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第八話 「ギクリ」なんてリアルで言うことあるのでしょうか

「義理の……」

「……妹?」

「そうなのぉ」


 その言葉を前にして、俺は上手く動揺を隠せていたのだろうか。他の三人はともかく、当事者の俺の精神を揺さぶるにあたって、その言葉はひどく響いた。


「私の一族に伝わる『血戦ブラッドライン』という能力は、自らの血を兵器に変える力」


 ロザリンデはそう言って腕をカッターで切り、そこから噴き出た地で拳銃を生成し始め、澄田さんがそれを気持ち悪そうな表情で見つめている。

 一体何を考えているのか、俺には全く意図が図れない。何故この少女はわざわざ俺達の前で自分の能力を披露しているのか。まだ隠し玉をいくつか控えているとでも言いたいのか。


「我がヴラド家にはその力が代々受け継がれ、私が所属する本家だけでなく妹がいる分家にもその力は備わっているわ」

「……一体何が言いてぇんだ」

「じゃあもう一つヒント。その変化できる兵器の中に、核兵器も備わっていまーす☆」

「なッ!?」


 あー知ってますそれ。妹さん(ロレッタ)の方から聞いていますから。

 とはいえ大方その自爆予定のロレッタを連れ戻し、適切な所で爆発させるのが姉のロザリンデの目的なのだろう。だとすれば、渡すわけにはいかない。


「何故ワタクシが義理の妹を探しているのかと聞かれますとぉ、それはそれは深い訳がありましてぇ」

「いいから、もったいぶらずに話してみろよ」

「Sランクさんに話を聞いていただけるなんてありがたいですわぁ」


 ロザリンデは俺達が話題に食いついたことに対して笑みをこぼしているのか、それとも本当に妹を探す手がかりになりそうという意味で笑みをこぼしているのか。ロザリンデはそこからオーバーリアクションな身振り手振りを加えながら、今回のことの重大性を俺達に伝え始めた。


「実はワタクシの妹は病を患っておりましてぇ、定期的に薬を飲まないと意識不明になってしまうのですぅ」

「それは大変だな」

「そこからが問題でぇ、その時の妹は大変物質的にも不安定になって、全身の血がちょーっとした衝撃で核爆発をも超越する衝撃波を起こしてしまう危険な兵器になってしまうのよぉ」


 えっ、それ本人から聞いていないんですけど。本当なのかそれ? だとしたらラウラとか危ないんじゃないか?


「それでいち早く回収しないといけないんですけどぉ……なにぶん妹は虚言癖を持っていましてぇ、ワタクシ達の方が悪いような言い方をしてくるんですよぉ」

「……なるほどな」


 あっ、今緋山さん俺の方をチラッと見ましたね……でも、全部信じていいのかなぁ。俺にとっては、あのロレッタが言っていたこともあながちウソだとは思えないんだけど。


「で、どうやって探すんだ?」

「それがねぇ、聞いてよ、この都市って凄いのねぇ。ネットを通してハッキングして監視カメラジャックしようとしたけど、、ワタクシの腕ではできなかったわぁ」

「そりゃそうだろうな。あれは力帝都市でも指折りの奴等が作ったって話だからな」

「そもそも現物を直接いじろうにもどこにあるのか分からないのよねぇ」


 それもそのはず。この力帝都市にはランクの低い、いわゆるモロバレな監視カメラの他に、ランクの高いマイクロサイズの監視カメラが存在するとのこと。だがまあ流石に個人宅には設置されていないらしい……少なくとも表向きは。

 実際Sランクになってから情報を集めようと思えば、個人の部屋に設置されているとしか思えない映像が時々流れてくる。もちろん俺はさっさと自分の部屋にあるカメラは全て封じてあるし、澄田さん達はというとひなた荘自体にそのようなものを設置させていないらしく、セーフらしい。

 となると問題は守矢と栖原だが、守矢はそもそも旧居住区という捨てられた区域にいることからそのようなものとは無縁らしく、そして栖原だが……俺が申請して密かに撤去させた。

 そして撤去するときに時に聞いた話だが、自室内のカメラはどちらかというとセンサーに近い者らしく、AIが判定して怪しい動きや室内での奇襲、殺人などが起こっていないかを監視しているらしい。

 でもまあそれでもみられているのは気分が悪いから俺は潰しているが。


「てことでぇ、虱潰しに聞いてまわるしかないのよぉ」

「それで情報を知っていそうな俺のところに来たってことか」

「大正解よぉ」

「……なるほどな」


 あんたの言う通り、確かに緋山さんは情報を持っている。ってか俺が持たせてしまっている。だがそれを外部の人間にそう簡単に言うような人じゃないことを、俺は知っている。


「あいにくだが俺は何も知らない。お前のいう情報なら、他を当たれ」

「あらそう? ……だったらぁ、そこのキミに聞いちゃおうっかな?」

「……えっ? 俺ですか?」

「うん。キミ☆」


 やっべー、これ殺気の反応完全に見られていたパターンだこれ。


「キミなら何か知っていそうな気がするー☆」

「おいおい、こいつはただのDランクだぞ? お前の望む情報は持っていない」

「でもこうなっちゃった今、まさに虱潰しに聞いてまわるしかないじゃない?」


 やばい、完全に狙いを定められている。いまにも「家にあがらせてゆっくりお話でも聞かせてもらえないかしらぁ?」とでも言われかねない勢いだ。


「ねぇ、ここで立ち話的なのもアレだしぃ、暇ならキミの家とかに少し上がらせてもらって――」

「悪いが俺が今日こいつと放課後つるむ先約があるんでな。また後日にしてもらおうか」


 緋山さんナイスフォロー! なんだけどロザリンデは俺の方を見て、また緋山さんの方を見て一瞬だ怪訝そうな表情を浮かべた。

 だがそれもすぐに元のにこやかな笑顔へと塗り替えられると、ロザリンデは大人しくこの場を引きさがり始める。


「ではではぁ、また後日お話を伺わせてもらうわぁ。またねぇ☆」


 ロザリンデがばたりとドアを閉めた後に、一同の視線は俺の方へと向けられる。


「……取り合えず、今日の放課後に行ってみるしかなくなったワケですが」

「ったく、お前のせいで俺達まで――」

「その位いいじゃない励二、私はその子に興味湧いてきちゃった」

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