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第九話 Sランクと飯の味

 買ったばかりの服というものは、すぐに身につけたくなるものである。

 たとえそれが、異性のものであったとしても。


「――み、皆……買ってきたよ……」


 上は前開きの黒のパーカーに、下は、真っ白なロングスカート。髪の色が派手な分、これで地味に収められる……かな?


「ん? ……おう、いいんじゃねぇの?」

「なぁっ!? 励二! 私の時は何にも言わなかったよね!? それにマコちゃんも、もう少しオシャレしてもいいのに……」

「いや、取りあえず簡単でもいいから着られたらいいので……」


 それにしても、Dランクのままだからか出費が痛い……。


「つーか榊よぉ、俺のランクカード使えばタダでもらえたってのに」

「……えっ? どういう意味ですか?」

「Sランクのカードは基本的に何でも買えちゃうカードなんだよー。遊園地とかも列に並ばずに優先的にいけるし、本当に便利だよねー」

「家賃も力帝都市持ちだから実質全部タダみたいなもんだな」


 便利すぎませんかそれ?


「お前も検査受け直せば普通にA以上はいけるだろ。それに一着だけで過ごすつもりじゃねぇんだし、もう少し見てまわってくりゃいいのによ」


 そんな気軽に言われましても……Sランクって一応一人で世界をどうにかできるレベルなんでしょ? 俺なんかの能力でそんな事が出来るわけ――

 ぐぎゅるるぅー……。


「……私じゃないよ?」

「あたしも違う」

「うちがそんな下品な音鳴らすわけないじゃないです!」

「ぼ、ボクも違うよ!?」

「……わりぃ、俺だ」


 緋山さん何堂々とお腹鳴らしているんですか。


「励二……ちゃんと朝ご飯食べてきた?」

「馬鹿にするなよ食ってきたに決まってんだろ。ただ詩乃との待ち合わせの前にAランクのゴミ共と少し戯れて来ただけだ」

「いい加減適当に追い払えばいいのに……」

「売られた喧嘩は買うのが俺だ」


 首をゴキリと鳴らし、そして腹の虫も鳴らす。それが緋山励二という男らしい。


「とりあえず飯食うか」

「うーん、お昼には少し早いけど……皆はいいかな?」


 澄田さんが腕時計をチラッと見つつこちらの様子をうかがう。俺としても少しお腹が空いてきたと

ころだし、提案をわざわざ拒否する理由もない。


「あたしは別にいいけど」

「うちも構いませんよ!」

「ボクもお腹空いてきましたし!」


 そんなこんなでショッピングモール内にあるレストランへと向かう事となった。



          ◆◆◆



 流石は集客力Aランクのショッピングモール。レストランにしてもファミリー向けから少し高級志向なものまで見事に揃っている。


「――だからといって、とんでもない所に足を運んでおりませんかね?」

「あぁん? 別に俺が飯代出すからいいだろ」

「そうですよ! 緋山のやろーなんてお財布みたいなもんですから!」

「要てめぇ後でツラ貸せ。小晴さんに代わって一回教育し直さないといけねぇようだからな」

「えぇー!?」


 俺と栖原は完全に店の前で固まっていた。いくらショッピングモールとはいえどう考えても学生が集団で入れるようなレストランには思えない厳かな雰囲気を醸し出しているんですけどここ。というよりそんなところにずかずかと入っていける緋山さん達の面たるすごくない?

 とりあえず後を追うように入ってみたけど、周りに俺達の様な学生の姿は見当たらない。うわ、席に座ったらすっごいリラックスできる。だけど周りの雰囲気がリラックスできない。

 そんな中で、緋山さんと澄田さんは隣同士に座って呑気にメニューを見てくつろいでいる。


「めちゃくちゃ腹減ったし、俺カツ丼大盛りでいいわ」

「励二! 少しは食生活の栄養バランスを考えないと! いっつも牛丼とかカツ丼とか一品もの頼むんだから!」

「だって美味いし……」

「だーめ! サラダもつけてもらいます!」


 うーわ、周り見る限り少し年齢層高い人ばっかりな気がするんだけど。しかもそういう人たちが怪訝そうな目でこっちを見ているんですけど。


「チッ……ほら、お前等も選べよ」

「あ、はい……」


 ……ん? 値段が四ケタからしかないんですけど!?


「ちょっと励二さん、本当にお金大丈夫なんですか?」

「ん? だからカードがあるから大丈夫だっつぅの」


 そう言って緋山さんは真っ黒なランクカードをぴらぴらと見せつける。

 俺はここで初めて、Sランクを示すランクカードというものを目にすることになった。そして周りで怪訝そうな目で見ていた人々はその黒のカードを見るなり驚いた表情を浮かべると共に、関わりたくないかのようにわざと目を逸らし始める。

 緋山さんはそれを知ってか知らずか、わざと吐き捨てるようにその場でこう言った。


「……ケッ、こんなもんの何がいいのか分からねぇもんだな」


 そう言ってカードを懐にしまうと、緋山さんはよりソファの上でふんぞり返るかのように座り始めた。


「……Sランクも大変なんですね」

「言ったはずだ。Sランクは色々と面倒に関わらざるを得なくなる、と」


 俺はこの時、Sランクのいい所と悪い所を垣間見ることが出来た。そしてしばらくして俺の目の前に置かれた焼き魚定食の味は、よく覚えていない。

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