1-10 ステータス補正の意味
「んー・・? 朝かぁ・・」
伸びをして周囲を確かめると、帰って来た着の身着のままの恰好でベッドに寝ていた。
「あー・・疲れていたからなあ。しかし湯あみもしていなかったし、流石に臭いな・・風呂、か」
風呂については1つ考えていたことがある。公衆浴場があるのだ、スラーゲーには。
今まではムダ金は使えないと泣く泣く諦めてきた。
しかし今回は遠征でそこそこ稼いだはずである。
「・・よし、今日は風呂だ」
楽しみが出来て身体が軽くなった俺は、服を着替えて、異空間を整理して身支度を終えると、盾と剣も異空間に放り込んで買取センターを目指した。
さすがに異空間はパンパンだ。諦めて素材は手に持っておく。
いつもの愛想の良い金髪おばさんに素材を出すと、目を剝いて驚かれた。
「短い間に、ずいぶんご苦労したようですね。ゴブリンマージに・・ナイトゴブリンリーダーまであるんですか」
「・・すごいな、見ただけで分かるなんて」
「ここで長年やっておりますからね」
おばさんは嬉しそうに笑った。もうちょっと若ければなと思う。
「計量と計算をして参りますので、少々お待ちください」
大人しく座って待っていると10分もせずにまた呼ばれた。
仕事が早いのだ、あのおばさまは。傭兵ギルドの某やる気なし受付嬢に、爪の垢を煎じて飲ませたいくらいである。
「今回は銀貨6枚と銅貨60枚ですね。それと・・ご伝言で、討伐報奨金が出たので一部振り込む、とのことです」
「振り込む?」
「えーと、はい。傭兵ギルド預かりの状態になっていますね。ギルドの受付で手続きをなさいますと、お金を受け取れます。長い事経ちますと、無効になることもございますのでお早めにお受け取りください」
「なるほど。ありがとう」
討伐報奨金・・通常の分は買取りセンターの買取額に上乗せされているはずだから、今回は普通じゃない部分。
つまり、「新規の群れを駆逐した」ということに対する報償金だろう。
いくらぐらい入るんだろうな?
にやにやとしながらギルドに行くと、受付でトリシエラと出会った。
「あれっ? こんなところで・・」
「やっと来た。お金は受け取った?」
「いや、今からもらおうと思って・・」
「そう、ならすぐに受け取って。私と一緒に来てもらうからね」
なんだ、なんだ?
ギルドの受付でお金を受け取った。銀貨4枚也。
5人で等分したと考えれば、エリオットが受け取ったのが銀貨20枚だったのかな?
高いような、安いような。まあ臨時ボーナスとしてはホクホクだ。
これで銀貨10枚、銀貨1枚1万円と仮定すると10万円の収入だ。たしかにゴブリンフィーバーきとるな・・。
トリシエラに急き立てられて向かったのは、立派な門のある豪邸であった。
周りをグルっと鉄柵で覆っており、侵入者を拒絶している。
・・入っても大丈夫かこれ?
トリシエラを振り向くと、とっとと行けと目で示すので入口の呼び鈴を鳴らす。
カランコロンと音が響くと、一部始終を凝視していた門番らしき武装した人がこちらを向いた。
呼び鈴鳴らす前に話し掛けてくれよ・・なんで凝視してるんだよ・・。
「ここはエモンド様の御屋敷だ。相違ないか?」
「はい、呼ばれた? ようなのですが」
チラリとトリシエラに救いを求める。
「中にエリオットという客人がいるはずです。その連れの者です」
「そうか。少し待て」
扉付近にたむろする門番Bに何かを伝え、門番Bが扉から中に顔を入れて確認している。伝言ゲームみたいだな。
10分程待っていると、「よし、入れ」と許可を頂いて中に入った。
「あら、あなたは・・?」
案内された客間らしき場所で、中年の女性がこちらを向いた。
「此度、アアウィンダ様を救出した者の一味でございます」
「・・のようです」
一味って。
「そうですか、私はアアウィンダの親類の者で、ユキシナ・エモンドと申します。此度の件、まことに有難う存じます。貴方たちがいらっしゃらなければ、あの子の命も儚かったかもしれません」
「いえ、当然のことをしたまでのこと」
アアウィンダの関係者か。ところでエリオットはどうした?
