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第十三話 共同戦線?

「ふぅ、上は終わったよ。その様子だとこっちも終わった感じ?」


 狼男との戦闘を終えた俺は屋上から降りると、元いた場所である病室のドアに手をかける。


「ああ。あのヤブ医者は俺が責任を持って文字通りお灸をすえてやったよ」

「やだなぁ『粉化イラプション』、まさかプチ火山によるお灸なんて聞いてな――あっつい!?」


 な、なんかものすごいグツグツいっている上に噴火しそうなのか定期的に火の粉吹いてませんかねそれ。


「おっと、下手に動くと中に詰め込んだマグマがてめぇの背中を直に焼くことになるぜ」

「な、なんという荒療治だ……!」

「下手に念力で動かしたら噴火させるから覚悟しとけよ」


 緋山さん結構器用なことできるんですね。ところでロレッタは――


「あのっ!」

「ん? どうしたの?」

「貴方は、一体――」

「あぁー、そういえば言ってなかったね。あたしもこの通り、能力者ってワケ」


 ところがロレッタは俺の回答が求めていたものと違っていた様で、また違った質問をぶつけ始める。


「本当は、どっちなんですか?」

「どっち? 何が――ってあれか、性別か。元々は男だよー」

「で、ですが今はそのように、胸も……」

「本物だよ? 触ってみる?」


 うーん、女の子とはいえ小さい子に自分のおっぱい触らせるなんて、俺やっぱり変態――いやいやいや、流れ的にはおかしくない、おかしくないぞ榊真琴!


「本当に、柔らかいです……」

「でしょ? 緋山さんもこの際だから触ってみます?」

「誰が好き好んで男の胸触るか」

「でも今は女の子ですよ?」

「うるせぇ!」


 ちぇ、やっぱり彼女持ちは違いますなぁ。


「それはそうと、先ほどの方はどうされたのですか?」

「んー、ちょっと上で頭を冷やしてくるってさ」


 流石に金的だけで命を取ろうとしないことで相手も察してくれる……はず。でも逆に怒ってやってくる可能性もあるのかな?


「そうですか……」

「まっ、すぐに降りてくると思うから。てゆーか、どうしてそんなに心配しているの?」


 今度は俺の質問に答えてもらう番。ついさっきあの男からお嬢と呼ばれていたり、本家とかいろいろ気になるワードが飛び出していたけど。


「もしかしてあの人、ヴラド家だったりするの?」

「いえ、違います……」

「だったらどうして気にしているの?」

「……実は――」

「待て」


 ドアの方を振り向くと、そこにはさっき俺が金的を加えてダウンさせていたはずの男の姿が――ってか復帰速くない? 俺だったらもう少しぶっ倒れている自信あるんですけど。


「そこから先は、俺が話す」

「だからそもそもあんた誰なの? このことどういう関係? お嬢って何さ?」

「その辺も全て話させてもらう。だからお嬢をこちらに」


 俺の怒涛の質問にも答えてくれるようであるが、まだロレッタをこの人に渡すわけにはいかない。


「それはまだダメ。ちゃんと質問に答えてから考えさせてもらうよ」

「くっ……」

「何? 文句あるならもう一回闘う?」

「……いや、話そう」


 流石に二度目の金的はさっきとは比べ物にならない力でやるつもりだったけど、どうやらその必要はなさそう。

 男は病室のベッドに乱雑に腰を下ろすと、辺りを一瞥してからエドガーに目を向ける。


「その男は席を外してもらおうか」

「何だと? ボクにも聞く権利が――」

「分かった、外させよう。おいヤブ医者、透視クレヤボヤンスと化しやがったらその目を焼いて潰すからな」

「おお、怖い怖い。ここは一旦身を引いた方がよさそうだ」


 いまだに背中に火山(おきゅう)をすえられた状態のエドガーは、同じ病院に勤めている看護師の手によって担架に乗せられて病室を去っていく。


「……シュールだなぁ」

「これで邪魔者は排除したぞ」

「いいだろう……まずは俺の身分から話そうか」


 厳つい顔のままの男は、自分の正体を俺達に明かすことで俺達を驚かせることになる。


「俺は、ヴラド家の執事だ」

「執事!? こんなワイルド系の人が!?」


 ラウラとは正反対なんですけど!? いやラウラも一皮剥いたら殺人キリングマシーンだけども!


