が広がり、正面にある黒板のようなものには本日の会議室・実験室等の利用状況、予約情報が書き込まれている。

うん、やっぱり地方の公民館だわ。


「あー、あそこかな?」


左の手前奥に小さなカウンタースペースがあり、呼べば人が来そうな雰囲気がある。


「あのー」


ちょっと強めに声を掛けると、パタパタと足音を立ててローブを着た小さな影が出現した。


「はいはい~。あ、お客様、ですか?」

「はあ。ここって魔法使いギルドで?」

「そうですそうです、初めてですか?」

「ああ」


ローブは声が高く、女性……だと思う、背が低く、頭が俺の胸の位置くらいにしか届いていないから、声変わり前の小さい子という線もある。

まあ、小さい子が受付をしているとも思えないので、多分女性なのだろうと思うが。


「ご登録ですか?」

「あーはい、案内庁で、魔法を習うつもりなら行ってみろと言われたんだけど」

「へぇ、そうですか」


うんうんと頷いてこちらを見上げたのが分かった。ローブで顔は良く見えないが、何となく動作で感情が伝わってくるタイプだな。


「登録の説明からしますか?」

「頼む」

「はい、当ギルドは魔法を愛し、修める者のための集いの場となってます。月銀貨1枚で登録すると、ギルド内の施設を一部利用したり、ギルド員が開く講義に参加したりできます」


月銀貨1枚か。払えるな。しかし、月1万円と考えると結構するかも。


「次に所属です。年会費を払うことで、正式に当ギルド員として所属できます。ギルド員は施設の自由な使用ができたり、たまに発行される研究冊子を受け取れたりします。……ここまで、いいですか?」

「ああ」

「お客様……えーと」

「ヨーヨーだ」

「ヨーヨー?さんは、魔法を習いたいとのことでしたが」

「ああ、実は今まで魔法使いではなかったんだが、この前教会に行ったときに『魔法使い』になれると聞いてね。夢だったし、思い切って転職し終えたところだ」

「ほう、ではレベル1ですか?」

「たぶんな。今更仕事をしながら学校に通うのも無理だし、時間を作って誰かに習うことはできないだろうか?」


相変わらずでまかせをペラペラと述べながら説明すると、ローブさんはんーと言いながらローブごと頭を抱えた。考えているようだ。


「……そうですねぇ、それでしたら、とりあえず登録してもらってから、誰かに時間を取ってもらいましょうか」

「できるのか?」

「多分。ただ、お金はかかりますよ?」

「いくらだ」

「相場だと、だいたい1回1~2時間、で、銀貨3枚くらいかなぁ・・」

「高っ……いや、そんなものか。分かった、それで手続きしてくれないか」

「分かりました。一度受けてみて、続けるかどうか考えてみるのが良いかもしれませんね。たまに魔力の制御が苦手で、初級の魔法を教わる人はいますけど、ほぼ0からって人は居ませんでしたから」

「そ、そうか」

「ほんとのほんとに初心者の状態、ということで、0から教える感じでいいんですよね?」

「そうだな」


既に火をチョロっと起こすくらいならできるのだが、何か抜けていることがあるかもしれないし、0から始めるつもりで習ってみよう。


「では、明日また都合のいい時間に来てくれますか。誰か見繕って話をつけておきますから」

「承知した」


今日からってわけにはいかないか。まあ、とりあえず明日からは魔法の修行もできそうだ。


「登録が銀貨1枚だったか?」

「そうですそうです。……確かに頂きました」


代わりに上質な紙を渡され、個人情報を入力していく。

名前ヨーヨー、職業は『魔法使い』、としておこう。専門魔法? なし、でいいか。


「……はい。それではこの紙の上に掌を下にして手を乗せてください。……はい、大丈夫です。こちらのカードにヨーヨーさんの魔力を登録しましたので、持っておいてくださいね」

「ほお、魔力を登録なんてできるのか」

「できますよー、重要な契約のときなんかは、商人も魔力登録紙を使ったりしますしね。本人確認の方法としてお手軽なんです」

「なるほど」


同好会的なものと聞いていたが、なかなかどうして傭兵組合なんかよりも設備がハイテクだ。

まあ、魔法の研究が趣味のやつが正式に所属するといった制度のようだから、こういう魔道具を作るのが趣味って奴もいるのかもしれない。


「では明日、また来る。色々と助かったよ」

「はい、お待ちしていますね~」


こちらにブンブンと手を振った拍子に、ローブがはだけて顔が少しだけ見えた。

普通に子供の、女の子って感じの見た目だった。受け答えはしっかりしていたから、本当に子供だったとは思えないが、と思案しながら外に出ると、また空気になっていたサーシャが切り出した。


「あれはトゥトゥック族の女性ですね」

「トゥトゥック族?」

「やはりご存知ありませんでしたか。いわゆる小人族の一種で、人間族とかなり混血しているため、見た目は普通の子供のように見えるそうです。数は多くありませんが、この近辺にいる小人族といったらトゥトゥック族かと」

「へぇ~」


小人族なんてのもいるのか。子供と見間違えて今まで気付かなかっただけで、街中にも居るのかな?