「夫のドルトクが直接礼を言いたいと我儘を言い、わざわざご足労願いました。突然で大変だったでしょう?」
「はあ、まあ」
何と答えたら正解なの? 誰か助けてくれ。
「どうぞお座りになって。夫は今、エリオットさんと何か話をしているそうですわ。じき戻ると思いますから、しばらくの間、お寛ぎ下さい」
「は、ありがとうございます」
ユキシナはしずしずと部屋を出て行った。エモンド・・苗字があるから貴族なのか?
「なあ、エモンド・・様のこと、知っているか」
取り残された部屋で、隣に立つトリシエラに小声で確認する。
「エモンド商会と言えば、大手の商会ね。旦那様のドルトク・エモンド様は、今エモンド商会のスラーゲー支部を取りまとめていらっしゃる方のようだわ」
商会か。
貴族ではなく富裕層の方か。
身分差がどうこうのは言われなさそうだから、まだマシかな。
「それで、エモンド様が何故俺を呼んだんだ? お礼なら、もう婦人に頂いたしもう俺は帰っていいんじゃ?」
「ドルトク様がお会いしたいと言っていたって聞いてなかったの? 少し待ちなさい」
はい。
仕方ないのでソファに座り、久しぶりの紅茶をすすった。うまい。
ちょっと砂糖も入っているな、甘い。
紅茶のおかわりをしてトリシエラに呆れられたところで、部屋に中年の細身男性とエリオット、マリーが入ってきた。
「やあ、ヨーヨー君」
「ほお、君がヨーヨー君かね? 初めまして、ドルトク・エモンドだ」
「お初にお目にかかる、ヨーヨーです」
「なかなか礼儀正しいじゃないか。君の話は、アアウィンダからも少し聞いているよ」
「へ、変なことが伝わっていなければいいのですが」
「裸を見たこと、とかかね?」
「ぶっ・・そ、それは」
「いやいや、ハッハッハ。事故というものだよ、責める気はないよ」
「そうですか、安心しました」
責任を取れとか言われなくて良かった。で、なんの用だろう?
「エモンド様、それで、私にお話があるとか?」
「ん、そうだね。そう急ぐことはない。可愛い姪を救ってくれて本当にありがとう。彼女もやっと落ち着いてきたよ」
「それはなにより。しかしその、状況が状況でしたから、心配ですね」
「そうだな。まあ、先に話しておくと、当商会は今回の件を秘匿するつもりはない。アアウィンダには心無いことを言う者もあるやもしれぬが、いい虫除けになろうて」
「虫除け、ですか」
「商会の令嬢というだけで有象無象の虫が寄ってくるゆえな」
ああ。悪い男が害虫、ということですか。
「それでよろしいのでしたら、こちらから申し上げることは」
「いや、だからね。君が心配するように、事件を秘匿するために忘れてもらうなんて意図はない、ということだよ」
「あ・・はい」
そういうことか。
これでしばらくしてから事件の噂が広まっていれば、わざわざ俺を消す動機はないということになる。
それまでは完全に安心はできないが。それを伝えるために呼んでくれたのかな?
