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第九話 極限の選択肢

「――で、こいつが問題の妹さんですか」

「わぁっ! すっごくかわいいー! ねぇねぇ、なでなでしてもいい?」

「おいバカ、それで爆発したらどうすんだよ」

「むぅー、そのくらいいじゃん。励二のケチ」

「な、何なのですかあなた達は!?」


 先輩方三人を連れてきたのはいいが、完全にロレッタがおもちゃにされていることは俺の予測の範疇外にある。


「すっごーい! どうしたらこんなにもち肌になるのー?」

「い、息が……もが……」


 あのさぁ……女の子同士で抱き合って片方が巨乳に押し込まれる展開はもっとやってもいいんだよ? いや女の子になった俺がやったとしても誰得だが。


「おい」

「はい?」

「お前今明らかにやらしい目で詩乃を見ていなかったか?」

「い、いえ別に」


 何でこの人は澄田さんのことになると途端に神経が研ぎ澄まされるようになるんですかね……まあ、だからこそあの魔人に認可された二人の仲なのだろうが。


「じゃれ合うのもいいですが、先にこの子の名前と素性、その他さまざまな事を喋ってもらいましょうか」

「之喜原にしてはまともなことを言ったな」

「おやおや、僕はいつも君よりまともなことしか言ったことがありませんが?」

「何だとコラ」


 どっちも中々おかしな発言多いぞとか言える空気じゃないよなぁ。

 とまあ放課後に俺の家に押しかけて来たひなた荘の三人だが、そろそろ之喜原先輩の言う通り、本題に入った方がいい気がする。

 そう思っていたところで之喜原先輩が何やら鞄をごそごそと探り始める。


「さて、肝心の聞きだす手段ですが……どれがお好みで?」


 そうやって取り出してきたのは、之喜原先輩の能力名『人形ドール』をよく表している人形達。医者に歯医者、更には拳銃を持った警察官と、いずれもウサギの形をした人形が次々と出てくる。


「喋るまで麻酔無しで解剖されるか、同じく麻酔無しで歯を削られるか、はたまた四肢を撃ち抜かれるか……お好みのものをお選びください」


 訂正。どっちも頭おかしい発言あるけど圧倒的に之喜原先輩の方がおかしい。というよりドS通り越してただの拷問と化かしているんですがそれは。


「そ、そんな事できるはずが――」

「できるんですよ。これが僕の能力ですから」


 之喜原先輩の言葉に応じるがごとく、医者の小さなメスは斬りたい斬りたいとくすぶり始め、歯医者の手にあるドリルは不快な高音を立てて回転を始める。


「さあ、どうしましょうか。もちろん抵抗していただいて構いませんが、ここにはSランクが二人もいるので、すぐに鎮圧されるでしょうが」

「おい」


 最終的に俺達任せですかこの人は。都合がいいなあ。


「俺はお前みたいに子どもに手を挙げるほどクズじゃねぇぞ」

「おや? 別に僕はまだ実行していませんが」

「ほぼアウトだろ」


 いや100パーセントアウトだろ。

 俺と緋山さんが怪訝そうな目つきで之喜原先輩の方を向き続けると、先輩も観念した様子で残念そうに人形を片付け始める。


「おやおや、怖い怖い。流石にSランク二人を相手にどうこうできませんから」

「当たり前だ」

「えっと、先ほどからSランクなど色々言っておられますが、どういう意味です?」

「あー、そうか。外部の人間だからそもそもランクとか知らないか」


 それから簡単ではあるものの緋山さんがこの力帝都市について、そしてランクについて説明をし終えると、ロレッタは顔を青ざめてその場にうずくまり始めた。


「そ、そんな……仮に爆発していたとしても、私は無意味だった可能性があったという事ですか……?」

「まあそうなるな。少なくとも俺なら爆発する瞬間に熔岩で固めちまうだろうし、榊なら反転で何とかするだろうし」

「ちょっ、何勝手にしゃべってるんですか!?」

「えっ? この方も能力者なのですか?」


 いやいやいやせっかく能力持っていること隠していたのに何バラしちゃってるんですか!?


「あ……あぁ、すまん榊。つい口が滑った」

「滑った割には反省の色が一切見えませんけど……」

「えっ? どういうことです? もしかしてラウラさんが強いわけでは無いのですか?」

「いや、ラウラはラウラで普通に強いけど……」


 この前認定受けさせたらBランクだったし……ふつうに群集程度なら一人で壊滅できる実力はあるってことだぞ。


「そ、そんなに凄い人だったんですか……」


 となると、最初に聞きそびれていたここにピンポイントで来ていた理由って、ラウラが強いとどこかで知ってここに来たってことか。てことは俺は能力がバレ損ってこと?


「はぁ……」

「ったく、悪かったよ。ため息つくほど落ち込まれちゃどうしようもねぇ」

「実は俺、あんましこの子から情報聞き出せていないんですよ。だからこっちも出来る限り伏せておいたのに……」

「そうなのか? まあ今から聞きだすからいいだろ」


 緋山さんはどうやら之喜原先輩とは違ったアプローチでロレッタから情報を聞きだすつもりのようで、ロレッタの前にドカッと腰を下ろすと、ニヤリと笑ってこう言った。


「お前の情報を俺がロザリンデに言うのと、お前が俺にヴラド家の情報を言うのとどっちを選ぶんだ?」

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