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第六話 見た目とのギャップってよくあるよね

 初撃。ラウラの右手から放たれる散弾が狼を店の外へと追いやる。

 追撃。外に出てからの両手の散弾の雨を前にしても、敵は未だにダメージゼロ。


「……中々すばしっこいですね。散弾の範囲は普通のものより広いはずですが」


 ラウラの言う通り、デスサイズショットガンは中から近距離用に弾をばら撒くよう設計されていることに加えて、散弾の数も圧倒的に多いことから広い範囲に弾をばら撒くことができる。

 しかしそれでも素早い獣の足先すらとらえることもできずに、ラウラを翻弄するがごとく四方八方を逃げ回っている。


「加勢しようか?」

「いえ。この程度、真琴さんの手を煩わせるまでもありません」


 とはいえ相手はラウラのスタミナ切れか、もしくはいら立ちを募らせた挙句のミスを誘っているように思える動きをしている。


「くっ、それにしてもすばしっこい……!」


 ラウラも見事相手の術中にはまってしまい、いら立ちを募らせている。


「仕方ない……」

「あっ! どこに行くつもりですか!」

「ちょっとトイレだ。用を足してから通報するか加勢する」

「そんな悠長な!」


 とにかくそうほいほいと反転する瞬間を他人に見せつけるほど俺は安くないんで。


「ロレッタは物陰からラウラを見守ってくれ。じゃあ」

「じゃあって……本当に大丈夫なのですか!?」


 すぐに分かるさ。


「くっ、こうなったら!!」


 ラウラは俺が対『冷血クルエル』用に思いついた技を使って、四方に飛び交う邪魔者を撃ち落とそうと構えを取り始める。


「さっさと死ぬがいい!!」

「ッ!?」


 全方位カバーの無差別発砲。いくらすばしっこいとはいえど行く先を全て散弾で防がれてはどうしようもなくなってしまうと思われた。

 しかし――


「ガルルァッ!!」

「何ッ!?」


 狼は突如としてその姿を変え、一人の男がラウラの懐へ――その鋭い爪を喉へと伸ばしてきた。


「回避、できない――ッ!?」

「終わりだッ――ッ!?」

「ふぃー、ギリギリセーフってとこかな?」


 何とか定食屋の裏路地に置いてあったごみ箱とラウラの位置を反転させてみたのはいいけど……何あの人、大きなゴミ箱に片手で穴を開けているんですけど。


「……貴様、何者だ」

「あたしからすればあんたの方が何者なワケ? 狼かとと思ったら人間になったし。しかもワイルド系なお方ですか?」


 スーツをラフに着崩したかのような服装に、肉食系の獣のような目つき。これぞ正しく不良ってやつですかな? それにしては穂村や俺よりも年上っぽそうに見えるが。


「大人になってもその服装って結構痛々しくない?」

「貴様には関係ない。貴様に与えられているのはそこのおじょっ――小娘を置いてここから立ち去るか、俺に引き裂かれるかの二つのみ。さあ、どちらかを選べ」


 今明らかにお嬢様って呼ぼうとしたよね? ってことはこいつもヴラド家の関係者か?


「……だったら尚更引き下がるわけにもいかないか」

「だ、誰ですか貴方は!?」

「誰って、通りすがりの助っ人。ラウラとは知り合いだし、手を貸そうと思って出て来たってワケ」


 そういう設定で乱入すれば、ロレッタにも怪しまれずに済むはず。


「あんたはあたし達に二択をくれてるみたいだけど、二対一でそれは少し無理があるんじゃない? なんてったってあたしSランクだし」

「SだかMだか知った事か! 俺は今から貴様を引き裂き殺す! それだけだ!」


 えぇーと、取りあえず外部の人間って事だけはこれではっきりと分かった。あとはこいつをどうにかして――


「死ねッ!!」

「うわっ!?」


 相手はオオカミの時と変わらない高速の動きでもって俺の眼前まで迫り、宣言通り身体を引き裂こうと右手で横に薙いできた。


「あぶなっ!」


 っとかいっても服やぶれちゃったし!? 大事なところが見えそうで見えないというなんかちょっとエロい感じになっているんですけど!?


「そ、それより服を破った分弁償して――」

「ブフォッ!」

「は?」


 えっ? 何? この人いきなり鼻を抑え始めたんですけど。何か手の隙間から血が流れているんですけど?


「くっ……今日はここまでにしておいてやる」

「ねぇ、あんた今鼻血出て――」

「じゃあな! その命、次には貰い受ける!」

「……明らかに鼻血だよね」


 何か鼻を押さえたままその場から去っていったんですけど。というかそういうのに耐性が無い人なの? おおよそ童貞っぽくない風体でそんな童貞みたいな反応するんですか?


「……何じゃそりゃ」

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