「お心遣い、大変感謝します・・」
「うむ、それでね。今日は君に、というか君とエリオット君にお礼を差し上げたくてね。それも別に口止め料というわけではないということを先に言いたかったのだよ」
「お礼、ですか」
「そう。口止め料ではないが、無暗に触れ回るような真似はして欲しくはないがね」
「それはもちろんです。被害者の女性の傷に塩を塗るような真似、私は致しません」
「塩を塗る・・? 珍しい表現だね。しかし面白い。傷に塩を塗ると、なお痛い。ということかな?」
「失礼いたしました、親が良く使っていた例えでして・・。意味はその通り、切り傷があれば痛いですが、それに塩を塗ることは、その傷に付け込んで一層その相手を傷つける恥ずかしい行為だという比喩です」
「なるほどな。面白いご両親だ」
「は。自慢の両親です」
咄嗟に両親のせいにしたが、自慢の両親ではあったな。クズな自分にも優しかった。
その分、申し訳ない感じも大きかったが。両親が死んだ時に、自分の人生を半分くらい投げた気がする。
父さん母さん、俺は今、何故か異世界で冷や汗を掻いています。
「お礼というのは、単純だが、金貨4枚ほどでどうかな?」
「ほっ? き、金貨ですか?」
声が震えてしまった。
金貨? 金貨って、銀貨100枚分だっけ?
とすると、100万円? それが4枚?
今回のゴブリン討伐の収入、これも破格の収入だったが、その40回分?
罠じゃないよな?
「左様。少ないかな?」
「めめ滅相もない。今まで自分と縁のない単位でしたので、動揺してしまいました」
「そうか。命を救って金貨だから、人によっては少ないという者もいる。だが、今私に動かせるのはこの程度だ。受け取ってくれたまえ」
「は、有難く頂戴します」
もしかすると一回断るのが礼儀だったりするのかもしれない。しかしそんな余裕はない。万が一に本当に撤回されては困る。金貨なのだ。欲しい。
「では帰る際に受け取ってくれ。エリオット君と話していたのだけどね、彼らにアアウィンダのオーグリ・キュレスまでの護衛任務を依頼しようとしていてね」
「大変光栄です、支部長」
エリオットが爽やかな笑顔で答える。今回のことを、うまく仕事に繋げたようだな。
「そこで、エリオット君から、君も一緒にどうかと提案されてね。どうかね、引き受けるかね?」
「護衛、ですか? 実を申しますと、高貴な方を護衛した経験がありません。それでも構わないならば」
「高貴などと、我々は貴族ではないよ」
ドルトクは苦笑しながら手を振った。
「まあ、受ける気があるというならいい。私も、アアウィンダを真っ先に見つけ、救った者ならば些か安心できるというもの」
「我々の他にも護衛は付けるのですよね?」
個人傭兵をやっている5人組では、富豪の護衛としては少ない気がする。
特につい最近、盗賊に襲われたばかりなのだから。
すると、エリオットが話を引き取って説明してくれるようであった。ドルトクは茶をすすって一息いれている。
「もちろん、エモンド商会の専属護衛も幾人か付くようだが、最悪は我々だけで護れるような意識も必要だ」
「・・というと?」
「あまり大っぴらに言うのは憚られるのだが・・アアウィンダ嬢の護衛の中に、賊を手引きした者がいたらしい」
「なんだって?」
護衛が壊滅したと言っていたが、裏切りを受けていたのか。それは混乱もするだろう。
「だから商会は今、改めて護衛の身元を洗い出しているが、今回の旅路では少しでも信用の置けるものを傍に置きたいということだ」
「それで・・しかし、それならなおさら、俺、いや私のような身元の不確かな者を入れるのは怖いのでは?」
そこでドルトクが口を入れてきた。
「エリオット君とは前々から、縁があって顔見知りでね。賊にあの娘を売りはしないだろう、程度には信頼しているよ。彼のパーティは全て奴隷なのだから、内通もしないはずだ」
「なるほど」
「そのエリオット君が大丈夫だと言ったのだから、君のことも信頼する。何かあれば、エリオット君に責任を負ってもらうけどね」
ドルトクはじっと俺の顔を見た。
「・・分かりました、エリオットと、ドルトク様の信頼に応えます」
「そうか、では詳細はまた後日」
最後までアアウィンダ自身は出て来なかったが、それ以降はエリオットとドルトクが和やかに話すのを聞いて、1時間もしてから、その豪邸を辞した。
「・・ということで、まだもう少し一緒に仕事することになりそうだ。宜しくお願いするよ」
「ああ、こちらこそ」
エリオットと握手を交わし、すっかり陽の高くなった街をぶらぶらする。
なんだか今日はもう、ゴブリン狩りという気分ではなくなってしまったな。