「俺の名はロザリオ=アルハンブラ。ヴラド分家に仕える執事の一人だ」

「……なるほど、話が見えてきたぞ」


 緋山さんは察している様子だけど、俺だって大体先が見えてきましたよ。


「つまり、ヴラド家としてロレッタを連れ戻しに来たと」

「そういう事になる」

「……じゃあまだ渡せないね」

「ッ!? 何故だ!?」

「だってヴラド家の人間ってことは、ロレッタを爆弾に仕立て上げたい側の人間ってことでしょ?」


 俺は男の身の上を聞いた上で警戒を強める。そしてそれまでベッドに座っていたロレッタを抱き上げ、ロザリオを睨みつける。しかしこの何気ない一言が、ロザリオの逆鱗に触れてしまったようだ。


「誰がお嬢を爆弾にすると言った!!」

「ひぇっ!」

「俺は本家のクズ共とは違う!! 俺はお嬢を助けに来ただけだ!!」


 ロザリオは任せてガタンと音を立てながら立ち上がり、俺が抱きしめているロレッタへと手を伸ばす。


「さあお嬢! 今すぐ家に帰りましょう! 本家の奴等の言う事なんて聞く必要などありません!!」

「で、でも今更戻ったところで――」

「戻れぬというのであれば私がいつまでもかくまいましょう! さあ!」

「ちょっと待てよこのロリコン野郎」


 俺は結論を急ごうとするロザリオの手を払うと、ロレッタを俺のすぐ隣に座らせた上で更に逆にロザリオに詰め寄る。


「力帝都市に来ておいて、更にあたしなんかに負けておいて、勝手に一人で決めつけないでもらえるかな」

「なんだと? そもそも貴様には関係ない話だろう!」

「いやあるけど」


 もう一枚かんじゃったんだし、今更手放しするってのもスッキリしないんだよね。


「大体、最初にこの子がこの都市で頼ってきたのはあたしの方なんだよ? あんたの方じゃなくて」

「それは、俺が本家のやつ等の足止めを食らったせいで出遅れたから――」

「その時点で論外じゃん。現にあたしのところに来られなかったら今頃ドカンってなっていたかもしれないんだよ?」

「っ……」


 事実、僅差ではあるもののロレッタは先に俺の下に来た。そして俺も既にロザリンデに目をつけられ、この事件に巻き込まれてしまっている。


「もう力帝都市で起こってしまったことなんだし、ここで全て解決してから二人でどうするか考えても遅くないんじゃない?」

「し、しかし……」

「大丈夫だって。こっからはあたしも緋山さんも加勢してくれるから」

「はっ? 俺が?」

「もうここまで来たら手伝ってくれますよね?」

「いやだって俺最近詩乃に構ってやれてねぇし――」

「だったら詩乃さんにも手伝ってもらいましょうよ!」

「ハァ……詩乃はダメだ」


 えっ?


「どうしてですか?」

「あいつ最近、ちょっと色々と都合が悪い日でな」


 …………。


「……それって、生――」

「ブッ殺されてぇか」

「じゃあどうしたっていうんですか?」

「……今は言えねぇ」


 そっちはそっちで気になるなぁ。


「とにかく、詩乃はしばらく学校にも来られねぇ。だから俺もあんまり加勢はできねぇ」

「じゃあ、どうするんです?」

「……あいつがいるだろ」


 ――最近バイト先が潰されて暇そうにしている奴がよ。

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