「混血の場合、母親がトゥトゥック族だと子もその特徴を受け継ぐと聞きます。逆にトゥトゥック族の血が入っていても、父方の場合は見た目が小人サイズにならないため、気付かれない混血も多いそうですよ。実際、友人に言われてから知ったという経験が私にもあります」

「ほ~う。ん? そういえば混血の場合、ステータスの種族表示はどうなるんだ?」

「基本的には血が濃い方が表示されるそうです。混血種が独自の種族として認定されることも少なくはないそうですが」

「そうなのか……」

「ただ、人によっては後程種族を選択できるケースもあると聞いたことがあります」

「選択できるのか。二重国籍みたいな感じだな……あえて表示を変更するメリットはあるのか?」

「まあ、色々と考えて、他種族や混血をパートナーとすることを嫌うような人もいますから」

「ああ、なるほど。さっきの話なら、トゥトゥック族の血を引く女性と結婚したら、子供がミニサイズになるなんてこともあり得るわけか。差別意識がなくても、色々な不都合とかもあって気にする人もいるんだろうなあ。そういう考え方があっても、あながち非難はできんか」

「そうですね」


しかし表示を変更できるならあまり意味はないか? いや、選択できるくらい人間族の血が濃ければ問題ないと考えるケースもありそうだ。ややこしいな。まあ俺には関係ないか。


「さて、魔法については目処が立った。次は装備……いや、そういえば魔石の換金をしてないな」


今回の護衛任務の途中で得た魔石は整理して異空間の隅っこに放り込んであったので、すっかり忘れていた。もったいない、もったいない。


「魔物素材の買取センターはあるのかな? ……おお、これかな」


地図を広げて見てみると、門の付近に小さく「魔石買取」とある建物があった。地図としては適当だが、何気に役に立つな、この地図。さすが、有料なだけはある。



************************************




「思った以上に金になったな~」


銀貨や銅貨の入った布袋をジャラジャラ言わせながら、異空間にしまい込む。

魔石は、1つ銅貨10枚前後といつも通り、あるいはやや安めに値がついたのだが、1つ例外あった。

岩犬の魔石である。


なめらかな球状をしており、色も茶けていて土属性の魔道具の燃料として最適なのだそうだ。銀貨13枚にもなった。美味しい。

案内庁や魔法使いギルドで思わぬ散財をした分を補って余りある値だ。


「さて、残った金で武具でも見繕うかね」

「はい」


まずは大手の武具商店でウィンドウショッピングをしつつ、値段の相場なんかも確認していく。

やっぱり高い。剣なんかは極端にピンキリで、物が良さそうだなと思ったものの値札を見ると金貨が踊っていたりする。買えない。

金属鎧の類はもっと金が嵩む。上下、頭や各種付属品をセット一式揃えるとなると、余裕で金貨が旅立つ。


購入を予定していたサーシャの矢のほか、弓使いのグローブ、肘当てといった補強防具の類を購入する。

鎧を一新することは諦めて、金貨が貯まるか、今使っている革鎧がダメになるまでは使うしかないとして、ポイントで補強しておこうという方針である。

グローブは、弓を長時間構えていると手が痛くなるというサーシャの訴えを受けて購入することとした。


締めて銀貨10枚ほどの出費。

俺用の盾も、だいぶボロくなってきたので更新する。

盾を常時構えていなくても怖くはなくなってきたこと、盾を放り捨てて突撃することが多いことから、小型盾の、手に括りつけて使うタイプを買ってみた。


ゲームだと、バックラーとかいう名称になる形状だ。

これが銀貨2枚。古い盾を下取りに出したものの、二束三文にしかならなかった。安物の盾だったから仕方がない。


「武器の更新はどうすっかなぁ」


うーんと唸っていると、サーシャが意見のありそうな目線を向けてくる。


「ご主人様、お金に多少の余裕があれば、短剣の類を買っておくのはどうでしょう」

「短剣か。サブウェポンってことか」

「はい、ご主人様の長剣も、私の弓も取り回しにやや難があります。素早く動きたいときや、組打ち気味になったときに、ナイフではやや不安があります」

「ふむ。それもそうだな」


短剣はそのサイズに比例してか安目だし、今回はそれでいいか。サーシャの意見を採用して、短剣を3振り購入する。

1つは予備だ。


普通の鉄の短剣?が1つ銀貨3枚、刀身が黒い厨二チックな短剣が銀貨7枚だった。

黒短剣は、魔物の牙を利用した魔物素材の一品で、頑丈さに優れ、魔力を通すとやや切れ味が増すという魔導武器でもあるそうだ。

魔導武器というものに興味があったし、艶のない吸い込まれるような黒色のカッコ良さにやられた俺が衝動買いをした。

反省はしていない。


まあ、金貨を持った途端に奴隷を買ってくるような男に、賢い金銭感覚を求める方が間違っておる。


「新しい武器を手にしていると、戦ってみたくなるな」

「そうですか?」


サーシャはあまりピンとこないようだが、お金も使ってしまったし稼がないと、と急かして西門から外に出てみる。

ただ、昼飯を食べたり、道に迷ったりと時間を取られているうちに、外に出るころには陽が傾きかけていた。


魔物も近場はほとんど狩り尽くされているようで、森に入ってからさんざん探したが、牙犬が1匹見つかっただけであった。

サーシャが弓を射掛け、逃げ足が鈍ったところで短剣で斬り付けた。切れ味は申し分ないと思うが、ぜんぜん試し斬りにはなっていない。

明日以降情報を集めて、リベンジだな。



主人公がサーシャに質問する形式で、この世界のモロモロを質問できるコーナーを予定しています。

1-23の予定です。

感想、活動報告等で質問してくださると、作中に反映するかもしれません。期限は1-23が更新されるまでです。たぶん次の土曜日くらいまでかと。


今後作中で言及する予定があるものや、メタなもの、単にサーシャが知らないもの、その他の理由で反映されない可能性も多々ございます。ご承知おきください。

なお、特に質問がなかった場合、そのシーンをカットするか作者が適当な質問をでっちあげます。

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チップが銀貨1枚って高くないですか? どうでもよい話ですが
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