アアウィンダの件で闇に葬られる危険が低そうなのは朗報だった。
ただ、その流れで他所の街に向かうことになってしまった。
確か遠出するときには、定住証明の解除申請みたいなものも必要なんだっけ? 面倒だな。
だが、ポンと金貨が出せる商家と繋がりができたのは有難いかもしれない。
エリオットに感謝だな。
休みにすると言ってもやることは思い付かない。まずは、どこかで手早く飯を食ってから、図書館でも向かうか。
図書館で、銀貨1枚を払ってさっそく気になっていたことを調べる。色々調べたいことがあったはずだ。
1つ1つ思い出しながら、本を探しては並べる。
「ジョブシステム概論」
「ステータス・スキル詳解」
「ジョブ・スキル各論」
このへんは最初に借りたあの名著『ジョブシステム概論』の筆者の著作である。
これだけで、軽く2時間は経ってしまうだろう。
仕方ない、今日は金に糸目を付けずに調べまくる。
「世界と信仰」
「帝国の栄光とその終焉」
このへんは、世界についての基本知識だ。宗教と歴史が分かれば世界が分かる。
きっと。
あとは凄かったらしい古代帝国について調べれば、周辺地域の地理についても何か分かるのではないかと期待しているところだ。
「観光都市オーグリ・キュレス」
これは、アアウィンダの護衛で向かうことになる都市についての本があったので並べてみた。
観光都市らしい。
大きいのかな?
「キュレス王国貴族名鑑」
つまらなそうだが、今いる国の貴族について軽く調べておこうかと。
国王とか知っておけば、いざというとき、本当に万が一のときに面倒事をスルーするのに役立つかもしれない。
ただ、これどうやら20年以上前の発行だ。
それくらい古くないと一般には普及しないということかな?
取り扱い注意っぽいもんなぁ。
他国への情報漏洩の危険があるし。
さて、まずは依頼関係についてささっと調べ物してみるか。
・・ふむ。
まず、「観光都市オーグリ・キュレス」だが。
これ観光ガイドだわ。観光におすすめの都市ですよ! という意味でこの本の名だ。
まあいい。
オーグリ・キュレスは、「オーグリ」が古代帝国語で「王」を意味するから、キュレス王という意味だ。
一般的にはオーグリ・キュレス港または港都市などと呼ばれている。大きな港がある都市だ。
本当かどうかは分からないが、キュレス王国の中心都市で、最大の人口がある。
王都が少しだけ離れた場所にあるらしく、どうやら行政の中心が王都、経済の中心がこの港都市という区分けのようだ。
ここに行けるのか、とちょっとテンションが上がってきた。
冒頭の数ページでオーグリ・キュレスの説明、歴史を誇らしげに語っているあとは、完全に観光ガイドでしかないので、いくつか気になる観光スポットをメモしておいてこの本は終わりだ。
次いこう、次。
やはりずっと気になっているステータスの説明や、ジョブシステム概論のもっと細かい所を読み込んでいきたい。
・・。
ふう、「ステータス・スキル詳解」のステータスの基本部分と、「ジョブシステム概論」の続きを読んでいるだけで2時間近く経った気がする。
一度入り口で確認すると、やはりそうで追加の銀貨を取られた。
しかし、いちいち出て来なくていい、最後に清算するからといったことを言われて恥ずかしかった。
さて、ステータスである。
重要なのはやはり「ステータス補正」の効果からだろう。
書いてあったことをざっとまとめると、以下の通りになる。
攻撃 攻撃時のダメージを増す。また、力が強くなる。
防御 防御時のダメージを減らす。また、身体が強くなり、骨折などの怪我をしにくくなる。
俊敏 速く動けるようになる。また、運動神経が向上する。
持久 身体を動かし続けることができる。また、疲労が回復しやすくなる。
魔法 魔法で攻撃したときに威力が増す。また、魔法制御能力も増す。
魔防 魔法で攻撃されたときのダメージを減らす。また、一部のバッドステータスが早く治るようになる。
だいたいこんな感じだ。
注目すべきは、全てのステータスに、「また」以降の副次的効果が認められるというところだ。
しかも、副次的な効果といえど、どれも魅力的だ。
この「力が強くなる」などの効果は、戦闘していなくても、常時効果が反映されるらしいからだ。
もっとも、分からないことも多い。
これらの効果は、この世界の学者が頑張ってデータを蓄積して研究したり、一般にこうだと言われていることをまとめたものだ。
つまり、推論の域を出ないものである。しかも、その効果はどこか曖昧だ。
たとえば、「攻撃時のダメージを増す」っていうのはどういうことか?
