第四話 食べ物で釣る作戦
「――というワケなんですけど……」
「何ですけどって、オレの知ったこっちゃねぇよ……テメェが勝手にガキ預かった事しか理解できねぇ」
「えぇ……」
知ったこっちゃないってそんなぁー……普段は何でも知っていそうなそぶりなのにこういう時に限って――
「オイ、テメェ今オレに対してとんでもないこと考えているだろ」
「ま、まっさかー!」
「そもそもこの方は誰なのです?」
「そもそもこのガキはなんなんだ? お前の隠し子か?」
「いやいやいやそれは無いですって! そもそも能力発動してから逆算してもおかしいでしょ!」
「そうか? テメェなら時間も何かいじれるんじゃねぇのか?」
弄れたとしても精神が男のままで子供を産むなんて変態チックなプレイしませんから。それに加えてこの子の前では俺まだ能力見せていないんで黙ってもらえませんかね。
まあいきなりロレッタを連れてきた俺も俺なんだけど、取りあえずわからないことは魔人に聞いておけばオッケーな感じだと思っていたから仕方ないよね。
「ったく……おいクソガキ」
「むっ、クソガキじゃないです、ちゃんとした名前があります」
「じゃあちゃんとした名前を名乗ってみろよ」
「人に名前を聞くならまず自分から名乗っては?」
「オレは別に名乗らなくても損しねぇし、テメェに名乗るつもりがないならテメェの呼び名はクソガキのままだ」
なんですかこの魔人、普通に大人げないんですけど。小さな子ども相手に意地悪しすぎでしょうに、少しは自分から譲歩することを覚えて欲しいですね。
「なんか言ったか?」
「いいえ何も」
しかし魔人もヴラド家のことは知らないとなると、この中で一番知識を持っているのはラウラってことになるな。
「なぁラウラ、他にヴラド家の噂とかそういうのでいいから何か知っていない?」
「噂、ですか……いえ、元々が我々ですら知らない裏の中でも奥深くに根付く一族ですから、そうそう情報は漏れないかと」
「参ったな……当の本人はヴラド家の事は喋りたがらないし……」
「腹を割って話せばいいじゃねぇか。文字通り物理的に」
「ここにきてグロとかやめてもらえませんかね」
全く、折角の土曜日なのに何の収穫も得られないとは。
「緋山さんは澄田さんとデートに行っているし、守矢は姉妹の用事に付き合っていて、栖原は自宅の道場で稽古中。はぁ、俺っていつものメンバー以外につくづく友達がいないって思い知らされるよな」
俺が思わず愚痴を吐いたところで魔人はアイデアが浮かび上がったのか、悪い考えを持っていそうなニヤつき顔で俺にある提案をしてくる。
「丁度いい、テメェとそこのガキとメイドで飯でも食ってくりゃいいじゃねぇか」
「は? 一体どういう――」
「いいから耳貸せ」
魔人は俺の首に腕を回して顔を近づけると、ラウラとロレッタからは見えない形で俺に文字通り悪魔のささやきを聞かせ始める。
「どうせガキだ、美味いもん食わしてやりでもすりゃすぐにヴラド家の事なんざゲロッちまうだろうよ」
「えぇー、そんな方法でいいんですか?」
「そんな方法以外に良い方法あんのかテメェ」
「……無いですけど」
「じゃあ決まりだな」
魔人が俺を開放したところで、俺は渋々魔人の提案に乗る形でロレッタと一緒にご飯を食べに行くことに。
「なぁロレッタ、そろそろお腹空いて来ないか?」
「言われてみれば、もうお昼ですし……」
「この辺りで美味しい定食屋を知っているから行かないか?」
「テイショク……気になります」
何か食べ物で釣ったみたいになっているけど、話を聞きだすためのギブ&テイクってことで。
「テイショク、楽しみです!」
「きっと満足いくと思うよ」
無駄に量が多いところだし。