攻撃するときに一瞬、スキルのような不思議な力でシステムが敵を追撃してくれるのか。
あるいは、より効率的にダメージが与えられるように、システムがこちらの意識に介入して、身体を操作するのか。
色々と謎は多いが、とにかく攻撃のステータス補正が高いと、同じ人が同じ攻撃をしても与えるダメージが増す。これは間違いないようだ。
逆に言えば、あくまで補正は補正なので、もともとの筋力が弱いヒョロヒョロな人がいくらレベルを上げて高ステータスを実現しても、元が弱いので強くはなれない。
ただし、「攻撃」のステータスの副次的効果で、その人の筋力自体が増す。
だから「攻撃」のステータス補正が高いのに攻撃が弱い、ということは滅多にない。それらを台無しにするほどにヒョロガリだったりしなければ。
気になるのはやはり副次的な効果。
筋力にもいろいろあると思うのだが、どうも瞬発的な出力を上げるのが「攻撃」のステータスで、筋肉を壊れにくくするのは「防御」、その他全体的な筋力をバランスよく補正するのが「俊敏」っぽい。
主要な効果で持久力を上げる「持久」も、一部の筋肉を強化していそうだな。
上4つの補正は、それぞれ別の形で筋肉を強くすると。
なかでも「俊敏」の、運動神経が向上するというのがすごい。
戦闘職の人は、とりあえずこれを上げておけば強くなれるんじゃないのか?
他のステータスも確かに強いが、これは自分では鍛えづらい神経とか認識機能とか、そういうのも改善しそうだし。
そう考えると、『剣士』が人気だというのも分かる話だ。
最初は、剣ってのがやはりオーソドックスな武器だからかなと思っていたが、ステータス補正に「俊敏」があるからじゃないか。
いや、厳密にいえば全てのジョブは、全てのステータスをレベルが上がるに伴って少しずつは押し上げてくれるらしい。
ただ、どのステータスが伸びやすいかはかなり偏りがある。
『剣士』は、俊敏をよく伸ばしてくれる典型職のようだ。
ちなみに「防御」をよく伸ばしてくれる典型職としては紹介されていたのが、『盾士』だ。
その代わり俊敏がほぼ伸びないからか、一般の人気はイマイチのようだが。
集団行動で有用なので、軍隊では人気があるらしい。
前線の最も厳しいところに置かれそうなので、俺は軍隊で『盾士』なんて絶対にご免だが。
『盾士』を使っていることも秘密にした方がいいのかもしれない。すぐに危ない役割を背負わされそうだ。
そして、ステータス補正もそうなのだが、MPボーナスや、スキルを習得するレベル等も含めて・・基本的に個人差が激しいらしい。
『剣士』が俊敏を伸ばしてくれるといっても、2レベルくらいで1段階アップする人もいれば、5,6レベル上がっても1段階も上がらない人もいる。
ステータスにも素質や経験による向き・不向きがあるようだ。
俺はどうだったかな?
複数ジョブを設定すると、どのジョブがどれくらいの影響を与えているのかが見えなくなるな・・。
まあ、いいか。
上4つのステータス補正の効果はどれも欲しいし、魔法系ジョブも使っていきたいと思っているから「魔法」と「魔防」も上げていきたい。ということが分かった。
全部上げたいという当たり前の結論。ステータス補正、大事。
それが分かったわけでも良しとしよう!
あまり重要ではないが、面白かったのが、ジョブの発生について。
ジョブシステムを人類に授けた神様は新たにジョブを授けることがある、らしい。
これは昔から言われていたことだが、それをある学者が「ケウィルトス」職の発生のときに観察・研究して証明した。
ケウィルトスとはこの国で大人気の球技だ。
この国というか、周辺世界で大ブームを巻き起こしたらしい。大昔に。
ボールを持って敵陣に運べれば勝ちという、アメフトやラグビーっぽい競技だ。今でも人気が高い。
ケウィルトス・ガスムというのが正式名称?で、古代帝国語で「進む、倒す、勇敢な」「ボール」という意味だ。
ケウィルトス・ボールと呼称するが、長いので現代語に直して略称で呼ぶ人も多い。
「勇敢な」と球技を組み合わせて、「勇技」だ。
どちらで呼ぶかは国・地域、そして個々人で異なり、両派は地球での「きのこ・たけのこ戦争」のような長く苦しい争いを続けている。どうでもいいか。
まあそのケウィルトス・ボールについて、それが流行して広まっていくと、ある時点から『ケウィルトス選手』というジョブが獲得されるようになった、という。
ケウィルトス・ボールそのものがそれより少し前に開発されたもので、それまでそのような競技はなかったのだから、神はその流行を見てジョブを追加したことになる。
ということで、「ジョブは新たに作られる」ことは広く認められていった。
ただ、その解釈として、「神が人の世に合わせてジョブを作っている」のか「運命をも司る神は最初からそういうスポーツが流行ることを予見してあったので最初から設定されていた」のかは論争を巻き起こしている。
個人の見解としては前者を支持したいところだ。運命が最初から決まっているなんて世界観は個人的には嫌いだ。
それに、ある時点から急に獲得されるようになったなら、前者の方が自然だろう。
でも神の全能性を信じている人からすると、受け入れがたいのかもしれない。まあどっちでもいいんだけどね。
そんなわけでジョブシステムは新たに付け加えられたりもするし、逆に削除されることもあり得そうだ。
ジョブ獲得の条件も変動しているのでは? なんて説もある。
それも個人的にはあり得そうだと感じる。
ちなみに、『ケウィルトス選手』のジョブが新設されてからしばらくすると、戦場でそのスポーツの技術を使おうとする馬鹿が出てきて、なんと『ケウィルトスの戦士』なる職業が発生したらしい。
熱心なケウィルトスファンの戦士は、周りに反対されていてもすぐこれを取ろうとするとか。
アホだな、アホ。
さて、最後に「世界と信仰」「帝国の栄光とその終焉」を読もうと思ったのだが、もう流石に疲れてきた。そろそろ4時間経ちそうだし、これは後日でいいか。
一応ペラっと読み飛ばして、この国で信じられているのは多神教であり、帝国時代からの宗教であること。その中の創造神とかいうのが主神級として扱われて祭られていることを確認した。
戒律とかはそれなりに緩そうだ。
異世界から来たとバレても殺されないような教義だと助かるのだが。まあ・・バレなければ良いだろう。
本をカウンターで返し、外に出ると陽が傾いて、街が赤く色付いていた。
日本の都市よりは綺麗だな~、この街も。夕陽が映える。
その分、生きるのは大変そうだけどな。
まだ宿を取るのは早いか、などと考えながらまた街をぶらぶらと歩きだした。
微妙に入り切らなかった・・!
ヒロイン登場は次話。
1-12までは毎日更新を続けようかと。その後は週1~2更新。
やる気が漲って筆が乗ったら追加更新。というきまぐれな方針です。





